民法819条(単独親権制度)改正を求め共同親権・共同監護制度の導入・ハーグ条約締結の推進と活動を行っています

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海外では主流「共同親権」、日本の「単独親権」なにが問題か【棚村教授に聞く・下】

出典:平成29年5月28日 弁護士ドットコム

海外では主流「共同親権」、日本の「単独親権」なにが問題か【棚村教授に聞く・下】

いま、離婚と親子関係をめぐる法や制度の見直しに注目が集っています。日本では諸外国と比べ、離婚時に子どもの立場が尊重されない問題が指摘されていますが、子どもたちを守るためには、今後、法や制度をどのように見直していけばいいのでしょうか? 

上編(「世界の離婚事情…日本は『子どもに対する責任』が曖昧」https://www.bengo4.com/c_3/n_6138/)に続き、離婚と親子関係をめぐる法制度の問題に詳しい、早稲田大学法学学術院の棚村政行教授(家族法)に、話を聞きました。(編集&ライター・大塚玲子)

●「大人同士の争いの間に挟まれる」子どもたち
――海外で「共同親権」といわれるものは、両親ともに親としての責任があるというだけでなく、社会や国、地域にも子どもを守っていく責任がある、というのが共通認識なのですね。
はい、「子どもの権利に対応する親の責任、社会の責任、国の責任」という形で、法制度も大きく転換をしているわけです。
だから養育費や面会交流、子育ての支援を行う「家族関係支援センター」といったものも各地にありますし、面会交流の実施や養育費の取立ても社会として強化しています。そして共同で子育てできる人たちには、離婚した後も親として、結婚していた時にやっていたような役割をお子さんに対して果たしてもらおう、というふうになっている。
ところが相変わらず日本は、大人の権利が中心です。夫婦間の過去の恨みつらみ、みたいなものが噴出してくるので、お子さんは大人同士の争いの間に挟まれて、非常に苦しい状況に置かれたまま、放置されているわけです。
ただ、海外の取組みや考え方も、どうも日本では誤解をされているところがありますね。
別居親のほうは、「共同親権」や「面会交流」をやれば、すべての問題が解決するように思っていますし、一方で同居親のほうは、生活も苦しくて時間もないなか、あんな人と顔を合わせたくないから養育費ももらわなくていい、とあきらめてしまうとか、子どもの気持ちと関係なく「会わせる必要はない」と判断してしまうとか。
現状はそんなふうに、子どもをそっちのけに大人の争いに終始してしまっていて、お互いを傷つけ合うことに時間と精力が使われてしまっています。
でも本当は、離婚したあと生活が変わっていく中で、親と子の関係はどうあるべきかという、前向きな話し合いが必要です。お互いの信頼関係を回復するとか、最低限のコミュニケーションのベースを作るといった、もっと建設的な議論が必要なのに、そこにはなかなか目が向かないんですね。
●欧米は協議離婚を認めていない
――子どもたちにとっては、ものすごく迷惑な状況ですね。
子どもたちの本当の気持ちは「お互い、自分をめぐって争うことは、もうやめて欲しい」ということでしょうね。「もっと大人になってほしい」など(苦笑)、そんな思いでいる子どもたちが多いんじゃないでしょうか。
なにかというと別れた相手の悪口を言うのも、子どもを傷つけていきますよね。いくら良い夫・良い妻でなかったとしても、子どもにとってはお父さんお母さんであることに変わりないわけです。そういうことを含めて、子どもたちがいかに板挟みになって辛い状態にあるか、ということを知る必要があります。
海外では、離婚のときに親教育のガイダンスをする国もあります。「ちょっと待ってください、あなたたちがこんな風に争えば争うほど、子どもたちにこんな風に感じさせているんですよ」ということを専門の人がきちっと伝え、そのうえで親は子どもとどう関わっていけばいいかとか、親の意識を変えていくような働きかけをしている。
そういったプログラムやカウンセリングを受けて、きちっと取決めをしないと、離婚はできないことになっているんです。「親としての重い責任」という部分がありますから。
そもそも欧米の国々は、協議離婚を認めず、全部裁判離婚です。お子さんもいなくて、財産争いもない人たちは、簡単に離婚できますけれど、お子さんがいる場合には、きちっとお子さんのためになる取決めをして、養育プランのようなものをつくらないと離婚できないことになっています。そこはやっぱり、日本と大きく違いますよね。
●「親子断絶防止法案」にかけているもの
――日本では子どもがいても、すぐ離婚できますね。
日本は9割弱くらいが協議離婚ですからね。離婚届に当人たちが署名をして、未成年の子がいる場合は「親権者は誰」ということさえ書けば、簡単に受理されてしまいます。「世界でいちばん簡単な離婚」ですけれど、「世界でいちばん無責任な離婚」でもあります(苦笑)。
いま、離婚のうち未成年のお子さんがいるものは約6割です。2015年でいうと、離婚件数が226,000件で、その58%くらいに未成年のお子さんがいて、約22、23万人のお子さんたちが親の離婚に巻き込まれています。
そのなかで、養育費や面会交流について取り決めをしている割合は、法務省の数字(離婚届のチェック欄)で見ると62%くらいです(2015年)。民法改正後、比率は上がっていますが、そこでどんな内容が取り決められ、どれぐらい守られているか、ということまではわかりません。「全国母子世帯等調査」(最新が2012年)だと、すごく低い状況ですよね。
だからやはり、もう少し公的な機関が関与して、どんな取決めをしたらいいか、どういう風に取決めを守ったらいいか、といったことを支援していく必要があると思うんです。
そういう意味では、「親子断絶防止法案」(超党派の国会議員らによる議員立法)は、国や自治体、親にも責任を課し、また財政的な措置も一応定めていますから、それ自体に全く反対、というわけではないんです。ただ、面会交流などにちょっと偏っているところがあるので、もう少しバランスを取る必要があるでしょうね。
――親子断絶防止法案は、よく「全ての離婚家庭に面会交流を強制するものだ」といわれますね。最初の非公開の案は知りませんが、その後の修正案はいわゆる「理念法」です。でも原文を自分の目で確認せず「強制的だ」という話を鵜呑みにしている人が多いので、そこは誤解を解く必要があるのではないかと思います。とはいえやはり、もっと内容のバランスをとれるとよいですね。
そうですね。監護親、同居親に義務を課していたり、継続的な関係だけが非常に重視されているところがあるので、もっとお子さんの養育全体をトータルに支援をする、というスタンスが大事なのかなと思います。

世界の離婚事情…日本は「子どもに対する責任」が曖昧【棚村教授に聞く・上】

出典:平成29年5月28日 弁護士ドットコム

世界の離婚事情…日本は「子どもに対する責任」が曖昧【棚村教授に聞く・上】

離婚後の親子関係をめぐる法や制度の見直しに注目が集まっています。 とくに日本では、諸外国と比べ、離婚時に子どもの立場が尊重されないことが指摘されています。親が離婚する家庭の子どもたちを守るためには、今後、法や制度をどのように修正していけばいいのでしょうか? 

離婚と親子関係をめぐる法制度の問題に詳しい、早稲田大学法学学術院の棚村政行教授(家族法)に、お話を聞きました。(編集&ライター・大塚玲子)

●日本は「単独親権」の原則
――いま、離婚と親子関係に関する日本の法制度は、どのようになっているんでしょうか?
日本の場合にはまず、離婚後に「単独親権の原則」というものをとっています(民法819条1項)。つまり、未成年のお子さんがいて離婚する場合には、父母のいずれか一方を親権者に決めなければなりません。だから、離婚後「どちらが親権者になるか」ということで、争いが生じやすい状況があるわけですね。
それから、一方が親権者になったのち、他方(離別居親)がお子さんと自由に交流ができるかというと、それも十分ではありません。
仲が悪くて別れるので、自分たちで話し合いをして面会交流の調整をできるケースは、たぶん3分の1程度しかないんじゃないかと思うんですね。そうすると、父母が顔を合わせなくてもお子さんが別居親と交流できるよう、誰かが間に入るような仕組みや支援体制が必要なんですけれど、そこがまだ十分でない。
——海外では、どのように定められているのでしょう?
海外は「共同の親権」や「共同の子育て」がベースです離婚した後も原則、結婚しているときと同様に、父母が共同で子育てをして、子どもとかかわっていきます。また、離婚した後、親子関係のルールをどういう内容で決めていくか、ということについて細かく規定があるわけです。
そこには、1970年代末から80年代にかけて国連で提案、採択された「子ども(児童)の権利条約」が影響しています。この条約は「大人とは別に子どもの人権というものがあり、子ども自身が権利の主体・主役として大事にされなければいけない」ということを、さまざまな形で定めたものです。いま196か国ぐらいが批准、加入していて、日本も1994年に批准しているんですけれど。
夫婦は別れれば他人に戻りますが、子どもにとってはお父さんお母さんであることに変わりない。だから共同で子育てをしていこう、ということになるわけです。ただし共同での子育てが難しい場合には、一方が単独で責任を負うような形もあります。
●日本は「親の子どもに対する責任」が極めて曖昧
――日本では子どものことより、別れた夫婦の争いばかりが目立ちますね。
日本では「親権」や「監護権」というものが、「お子さんに対して親が持っている権利」というふうに理解されているんですね。それは「大人の視点」です。家制度のもとでできた民法なので、構造や仕組み全体が「大人の子どもに対する支配権」になってしまっているので。
だから紛争解決の場面でも「大人の勝ち負け」みたいなことになってしまい、子どもの存在や立場、気持ちというものが、十分に尊重されないのです。
海外でいうところの「共同親権」はそういうものではなく、「共同の親責任」といったほうが近いでしょう。ドイツでは「親の配慮」とか「共同の配慮」という言い方ですし、イギリスも「ペアレンタル・リスポンシビリティー=親の責任」というふうに言っています。
日本は、養育費や子どもとの交流(面会交流)など、「親の子どもに対する責任」という部分のルールが、極めて曖昧です。そういう中でお子さんへの責任を果たすことは、困難なところがあります。
たとえば厚生労働省が5年に1度行っている「全国母子世帯等調査」(父子家庭も含むひとり親世帯対象)によると、離別親が子どもと会えているのは、母子家庭で28%ぐらい、父子家庭でも37%ぐらいで、養育費を受け取っている母子家庭は19.7%と、2割にも満たない状況です(2012年)。
その背景には「協議離婚制度」の問題もあります。離婚のとき父母は、今後お子さんとの交流をどうするか、学校はどうするのがいいか、病気になったらどうするとか、生活していくうえで出てくるいろいろな問題について、しっかりと話し合っておく必要があるのに、それがないまま「協議離婚」という形で、かなり無責任に別れていってしまいます。
子どもにとって親の離婚は、これまであった環境が、大きく悪い方向に変わっていく可能性があることです。貧困や格差にもつながりやすく、それをなんとかしていかなければいけないから、「子どもの養育」ということを、社会や国が本気で、総合的に支援していく必要があるのです。
その点、海外の法律は「子どもの権利」というものを中心として、大人にはむしろ重い責任を定めています。シングル(非婚)親も含め、「多様な家族」に対する社会的な支援があって、子どもたちを保護するための法や支援の仕組みもできているわけですよね。
そういったことが「共同親権」とか「共同監護」というふうに言われるんですけれども、理念としては、子どもの最善の利益や子供の権利を実現するための「共同養育責任」と言えます。

離婚後の子の養育 支援不十分

出典:平成29年5月26日 読売新聞

論点「離婚後の子の養育 支援不十分」

 2015年の離婚件数は22万6000件であり、その約6割に未成年の子がいて、20万人以上の子どもたちが親の離婚に巻き込まれている。面会交流を求める調停事件は、15年には1万2000件と、この10年間で2・4倍にも増えた。 少子化が進むととに子どもがかかがえのない存在となっている。しかし、民法は離婚後、いずれか一方だけしか親権者になれないという単独親権の原則を定めているため、親権をめぐって紛争になりやすい。争いが起こると、結局、しわよせが全部、子どもにいってしまう。
 離婚時に面会交流や養育費の取り決めを行う規定も、12年に民法に明文化されたばかり。厚生労働省の調査結果でも、面会交流が行われているのは離婚後の親子の約27~37%、養育費を受け取っているのは2割に満たないという実情だ。
 離れて暮らす親子の面会交流には様々な問題が起こる。とくに子は、同居する親に配慮し、心に葛藤を抱きがちだ。面会交流に送り出す親にも、「連れ去られるのではないか」「危害を加えられるのではないか」と不安がよぎる。
 第3者が付き添う安全な場所、専門家が親子の相談に乗る体制などが必要だ。すでに、一部でNPOなどの活動がはじまっているが、こうした支援体制が十分でないため、父母間で紛争のエスカレートを招きやすい状態にある。
 17年1月、東京高裁は、9歳になる長女の親権者をめぐる争いで、母親に親権を認めた。
 1審では、子どもを無断で連れ去り、面会交流も年12回程度しか認めない母親よりも、年100回以上の面会交流と共同養育計画を提案する父親の方が親権者にふさわしいと判断していた。
 東京高裁判決は子どもの利益の観点から1審判決を覆したもので、大きく報道された。親権についての関心の高さと判断の難しさを改めて印象づけた。
 離婚後の親子の面会交流や継続的な関係を維持できるよう「親子関係維持促進法案」も超党派の議員立法として提案されようとしている。これに対しては、児童虐待、女性への家庭内暴力(DV)などがある事案への配慮に欠けているのではないか、との批判がある。
 世界的な潮流としては、「子の権利」を重視し、離婚後の「親の共同養育責任」に向けて法や支援制度の整備を進める国が増えている。離婚後の子の養育は、「大人の勝ち負け」ではなく「子どもの幸せや利益」を第一条件として考えていくという理念だ。子どもの権利として、面会交流を促進するし、養育費も取り立てる。子どもの心を傷つけないための親への教育プログラムなども実施している。
 日本でも、「子どもの養育支援基本法(仮称)」などを定め、離婚だけでなく、ひとり親を含めた子育てをする親や子どものために、国や自治体が支援の責任を果たしていくべきだ。そのうえで、面会交流や養育費など子どもの養育に関する合意形成、実現に向け、早急に取り組むべきであろう。

社会の見方・私の視点 を聴く「離婚後の親子の面会交流の重要性」

出典:平成29年5月25日 NHKマイあさラジオ

社会の見方・私の視点 を聴く「離婚後の親子の面会交流の重要性」

※音声は、こちらからお聞きできます。

大正大学心理社会学部 青木 聡 教授

社会の見方わたしの視点です。今朝のテーマは離婚後の親子の面会交流の重要性について、お話は大正大学心理社会学部教授の青木聡さんです。

今、超党派の議員連盟の間で、親子断絶防止法という法律を制定しようという動きが出てきています。

両親が離婚した後、子どもはどちらかの親と暮らすことになる訳なんですが、一緒に暮らさない親、離れて暮らしている方の親と子どもが、もっと面会したり交流したりすることを促そうという法律です。

