片親疎外
「片親疎外」「面会交流」に関する最新情報
両親間葛藤が子どもの発達に及ぼす影響 New!
出典:家族問題情報誌「ふぁみりお」 2020.1.25 第79号
川島亜紀子 山梨大学大学院総合研究部教育学域教育学系准教授
【内容紹介】
両親間葛藤が子どもの発達に及ぼす影響
※以下、「ふぁみりお」第79号の紹介より引用しました。
「両親間の葛藤が子どもの発達に及ぼす影響」に関するご研究や海外の研究、子ども支援の実務などに基づくお話は、家族や子どもに対する支援に携わるものだけでなく、広く子どもを養育している一般の親たちにも大変有益な指針が示されています。また、共同養育や親ガイダンスなど、当面する親支援の在り方についても時宜にかなった指摘や提言がなされています。
《目 次》
令和家族考79《両親間葛藤が子どもの発達に及ぼす影響》1ー3頁
アラカルト《子連れ再婚家族が抱える問題と必要としている支援》4ー5頁
海外トピックス《ワシントン州シアトル市キング郡における少年司法の取組み
-少年の更生を司法,行政,民間が一体となって支援-》6ー7頁
【注目される記述】
面会交流の中断は子の適応にとってリスク要因です。約4 割の別居親は別居後子どもと情緒的に疎遠になります。その背景として、別居親の教育レベル・社会経 済的地位、養育費不払い、物理的距離、再婚や(同居親への) 敵意的感情、子どもの拒否的態度が挙げられます。
特に子どもの拒否的態度は、別居親の親としての自己効力感を低下させ、より情緒的に疎遠になる方向へ影響します。
両親の不和や離婚が子のリスク因子。本来、両親の離婚と子どもは無関係であるはずです。子どもにとって両親は愛着の対象であり、どちらかを選ばせる、敵味方の立場を求められることが苦痛となるのです。
離婚前の子どもの養育に関する取り決めを促すための効果的な取組に関する調査研究報告書(厚生労働省)
出典:厚生労働省ホームページ
公表:平成27年3月
離婚前の子どもの養育に関する取り決めを促すための効果的な取組に関する調査研究報告書P.1~11
離婚前の子どもの養育に関する取り決めを促すための効果的な取組に関する調査研究報告書P.12~28
離婚前の子どもの養育に関する取り決めを促すための効果的な取組に関する調査研究報告書P.29~55
離婚前の子どもの養育に関する取り決めを促すための効果的な取組に関する調査研究報告書P.56~77
「離婚をめぐる課題を考える――養育費、面会交流を中心に――
出典:大分県母子寡婦福祉連合会研修会レジュメ
離婚をめぐる課題を考える――養育費、面会交流を中心に――福岡ファミリー相談室相談員(福岡県立大学名誉教授) 宮﨑昭夫
はじめに
私は離婚等のケースを担当する中で、親の離婚を経験した子どもをどう支えたらよいかを考えるようになり、諸外国の動きにも関心を持ちだすようになった。離婚は世界中に見られる現象であるが、その取り組みはそれぞれの国の文化・歴史によって大きく異なる。わが国は女性の地位が低く、母子福祉施策が貧弱であるだけでなく、親が離婚した子どもを支える児童福祉施策がほぼない国である。世界の動きに目を配りながら、わが国の課題を考えてみたい。
1.親の離婚と子ども
親の離婚に対する子どもの反応は多様であり、一人一人の子どもによって異なる。しかし多くの子どもは、親の離婚によって、悲しみ、不安、怒りなどの感情を強く体験し、親の離婚は子どもの成長・発達の危機になりがちであることは否定できない。米国の大統領のオバマ氏も親の離婚の経験者であり、生活の荒れた時期を過ごした経験を有している。
(中略・本文参照)
2.離婚後の親子関係
(中略・本文参照)
(2)児童(子ども)の権利条約の理念を尊重した親子のあり方へ
児童の権利条約第九条(親からの分離禁止と分離のための手続)3項「締約国は、児童の最善の利益に反する場合を除くほか、父母の一方又は双方から分離されている児童が定期的に父母のいずれとも人的な関係及び直接の接触を維持する権利を尊重する。」と規定している。
先進諸国では離婚率の上昇の中で、子どもに対する親の離婚の傷を低減させるため、親は離婚しても非同居親と子どもの縁を切らずに、離婚後も非同居親と子どもの関係を大切にするという方向を目指し、そのための工夫を重ねてきた。別の表現では「夫婦の別れを、親子の別れにしない」ということが目指されてきた。
