裁判所要望
平成23年6月16日に名古屋高等裁判所、名古屋家庭裁判所に以下、要望をしました。
名古屋高等裁判所長官殿
名古屋地方裁判所長殿
名古屋家庭裁判所長殿
裁判所における親権者及び監護権者指定の判断基準について民法改正の立法趣旨をふまえた運用改善を求める要望書
私たちは、我が国の単独親権制度により離婚または別居後に子どもと自由に会えなくなるという現実に直面し、我が子の健全な成長のため、別居中の親も子の養育にかかわる必要性を訴えて、諸外国並みの頻繁な子との面会や共同養育を実現する目的で、中部地区で活動を展開している団体のものです。
去る5月28日未明、愛知県内の30代の父親が自ら命を絶ちました。国会では、面会交流を離婚の協議事項の一つとして加える内容を含む民法改正案が亡くなる前日に成立したばかりでした。また政府が、一方の配偶者による国境を越えた子の連れ去りを禁止するハーグ条約批准の方針と法整備着手を閣議決定したところでした。我が国でもようやく、子どもの連れ去り問題への関心が高まり、対処の兆しがみられる最中でもあったところです。
私達は、昨年11月30日に名古屋高等裁判所長官に「裁判所における親権者及び監護権者指定の判断基準について運用改善を求める要望書」を提出させて頂きました。要望書の中で、「子どもを連れ去られた後に、親であるにもかかわらず実の子どもに会えないという信じがたい現実を突きつけられ、ある者は自殺し、・・・、法制度の不備と裁判所の不適切な運用による犠牲者が後をたちません。裁判所における親権者及び監護権者の指定の判断基準が変わるだけで、何万人の引き離しにあっている親と子どもたちが救われます。」と指摘し、裁判所における親権者及び監護権者指定の基準の改善を要望いたしました。
その後も親権者及び監護権者指定の基準の改善が行われず、相変わらず「継続性の原則」が準用され続け、彼は絶望し、若くして大切な命を絶つという手段を選択しました。愛するわが子を一方的に連れ去られた親がなぜこのような悲劇的な死を遂げなくてはいけないのでしょうか。
今国会で、親の虐待から子どもを守るため、親権を最長2年間停止する制度の新設及び離婚後の親子の面会交流等の明文化を柱とした民法等改正案が4月28日に衆議院本会議で、5月27日に参院本会議でいずれも全会一致で可決し、6月3日に官報で公布されました。
立法権者の江田法務大臣は、衆・参議院の法務委員会において民法改正の立法趣旨として以下のように述べております。以下は一部であり、詳細は国会議事録を添付しました。
・子の監護について必要な事項として、離婚後の親子の面会交流及び監護費用の分担を民法766条に明示した趣旨は、別居・離婚後も、監護親だけでなくて非監護親ともいろいろな面会交流があることが子の福祉にかなう、子の利益にかなうという観点からであり、子の福祉を第一に考えている。
・DV防止法上の保護命令は適正手続が必要だ、あるいは子の連れ去りが場合によっては児童虐待になる、あるいは監護権、監護親を決定する場合に不当な連れ去りが不利に働くように、面会交流に積極的な親が監護権決定に有利に働くように、あるいは面会交流を正当な理由なく破ったら監護権者の変更の重要な要素になり得る。
・子の監護者を決めるときに、相手に対してどちらの方がより寛容であるか。片方が、月一回会わせます、もう片方は、いやいや、月に二回は会わせます、それなら、その月二回会わせる方を監護者に決めよう、そういうルールといいますか、(監護者として指定する一つの判断基準とする)裁判所のやり方は重要な指摘だと思います。
・いわゆる継続性の原則、合意ができる前にあえて無理して子を移動させてそして自分の管理下に置けば、後は継続性の原則で守られるという、そういうことはやっぱりあってはいけないと。継続性の原則があるから、だから連れ去った方が得だと、そういうことがあってはいけない。
私達は、一方の配偶者によるわが子の連れ去りを認める現在の裁判所の運用は、家族関係に関する法律が個人の尊厳と両性の平等に立脚すべきと定めた日本国憲法第24条に反すると考えています。また我が国が締結している国連児童の権利条約第9条で謳われた、締結国における親子の分離禁止、分離された親子の接触の保障等にも明らかに反していると考えています。