先週は法整備を進める上での課題などについて考えてきましたが、今朝は心理学の立場から子どもの成育のために必要なことなどについて伺っていきます。

青木さん、あの、離婚したあと両親が子どもとどのように関わっていくかは子どもの成育に大きな影響を与えるそうですね。

はい、その通りです。アメリカでは1960年代から70年代にかけて離婚件数が急激に増えました。その頃から心理学の分野において膨大な数の離婚研究が行われています。その結果、離婚後の生活によく適応し、心理状態が良好な子どもは定期的な面会交流と必要十分な養育費が保護要因になっているということが実証されています。

また、離婚そのものよりも父母の衝突に晒されることが危険要因であるということが分かっています。

養育費が十分でない場合は、最近日本でも話題になっていますので生活が貧困に陥って、さまざまな困難が生じるということが理解しやすいと思います。

はい。他方、面会交流を定期的に実施しなかった場合、どうなるかというと、大きく分けて3つの結果が出ています。

一つ目は自己肯定感の低下です。自己肯定感というのは、自分に対して肯定的で好ましく思えるような自信ある態度や意識のことですが、この感覚が低いと、ひっこみ思案になって、人生に前向きに取り組めなくなります。

二つ目な基本的信頼感の低下です。基本的信頼感というのは人を信頼する力のことですが、この感覚が低いと、人間関係を築くことが苦手になります。その結果、3つ目として、社会への不適応の問題が生じます。学業成績の不振や友人関係の問題にはじまって、不登校、無気力、ひきこもり、学校中退、職場不適応、転職の繰り返し、無職、よく鬱症状、ドラッグ、アルコール依存症の割合が多くなったり、さらには世代間連鎖として、親と同じように離婚してしまう傾向が高くなることなどが報告されています。

日本でも青木さんは同じような研究をなさったんですよね。

はい。日本でも同じような傾向が見られました。別居している親と面会交流していない子どもは自己肯定感が低くなり、親和不全が高くなるという結果です。あの、親和不全というのは人とやりとりをする場合に自分の方から壁をつくって緊張して打ち解けられなかったり、深くつき合うことを恐れたりする傾向をいいます。

一方で別居している親と面会交流を続けている子どもは、両親の揃っている子どもと比較しても自己肯定感や親和不全に差がないということも明らかになりました。つまり、離婚したあと別居している親と定期的に面会交流することは基本的には子どもの成長にとって、大変重要なことだと言えると思います。

アメリカではこうした研究をふまえて、どちらの親が子どもと主に同居するかを決める時には、元夫婦としての葛藤とは切り離して、別居している親との面会交流に協力できるのか、子どもに別居している親のことを肯定的に伝えることができるのか、ということを子どもと主に同居する親を決める判断基準にしている州が多くなっています。

また、アメリカ司法省には女性に対する暴力への対策局という部署があるのですが、別居している親と子どもの関係を妨げることは情緒的虐待と明確に位置付けています。面会交流の支援は、虐待対策としての意味合いも持っている訳です。

なぜ、面会交流をするかどうかで子どもの心の成長にそこまで差が出てしまうんでしょうか?

はい。子どもは「私」というストーリーを紡ぎながら成長していきます。心理学的にいうと、「私」というのは「ストーリー」なのです。え、子どもは生活の範囲がまだ狭いので、ストーリーの大部分は家族との関連で展開します。お父さんに愛されている私、お母さんに愛されている私というふうに、まずは家族との関わりの中で私はこういうこういう人っていうアイデンティティーが作られていきます。

ところが、親が離婚してその訳も分からないまま、いきなり片方の親に会えないという状況になると、親の離婚の理由や会えない親がどうしているか、気になってしまいます。で、親に会えない喪失感の中で、なぜ親は離婚したのか、別居している親に自分はどう思われているのか、そもそも自分は生まれてきてよかったのか、と、さまざまな気持ちが渦巻くのですね。で、とりわけ年齢の小さい子どもは自分のせいで離婚したのではないか、自分が何か悪いことをしたからではないか、と自分中心に意味づけることがよく知られています。で、そのような意味づけは自己否定感にもつながってしまいます。

死別の場合は話は別です。親と死別すると、すごくつらいですし、深い悲しみに覆われますが、つらい物語としてストーリーを紡いでいける訳です。しかし、会えるのに会えない親の存在は、もやもや感が子どもの心にずっとわだかまっている状況になります。納得できる理由なく、片方の親に会えないと、両親の離婚をめぐって、私というストーリーをうまく紡げなくなるのです。

「私」の中に黒塗りになっている歴史があるような感覚になるのだと思います。しかもその黒塗りの部分に自分の人生が大きく翻弄されているという状況に置かれる訳です。

なるほど。つまり、両親の存在というのが、子どもの成育に関しては絶対といっていいほどの存在感があるということなんですね。

非常に大きい存在感ですね。

ただ、その素行に非常に問題があるような親であったとしても会うことの意味というのはあるのでしょうか?

はい。まあ虐待とかDVなどで、子どもの心身に危害が及ぶ可能性が高い場合は子どもの安全を守る為に会わせるべきではありません。しかし、そうでなければどんなにダメな親であっても、やはり会うことは大事だと思います。子どもが実際に親と会って、自分の目で見て、自分の肌で感じて、自分自信でその親についてのストーリーを紡いでいく必要があるからです。で、実際に会ってみて、どうしようもない親だっていう苦しいストーリーを抱えなければいけなくなったとしても黒塗りのままモヤモヤしているよりずっとマシな訳です。心の成長の個人差はありますが、一般的には中学生以上の子どもには会うタイミングや会い方を含めて自分で判断させた方が良いだろうとされています。

小学生以上の場合は周囲の大人がきちんと親に会えるように調整し、なぜ離婚したのか、今後どのように会っていくのか、などを説明してあげる方がよいとされています。で、乳幼児期に関しては専門家の間でも意見が分かれています。ただでさえ大変な子育ての最中に、面会交流によって同居している親の精神的負担感が増えると、子どもにマイナスの影響を与えるという説と、乳幼児期こそ、別居している親としっかりした環境を築くことがその後の子どもの心の成長を促すという説があります。

なるほど。

最近ではあの、乳幼児期からしっかりした愛着関係を築くことが重視されて宿泊の面会交流を含めてかなり頻繁な面会交流を取り決めるということが推奨されるようになってきました。それは、別居している親にとっても、親になっていくプロセスとして欠かせないと考えられています。

先ほどお話がでましたけれど、えー、暴力、いわゆるDV、家庭内暴力があった場合の対応なんですが、今年に入っても、面会交流中に元夫が元妻を殺害したり、父親が子どもと無理心中をはかったりした事件がありました。なぜ、こうした事件が起こってしまうのでしょうか?

やはり、欧米諸国と比較して、日本は離婚紛争におけるDV対策が立ち遅れているということが原因のひとつだと思います。アメリカだと、DV案件の場合、裁判所命令で、DVスクリーニングが徹底的に行われます。専門のソーシャルワーカーがいわゆる民生委員のような形で数ヶ月にわたって家族をフォローして評価していきます。で、その結果、DVで子どもの心身に危害が及ぶ可能性が高いというふうに判断されると、その程度に応じて、面会交流を一時禁止したり、あるいは厳しく制限したりします。そして加害者に対する治療的な親教育の受講とか、例えばドラッグやアルコール依存症の治療などを命じたりもします。また、監督付き面会交流といって、子どもの安全を守るために、第三者が付き沿う面会交流に制限する場合もあります。あの、日本でまだそういった制度が整理されていませんので、まあ今後、早急に全国規模で面会交流を支援する体制づくりが必要だと考えます。

で、子どもが離れて暮らす親と会えないことが多いという現実に法律や制度が対応できていない現在の状況については、一刻も早い改善が望まれます。

親子断絶防止法に関する木村草太氏のコメントに対する批判

出典:平成29年5月18日 土井法律事務所ブログ

親子断絶防止法に関する木村草太氏のコメントに対する批判

平成29年5月17日に、「親子断絶防止法の課題」と題したYouTubeがネット上に拡散されていました。NHKラジオの、社会の見方私の視点という番組の音声データのようです。

時間も限られていたことは理解できるのですが、おそらく法学者としてコメントを求められたのだと思います。この意見が法律家の意見だとされてしまうことは、問題が大きすぎると思いました。

古くからの友人にも説明をすることを要請されましたので、あまり気が進まなかったのですが、忘備録を記しておきます。

1 視点が大人の利益しかないこと

 面会交流は、子どもの健全な成長のために行うものです。確かに、子どもと別居している親が子どもに会いたいことは当然です。しかし、法律は、子どもの健全な成長のために面会交流を拡充しようとしているのです。

 そして、これは、かけがえのない親だからという抽象的な俗論ではなく、20世紀後半からの世界的な実証研究によって、離婚の子どもに与える影響が深刻であり、健全な成長を阻害するという研究結果に基づいた科学的な結論なのです。

 25年間以上にわたり60組の離婚家庭を調査したウォーラーシュタイン博士らの研究や大規模統計調査のアメイトの研究結果の報告等離婚後の子どもの心理的問題、そして、面会交流がその負担を軽減するという実証的研究結果が報告されました

 その結果を踏まえて日本の民放も改正され、子どもの健全な成長のために面会交流を促進する一つの方法として離婚届に面会交流の方法を記載することを要求するようになったのです。

 現在、裁判所も法務省も面会交流の促進をしているところです。

2 面会交流を危険視するのは科学的ではない

 次に面会交流を危険視することに対して疑問があります。

 木村氏は、今年1月に起きた長崎の事件と4月に起きた兵庫県の事件を危険の裏付けだとしています。

 これはきわめて乱暴なことでして、例えば、夜の酒場の口論から殺人事件につながった事件が多くありますが、そうだとすると、夜に酒場を営業することを禁止するような議論ではないでしょうか。

 要するに、本当に危険なのは面会交流ではなく、殺人に至る人間関係にあります。

 これはついこの間書きましたので、繰り返しません。
 
 「危険なのは面会交流ではなく、別居、離婚の仕方 先ず相互理解を試みることが円満離婚の早道」

 刑事弁護を担当する法律実務家からすれば、あまりにも当然のことです。

 なお、木村氏の論法で法律実務家からすると驚いてしまうことは、上記二つの事件について、新聞報道くらいしか知らないで発言しているということです。
 長崎の事件については、犯人が特定されたとどうやって断定するのでしょうか。

 要するに、仮にその報道が正しく、離婚した夫が犯人だとしても、面会交流の機会で起きたという情報しかないのです。
  
 殺人を犯すまで、精神的に圧迫されている場合、その精神圧迫に至る様々な要因があります。犯人の性格や考え方もあるでしょうが、被害者や第三者との関係、別離に至った原因と、方法等人が人を殺すということは簡単なことではありません。
  
 それを面会交流の時人が殺されたからといって面会交流が危険だというのは学者としての意見というのはお粗末すぎます。人間の営みに対しての敬虔な態度が欠けていると思います。

 また、彼が、このようなことを言わなければ面会交流が進んだのに過度の警戒感を持ってしまって子どもが親に会えない事態が生まれるのではないかという心配もあります。

 ちなみに、子どもに対する虐待死について父親よりも母親の方が多いことについても先ほど紹介したブログ記事の一番後ろの方に政府統計を示しています。

 また、面会交流中に暴力や虐待がしばしばあるという聞き捨てならないことも言っていましたが、統計資料などがあるなら示すべきでしょう。おそらく日本の統計資料もないままに言っているのではないかと私は疑っています。

3 同居親が自己の感情を抜きに行動しているとする点

 聞いていて開いた口が塞がらなかったのは、同居親は、子どものことを第1に考えてふるまっている。同居親が別居親に会わせたくないと言っているならば、面会交流をさせないまっとうな理由があるからだという発言です。
 これはひどい。さすがに、某私立大の教授だってここまでは言いません。こういうのを法律用語で畢竟独自(ひっきょうどくじ)の見解だというところです。

 そういうケースもまれにあるのかもしれませんが、大体は会わせることに抵抗がある会わせなければならないのはわかっているが、相手方と顔をあわせるのが嫌でどうしても具体的に約束できないということが多いと思います。
 嫌がらせで会わせないというケースよりもこういうケースが多いと私は理解しています。

 そして、それも人間なのである程度やむを得ないところがあるから、何とかそのような葛藤を鎮める方法を編み出しながら具体的な面会交流を進めているのです。

 木村氏が法律学者として発言しているならば自説に対する根拠を述べるべきです。

 何も根拠がなく、子どもたちが親に会う可能性を阻害する発言を法学者として無邪気にすることは許されることではないと思います。

 家事実務を知らないなら発言を慎むべきですし、根拠のないことは言うべきでもありません。 

4 古典的な20世紀の議論にとどまっている点

 木村氏は、面会交流の実施は同居親に心理的負担をかける、同居親に心理的負担がかかると子どもにとってもよくない、だから面会交流を努力義務でもすることはできない、子どもに強要することもできないという二つのことをいっぺんに話しているようです。

 これは、20世紀のゴールドシュミットやアンナ・フロイトの主張で、ああ、よく勉強しているなとは思います。但し残念なことに子どもの発達心理学は長足の進歩を遂げており、現代においては、定年間際の家裁の調査官くらいしか支持していない学説です。
  
 この理論は、既に心理学会でも家裁のまっとうな調査官の間でも採用されてはいません。採用されていない理由は、裏付けがないということです。科学的ではないからだということになります。  

 彼らも確かに面会交流には賛成だが、同居親の葛藤が鎮まったら面会交流をすればよいと主張します。

 しかし、その後の調査によると離婚後の相手方に対する葛藤は多くのケースでつきものであり、25年を経ても続くことが多いことがわかっています。人間ですから仕方のないこともあると思います。

 葛藤が鎮まるころには、どうしても、子どもは成人に達してしまっています。

 実質的に面会交流を否定する議論であることは理解できることだと思います。

 このような根拠のない面会交流制限から子どもたちの離婚の負の影響を軽減しようという科学者たちの様々な調査によって、現代では面会交流が進められるようになっているというのが、法律的見解として述べられなければならないのです。

 実務に携わる法律家は、調査官の方々のたゆまぬ調査研究を学んで自分の主張をしているのでして、ちょっと調べればわかることを調べないでわかったふりをしているというのが木村草太氏の発言だと感じるわけです。