日本は児童の権利条約を1994 年に批准したにも関わらず、これまで積極的な取り組みを行ってこなかった。これに対し多くの先進国では、第九条3項の趣旨を尊重して、離婚後の非同居親と子どもとの関係を維持する工夫(例えば、面会交流センターを設置して、面会交流を促進する)を展開してきた。外国でも、離婚後の元夫婦は顔を会わせたくないとか、元配偶者に対する不信感が強く、子どもを元配偶者には会わせたくないといった反応はよくあることである。DV(ドメスティック・バイオレンス)などの深刻なケースもあるが、子どもと非同居親が関係を維持することの重要性が広く社会に認められている。
(中略・本文参照)
付録 離婚に関する学生のコメント
コメント1 「レジュメのなかにあった離婚した子どもの気持について書いてあった10 項目、あれは今までの授業の中で、一番共感できた資料でした。自分が小学生の頃思っていても、上手く伝えられなかったことを代弁してくれているような気がしました。私は、市営住宅に住んでいるため、近所の友だちは、母子家庭や父子家庭が多く、そのためどんな風に離婚したか、今の家庭環境はどうなのかなどの話を気軽に話すことができます。しかし、市営住宅にくるまでは、周りにそんな子がいなくて、自分だけがさびしい思いをしていると感じていました。」
コメント2 「私は母子家庭の子どもの気持ち、よく、よく、よく、よく分かります。両親以外の家族や周りの環境が整っていたり、恵まれていたりしない限り、母子家庭の子どもは宙ぶらりんです。仮に生活していく財力が母親に十分あっても、やっぱり心は宙ぶらりんです。他の国ではサポートする制度があるところもあるんですね……。日本では離婚というものがあまり認められるものではないということを表しているのでしょうか?福祉的なサポートがしっかり行われるべき問題だと思います。子どもは親権についての話し合いにさえ参加しないことが多いだろうし、離婚は当事者二人の問題となってしまい、子どもはとりあえず、変化した環境の中で生きていくしかありません。」
コメント3 「親が離婚した後のケアについて、実際に自分も経験しているので、辛さがよく分かるし、ケアも必要と考える。自分の妹は11 歳離れているので、小さい頃に離婚したため、自分よりも傷は深いと考える。お父さんに会いたいのになかなか言えずに涙をためている姿をみると、いつも離婚がなければな……と思う。一番近くにいる家族が出来ないことを、社会福祉士がどのように支援していくのか、疑問に思うことがあります。」
コメント4 「私も親の離婚を経験し、とてもさみしい思いをしました。小学生の頃に離婚して、名字もかわり、学校のみんなから「何で?」って質問攻めにあったり、教科書に書いてあった名前を全て修正ペンで消し、書き直して学校に持っていってました。その時は嫌だなと思う気持ちがあっても親には言えなかったし、誰にも相談せずに我慢するしかないと思っていました。結局、私たちはお母さんの希望で引っ越すことになりました。今考えると母もまわりの目をずいぶん気にしていたのかな?と思います。片親となった家庭を支援する制度はありますが、子供に関する支援を私はあまり耳にしたことがありません。誰にも相談できなかったり、ましてや両親からすてられてしまう子供の傷は深刻なものだと思います。」
コメント7 「自分の気持を押し殺すのは負担が多く、更に傷つくことも考えられる。……(中略)……私の友達で親が離婚した人は何人かいるが、現在でも年に数回は別れた父親と会っている子は、母親の話も父親の話も普通に話すし、どちらの親とも親戚とも仲が良いようだ。しかし、別れた親と会っていない子はその親の話は全くしない子しかいない。友達と関わる時にまで気をつかったり悩んだりするような部分があるほど、別れた親との交流には力があると考える。身の危険がある場合は対策も必要とするが、別れた親子の交流を促進する支援が求められる。」
【離婚家庭の子どもへの支援】 後編 アメリカ・オレゴン州の離婚支援制度(小田切紀子東京国際大学教授)
出典:平成24年12月21日 Child Research Net
【離婚家庭の子どもへの支援】 後編 アメリカ・オレゴン州の離婚支援制度 ― 離婚後の子育てを見据えた支援制度