今国会での民法改正は、子どもの利益、福祉を最優先に、真剣な議論が国会で行われたうえで、国民の代表たる国会議員が全員一致で可決しました。改正された法律およびその立法趣旨は、法律を運用する裁判所において最大限に尊重されるべきです。私達は、民法改正の立法趣旨に基づき、下記の事項について再度要望いたします。
1 監護者・親権者指定の準則となっている「乳幼児期の母性優先の原則」及び「継続性の原則」の基準の尊重を改めること
2 監護者・親権者の指定においては、「寛容性の原則」を採用すること
3 「子の連れ去り行為」及び「虚偽の配偶者暴力(DV)の申立て」は、「子の福祉」に反する行為として、親権者・監護権者の指定においては、不利な推定が働くようにすること
4 親と離れて暮らす子どもが両親と頻繁に、意義ある、かつ継続的な交流を行うことを前提とする調停を行うこと。子どもの利益を最優先とした親子交流が行われるか共同養育計画書により確認すること
米国のインディアナ州裁判所規則である「インディアナ州面会交流指針」では、両親が子どもを養育することが、子どもの成長と健康のために非常に重要であるとの考えに基づき、子どもが両親と頻繁に、意義ある、かつ継続的な交流を行うことが、子どもの利益に適うと規定され運用されています。
今国会で、「子どもの利益を第一に」との観点から議論され、子どもたちが両親から一方的に引き離されず、頻繁に、様々な意義ある面会交流が保障されること、かつ継続的な交流を行うことが子どもの福祉であり、最大限の利益であることが示されました。
わが子が両親の愛情を等しく受ける権利、両親がわが子を愛する権利は、誰にも侵害することができない親子間の自然な情愛による普遍的権利です。世界の中の先進国として、子どもの最善の利益とされる親子が引き離されないことを実現するために、子どもの連れ去りを防止し、離れて暮らす親子の面会交流を保障するための裁判所における運用改善が急がれます。 現在も会うことができずに苦悩し続けている親子が再び親子関係を回復するためにも、一刻も早い運用改善を、私達は強く求めます。
一方の配偶者による子どもの連れ去りおよび引き離しは、目の前から片親を消し去られることによる精神的、心理的な苦痛を子どもに与えるだけでなく、引き離された親を死にも追いやる重大な人権侵害です。
このような悲劇が繰り返されないように、同意のない子どもの連れ去りが禁止されるよう、「先に連れ去った者勝ち」とする等の裁判所の運用が早期に改善されるよう、以上につき要望いたします。
平成22年11月30日に名古屋高等裁判所、名古屋家庭裁判所に、平成23年1月11日岐阜家庭裁判所に以下、要望をしました。
名古屋高等裁判所長官殿
名古屋地方裁判所長殿
名古屋家庭裁判所長殿
裁判所における親権者及び監護権者指定の判断基準の運用改善を求める要望書
私たちは、我が国の単独親権制度により離婚または別居後に子どもと自由に会えなくなるという現実に直面し、我が子の健全な成長のため、別居中の親も子の養育にかかわる必要性を訴えて、諸外国並みの頻繁な子との面会や共同養育を実現する目的で、中部地区で活動を展開している団体のものです。
日本では、毎年約25万人の子どもが離婚により一方の親から別れ、その7割がその後、別居親と面会できない(厚生労働省統計)という悲惨な親子関係が続いています。
子どもを連れ去られた後に、親であるにもかかわらず実の子どもに会えないという信じがたい現実を突きつけられ、ある者は自殺し、ある者は配偶者を殺害し、ある者は子の連れ去り返しにより誘拐犯として逮捕されるなど、法制度の不備と裁判所の不適切な運用による犠牲者が後をたちません。このような悲劇は、諸外国では起こりえません。
ルース米国大使が、「子どもの幼少期はあっという間に過ぎてしまう。後に残された親たちは、そうした幼少期を子どもと過ごす機会を逸しており、その数はますます増えている。そして、連れ去られた子どもたちは両親の愛情を受けて成長するという機会を奪われている。」と東京新聞(平成22年9月1日記事)に寄稿文を寄せているとおり、引き離された親子は、自然な情愛である親子関係・絆が断たれています。
子どもの連れ去り、引き離しは「拉致」として諸外国から厳しく非難を受け、米国を始め各国から非難決議を日本は受けています。
裁判所における親権者及び監護権者の指定の判断基準が変わるだけで、何万人の引き離しにあっている親と子どもたちが救われます。