 もし、木村氏が、このような科学の発展を踏まえてもなお、ゴールドシュミットらの見解を支持するというのであれば、すでに誰も支持していない説であるけれど特異な理由があって支持するということを述べるべきです。それが述べられていない以上議論の経過について知らないで発言していると評価するしかありません。

5 家庭裁判所に対する勝手な批判

 木村氏は、わずかの時間の中で様々なことを言っています。その中の一つとして、この時の木村氏の発言を象徴するような見解が述べられています。

 それは、本来面会交流がなされるべきではないが裁判所の人員不足で、DVや虐待を見抜けないために面会交流を認めてしまっている事例が多いようなことを言っていることです。

 人員不足が原因ということはどういうことでしょうか。よくわかりません。NHKで、民法のテレビ番組にも出ている学者がそのようなことを言えばみんな信じてしまう危険があります。

 よくわからない大学の教授がインターネットでつぶやいているのとはわけが違います。

 法律家が裁判所批判をする場合は、まさにそれが法律家の仕事ですからそれこそ豊富なエビデンスを示しながら行うものです。

 何も資料がなく決めつけで裁判所を批判しているのであれば、それは法学者を名乗るべきではないでしょう。

 どのケースでDVや虐待があったのに裁判所が面会交流を認めたのでしょうか。それがどれくらいの頻度があるのでしょうか。法学者として見解を述べるならばそれを明らかにするべきです。

 どちらかというと、DVや虐待が無いにもかかわらず面会交流が認められず手紙やメールのやり取りだけを強いられているというケースが実務的な実感としては多いのです。

 彼の議論の特徴はここにあります。

 私人である父親と母親の権利の調整をする場合、どちらかの意見に偏って判断することは大変危険です。

 DVや虐待が「あった」ということは大変難しいことですし、それぞれの立場によって違うということも大いにあります。そもそも日本の法律のDV概念が極めて曖昧かつ広範です。

 そういう場合でも面会交流が有効であることはランディバンクラフトの引用で何度かこのブログでも紹介しているところです。

 要するに、複雑な人間の感情を一切捨象して一方の見方だけを肯定し、他方の見方を否定してしまっては、私人間の紛争調整はできません。

6 同居親の児童虐待は国家権力の強制力によって解決するべきだという点
 
 さすが見かねたアナウンサーがいろいろ突っ込みを入れるのですが、他説を考慮しない彼の発言は意に介さないで続きます。あるいは争点があることを理解しないのかもしれません。

 アナウンサーが同居親からの児童虐待があるケースを考慮した方が良いということに対して、そのようなケースは虐待防止法や監護権の変更で対処するべきだと発言しています。まさに国家権力万能論です。
  
 面会交流が月に2回でもあれば、子どもの様子が変わったことはすぐ気が付くでしょうし、宿泊付きの面会交流があれば痣やたばこのやけどなどにも気が付くでしょう。

 そもそも、相手親に会わせることを考えれば虐待などできない心理的な担保になると思います。

 子どもも、いざとなれば別居親に逃げればよいという逃げ道を意識することができれば虐待を告発することもできるでしょう。

 虐待は、世間からわからないようになされています。法律的制度があったところで少なくならないということから法律的制度があればそれでよいということは児童の権利に対する、あまりにも無理解ではないでしょうか。

 また、そんなに簡単に保護を受けたりましてや親権変更にが実現できるというような実務的感覚はありません。これに対して子どもの親が定期的にわが子に接することの方がまっとうな解決であるし、あるべき姿だと私は思います。

7 面会施設について
  
 面会施設を作り、無償で提供するべきだということも言っています。この結論自体は賛成です。

 しかし、この人、親を見張りながら面会をさせる施設が必要だとか監視が必要だとそういう言い方をラジオでしているのです。

 一緒に暮らしていた自分の子どもが親と会うのですよ。人間の感情を傷つけることを厭わない人が法学者として語ることに抵抗を覚えます。

 結局、全件原則DV虐待事案として扱えという主張のように感じられます。

 施設が必要であることは家事調整センター企画書で述べていますが、万人が犯罪者で国家権力の強制力に服すべきだという観点からの議論ではなく、現実の人間の弱さを前提としてどうやって、大人の都合で子どもに与える負の影響を軽減するか無駄な大人同士の対立を鎮めてみんなが苦しみを少しでも和らげるという観点で述べています。

 ああそうかとここまで書いて気が付きました。彼の話は冷たいのです。

 それは別居親に対してだけ冷たいのではなく同居親に対しても自分の感情を持つことが許されず、子ども最善の利益で動かなければならないという人間像を前提とした議論になっているような冷酷さを感じます。

 どうしてNHKは彼に発言をさせたのでしょうか。それが一番の疑問かもしれません。彼の議論が法学者としての一般的な見解だと誤解を与えることはどうしても避けたいところです。

 その次の週は、家族問題に取り組んでいらっしゃる青木先生がお話しするようです。問題点に対する研究の歴然とした差が聞き比べると容易にわかることだと思います。

元夫が娘と面会中に無理心中「ごめんな。行かせてごめんな」母親が涙の告白

出典:平成29年5月17日 週刊女性

元夫が娘と面会中に無理心中「ごめんな。行かせてごめんな」母親が涙の告白

「今はまだ、娘が近くにいるような感じがするんです。だから、まだ本当に寂しいという気持ちが湧かなくって」

 娘の遺影と遺骨を前に母親の中村明子さん(仮名)は、大切な娘(当時4)が殺されたショックを、まだ実感できない。

 殺したのは父親。中村さんの元夫だ。

 4月23日、月に1度の面会交流の日の夜、兵庫県伊丹市のマンションの一室で、娘は命を奪われた。娘の首にはネクタイが巻かれ、元夫はネクタイで首をつっていた……無理心中だった。

 元夫は昨年11月、自暴自棄になり自ら離婚届を提出。その後、寂しくなったのか復縁を申し入れてきたという。

「借金はする、酒は飲む、暴言を吐く、部屋を荒らす、浮気をする。もう限界で、あのストレスの日々に戻ることは無理でした。弁護士を立て離婚調停を始めました」

 調停中だったが、昨年12月、今年1月2月と、中村さんは娘を父親に会わせている。

「本当に空気が読める子で、元夫に会って帰ってきたとき“パパ、謝ってたよ。許してあげーや”って私に言うんです。私はもう会いたくなかったので“近くだからまたすぐ会えるからなぁ。おもちゃもこっちに全部あるで”なんてごまかして……」

 必死に両親の仲をとりもとうとする娘の健気さが、その言葉からは読み取れる。

 4月に離婚調停が終わり、月1回の面会交流が決定。元夫が娘に手をかけたのは、その1回目の面会日だった。

「朝10時に、うれしそうに出かけていった娘を見たのが最後です。面会交流終了時間は午後5時だったんですが、何の連絡もなくて、午後7時ごろに警察に連絡をしました。午後9時過ぎ、元夫の兄と警察官がベランダから窓を割って部屋に入ったところ、2人が倒れていたそうです」
 後日、警察に見せてもらったマンションの防犯カメラには、うれしそうな娘の姿が残されていたという。

「映画を見て、おもちゃを買って、最後にちゃんと父親したかったんでしょうね。娘まで勝手に連れていって、最後の最後まで自己中で……」

 娘を行かせなければよかった。そんな思いはないのか。中村さんは、

「娘の遺体と対面したときは、“ごめんな。行かせてごめんな”と後悔ばかりでしたが、結局いつかは起こっていたんじゃないかと思います。弁護士さんからも“連れ去りは大丈夫ですか”と第三者が立ち会う施設の利用なんかもすすめられていましたけど、まさか自分の娘に手をかけるなんて思いもしませんでした」

 そして、今回の事件の原因についてふれる。

「彼の弱さが起こしたものだと思っています。養育費も払えないように仕事も辞めていたみたいで、私を困らせてやろうという気持ちがあったんだと思います。それと、やっぱり帰り際、子どもが可愛くなったのかもしれませんね」

 実の娘を亡くした今だからこそ、中村さんは思うところがあるという。

「子どもが会いたいと言うのなら父親には会わせるつもりでしたし、その気持ちを酌むのが親の役割。子どもに会えないのは寂しいでしょうし、子どもにとっても面会交流は必要です。私がお話をすることで、2度と同じような事件が起きないように、何かが変わればと思っています」

 児童心理学の専門家で東京国際大学の小田切紀子教授は、

「問題が起こるかもしれない。連れ去られるかもしれない。そういった場合には、家庭問題情報センター(以下、FPIC)のような第三者が立ち会っての面会交流も可能です。なにより何のために行っているのか。父母がしっかり理解することが大切です」

『親子の面会交流を実現する全国ネットワーク』略称『親子ネット』によれば、毎年約24万組の離婚が成立しているが、子どもとの面会交流ができていない親は7割、毎年約16万人の子どもが別居親との関係を断絶させられているという。夫婦は離婚すれば他人だが、子どもにとっては父親も母親も変わらぬ親。小田切教授は、

「だからこそ、夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えてほしい」

 と話し、さらに続ける。

「子どもにとって離婚は、青天の霹靂。妻と夫の関係を終えたとしても、父と母という役割から、子どもの負担をどうしたら減らせるか、子どもをいちばんに考えてほしい」

 とはいえ、お互いにいがみ合っている夫婦は、不寛容の感情が先走る。その結果、別居親が子どもに会えないケースが続出しているーー。

夫が語るリアルDV被害「お前が追い込んだ! 一生後悔しろ!」と殴り書きの遺書

出典:平成29年5月18日 週刊女性

夫が語るリアルDV被害「お前が追い込んだ! 一生後悔しろ!」と殴り書きの遺書

「今はまだ、娘が近くにいるような感じがするんです。だから、まだ本当に寂しいという気持ちが湧かなくって」

「毎日毎日、仕事してテレビ見る時間もないんだよ、洗濯だってしなきゃいけない、食器だって手洗いしないといけない。いい加減にしてよ。お前は結局マザコン野郎なんだよ」

「うるせぇ、本当にムカつくんだよ、この野郎」

 泥酔した妻が、空になったワインのボトルを夫に投げつけながら、そうなじる。エンジニアの山田良太さん(仮名・40代)が味わった、家庭内DVのリアルな修羅場だ。

 夫婦ゲンカは犬も食わない。そう言われていたのは遠い昔のおとぎ話。近年、夫婦ゲンカがDVと呼ばれるようになり、社会問題化した。

 警察庁の発表によると、昨年1年間に全国の警察が受け付けたDVの相談件数は6万9908件。そのうち事件として検挙された件数は8387件。いずれも過去最多となった。

 女性の被害者が全体の約8割を占めるが、男性からの相談が増加しているのも最近の傾向だ。昨年は初めて男性の相談件数が1万件を超えた。

 デートDVなどの防止啓発活動に取り組むNPO法人エンパワメントかながわの阿部真紀理事長はDVの類型を、

「身体的暴力、行動の制限、精神的暴力、経済的暴力、性的暴力の5つに分類されます」と説明したうえで、DVが深刻化する様子を次のように話す。

「なぜ、約束を守れない、お前が悪い、と最初は機嫌が悪かっただけのものが、徐々にエスカレートして、暴言や暴力へ発展します」

 そして、被害者が女性でも男性でもDVとしての構造は同じだと説明を加え、深刻化する理由について、

「暴力や暴言の後、加害者は被害者に“もうしない”“ごめんね”“本当は愛しているのよ”と謝る。そこで被害者は、約束を破り相手を悲しませた自分が悪いんだと思い込まされるんです。この繰り返しによって、徐々に被害者の自尊心を奪い、被害者をコントロールしていくんです。被害者からの相談では、“自分が悪いんです”と話す人は少なくありません」(阿部理事長)という。

「出産の翌年、甲状腺機能亢進症を発症したんです。そのせいか、思うように家事ができずアルコールを飲む機会が増えました。あるとき飲みすぎだと思い、ウイスキーのボトルを隠したんです。そうしたら妻が怒りだして……。私に文句を言い、なじるんです。家事ができないのも、お前の出来が悪いからだ、と。そんな日常の繰り返しでした」 

 エンジニアの山田さんは、大学時代に知り合った妻と、'03年に結婚。'06年には今年で11歳になる長女が誕生したが、その前後から始まっていた妻の異変は、アルコール摂取によって増幅した。

 精神的なDVが始まると同時に、妻が壊れ始めた。

 外出先で飲んで警察に保護される、家の中で暴れて包丁を持ち出す、子どもを連れて勝手に実家に帰り3か月以上も帰ってこない、医師にアルコール依存症の外来を紹介されても酒量は一向に減らなかった。そして'13年3月、

「会社に保育園から、妻が迎えに来ないという連絡があったんです。家に帰ると妻はリビングに倒れていて、大量に薬を飲んだ跡がありました。《お前の行動言動が私を追い込んだ! 自分のバカさかげんを反省しろ! 一生後悔しろ!! 》という殴り書きの遺書が残されていて……」

 山田さんが救急車を呼び一命をとりとめた。当初、妻は“お前が悪いんだ”と語っていたが、もう娘には会わせないと山田さんの母親が激怒。もう娘に会えないかもしれないと思った妻は、反省を口にするようになった。

《私はどうかしていました。今回も取り返しのつかないことをしてしまい、その事で皆様に大変迷惑をかけてしまったことを心の底から反省しています》《娘を大切にし、娘にパパの大切さを教えます。暴言を吐くようなことはしません》と反省文まで書いた。

「子どものこともあるし、今後は改善するのではないかと希望を持ちやり直すことに決めました。でも、この選択が間違いだったかもしれません」

 と山田さんは弱々しく語った。

 反省も長くは続かず娘が小学校に入学すると、再び飲酒。暴言、暴力、家出、知らない男と食事、朝帰り、出会い系サイトからのお金の振り込みや、“寝ている間に刺してやるからな”という脅迫も。400万円ほどあったはずの貯金も、知らぬ間に妻が3年間で使い切ってしまった。

「我慢するしかない」と思った山田さんは、争いを避けるため仕事から帰ると自室にこもるようになった。ドアや壁を容赦なく叩き罵声を浴びせる妻。顔を合わせればケンカし、もみ合いになったことも。

「寝室で動画を見ていたんです。するとその音がうるさいと、妻が怒りだしました。何度も何度もドアを叩いて叫ぶんです。もう我慢ができず、近くにあった手持ちのマッサージ器で威嚇するつもりが抑えきれずに妻を殴ってしまったんです。……そして妻に警察を呼ばれました。私は一方的な被害者ではなく加害者でもあることを認めます」