アメリカでは1970年代以降、多くの州で父母の別居・離婚後も子どもが両親と頻繁かつ継続的な接触を維持できる共同監護を導入した。オレゴン州法では子どもがいる夫婦が離婚する場合、養育計画書の提出と親教育プログラムの受講を義務付け、さらに民間団体が離婚家庭の子どもへのプログラムを提供している。オレゴン州の離婚後の共同監護、共同養育を前提とした支援体制を紹介し、日本の離婚制度の課題について述べる。
※詳細は本文参照
【離婚家庭の子どもへの支援】 前編 日本の離婚家庭の現状(小田切紀子東京国際大学教授)
出典:平成24年12月14日 Child Research Net
【離婚家庭の子どもへの支援】 前編 日本の離婚家庭の現状 ― 子どもから見た親の離婚
離婚家庭の子どもへの調査から、親の離婚を経験した子どもは、社会的にも経済的にも不利な状況におかれ、離婚後も親のいさかいや対立関係が長引けば、子どもへの影響は深刻であることが明らかになった。しかし、離婚後の親の対応によって子どもへの影響は最小限に抑えることができる。日本では離婚後、単独親権のため別居親と子どもの交流が途絶えるケースが多いが、継続した面会交流が子どもの健全な成長に果たす役割は大きい。
※詳細は本文参照
面会交流の実施状況(平成23年度)
出典:平成24年9月7日 厚生労働省
平成23年度全国母子世帯等調査結果報告
平成23年度全国母子世帯等調査結果報告~面会交流の実施状況
面会交流の実施状況は、「現在も行っている」と回答した割合は、母子世帯の母では 27.7 %となっています。
面会交流の回数も月1~2回以内と世界の先進諸国と比較しても悲惨な結果となっています。
7割以上の子どもが一方の親に会っていない(会えていない)という結果で、親の愛情を受けられない子どもたちが増えています。
(実態調査)「面会交流及び子どもの変化に関する実態調査」報告書
【題名】
「面会交流及び子どもの変化に関する実態調査」報告書
【調査実施】
親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(略称:親子ネット)
【内容紹介】
親子の面会交流を実現する全国ネットワーク(略称:親子ネット)が、日本における離婚後の親子面会交流の実情と、その中での子どもの変化に関する実態調査を行い、報告書を発表しました。
現在日本で暮らす日本人が、別居や離婚すると、親子交流がどうなってしまっているのかに焦点をあてた調査が実施されました。
離婚率が 欧米諸国並みになっている現代では、家族という基盤を壊しかねない深刻な社会問題であるにも関わらず、これまで、こうした実態を示すデー タはほとんどなく、貴重な調査結果です。
調査結果及び報告書は、下記、親子ネットのホームページを参照ください。
http://oyakonet.org/questionaire
(学術論文)「面会交流の有無と自己肯定感/親和不全の関連について」
大正大学の青木聡教授が新しい論文、「面会交流の有無と自己肯定感/親和不全の関連について」を発表されました。
【題名】
「面会交流の有無と自己肯定感/親和不全の関連について」
【著者紹介】
青木聡(あおきあきら)大正大学 人間学部 臨床心理学科 教授
【内容紹介】
面会交流の有無が子どもに与える影響、家族の現況が子どもに「自己肯定感」、「親和不全」を与える影響などについて、実証データを用いて定量的に分析されています。
家族の現況、面会交流の有無が子どもにどのような影響を与えるか、日本ではこれまで定量的な分析がなかったため、家裁等において今後の面会交流のあり方の判断に大きく寄与するものと思われます。
論文の中で、家族の現況、面会交流の有無が子どもの「自己肯定感」、「親和不全」に与える影響について下記のように述べられています。
- 「親が離婚した家族」の子どもは「両親のそろっている家族」の子どもよりも、「自己肯定感」が低く、「親和不全」が高いことが明らかになった。
- 「面会交流なし」の子どもは「両親のそろっている家族」の子ども、そして「面会交流あり」の子どもよりも、「自己肯定感」が低いことが明らかになった。
- 「面会交流なし」の子どもは「両親のそろっている家族」の子どもよりも、「親和不全」が高いことが明らかになった。
「片親疎外」に関する最新情報 -AFCC第47回大会 参加報告