是非とも、早急に、以下のとおり、裁判所における当該基準の改善を図られることをお願いいたします。
1.現在、適用されている「乳幼児期の母性優先の原則」及び「継続性の原則」については、その基準の過度の尊重を改めること
我々が、判事でもある方に説明するのはおこがましいことであり、説明は省きますが、「母性優先の原則」は、「両性の平等」に反するという理由で、諸外国の多くで、現在は採用されていないということ、及び、「継続性の原則」こそが、片方の親による子の連れ去りと、子のもう一方の親からの引き離しを引き起こしている原因であり、「子の福祉」に明らかに反する行動を親が行うことを誘発する原則であることについて、十分に考慮していただき、今後の対応を早急に検討してください。
2.「寛容性の原則」を採用すること
諸外国においては、主たる監護者を指定する場合には、「もう一方の親が子に会うことに対し、どれだけ寛容であるか」(Friendly Parent Rule)との基準が利用されることが一般的です。この原則を採用することで、自ずから、親と子の引き離しは解消されます。すなわち、親と子の引き離しを行う者は、当該原則に反する行為を行ったことをもって、親権・監護権がもう一方の親に移ってしまうためです。
親権者・監護者指定にあたっては、この原則を「継続性の原則」に優先する運用に変更していただくだけで、多くの問題が瞬時に解決することになるでしょう。
3.「子の連れ去り行為」及び「虚偽の配偶者暴力(DV)の申立て」は、「子の福祉」に反する行為として、親権者・監護権者の指定においては、不利な推定が働くようにすること
2に掲げる原則が適用されるようになれば、「子の連れ去り行為」及び「虚偽の配偶者暴力の申立て」をする必要性は低くなりますが、これらの行為を行う者が全く居なくなる保証はありません。「子の連れ去り行為」及び「片親の子への接近禁止命令を目的とする配偶者暴力の申立て」は、子を片方の親から引き離す行為であることは言うまでもなく、正当な理由のない限り、親権・監護権の指定にとって不利とすることで、これらの行為を抑止することになることが期待されます。
以上につき要望致します。
【要望書資料】
- 子どもの連れ去り、引き離し、親子断絶を巡る最近のニュース・報道
- アルノー・シモン氏の訃報 に対する 駐日フランス大使のお悔やみ(在日フランス大使館ホームページ掲載記事)
- 子ども連れ去りは「拉致」、米下院で決議(2010/9/30 TBS Newsi)
- 親権ない側 何もできず(2010/1/26 読売新聞、コメント棚瀬孝雄先生)
- 離婚後の子と面会 保障 超党派議員 来年、法案提出へ(2010/10/29 産経新聞)
- 親子交流断絶の防止法案(試案)の概要(当会ホームページ)
- 単独親権制度が子どもに及ぼす負の連鎖(当会作成 )
- 愛娘を連れ戻そうとして逮捕 元裁判官”覚悟”の告発(2010/11/19 週刊朝日)
- 「離婚は縁切り」で子は幸せか 「共同親権」へ国民的議論を(2010/10/30 週刊東洋経済)
- 子供が両親と自由に会える社会。「単独親権」から「共同親権」へ(2010/9/15 THE BIG ISSUE 151号)
- 離婚後の親子交流(2010/5/28 神戸新聞 棚瀬一代先生インタビュー)
- 子どもの声 聞いて(2010/5/13 毎日新聞)
【要望書資料DVD】
○子の連れ去りに関する政府・法務大臣政務官答弁 H22.10.29
衆議院法務委員会での黒岩法務大臣政務官の答弁に関する動画
- 理由なく一方の親が他方の親の同意なく子を連れ去ることは適切ではないと認識している。
- 離婚後の親子の面会交流は、当然子どもにとって重要なものであると認識している。
○片親疎外の病気 青木 聡大正大准教授 H22.10.30
臨床心理士でもある青木准教授が子どもの片親疎外の病気が発生する過程を米国での多くの研究に基づき説明した動画。
片親引き離し症候群(Parental Alienation Syndrome )は、両親の離婚や別居などの原因により、子供を監護している方の親(監護親)が、も¬う一方の親(非監護親)に対する誹謗や中傷、悪口などマイナスなイメージを子供に吹き¬込むことでマインドコントロールや洗脳を行い、子供を他方の親から引き離すようし向け¬、結果として正当な理由もなく片親に会えなくさせている状況を引き起こす。