 '14年10月、警察ざたになる出来事があった。山田さんが深刻な表情で振り返る。

 妻からは暴行に対する手書きの謝罪文を要求された。周囲からは書くなと言われたが、家庭を壊したくないという思いから手書きで記したという。

 夫の非を責めながら、自分は朝から酒を飲んで暴れる。自分のものを隠したと夫を責める。限界を感じた山田さんは、市の福祉課や児童相談所、警察にも相談していた。

 だが、その後も妻の暴走は止まらない。寝室のドアの向こうから罵声を浴びせ続ける。

「何、無視してんだよ、いい加減にしろ。女ひとり、子ひとりてめぇが養えねぇくせに。離婚でいいよ、裁判するか。お前に慰謝料、さんざん請求してやるからな。(ドアを)開けろよ、開けろ」

 止まらない妻に耐えかね、警察を呼んだが、警察官は、

「旦那さんが今日は外で泊まってください」

 との言葉。妻に暴力をふるった反省から、暴走が止まらないときは警察を呼ぶようにしていたが、いつも外で泊まるのは山田さんだった。

 過去には翌朝に家に帰っても、チェーンがかけられ家に入れてもらえない。何度も呼びかけると再び警察を呼ばれたことも。そんな繰り返しに心も身体もボロボロだった。

 家を出よう……。他の選択肢はなかった。会社には翌朝電話をし、休職を願い出た。'15年3月16日のことだった。

 ……別居生活から2年。山田さんは今、アパートでひとり暮らしだ。妻とは娘との面会交流調停をすすめている。

「最後に娘に会ったのは、昨年10月です。11月も会う予定でしたが、直前に“娘が会いたくないと言っている”と連絡があり、それ以降、会えていません。会っても母親が一緒にいるので、会話はほとんどできませんでした。娘も察しているのか、私と目を合わせようとしないんです。今は娘に会いたい。ただそれだけです。娘が心配です」

 あの妻に娘を任せて大丈夫だろうか。そんな不安もあるが、山田さん自身も追いつめられている現状を明かす。

「妻と娘が住んでいるマンションのローンの支払いと、生活費も渡しています。加えて私のアパートの家賃、生活費、弁護士費用。お金がいくらあっても足りません。仕事も手につかなくて、上司には“職場は遊ぶ場所じゃないんだよ”と注意されています。降格し、給料も下がって。もう首をくくるしか……」

 山田さんはそういって、頭を抱える。取材中、「どうして、どうしてこんなことに……」と、うわごとのように何度も何度もつぶやいて、絞り出すように、

「出会わなければよかった。今は毎日そう思っています」

 現在、精神科へ通院し、睡眠薬と抗うつ剤を服用しているという。目の下の深いクマがその苦悩を物語っていた。

 DV事案を多数扱う森法律事務所副代表の森元みのり弁護士は、

「外面的には上品でかわいらしく、一見非の打ちどころのない女性が多いですね」

 とDV妻の特徴を説明。

「女性からのDVでは、身体的暴力よりは、精神的なものが多数を占めます。“出来が悪い”“食べるのが遅いんだクズ”“役に立たない”“家族の足手まとい”といった人格を否定する言葉が含まれるようになると問題ですね」

 山田さんのように暴力を受けるケースも増えているという。森元弁護士が続ける。

「相談に来る方は、妻からDVを受けているなんて誰も信じてくれないし、別れられないと思っている方が大半です。身体的暴力がある事例では、暴力を目撃する子どもに悪い影響があるとして離婚もできるし、親権も取れることが多い。だからこそ悩んでいる方はぜひ1度、相談していただきたい」

 DVがひどくなれば家庭は壊れる。その中で育つ子どもにも当然、悪影響を与える。

 社会心理学者の新潟青陵大学の碓井真史教授は、

「観察学習といって子どもは見たものを学びます。身近で暴力を見ることで、それが当たり前だと自然に身につけるようになる」

 夫婦間のやりとりが子どもの成育を阻害するとも話す。

「子どもにとって親というのは全世界といってもいいぐらい絶対的な存在です。大好きな両親が、お互いに悪口を言っている場合、子どもは非常に不安定な精神状態になる」

 すると、子どもは自らを安定させようと、こんな行動にでることもあると続ける。

「うまく心のバランスを保つため、母親か父親どちらかの味方につくのです。しかし結局、両方の遺伝子を引き継いでいるわけですから、自分のルーツを否定することになる。すると理想の男性像や理想の女性像を持てなくなり、自分がどんな人間になればいいかわからなくなる。現れ方はさまざまですが、情緒不安定な子どもになる可能性も」

 前出の森元弁護士は、母親が子どもに父親の悪口を言わせるケースもあると話す。

「“バカ”とか“臭い”とか子どもを使うケースもあります。ただ加害者側は決まって、私にちゃんと向き合ってほしかった。愛情表現だったと話をします。客観的に見たら、全然愛情とは逆の行動ですよと思うんですけどね。不思議です」

 夫の会社に、夫が浮気をしているとウソの連絡をして、社内で問題となり降格人事を受けた男性もいたという。

 稼ぎ頭の夫を貶めておきながら、法廷の場で話す言葉は“愛している”“別れたくない”と主張するDV妻たちは理解の範囲を超える。今日もどこかで虐げられる夫の悲痛な叫びが聞こえる。

3人の経験者が語る、離婚後の“別居親”と子どもの切ない面会交流の実態

出典:平成29年5月18日 週刊女性

3人の経験者が語る、離婚後の“別居親”と子どもの切ない面会交流の実態

「子どもにとって離婚は、青天の霹靂(へきれき)。妻と夫の関係を終えたとしても、父と母という役割から、子どもの負担をどうしたら減らせるか、子どもをいちばんに考えてほしい」

 児童心理学の専門家で東京国際大学の小田切紀子教授は言う。

 夫婦は離婚すれば他人だが、子どもにとっては父親も母親も変わらぬ親。だからこそ「夫婦の問題と親子の問題は、切り離して考えて欲しい」と小田切教授。

 とはいえ、お互いにいがみ合っている夫婦は、不寛容の感情が先走る。その結果、別居親が子どもに会えないケースが続出している。

娘は私の命です
 佐藤良子さん(仮名)は、昨年10月に面会交流調停が和解し、12歳の娘と月に5時間だけ会うことが認められた。

 職場で知り合った夫と'00年に結婚し、'05年に娘が誕生。

 '12年、娘が小学生になり少し手が離れたタイミングで、保育士の資格を取るために学校に通いたい、と夫に打ち明けたところ、予想外の反応が返ってきたという。

「保育士なんて少子化で先がないし、給料が安い。そんな仕事はやるべきじゃない、と」

 夫の反対を押し切って夜学に通い始めたことで、夫婦関係はぎくしゃくし始めた。

 “お前はバカだ”“何もわかっていない”といった言葉の暴力が始まり、仕事中の夫が家に電話をかけてきて1時間以上の罵詈雑言を浴びせることも日常茶飯事。家事は完璧にこなしていた佐藤さんだが、徐々に夫の顔色をうかがいながら暮らすようになった。

「家を出ていく」。夫がそう宣言したのは、'15年6月。引っ越し業者が夫と娘の荷物を運び出していく様子を、

「ただ立ちすくんで何もできず見ていました。私が家庭を壊したんでしょうか。何を間違えたんでしょうか。私が悪かったのでしょうか」

 今も原因がわからない。

 夫とは今、離婚訴訟中だ。お金はすべて夫が管理していたので、佐藤さんは取得した保育士の資格を生かし、保育園に勤めている。

「娘は私の命です。でも娘は父親も大好きでした。その父子の関係は壊したくない。私のところにも夫のところにも子どもの意思で行ける、本当の自由が与えられる日が来ることを望んでいます」

 昨年12月の面会時の、子どもの言葉が忘れられない。祖母のお見舞いに行った帰りの電車の中でのこと、

「私が“お父さんとも3人でご飯を食べることだってできるかもしれないよ”って話をしたら、びっくりした表情をみせた後、うつむいて“やっぱり家族は一緒がいい”ってつぶやいたんです」

 娘が帰って来ることができる場所を作っておかなくちゃ。そんな思いだけが今、佐藤さんを支えている。

子の口から知った。

どっちも選べないよ
 息子の中学入学後、夫が実家に戻り、引き止めたが息子もそのあとを追った。

 夫が離婚調停を申し立て、対抗する形で吉田さんは面会交流調停を申し立てる。

 周囲の友人などに“お父さんお母さんどっちも選べないよ”と漏らしていたという息子も、父親との暮らしが長くなるにつれ、面会で一切反応をしないように変わったという。片親疎外症候群が始まった、と吉田さんは見ていた。

 小田切教授によれば、

「簡単にいえば洗脳ですね。同居親は別居親に絶対に渡したくないわけです。別居親がどんなに悪い人間か、子どもに毎日のように吹き込んで支配していきます」

 今年3月、上告棄却で離婚が確定、親権は父親が得た。

 4月11日に面会をした息子は、次回と次々回の面会を休みたいと吉田さんに伝えた。

「連絡用にメールアドレスを教えてくれました。ただ、連絡をしても返事はありません。このまま連絡がとれなければもう会うことはできなくなるかもしれません。いつか息子の目が覚めてくれたら……」

 取材中、気丈に振る舞っていた吉田さんの目にはうっすらと涙が浮かんでいた。

 高木勇樹さん(仮名)は、

 '09年に結婚し、翌年2月に長男が誕生。だが同じころに妻が多重債務者であることが発覚。歯車が狂い始めたという。

 2年かけて借金を整理したが、再び借金をしているのが発覚。'14年7月、妻の実家に相談に行ったが、「嘘をつくな」と義父が激怒。その後、長男と一緒に実家にいた妻とは一切連絡がとれなくなり、弁護士を立てた。

調停の場で知った長女の誕生
「なぜ自分の子どもなのに会えないんだ、という怒りと悲しみ……。今まで味わったことがない感情でした。街中で“パパ”って聞こえると、反射的に振り返っていました」

 長男と会えたのは1年半後。第三者立ち会いのもとだったが、「パパ~」と駆け寄る息子と抱き合うことができ、会えなかった時間を埋めるほど濃密な時間を過ごせたという。

 別居前に妊娠していた妻が長女を出産していたことがわかったのも調停の場だった。戸籍謄本を取得し、名前を知った。その娘とも'16年3月に会うことができたという。

 今年4月には面会交流調停が合意。2か月に1回、3時間だけ会えることになった。

「娘も少しずつ私になれてきているようです。やっぱり可愛いですよね」と喜ぶ一方、

「娘は今年で3歳になるのに、まだ20時間も会うことができていません。長男とももっと遊んであげたい。なにより今は一緒に生活することをしたいですね。ひとつ屋根の下で生活をする。親子なのにそのごく当たり前のことが、できないのがつらいです」

 ただ、高木さんは次のような反省も口にする。

「夫婦でいざこざがあると子どもは置き去りになる。トラブルになったとき相手を思いやることを忘れないでほしい。私にもそれがあれば、今の状態にはならなかったかもしれません。子どもからしたら、両方の親が必要なんです」

 離婚で試されているのは子どもの立場に立った愛情の注ぎ方なのかもしれない。

親子の面会交流支援10年 福岡の社団法人

出典:平成29年5月12日 読売新聞

親子の面会交流支援10年 福岡の社団法人

 福岡市中央区大名の公益社団法人「家庭問題情報センター・福岡ファミリー相談室」が、離婚で離れて暮らす親子の面会交流を支援する取り組みを始めて今年で10年目を迎えた。これまでに支援した親子は100組を超え、子どもの心のケアに役立っている。
 面会交流は、離婚や別居で一緒に暮らしていない親子が定期的に会ったり、電話などで連絡を取りあったりすること。親同士が話し合いでどのような方法で交流するかを決めるが、まとまらない場合は家裁が仲介する「調停」や「審判」で決定する。
 同相談室は元家裁調査官らが集まり、1993年に設立。離婚を考える夫婦の相談などを受け付け、2007年からは、面会がうまくいかない当事者間の調整にも取り組んできた。原則1年間、親子の面会日時を設定し、1~2か月に一度の面会に付き添う。
 付き添い回数は昨年末までに、107組で計1000回を超えた。
 九州北部に母親と暮らす小学校低学年の女児は数年前、別居する父親(40歳代)との面会を2年間続けた。最初の1年は相談室内で職員が同席した。女児は両親に気を使う場面もあったが、次第に面会を楽しみにするようになったという。
 相談員の江口朋子さん(69)は「子どもは定期的に親と会うことで愛情を感じ、健全な成長につながる」と面会の大切さを説く。
 問い合わせは平日の午前10時~午後4時、同相談室(092・734・6573)へ。

「子ども最優先に 離婚後の面会交流」(時論公論)

出典:平成29年5月4日 NHK

「子ども最優先に 離婚後の面会交流」(時論公論)

今日のテーマは、離婚した親が離れて暮らしている子どもと会う「面会交流」です。「夫や妻と別れても、わが子には会いたい」。面会交流を求めて裁判所に
調停を起こす親が増えています。その陰でトラブルが相次いでいて、先週、兵庫県では4歳の女の子が面会交流中に父親に殺害されるという痛ましい事件が起きました。親どうしの争いをなくし、子どもが安心して親に会えるようにするにはどうすればよいか考えます。

解説のポイントです。まず、面会交流をめぐり、どんな問題が起きているのか見ていきます。そして、法律や制度の整備の遅れが問題を深刻化させている現状を押さえたうえで、子どもの思いを最優先した面会交流のあり方を考えたいと思います。

こうした重大な事件には至らなくとも、面会交流をめぐる夫婦間の争いは日常的に起きています。
1万2264件。これは子どもと別れて暮らしている親が1年間に全国の家庭裁判所に面会交流の調停を申し立てた件数です。10年前の2.4倍に増えていて、父親からの申し立てが急増しています。
その背景には男性の育児参加の広がりがあります。子育てに積極的に関わる父親が多くなり、妻と別れても子どもとの面会交流は続けたいと思う男性が増えているのです。

その一方で、配偶者から暴力を受けるDV、ドメスティックバイオレンスの被害を訴えて、離婚や別居をする女性も増えています。
このため、男性の側が「自分は暴力をふるった覚えはない。だから子どもに会わせてほしい」と申し出ても、女性の側はDVの被害を受けたことを理由に「夫と関わりたくない。子どもも合わせたくない」と言って応じない。
対立が広がる中で、母親が子どもを連れて家を出て所在がわからなくなったり、父親が母親の元にいる子どもを無断で連れ戻したりするトラブルが相次ぎ、その結果、板ばさみとなって苦しむ子どもが増えています。