大正大学の青木聡教授が、「片親疎外」をメインテーマに開催されたAFCC(国際家庭裁判所/調停裁判所協会)第47回大会の参加報告として「片親疎外」に関する最新情報を大正大学研究紀要(pp.169-176)にまとめられましたので紹介します。
【題名】
(学術論文)「片親疎外」に関する最新情報 -AFCC(Association of Family and Conciliation Courts)第47回大会(2010/6/2-5)参加報告
【著者紹介】
青木聡(あおきあきら)大正大学 人間学部 臨床心理学科 教授
【内容紹介】
離婚後の単独親権制度を採用する日本において、高葛藤の離婚家族で起きる「片親疎外」1)が深刻な問題となっている。日本では「離婚は縁切り」とみなす伝統的家族観や「別居親は遠くからそっと見守るのが美徳」とする社会的通念が根強いためか、離婚後は「ひとり親」で子どもを育てていくというイメージが世間に定着していると言っても過言ではなく、文字通り「夫婦の別れが親子の別れ」になってしまう場合も多い。
離婚後だけでなく、高葛藤の別居にあたって一方的に子どもを連れ去り、もう片方の親と子どもの交流を断絶する「連れ去り別居」が頻発していることも深劾な問題である。
一方、欧米諸国では『児童の権利条約(児童の権利に関する条約)』(1990)の批准と前後して、離婚後の共同養育(共同監護・共同親権・共同親責任)制度が整備されている。子どもの健全な成長のために、両親は離婚後も「親子不分離の原則」(第9条第3項)や「共同親責任の原則」(第18条第1項)に則した共同養育の「義務」を負うのである。実は、日本も『児童の権利条約』は批准しており(日本の批准は1994年)、協議離婚の際に子どもと別居親の面会交流について定めることを提案する民法改正試案も公表されている(法務省、1994、1996)。しかし、いまだに民法改正に至っておらず、離婚後の共同養育制度の実現には程遠い現状と言わぎるを得ない。
現在の民法では面会交流に関する明文化された規定が存在しないため、離婚後ないし別居中の「片親疎外」は事実上野放しになっており、離婚紛争時の子どもの「奪い合い」は次第に熾烈化している(棚瀬、2010)。
実際、『司法統計年報』(2008)を参照すると、平成20年度の面会交流紛争の事件数は10年前と比較して3倍以上に急増しており(表1)、「片親疎外」への対策が喫緊の課題といえる。ところが日本では、専門家のあいだでも「片親疎外」の問題はほとんど知られていない。そこで本稿では、「片親疎外」を大会テーマとして行われたAFCC第47回大会での議論を報告し、「片親疎外」をめぐる最新の話題を紹介したい。
Ⅱ 大会の概要
AFCC(Association of Family and ConciliationCourts:国際家庭裁判所/調停裁判所協会)第47回大会“Traversi,g the Tral ofAhenation‐ RockyRelationships,ヽ4ountains of Emotion,Mile Highconnict"は、2010年6月2日(水)から5日(土)までの4日間の日程で、アメリカ・コロラド州デンバーのシェラトン・デンバー・ダウンタウン・ホテルで
盛大に開催された。大会には21ヵ国から約1,500名の離婚問題の専門家(裁判官、弁護士、調査官、心理士、児童福祉士、ペアレンティング・コーディネイター、ミディエイター、子どもの代理人など)が参加していた。参加者の大多数は欧米諸国から来ていたが、南米諸国やアジア諸国からの参加者も散見された(残念ながら、日本からの参加者は筆者だけであった)。特記すべきは、大会テーマが「片親疎外」であったため、「片親疎外」に詳しい世界的に著名な各国の研究者が勢ぞろいしていたことであろう。大会期間中の全体会4セッションと分科会80セッションのすべてが「片親疎外」に関する発表であり、2010年時点の「片親疎外」をめぐる最新の話題が網羅されていたといえる。本稿
では、そのうち大会実行委員会が主催した全体会4セッションの議論を報告する。
(以下略)
更新 2020-08-22 (土) 16:21:44
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