○子の虐待の傷は癒えるのか H21.7.4
NHK 追跡A to Z で報道された親から虐待を受けた子どもの心の傷が「想像を絶する」もので長期にわたり子どもを苦しめることを警鐘する番組である。
「片親引き離しは愛情遮断という児童虐待です。子どもの心の傷は想像を絶するものです」
○NHKかんさい熱視線「なぜ親と子が会えないのか」 H22.8.20
コメンテーター:棚瀬一代 神戸親和女子大学教授(臨床心理士)
○NHKクローズアップ現代「離婚 親と子が会えない」 H22.9.8
コメンテーター:小田切紀子教授 東京国際大学教授
かんさい熱視線のリメーク版として全国放送された。
『子どもに会えない親の淋しさや怒りだけでなく、子どもたちも、離れて暮らす親に会えないことで悩んでいる実態が浮かび上がっている。問題の背景として「会うことで子どもが悪影響を受ける」と恐れる親権を持つ親の意向や、離婚時に父か母の一方だけが子どもの親権を持つ「単独親権制度」の限界が指摘されている。年間25万件にも離婚が増える中、争いを減らし、子どもの幸せを守るにはどうすればいいのかを考える。』
NHKクローズアップ現代「離婚 親と子が会えない」 小田切紀子教授のコメント
●離婚後に子どもに会えない親について
>>やはり子どもに会えない親は、生きがいを失ってしまって、生きる価値が見いだせなくなって、うつ状態になってしまったり、あるいは親権を持てなくて、子どもに会えないのが母親の場合、周囲からよほどひどいことをしたんじゃないかっていうふうに思われて、精神的に追い詰められてるって、そういうことがあります。
●親に会えない子どもについて
>>やっぱり子どもは、きょうの生活があしたも続くっていう安心感の下に暮らしているわけですよね。離婚によって、それが根底から崩されるわけで、離婚が子どもを精神的にももう心理的にも経済的にも苦痛を与えると、これはもう避けられないと思うんですね。増してや離れて暮らす親と会えないと、自分は親から愛されていないんだ、もしかしたら、いらない子だったんじゃないかっていうふうに、非常に自己肯定感も低くなりますし、親からも愛されない自分なんていうのは、もう誰からも必要とされないんじゃないかって
いうふうに思ってしまうこともあります。また子どもは高校、大学のころ、ちょうど青年期のころ、自分のいいところ、悪いところを知って、親とは違う自分らしさっていうものを作っていく時期なんですね。これをアイデンティティを確立するっていうふうにいいますが、そのときにはやっぱり自分のルーツである父親と母親のことを深く知って、お父さんとお母さんが自分の人格形成にどういうふうに影響を与えたのかっていうのを知ることが大事なんですけれども、それが離れて暮らす親と会えなかったりすると、非常にその自分らしさを作っていく過程で、混乱してしまう、そういうことが起こってきます。
>>やっぱり子どもは両方の両親から愛されているっていう体験が必要なわけですね。子の面会交流というのは子どもの権利で、親はそれを保障する義務があるんですね。もちろん片方の親から子どもへの暴力とか、そういうことがあった場合には、考えていかなくちゃいけませんけれども、やっぱり子どもの権利ですので、子どもがきちんと両方の親に会えるように、周りはサポートしていく必要があると思います。子どもはやっぱりいっしょに暮らす親に全面的に頼っていますので、やっぱり親の様子を見て、親の機嫌を損ねてまで、リスクを負ってまで離れて暮らす親に会いたいとは言えないことがあるので、なかなか子どもの言葉は、そのまんま額面どおり、本音と思わないほうがいいのかもしれないですね。
>>やっぱり夫婦の問題と親子の問題を切り離して考えたほうがよくて、夫、妻としては問題があったけれども、親としては、特に問題はなくて、親子関係はうまくいってた、そういう場合もあるわけですよね。ですから、この問題に関しては、離婚をしても親として、子どもに何ができるのか、子どもには何が必要なのかっていうのを考えていく必要があると思います。
更新 2011-06-19 (日) 11:55:04
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