ここで考えなければならないのは、日本では法律や制度の整備の遅れが問題を深刻化させているということです。

欧米では離婚しても双方の親に親権を認める「共同親権」が主流です。そして、離婚は面会交流の方法や養育費の分担などを取り決めたうえで裁判所が決定する仕組みになっています。
これに対し、日本は、かつては欧米でも主流だった「単独親権」をとり続けていて、離婚すると片方の親の親権が無くなることが民法で定められています。また、夫婦の話し合いだけで離婚できる「協議離婚」の制度があり、離婚の9割を占めています。このため日本では面会交流の取り決めをしないまま離婚するケースが多く、また、親権を持つ親が子どもを会わせない場合もあることから、離婚が成立した後で子どもを奪い合う争いが起きているのです。

こうした状況を改善しようと、超党派の国会議員が「親子断絶防止議員連盟」をつくり、面会交流を促進するための法案を国会に提出する準備を進めていますが、これが波紋を広げています。
検討されている法案は、離婚後も子どもが双方の親との関係を継続できるようにすることは父母の責任であるという基本理念を掲げたうえで、離婚の際に、面会交流や養育費の分担を書面で取り決めるように求めています。
また、面会交流などの取り決めをせずに別居して、子どもが片方の親と会えなくなる事態が起きないように、国や自治体は親に対する啓発活動を行うとしています。
こうした面会交流の実施を強化する動きに、夫から暴力を受けた女性たちが強く反発しています。法案には、子どもへの虐待や配偶者に対する暴力がある場合は、面会交流を行わないなど特別な配慮をすることが盛り込まれましたが、その具体的な方法は示されていません。
このため女性たちは、DVや虐待を防ぐ対策が不十分な中で安易に面会交流を進めれば、被害が一層深刻化すると訴えているのです。
親子関係を継続することが子どもの利益にならない場合があることを考慮して慎重に議論を進める必要があります。

そうした親への教育を離婚の手続きの中に取り入れ、制度化しているのが韓国です。韓国にも協議離婚の制度がありますが、仕組みは日本とは異なります。
まず、裁判所に申請しなければなりません。そして、3か月間の熟慮期間が設けられ、その間に裁判所で離婚が子どもに与える影響や離婚後の親の役割を学びます。そのうえで面会交流や養育費の支払いについて合意した協議書をつくり、これを裁判所に提出することで離婚が成立するのです。

こうして見てきますと、欧米や韓国では、双方の親から愛情を受け続けることが子どもの利益になると考え、面会交流の取り決めを離婚の前提条件としているのに対し、日本は子どもが蚊帳の外に置かれている状態です。

必要なのは親の思いを優先するのではなく、子どもの思いや与える影響を最優先に考えて、国が早急に離婚する親と子どもを支援する体制を整えることです。
とりわけ、DVや虐待の問題を抱える親子の面会交流は、欧米のように安全を守る監督者を付けてまで行う必要があるかどうか、慎重かつ十分な議論が必要です。

日付が変わり、きょう5月5日は「こどもの日」です。子どもの人格を重んじて、子どもの幸福を考える日です。この問題に対する社会の関心が深まることを願ってやみません。
(村田 英明 解説委員)

子供“連れ去り” 国内外から日本の姿勢批判「英語では『誘拐・拉致』だ」 ハーグ条約発効3年

出典:平成29年4月16日 産経新聞

子供“連れ去り” 国内外から日本の姿勢批判「英語では『誘拐・拉致』だ」 ハーグ条約発効3年

 一方の親による子供の連れ去りをめぐり、日本の予防・解決態勢の不備を指摘する声が国内外で強まっている。今国会では「現状のままでは連れ去りが続く」との危惧が提起されたほか、子供を連れ去られた親でつくる団体も国に対策を求めた。海外では対日制裁を求める声も上がる。ハーグ条約の日本での発効から3年を迎えた中、日本の対応に注目が集まっている。(小野田雄一)
          ■
 「日本はハーグ条約に加盟しながら、国内では連れ去りが実質的に容認され、むしろ“連れ去った者勝ち”の状態だ」「連れ去りというが、英語では『誘拐・拉致』だ。米国から子供を連れ去って国際手配された日本人女性もいる。子供の返還に応じない国への制裁を定めた『ゴールドマン法』に基づき、米国が日本を制裁する恐れもある」
 日本維新の会の松浪健太議員(45)は今国会の衆院予算委員会委や法務委員会でこう指摘した。その上で子供の親権をめぐる夫婦間の訴訟などで、子供を連れ去った側が親権を取りやすい現状を改める考えがあるか政府に問いかけた。
 安倍晋三首相(62)は「親権は個別事情を総合考慮して決定されている」と答弁。岸田文雄外相(59)も「ゴールドマン法による制裁は過去に例がない。対日制裁の可能性は低い」との認識を示した。

 松浪氏は「親権紛争の際、日本が『継続性の原則』(連れ去りの結果であっても、子供の現在の成育環境に問題がない限りは現状維持を尊重する考え方)を過剰に重視してきた結果、連れ去りがなくならないということを政府は認識すべきだ」と注文した。
 3月22日には、一方の親に子供を連れ去られた親らでつくる団体が、国に連れ去りをなくす政策の推進などを求める請願を行った。
 団体メンバーの男性は「多くの先進国では子供を連れ去ると誘拐や児童虐待で刑事罰が科される。日本の刑法でも誘拐罪などで摘発できるが、家庭内の問題とされ、実際はほぼ適用されない。日本でも刑事罰を適用し、不当な連れ去りをなくすべきだ」と話した。
          ■
 海外では4月6日、米下院外交委員会の人権小委員会でゴールドマン法についての公聴会が開かれ、日本などに子供を連れ去られた米国人らが証言した。委員会の冒頭、議長が岸田外相の発言を『無礼だ』と述べ、「日本を制裁すべきだ」と話す場面もあった。
 日本人女性に4人の子供を連れ去られた男性も「大阪高裁は子供を返さない決定をした。ハーグ条約違反だ。トランプ大統領は先進7カ国首脳会議(G7サミット)で日本に問題提起すべきだ。対日制裁を発動すべきだ」と訴えた。

 男性の話などによると、大阪高裁は昨年1月、子供を米国へ返還することを決定。しかし妻が新たに訴訟を起こし、同高裁は今年2月、「男性には資力がなく、返還は不適切だ」との逆転判断を示した。男性は最高裁まで争うという。
 イタリアでも今年、最大手紙「ラ・スタンパ」を含む複数の新聞が、日本人妻に子供を連れ去られたイタリア人男性の記事を掲載。大きな反響を呼び、政府に日本への働きかけを求める声が高まっているという。
 こうした動きについて、外務省ハーグ条約室は「ハーグ条約は、返還で子供への不利益が生じる場合などに返還しないケースを認めている。米国人男性の条約違反という主張は遺憾だ」と指摘。また「全ての条約加盟国が実績を公表しているわけではないが、日本の姿勢や実績が加盟各国に比較して劣っているとは考えていない」としている。

子供の国際返還、実現は3割 ハーグ条約発効3年、外務省が実績取りまとめ

出典:平成29年4月16日 産経新聞

子供の国際返還、実現は3割 ハーグ条約発効3年、外務省が実績取りまとめ

 国際結婚した夫婦間などで国境をまたいだ子供の連れ去りが起きた場合、原則的に子供を元の居住国に戻すことなどを定めた「ハーグ条約」をめぐり、日本に関連する子供の返還実現率は約3割であることが15日、分かった。日本での同条約発効から4月1日で3年を迎え、外務省が3月31日までの実績をまとめた。

 同条約によると、子供を連れ去られた親は、自国や連れ去られ先の国の中央機関(日本は外務省)に子供の返還に向けた援助を申請できる。中央機関は夫婦間の交渉などを支援。交渉がまとまらなかった場合、裁判所が返還すべきかどうか判断する。返還が原則だが、(1)連れ去られ先の環境に子供が適応している(2)返還で子供の心身に悪影響や危険が生じうる(3)子供が返還を望まない-などの場合、返還しなくてよいとする例外規定がある。
 まとめによると、「日本から外国への返還に向けた援助」の申請件数は68件、「外国から日本への返還に向けた援助」の申請件数は56件。このうち「日本から外国への返還」が実現されたのは20件、「外国から日本への返還」が実現されたのは19件で、実現率はともに3割前後となった。
 一方、「日本から外国へ返還しない」と決まった事例は16件、「外国から日本へ返還しない」と決まった事例は8件だった。
 同条約は1980年に制定。国際結婚の増加に伴う子供の連れ去り問題に対応するため日本も加盟し、2014年4月に発効した。

【用語解説】ハーグ条約
 一方の親がもう一方の親の同意を得ることなく、子供を自分の母国へ連れ出す「子供の連れ去り」から子供を守るための国際ルール。連れ去られた子供は一方の親や親族、友人との交流が断絶されるほか、異なる言語や環境への適応も必要となる。生活の急変は子供に有害な影響が生じる可能性があり、原則として元の居住国へ返還することが義務付けられている。

娘との再会願い…高橋ジョージが悲痛な叫びを続ける背景

出典:平成29年4月16日 日刊ゲンダイ

娘との再会願い…高橋ジョージが悲痛な叫びを続ける背景

 自分の娘に3年も会えていない歌手の高橋ジョージ(58)が、テレビやツイッターで悲痛な叫びを続けている。現在は大阪でミュージカルに出演中なのだが、14日のツイッターで「大阪にいる間に、会えなくても、こっそりでもいいから、娘に舞台を観に来て欲しいなぁ」と、大阪に住む娘に呼びかけた。

 さらに、高橋は「舞台から客席を探して見ている。前回の舞台の時に8歳だった娘が『いつかパパとミュージカルに出たい』と言ってくれた。希望だけがこの俺を支えて来た」と切なすぎる胸の内を吐露。舞台初日の前日(1日)のツイッターでは「娘が来てくれる事、希望をもって、3年ぶりの再会を夢見て頑張ろうと思います、、、なんか、娘と同じ街にいるだけで嬉しいのです」との思いを明かしている。

■離婚後に子供と会えない親が続出

 先月31日放送のフジテレビ系「訂正させてください~人生を狂わせたスキャンダル~」に出演した際は、元妻の三船美佳(34)について「悪く書かれているが、そういう人ではない」「娘も育ててくれた」とフォローもした。では、一体なぜ、日本では離婚後に子供と会えない親が続出しているのか。

「片方の親にしか親権を認めず、育てている親の言い分ばかりを重視したり、子供の“連れ去り”を容認する現在の司法制度に問題があるんです。最近では、裁判で面会交流が認められたにもかかわらず、娘と同居する夫が応じなかったとして、妻側に1回の拒否につき100万円を支払う決定も東京家裁で出された。この決定の後、夫側は面会に応じ、妻は5年ぶりに娘と再会できた。裁判所もようやく異様な状況にあることを気付き始めています」(離婚に詳しい弁護士)

 別居や離婚の際、片方の親が子供を連れ去ったまま、もう片方の親に会わせないことは、国際的にも大問題になりつつある。今月6日に行われた米下院小委員会では、共和党のスミス委員長が連れ去りを容認する日本に対し「言語道断だ」「制裁する必要がある」「人権侵害は許されない」とトランプ政権に呼びかけた。このままいけば、国際紛争の“火種”になることは間違いないだろう。

岸田外相発言を批判=子の連れ去り問題で-米下院小委員長

出典:平成29年4月7日 時事通信

岸田外相発言を批判=子の連れ去り問題で-米下院小委員長

【ワシントン時事】米下院外交委人権小委員会で6日、米国人との結婚が破綻した外国人が子供を実家などに連れ去ってしまう問題に関する公聴会が開かれた。この中でスミス委員長(共和党)は、日本がこの問題で制裁を受ける可能性は低いとした岸田文雄外相の発言を批判し、トランプ政権に対日制裁を呼び掛けた。
 米国では2014年、米国に子供を戻すため適切な措置を取らない国に対し、連邦政府が安全保障上の支援打ち切りなどの制裁を科せるようにする法律が成立した。岸田外相は2月14日の衆院予算委員会で「これまで米国が外国に(制裁)措置を実施した例はない。わが国に適用される可能性は考えにくい」などと述べていた。 
 スミス氏は外相の発言を小委員会で紹介し、「言語道断だ」と非難。「日本を守るために命を危険にさらしている米軍人も(日本人による子供連れ去りの)犠牲者に含まれる」と指摘した上で、「日本を制裁する必要がある。日本は同盟国だから、なおのこと人権侵害は許されない」と強調した。

岡山)離婚で離ればなれ…親子の面会交流、増える橋渡し

出典:平成29年4月7日 朝日新聞

岡山)離婚で離ればなれ…親子の面会交流、増える橋渡し

 離婚後に離れて暮らす親子が会う「面会交流」。面会方法などを話し合う裁判所の調停の申し立て件数は増えているが、親同士の感情のもつれ合いから面会が実現できない場合も多い。「面会交流」の支援に取り組む団体が県内にある。支援員や親子を取材した。
 面会交流を支援しているのはNPO法人「岡山家族支援センターみらい」(岡山市中区)。2013年、弁護士や家庭裁判所の元調査官ら23人で発足した。
 2月中旬の日曜日、センターの支援員で元家裁調査官の大渕卓子さん(72)は、北区の大型商業施設のフードコートにいた。
 市内に住む40代の母親の小学生の長女と長男が、離れて暮らす父親と3カ月ぶりに会う日だった。子どもたちは父親を見つけ、「ひさしぶりじゃね」と駆け寄った。長女が手作りのバレンタインチョコを渡すと、父親はにっこりと笑った。
 同席した大渕さんにも子どもたちは親しげに話しかける。この親子の面会交流に7年以上関わってきた大渕さん。子どもたちにとって「本当のおばあちゃんのよう」(母親)だという。
■支援員立ち合い
 母親が現在センターの理事を務める大渕さんに面会交流の支援を依頼したのは離婚が成立した09年ごろ。裁判所の調停で「2カ月に1回、元夫に子どもを会わせる」という内容に合意したが、元夫と連絡を取ることも嫌だった。担当の弁護士を通じ、大渕さんに支援を依頼した。「(元夫との)会話の間に入ってくれることで気持ちがすごく楽になる。子どもたちが父親に会うのを楽しみにして心から喜んでいる姿を見て、自分の気持ちは横に置き、面会交流をする大切さを感じました」と母親は話す。
 支援員は親同士の間に入って面会の日程を調整。当日は子どもの引き渡しや、立ち会いをする。大渕さんの携帯電話には複数の親から絶えずメールが届く。「会いたくないという親同士が多いけど、子どもの視点に立って考え直してもらいたい」と大渕さん。
■信頼を取り戻し
 支援を約1年間受けた後、自分たちだけで交流ができるようになった親もいる。
 「だんだん彼への信頼が戻ってきたんです」。小学2年の長男と2歳の長女を育てる倉敷市の看護師の母親(33)は話す。離婚後、兵庫県に住む会社員の父親(34)と月1回程度、倉敷駅周辺で会っている。
 支援を依頼した15年6月当初、子どもを支援員に預ける際、父親の後ろ姿が見えただけで嫌だった。だが、支援員が要望を聞き入れ、面会時間も守ってくれ、次第に安心して任せるようになった。子どもが父親になついていることを支援員を通じて知り、「自分たちでやってみよう」と思うようになったという。
 「怒りが冷めたときに自分たちでやれるようになったんです」。そう振り返る父親は仕事で勝負どころだと思うと、ポケットに入れるものがある。長男が大好きだったバイキンマンのマグネットだ。家族が出て行った時、家に残されたままだった。
 「子どもの環境の変化は自分たちに責任がある。せめて父親としてできることをやってあげたい」
■調停増 高まるニーズ 民法一部改正など背景に
 これまで45組の親子を支援してきたセンターの近藤みち子理事長(74)は「子どもだけでなく親の成長が見られるのが私たちのやりがい」と話す。1年を目安に夫婦だけで交流できるよう自立を促すという。「夫婦の別れが親子の別れになってはいけない。子どもは自分が何者かを知るために、別れて暮らす親のことを知る必要があるんです」
 面会交流の支援のニーズは高まっている。
 面会交流の調停は、夫婦間の話し合いで面会方法がまとまらない場合などに申し立てることができる。岡山家裁によると、07年に107件だった申し立ては昨年261件と2倍以上に増えた。
 調停が増える背景のひとつが、12年施行の民法の一部改正だ。法律で面会交流について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記され、家裁が離婚調停中の夫婦に積極的に勧めるようになった。離婚届にも、面会交流の取り決めの有無について新たに記載欄がつくられた。
 早稲田大学の棚村政行教授(家族法)は「共働きの夫婦が増え、子どもが小さい頃から父親が子育てに関わるなど、父親の子どもへの関心が変化してきたことが調停増加の背景にあるのではないか」と指摘。「調停での合意が守られるような支援や法整備が必要。民間ボランティアへの助成など、行政と民間が連携する必要がある」と話す。(村上友里)
■全国に40団体 4年で倍増
 棚村教授によると、面会交流の支援は、1994年に公益社団法人家庭問題情報センター(東京都)が取り組んだのが始まりだという。全国に広がり、2012年に約20団体、昨年約40団体となった。団体は、▽弁護士や元家裁調査官ら司法関係者▽離婚経験がある父母ら当事者▽臨床心理士ら心理福祉関係者、と中心となるメンバーによって3種類に大別されるという。

離婚後の親子面会交流

出典:平成29年4月7日 毎日新聞

離婚後の親子面会交流

 婚姻件数と離婚件数の比較から3組に1組が離婚するとも言われる時代、離婚した親と子どもとの面会交流のあり方が論議を呼ぶ。離婚後の別居親と子の面会交流を促す「親子断絶防止法案」が国会で議論されようとしている。「親子の交流は重要」と主張する推進派に対し、児童虐待やDV被害者への配慮が足りないと法制化を懸念する声は根強い。その議論は「家族とはなにか」を問うている。

父母対立激しい時 子に有害 小川富之・福岡大法科大学院教授

 親が離婚しても、両親と継続的に交流することが子の利益になる。だから親はその責任を果たすべきだ--。親子断絶防止法案のこうした理念は一般的に好ましく聞こえるが、法制化には賛成できない。父母が合意して面会交流できている親子には必要がないうえ、父母間の対立が激しく、家族関係に問題を抱える親子の場合には子の心身に深刻な影響を与える。
 法案は、夫婦が離婚後も子を共同で監護し、子と緊密に交流しているとされる欧米の取り組みや研究を参考に作られた。だが今、その弊害が注目されている。
 オーストラリアでは2006年、離婚後も両親が均等に子の養育にかかわることが望ましいとの理念を基に家族法が改正されたが、別居親が権利を主張しやすくなったために父母間の対立が激化し、深刻な問題が起きた。元配偶者の暴力や児童虐待を理由に面会を制限したくても、証明できなければ「相手方に協力的ではない」とされ、最悪の場合は子を育てられなくなる。そのため暴力の主張を控える親が続出した。父親が面会中の子を殺害する事件も起き、11年には父母に暴力に関する告知義務を課すなど子の安全を重視する方向で再改正された。また米国の研究では、父母間の対立が激しい場合、裁判で決められた厳密なルールによる交流がかえって子に有害であることが報告されている。
 日本では既に13年ごろから家庭裁判所の実務で、別居親と子の面会交流を原則として認める考え方が主流になってきた。昨年の千葉家裁松戸支部判決のように相手方と子の交流に協力的かどうかを親権者を決める要因として考慮したり、面会に応じない同居親に高額な制裁金の支払いを命じたりする判断も出ている。
 家裁が関与する離婚ではDVや虐待が主張されるケースは多いが、立証は必ずしも容易ではない。日本は欧米と比べ、DV被害者の保護施策が乏しく、離婚前後の家族への相談支援体制も不十分だ。今年1月には長崎市で、長男の面会交流のために元夫宅に行った女性が殺害される事件も起きた。こうした中で法案が成立し、面会を促進する流れがさらに強まれば、子の安全が脅かされる。法案はDVや虐待への配慮規定を置くが、「継続的な交流が子の最善の利益になる」との基本理念を明記する限り、不安はぬぐえない。
 また法案は、離婚前に相手方に無断で子連れ別居をさせないよう努める責任を国に課す。だが、話し合いもできないほど激しい夫婦間の紛争から家を出る必要があり、子を置いていけば養育環境が不安定になるなど、やむを得ない場合はある。別居が認められるかは、子の利益の観点からケース・バイ・ケースで判断されるべきだ。ハーグ条約は、子がそれまで住んでいた国の裁判所で事件を扱うためのルールで、国内の子連れ別居とは別問題だ。
 ただ離婚時の面会交流の取り決め率が約6割という現状は改善すべきだ。行政による啓発や必要とされる面会交流支援、相談体制の充実は急務で、それらを実現するための法案こそが求められている。【聞き手・反橋希美】

子どもが決められるように 光本歩・NPO法人ウィーズ副理事長

 離婚した両親との関わり方は、子ども自身が決められるようにすべきだ。私も中学生のころに両親が離婚し、父子家庭で育ったが、父に対しては母との関係をコントロールされたくないという思いが強かった。どんな親であっても、子が親の実像を自分の目で見ることが、離婚や自らの状況を理解して人生を歩んでいくために必要なステップになる。
 議論されている親子断絶防止法案は、離婚に際して親が子に果たすべき責任を社会に示す意義はある。修正案で「子どもの意見表明機会の確保」などが盛り込まれた点も評価する。ただ、本当に子の利益になる面会交流を実現していくための課題は山積している。
 両親の関係が険悪であるほど、面会交流の円滑な実施には、第三者の介入が欠かせない。不信感や敵意を抱き合う父母の間を行き交うことは子の大きな負担になる。味方になる存在が必要だ。NPOで面会交流を支援する活動に取り組んでいるが、会話ができる3歳以上の子どもの支援では、まずスタッフが一対一で面談し、信頼関係を築くことを重視する。別居親や交流への思い、面会を重ねる中で子どもにどんな変化があるかを注意深く見ていく必要がある。
 支援で重要性を痛感させられるのが、親の合意形成だ。交流がうまくいった事例を紹介したい。
 両親は40代で子は3歳。両親は離婚裁判の中で、双方の弁護士の支援を受けて長期的できめ細かな面会計画を作った。「第三者が付き添う交流を3回行って問題がなければ、付き添いはなくし、第三者は連絡調整や子どもの受け渡しを担当する」との内容だ。別居親は充実した面会に努力するし、同居親も先を見据えて心の準備ができる。両親が子に無理をかけないで段階的に交流を進めていく重要性を認識していたことも大きい。
 支援が難航するケースは合意形成が不十分で「月1回、2時間」などと面会の取り決めが大ざっぱなことも多い。家庭裁判所や弁護士会には、児童心理に配慮したきめ細かな合意形成の支援と、そのための人材育成をお願いしたい。
 面会交流のあり方は一様ではない。別居親が子と心中を図ったケース(未遂)では、裁判で直接の面会は危険だと判断され、手紙のやり取りにとどめる間接面会が決まった。NPOが間に立ち、手紙の内容の点検や受け渡しを担ったが、子どもの手紙からも親とつながっている安心感が読み取れた。子が自分の意思で親とどう関係するかを判断できる段階になるまで、親子を仲介する存在が必要だ。
 現状は、面会交流が当事者に任されているケースが大多数で、トラブルや面会不調につながっている。支援団体は少なく面会交流の考え方や支援方法もさまざまだ。行政が事業委託して無料で支援を受けられる自治体もあるが、団体への補助金はなく、交流支援だけでは財政的に運営が成り立たない。面会交流はどうあるべきか、どんな政策や公的援助が望ましいかといった点で社会的なコンセンサスが必要だ。法案がきっかけになり、離婚後の子の養育について議論がより深まることを期待したい。【聞き手・中川聡子】

立法化で国に施策促す 馳浩・衆院議員、親子断絶防止議員連盟事務局長

 厚生労働省の調査では、2015年の離婚件数22万6215件のうち、未成年の子どもがいるのは13万2166件。毎年20万人以上の子どもが親の離婚を経験し、そのうちの多くが別居親との関係を絶たれている。離婚の9割を占める協議離婚では、面会交流について取り決めを交わすことは求められていない。だが子どもの権利条約にある「子どもの最善の利益」を考慮した場合、このままでいいのだろうか。子どもの立場に立てば、双方の親と面会交流して愛情を受け続けることが必要だ。離婚後もきちんと子どものことを考えることは親の責任でもある。そうした問題意識をもとに当事者の声を聞き、昨年12月に親子断絶防止法案の修正案を議員連盟でまとめた。
 離婚後に親が子どもに対して持つ責任は二つある。まずは養育費の支払いだ。経済的な不安や負担を解消する責任がある。次に面会交流だ。子どもに関心を持ち続けることは親の責任であり、「学校での様子を先生に聞きたい」などの望みを持つ親も多い。養育費の支払いや回収については「母子及び父子並びに寡婦福祉法」で規定されているが、面会交流にはルールがなかった。当事者間の話し合いが難しいなら第三者や専門家が関与できるよう土俵づくりを進める一環として今回の法案がある。
 法案は面会交流について「書面による取り決めを行うよう努めるものとする」との文面にして、あくまで努力目標にとどめた。この点について、賛否双方の立場から「実効性がないのでは」との批判をいただいている。だが、離婚の事情は100人いれば100通りあり、義務化は難しい。一方で、片方の親が一方的に「DVがあった」と言って無断で子どもを連れ去り、もう一方の親と関係が途絶える事態が起きている中で、何もルールがなくていいのか。私はそうは思わない。当事者に任せれば議論は平行線をたどるだけだ。
 14年には国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に加盟したが、国内での体制が整備されていなかった。やはり第三者が早期に介入する必要がある。法案は罰則を持たない理念法だが、理念を掲げることで国、地方自治体に相談体制や人材育成などの施策を促す効果は大きい。
 法案に対しては「別居親たちの考えしか聞いていない」という批判もあるが、間違っている。私は10年以上前から児童虐待やDVの問題に関わり、離婚後の面会交流に対する支援が不十分だと実感してきた。原案を作った上で、懸念を表明する方々にも十分に話を聞き、文面に多くの修正を加えた。例えば「本当にDVに遭っている被害者はどうするのか」という指摘があるが、そうした声を反映し、一方的な子連れ別居について国に求められる啓発活動の目標を「早期解消」から「早期解消もしくは改善」と改めた。DV被害者の緊急避難は否定していない。
 法案は各党が意見を出す回答を待って最終案をまとめたい。会期中である以上は今国会への提出を目指すが、合意形成が大事だ。決して今国会での「成立ありき」で考えているわけではない。【聞き手・伊藤直孝】

親子断絶防止法
 「父母の離婚等の後における子と父母との継続的な関係の維持等の促進に関する法律案」。超党派の親子断絶防止議員連盟(会長・保岡興治元法相)が昨年5月に原案をまとめ、当事者団体などのヒアリングを経て12月に修正案を公表した。離婚時に面会交流や養育費負担について取り決めることを努力目標とする。親子の継続的な関係を維持するための施策を国や自治体の責務とし、相談対応や情報提供などの援助策を講じるように求める。

離婚後も親子関係は続くから - 知ってほしい「面会交流」の話

出典:平成29年3月28日 DRESS

離婚後も親子関係は続くから - 知ってほしい「面会交流」の話

親の別居や離婚を理由に離れて暮らす親(別居親)と子供が会い、交流することを「面会交流」といいます。「現状、別居や離婚後、面会交流がスムーズに行われていないケースも多い」と話すのは、面会交流普及活動に取り組む離婚・面会交流コンサルタント・しばはし聡子さん。

子供に会えずに苦悩する男性たちの声を集めた書籍『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(著:西牟田靖)が話題を集めたり、離別した親と未成年の子供との関係が絶たれるのを防ぐ「親子断絶防止法案」が今国会で検討されたりと、面会交流そのものが注目される今、面会交流の重要性について、しばはしさんに話を伺いました。

■調停離婚直後、面会交流に消極的だった
しばはしさん自身、10代の子供を持つシングルマザー。離婚の危機が訪れたのは結婚14年目となる2014年のことでした。弁護士をつけ、半年で調停離婚が成立。元夫と離婚後に直接連絡をとるのをストレスに感じ、面会交流に積極的になれなかった、と当時を振り返ります。

離婚から一年ほどは、子供を元夫に会わせるのを億劫に感じ、面会日程を急に延期して、元夫から憤りのメールが来ることもありました。そんなしばはしさんにターニングポイントがやってきます。

「ある面会交流支援団体でボランティアをしていたとき、1組の家族が面会交流するシーンを目にしたんです。ただ純粋な気持ちで子供と会いたいと願うお父さん、会わせるのが嫌々ながらも仕方なく子供を連れてきたお母さん、屈託ない笑顔でお父さんとの再会を喜んでいる子供――3人を見て気づいたんです。私が元夫と関わりたくないからといって、子供と父親との関係を断ってしまうのは良くないんじゃないか、と」

無意識のうちに、同居親に気に入られるふるまいをし、自分が生き延びる道を模索するのが子供。彼らは大人よりもはるかに空気を読み、状況や人の気持ちを敏感に察知する能力を持っています。

「同居親が面会交流に否定的だと、子供に悪影響が及びます。子供は常に同居親の顔色や機嫌を伺っていますから、別居親と会いたくても『会いたい』と口に出せなくなるんです。本音も言えなくなるどころか、いつのまにか自分でも本心がわからなくなってしまうことも。もし同居親の気持ちが変わって、いざ面会交流をさせようとしても、子供の気持ちがついてこないこともあります」

本当は別居親と会いたいと思っていても、同居親に気を使って「別に会いたくないし……」と、本心とは逆の発言をする可能性もあるということです。

■別居親に子供を会わせるのは同居親のミッション
面会交流をさせよう! と思い立ってからの行動は迅速でした。元夫へ「いつでも子供とごはんに行ってね」とすぐに連絡すると、彼の第一声は「ありがとう!」。それを聞いて、しばはしさんは涙がこぼれたと言います。

もし元夫が「なんで急に?」と訝しがったり、今までのことを怒ったりしていたら、その後の面会交流は途絶えていたかもしれませんが、そこから徐々に三者が心温まる面会交流がスタートしたのでした。

「以前は元夫がうちまで子供を迎えにきても、気配を感じることすら怖くて、玄関口で送り出すこともしませんでした。帰宅した子供に対しても『どうだった?』と聞きもせず。でも、前向きに面会交流できるようになってからは、子供に『楽しかった?』『今日は何食べてきたの?』と明るく聞けるようになりました。子供も嬉しそうに答えてくれます。これまでのことを振り返ると、元夫も、そしてとくに子供も苦しかっただろうな……と思いますね」

離婚を経て相手と関わりたくなかったり、憎しみの気持ちが生まれたりしても、夫婦関係と親子関係とは切り分けて考える必要がある、としばはしさん。離婚後も子供と別居親との親子関係、そして元夫婦も親同士としての関係は続きます。子供にとって親はふたり。

別居親が子供の心身に悪影響を与えない限り、同居親はすすんで面会交流の場を設けること、そして別居親はやりとりが円滑にできるように心がけることが子供の幸せにつながるといえます。

「子供と暮らす同居親は、問題意識を持つ機会が少ないのが現状です。以前の私もそうでした。でも、親権を得ることは特権ではなく責務。どうすれば子供が幸せでいられるのかを考え、行動する必要があります。子供と別居親の架け橋というミッションを背負っているという認識を持たなくてはならないと思います」
(つづく)

しばはし聡子さん プロフィール
1974年生まれ。慶應義塾大学法学部卒。自身の離婚経験を生かし当事者支援として「せたがや離婚・面会交流相談室りむすび」を設立。離婚相談や面会交流普及に向け講演など発信活動に従事。
http://www.rimusubi.com/

子どもに会えない父親たち 認められない面会交流の裏側

出典:平成29年3月20日 livedoor News

子どもに会えない父親たち 認められない面会交流の裏側

 調停で離婚した夫婦の子どもの約9割は、母親が親権者になる。子どもと断絶させられた父親からの面会交流調停への申請数が増えている。

 4年前、シンジさん(48)が仕事から家に帰ると、真っ暗な部屋に一枚の置き手紙があった。

「あなたは私のことを対等に見てくれませんでしたね。子どもは連れていきます」

 生後7カ月の娘の姿はなく、その日から娘と会えない“断絶”の日々が始まった。

 14歳年下の妻とは、小笠原諸島の民宿で出会った。2人とも海が好きで、2009年に結婚。シンジさんは大手メーカーのエンジニア、妻はパティシエとして働き、夜は2人で外食するような仲のいい夫婦だった。12年6月に長女が生まれた。

「妻は人付き合いが苦手で、子ども好きというタイプではありませんでした。妊娠してからは情緒が不安定気味で里帰り出産をしましたが、それはよくあることです。東京に戻ってからは私も4カ月の育児休暇を取り、一緒に育児をしていました」

●完全なでっち上げ

 だが、しばらくたつと“事件”が勃発する。孫の様子を見に自宅に来た義母が「孫は連れて帰る!」と言ってシンジさんにつかみかかってきたという。妻も娘を強引に連れ出そうとしたので、義母を振り払って、娘を取り返した。結局、児童相談所が仲介に入ったが、児相に義母は「(シンジさんに)暴力を振るわれた」と主張していたという。

「断じて暴力など振るっていません。目の前で娘を連れ去られそうになったので、それを振りほどいただけです」

 その後、一度は妻と娘も自宅に戻り、家族再生の道を探った。だが、妻が生命保険の外交員に勧誘され、その場で契約したことを発端に、また夫婦に摩擦が生じる。シンジさんが「なぜすぐ決めるのか」と問うと、妻は「あなたは私のやりたいことを一切認めない」と口論になった。

「その時も、怒鳴ったりはしていません。実は、妻は過去にも帰省中に同級生からマルチ商法に誘われ、物品を購入したことがある。周囲に影響されやすいところは諭しました」

 こうしたことに不満を募らせたのか。約2カ月後、妻は娘を連れて家を出ていった。

 翌日、妻の弁護士から内容証明郵便が届いた。離婚事由は「精神的DV」と「経済的DV」。妻は事前に自治体の窓口でDV相談をし、弁護士も手配していた。出ていく日を決めて、一時的にシェルターに避難することで、DVを主張する「計画」が出来上がっていた、とシンジさんは主張する。

「完全なでっち上げです。住居費、生活費もほぼ私の負担で経済的DVもありえません」

 意に反して離婚調停が進むなか、シンジさんは面会交流を申し立てていたが、面会できたのは2年間で2回だけ。それも妻の地元で第三者機関の担当者を交えて60分だけという条件だった。最初は娘が1歳半のとき。殺風景な広い部屋でおもちゃで遊ぶ娘を遠くから見守るだけ。その「非日常」の雰囲気に娘は泣きだしてしまい、結局、30分で切り上げられた。9カ月後の面会も同様に泣いてしまい、30分で終了。父親だとわかってもらうこともできなかった。

「もしかしたら、妻は私が親のように諭すのが気に入らなかったのかもしれない。でも、それだけで7カ月の娘と引き離されて、2年間で会えたのはたった1時間というのはひどい」

●面会交流申請が急増

 厚生労働省の「全国母子世帯等調査」(11年度)によると、別居親と子どもの面会割合は母子世帯で27.7%、父子世帯で37.4%。別居親の6~7割は子どもと会えていない。一方で、面会交流調停への申請数は増え続けており、15年は1万2264件(司法統計)。00年と比べて5倍以上にもなっている。

 民法には面会交流の明確な規定はなかったが、12年施行の改正法で「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。こうした流れを受け、16年末、超党派の国会議員が所属する「親子断絶防止議員連盟」は、別居親との面会を促す法案をまとめた。

 ノンフィクション作家の西牟田靖さんは、今年1月、離婚前後に子どもと引き離された父親の葛藤をつづった『わが子に会えない』を出版した。

「子どもに会えない父親=妻や子に暴力を振るう男性というレッテルを貼られがちです。しかし、私が話を聞いた父親たちは、子ども思いで暴力を振るうようにも見えず、経済的に安定している方が大半でした。離婚事由として、妻から身に覚えのないDVを訴えられるケースが多く、いきなり子どもと断絶させられたうえに、どうやって“無実”を証明すればいいかもわからない。混乱の中で司法の判断だけが進み、面会交流も認められにくくなる。そうなれば円満解決はもはや困難です」

 ナオトさん(37)は、1年半前に妻に子を連れて出ていかれた。当時、長男が2歳、長女は3カ月だった。子育ては自分でやりたいという妻の意思を尊重し、代わりに掃除、洗濯、皿洗い、ごみ捨てなど家事全般を請け負う、協力し合う夫婦だった。それなのに、手紙一枚を残し、妻と子どもは突然姿を消した。

●離婚の事由がない

「『もう夫婦関係は続けていけない』とだけ書かれていました。すぐに妻に理由を聞きましたが、とにかく『離婚したい』の一点張り。今でも明確な離婚の事由は示されていません」

 思い当たる節があるとすれば、義母との関係。過干渉なくらいに家に来る義母とは折り合いが悪く、ある日、ナオトさんの実親をあしざまに言ったことに怒り、怒鳴ったことがあった。

 だが、妻にそれが理由かと問うと「違う」という返答。理由もわからないまま、調停が申し立てられた。家庭裁判所からは円満調停が言い渡され、「面会は月に1回2時間」「監護権は妻とすること」などが決まった。

「離婚の事由もないのに、子を連れて出ていかれて月に1回しか会えなくなるなんて、司法の判断は明らかにおかしい」

 ナオトさんは、親子断絶防止法案の成立を願っているという。

 ただ、同法案には不備が多いとの指摘もある。弁護士の打越さく良さんが言う。

「第8条のように『別居前に子どもの監護権や面会交流の取り決めをせよ』というのは危険な場合もあり一律には言えません。子どもの心身の安全確保のために別居しなければならないときに、事前の話し合いなど無理です。行政の窓口に行って
『事前の取り決めがないなら援助できません』となったら結局避難ができず、子どもにも酷です」

 子連れ別居や離婚の背景には、深刻なDVや虐待がある場合も多く、「子の利益」に照らし当面は別居親との面会交流を認めるべきでないケースもある。

「どのような場合が違法な連れ去りで、監護の継続性や虐待の存否など個別の事情を含めて子の利益を判断できるのは、やはり家庭裁判所。実績のある家庭裁判所の環境改善を図ることが先決です。そもそも、『児童の権利条約』では、子どもの権利の実現のため、国に適切な措置をとる義務を課している。この法案は当事者間に力の非対称性がありうることを無視して、父母に責任を負わせていることが問題です」(打越さん)

 夫婦の別離は、夫、妻の立場それぞれに“真理”がある。ただ、同意なしに子どもを連れていかれた親の苦悩も深い。「救済策」が検討される時期に来ている。(文中カタカナ名は仮名)

(編集部・作田裕史)

※AERA 2017年3月20日号

DV防止法のせいで、わが子に会えず苦しむ父親もいる

出典:平成29年3月20日 ニューズウィーク日本版

DV防止法のせいで、わが子に会えず苦しむ父親もいる

<父親たちの本音をすくい上げるノンフィクション『わが子に会えない』。気になるのは、実際には暴力をふるっていないのに「DV夫」のレッテルを貼られ、子どもに会えなくなる人もいるということだ>

『わが子に会えない――離婚後に漂流する父親たち』(西牟田靖著、PHP研究所)は、ある日突然、子どもと会えなくなってしまった父親たちの本音をすくい上げたノンフィクション――とだけ聞いてもピンとこないかもしれないが、冒頭に登場する「ある事件」についての記述を読めば、どういうことなのか推測できるはずだ。

 2013年のXマス2日前、都内の小学校の校庭で男性とその息子が発火するという事件があった。消し止められたが助からず、ふたりとも命を落としてしまった。男性はマスコミに勤務する40代。野球の練習をしていた息子を校庭の隅へと連れ出した後、自らに火をつけた。妻子と別居中だった男性は、子どもに会うことを制限されており、しばしば妻子の家や学校に現れることがあったという。(2ページ「プロローグ」より)

たしかに、そんな報道があった。痛ましい事件だったが、その背後には、子どもに会いたくても会わせてもらえない父親の苦悩があったのだ。そして忘れるべきでないのは、上記の父親のように子どもとの面会を制限され、精神的に追い詰められていく人は現実に多いのだろうということだ。なにしろ、年間20万組以上が離婚しているのだから。

なお、本書に説得力を与えている要因がある。著者自身が、上記の事件のすぐあとに当事者になってしまったということだ。

 翌年の春、妻が3歳の子どもを連れて出ていき、夫婦関係が破綻した。離婚届を受理したという通知が役所から届いたとき、一時的に記憶がなくなり、自転車をなくすほどであった。愛してやまない当時3歳の娘に会えなくなったことが、なんといってもショックだった。自分の両手をもがれてしまったような喪失感がしばらく続き、いつふらっと線路に飛び込んでもおかしくはなかった。生きている実感がまるで湧かず、体重は10キロほど落ちた。(2ページ「プロローグ」より)

そこで著者は、わらにもすがる思いで、同じように子どもと会えなくなった親たちが体験を共有する交流会に参加する。つまりそのような経緯を経て、本書は必然的に生まれたのである。

気になったことがある。身に覚えのないDV(ドメスティック・バイオレンス)を主張され、子どもに会わせてもらえず、苦しんでいる人が多いという話だ。

「数えていたわけではないが、全体の半分ぐらいはあっただろうか」と著者は記しているが、たしかに本書で紹介されている人の多くが「DV夫」としてのレッテルを貼られている(もちろん女性がその立場に立たされているケースもあるのだろうが、男性当事者の数が圧倒的であることから、本書もそちらに焦点を当てている)。

【参考記事】児童相談所=悪なのか? 知られざる一時保護所の実態

背後にあるのは、2001年にDV防止法(配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律)が制定されたことだ。「配偶者からの暴力に係る通報、相談、保護、自立支援等の体制を整備し、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護を図ることを目的とする法律」[内閣府男女共同参画局HP]というもの。具体的には、次のように行使されるのだそうだ。

 ――被害者は配偶者暴力相談支援センターや警察などへ出向き、DV被害について相談する。行政は被害者の申し立てを受けて被害者の居所を秘匿する。希望者は配偶者(加害者)の暴力から逃れるためにシェルター(ほぼ女性のみが対象の一次避難施設)などに避難。地方裁判所が認めれば、加害者に対し保護命令に含まれる接近禁止令や(世帯が居住する家からの)退去命令が発令される――。(5ページ「プロローグ」より)

子どもに会えなくなる状況を生み出す原因がここにある。離婚して親権を得たいパートナーが、実際にはないDV被害を訴えることで保護を望む。行政はそれに応える。結果として、加害者扱いされた側は子どもに会う機会を失う。もちろん世の中には実際にDVに苦しんでいる人も大勢いるだろう。しかし一方には、こうした経緯により「DV夫」にされてしまう人も少なくないということ。(被害者たる)パートナーを守るための制度が、本来の目的とは違う形で使われているわけだ。

「『暴力を受けた』と言った者勝ちなんです。証拠だとはとても言えないあやふやな主張がひとつひとつ積み重ねられ、DV被害者としての肩書きというか実績がどんどん加わっていくんです。裁判でDVの認定が却下されたというのに、行政や警察は、妻の言うことすべてを鵜呑みにして、妻子の住所を私に秘匿したまま。私が調べて欲しいと言っているのに、警察が捜査をしたり話を聞きに来たりしたことは一度もありません。本当に私が暴力を振るったんなら刑事事件として立件すればいいんですよ!」 40代の会社経営者、長谷川圭佑さん。穏やかで優しそうな顔をそのときばかりは引きつらせた。(59ページより)

このように、「暴力を受けた」という一方的な主張によって追い詰められる人もいることを、本書は証明している。どうしようもできずに泣き寝入りする人がいれば、納得できないからと徹底的に争う人もいる。対抗策は人それぞれだが、一般的な感覚からすると首をかしげざるを得ないようなことが現実に起きていることだけは間違いないようだ。

ちなみに本書に登場する父親たちの大多数は、裁判所や弁護士の世話になった結果、耳を疑うようなつらい体験をしてきたのだという。裁判所に悪意があるわけではなく、それどころか彼らには善意があり、専門知識を持ったスペシャリストであるはずだ。しかし官僚組織である裁判所においては、組織として回していくことが、公平な紛争解決よりも、組織防衛上、なにより重視されるということだ。

【参考記事】家事をやらない日本の高齢男性を襲う熟年離婚の悲劇

裁判官1人あたり100件以上の訴訟案件を抱えており、さらに毎日数件のペースで案件が増えていくと聞けば、致し方ない話ではあるのかもしれない。でも、だから父親たちは我慢を強いられなければならないのだろうか? 幸いなことに、そういうわけでもなさそうだ。日本でも面会交流の拡大や共同親権制度への変更に向け、国や行政が重い腰をあげるようになってきたというのである。これはアメリカの30~40年前の動きに近いそうだが、ともあれ期待したいところである。

 これまで"離婚=親子の別れ"という考えが強く、そのために別れて暮らす子どもと別居親が会うことが困難を極めた。しかし、世の中は変わりつつある。(中略)争ってでも会おうとしている親が確実に増えてきたのだ。そうした声を受けてのことなのか。子どもと離婚に関して記した日本の民法766条が2012年に変更となった。"面会交流と養育費の分担"について追記されたのだ。 2016年10月に法務省は、養育費に関する法律解説や夫婦間で作成する合意書のひな型を掲載したパンフレットを作成し、全国の市区町村の窓口で、離婚届の用紙を交付した際に配ったり、法務省ウエブサイトで公開し始めている。また、裁判所にしても面会の"相場"をゆるめつつある。(317ページより)

戦後、日本の家族の形が変わるなかで、女性の社会進出が進み、DV防止法ができるなど、女性の権利が守られるようになった。それ自体はとてもよい傾向だ。しかし今後は、父親たちや男性たちの権利も、もっと認知されるべきだと著者は主張する。つまり、そうした権利を求める動きのひとつが、父親が子どもに会ったり共同親権を求めたりする運動だということ。

 ――男だって子どもと存分にふれ合いたいし、育てたい。親として子どもと一緒に生活することで、生きて行くことの喜びを感じたり、親として成長していきたい――。(317ページより)

著者のこの言葉にこそ、子どもに会えない父親たちの本音が集約されているのだろう。

『わが子に会えない――離婚後に漂流する父親たち』
 西牟田 靖 著
 PHP研究所

[筆者]
印南敦史
1962年生まれ。東京都出身。作家、書評家。広告代理店勤務時代にライターとして活動開始。現在は他に、「ライフハッカー[日本版]」「WANI BOOKOUT」などで連載を持つほか、「ダヴィンチ」「THE 21」などにも寄稿。新刊『世界一やさしい読書習慣定着メソッド』(大和書房)をはじめ、『遅読家のための読書術――情報洪水でも疲れない「フロー・リーディング」の習慣』(ダイヤモンド社)など著作多数。

離婚は女性が超有利!養育費・親権で苦汁を飲む男たちの実例集

出典:平成29年3月18日 ダイヤモンドオンライン

離婚は女性が超有利!養育費・親権で苦汁を飲む男たちの実例集

 「あ~あ!男に産まれて損したなぁ!!」

 誰しも性別を選んで生まれてくることはできませんが、2017年の日本は残念ながら、男が生きづらい「男損時代」ではないでしょうか。最近、目に飛び込んでくるのは女性をヨイショするニュースばかり。例えば、政府が「一億総活躍社会」を打ち出し、2020年までに女性管理職を11%から30%へ。女性議員を9%(衆議院)15%(参議院)から30%へ、男性の育児休暇取得率を2%から13%へと数値目標を定めました。一方、男性はどうでしょうか?世の中の金や人、時間等は無限ではなく有限。だから、女を上げれば、その分だけ男性が下がるというゼロサムゲームなので女性優遇は「男性不遇」とセットです。

 ただでさえ「弱男強女」という昨今のバイアスのせいで男性が割を食っているのに、さらに「だから最近の男は情けないし、頼りないし、本当に使えないわ!」と追い打ちをかけるのは、まさに「死体蹴り」そのものです。

 今回は離婚経験者の男性から「男女不平等」のエピソードを集めました。逆差別によってどんな酷い目に遭ったのか、悲痛な叫びを紹介しましょう。なお、生の声を忠実に再現するため、こちらで内容を改変せず、できる限り、そのまま掲載します。そのため、少し読みにくいと感じるかもしれませんが、何卒ご容赦ください。

● 残業手当や単身赴任手当を入れず 基本給で養育費の策定を

 1.養育費の決め方が納得いきません(30代男性)

 今年7月、裁判所で裁判離婚が成立しました。しかし、私の担当弁護士、相手弁護士、裁判官と私の考え方は、まったく違うものでした。法律家の考え方では現在の収入で養育費を算定するのです。私の収入には今の段階では流動的な残業時間も含まれていました。また、私の場合は単身赴任手当も含まれた金額になり、それらを削除して計算するべきだとくり返し裁判で訴え続けましたが、まったく認めてもらえずじまいでした。

 現実社会からかけ離れた裁判の内容で進められた。もし良識ある裁判官なら、扶養手当、単身赴任手当て、残業手当を削除し、基本給だけで養育費を算出して当然です。現に私の現在の給料は、基本給とわずかな残業手当で生活しています。手取りは15万円、うち養育費は月に9万円、ボーナス時は30万円です。

 将来、基本給だけになってしまうと到底払えない金額です。裁判所が考えないで判決を下した結果です。このような世間知らずの裁判官、弁護士がいること自体が私は到底納得できません。

● 再婚して元妻に養育費支払いも 母子家庭は保育料は無料

 2.養育費を支払う側にも優遇措置を(40代男性)

 養育費を支払っている分、保育料の減額を希望します。現在月4万円を支払っています。私の手取りは20~22万円です。私は再婚し、相手との間に2人目が生まれました。本当は学資保険に加入したいのですが、ギリギリの生活で貯蓄もありません。

 生活費の補助にと保育園に預けて妻が働きに出ようにも、保育料のために働くようなものでプラスにはなりません。保育料は私の月収により決定されるため、養育費の分も含まれています。実際に手にするお金がないにもかかわらず、その分も含めて換算されるのは納得いきません。

 前妻の子のために養育費を支払うことは当然と思っていますが、このままでは養育費すら払えなくなりかねません。養育費をもらっているにもかかわらず『母子家庭』ということで保育料が免除されているのに、養育費を支払っている家庭には何もないということに疑問を感じます。養育費を支払っている家庭にも何らかの免除を希望します。

 また養育費を支払っていても、前妻の子どもとは同居していないため、家族手当などは会社から支給されません。税制面でも考慮されていないように思いますが、私の思い違いでしょうか?
● 常に養育費支払う側より もらう側が保護されている?

 3.養育費算定表の年収が総額になっているのはおかしい(20代男性)

 養育費算定表に関して大変遺憾に思います。理由は、年収計算が総額だからです。誰も総額で生活しているわけではありません。あくまでも、手取り額で生活をしているのにもかかわらず年収総額で計算する意味があるのでしょうか?

 なぜ、常に支払う側より養育費をもらうほうが保護されないといけないのでしょうか?おそらく、こういう理由からも支払いの問題が増えていくのではないでしょうか?

 4.養育費の内訳を知らせないのは我慢できない(30代男性)

 養育費を毎月30万円払っていますが、決して前妻が社会的弱者だと思いません。不当に子どもに会わせない割に高額な養育費を年収からのみ算定され払っています。養育費の内訳を知らせないのは不当に養育費を使っているんじゃないかって思ってしまいます。母子家庭という弱いイメージとはかけ離れているんじゃないかって。

 5.話し合っている最中に給料を差し押さえられるのは許せない(40代男性)

 お互い再婚していて養子縁組もしている状態で、突然、給与の差し押さえをされました。何度も元妻に話を持ちかけましたが、話し合いを拒絶されてしまいました。そんな最中です。調停証書があると、どんな経緯であっても差し押さえられてしまうという現状に愕然としました。

 もう法律の濫用としか言いようがありませんが、何も文句は言えないのです。私は真面目に誠意をもって対応しようとしていました。簡単に差し押さえができるのは女性からの離婚を助長させるだけかもしれません。どんな理由であれ離婚するときは人の力など借りず、死ぬ気で子どもたちと生き抜いていく覚悟がなければしてはダメだと思っています。

 差し押さえに関しても、経緯書を添付するとか、お互いの戸籍謄本を提出するとか、差し押さえの対象になるのかどうかぐらいの判断は裁判所にしてもらいたいです。それなのに不意打ちを食らった形で許すことはできません。

 6.親権は母親が圧倒的有利なのはおかしい(30代男性)

 法律上では「子どもの福祉にとって適切なほうが親権をとるのが望ましい」となっているようで、父親とも母親とも書いていないのですが、圧倒的に母親有利となっています。このことは逆に、女性の地位向上の妨げになっているものと思われます。

 「子どもの福祉」とは何なのか?これをもっと具体的に明記することを希望します。このままでは、父親がいくら家庭生活をがんばっても、離婚に直面した場合、子の親権はあきらめざるを得ないです。

 この事実を知ると、男性はまじめな家庭生活を営まなくなるかもしれません。女性側も多少いい加減に生活をしたとしても、子の親権を失う恐れがないのなら、まじめに生活しなくなるように思われます。

● 「子どもの福祉」とは 一体何なのか?

 7.子育てしてきたのに評価されないのは不平等(20代男性)

 離婚において女性ばかりが保護されるのはおかしい。子どもが小さいとほぼ女性が親権を獲得するようになっており、まっとうに子育てしてきた男性が親権をとれないのはおかしい。父子手当のようにもっと平等に考える必要がある。女性が弱いからといって女性過保護になっている気がします。面接交渉に関してももっと法律できちんと定めるべきです。離婚=男性が悪いという風潮を改めるべきだと思います。

 8.子どもの連れ去りが認められるのは許せない(30代男性)

 配偶者が子どもを勝手に奪っていく連れ去りが、認められるのはおかしい。無条件に、女性に偽装DVが適用されるのはおかしい。もう充分、女性は男性より強いのですから女性=弱者はおかしい。

 9.父親なのに子どもに会えないのは理不尽(30代男性)

 子どもと1ヵ月に1回会わせてもらえる約束で協議離婚したのですが、たった2回で会わせてもらえなくなりました。一方的に「もう二度と会わせない」とメールが来ました。子どもは会いたがっている様子です。

 子どもの権利と母親の面会交渉に対する態度は別にするべきです。母親が私的な理由で面会を断れないような。そして子どもの本当の幸せのために有効な法律が確定するように心から願います。

 10.お金を管理できない母親に親権や養育費を任せるのはおかしい(30代男性)

 そもそも母親が働かないこと(結婚における相互扶養義務違反)が原因で離婚しているのに、母親が有利な運用が成り立つのが不思議である。そのような母親が親権者として適切であるかどうかは、常識で考えれば大いに疑問であるが、日本では「働かない母親」は最強である。「そんなのに関わったお前が悪い」と司法は考えているのであろうか?

「子どもの福祉」という言葉のダブルスタンダードに腹が立つ。お金に関して、子どもの福祉のため、養育費は「とれるところから取る」という方針である。

 しかし、より本質的な子どもの福祉のための面会交流や共同養育について司法は全く積極的でない。金を与えれば子どもは育つのか?また、金すら稼げない母親が、子どもの養育ができるのか?

 「できる」と強弁するのであれば、親権を与える母親の想定している生活レベルの範囲で養育させればよいだろう。父親の生活レベルに合わせる必然性がない。「できない」のであれば、そもそも収入計画のない母親には親権者としての社会的責任を取る資質がないことが示唆される。

 言いたいことは、親権者にきちんとした養育資金の面での計画書を出させるべきでる。そしてそれがきちんと実現されていなければ、親権移動も可能なものとすべきである。自分一人で生きていくのも厳しい人が、親の資格があるのか?もっとこの点を重視すべきだと思われる。

 そのような親による養育の方が、将来的な不幸の連鎖を招くことは、いろいろな例で示されるであろう(離婚の“遺伝”、虐待の連鎖、などなど)。そもそも論として、共同親権になれば(親権で争う必要がなくなれば)、いろいろな問題は解決されると思われる。そして、より実質的な「子どもの福祉」のための、具体的な離婚後の養育計画を話し合う場として、司法が機能すればよいと思う。

● 離婚後の理不尽、不条理 男性たちの声に耳を

 「離婚」という修羅場で理不尽な目に遭い、不条理に悩まされ、そして辛酸を舐めた男性たち…そんな彼らが苦渋の表情を浮かべながら「こんな社会になってほしい」と願うのだから、決して軽くあしらうことはできませんし、真剣に耳を向けなければなりません。「男はつらいよ」と苦笑いするのは簡単ですが、それでは何も変わらないでしょう。こうやって誰かの耳に届くよう声に出すことが最初の第一歩になるのです。男が意見を言いにくい今日の世相だからこそ。

 少なくとも同じ悩みを抱えている人にとって「こんなにつらい思いをしているのは自分だけじゃないんだ」「結構みんな大変なんだなぁ。じゃあ、もう少し頑張ってみようか」と少しばかりの勇気を与えることはできるでしょう。

 (露木行政書士事務所代表 露木幸彦)

「息子に会いたいだけなのに、なぜ」離婚後の親子面会進まず 親の対立、揺れる司法判断

出典:平成29年3月14日 西日本新聞

「息子に会いたいだけなのに、なぜ」離婚後の親子面会進まず 親の対立、揺れる司法判断

「全く面会できていない」4割超
 離婚などで別居している親と子どもが、面会できないケースが後を絶たない。2012年の改正民法の施行により、離婚時に面会交流の内容を協議することが定められたが、決められないまま離婚したり、決めても親同士の対立関係が影響して面会が進まなかったりしている。面会交流を巡っては司法判断も揺れており、何が子どもの福祉や利益にかなうのか、議論が広がっている。

 「息子に会いたいだけなのに、なぜ認められないのか」。福岡県に住む外国籍の40代男性は憤る。5年前、日本人の妻が幼い子を連れて突然出て行った。妻は離婚届に男性の名前を勝手に署名、押印し、役所に提出。知らないうちに離婚が成立してしまっていた。妻の実家を訪ねても、会わせてもらえなかったという。

 男性は協議離婚無効の裁判を起こし、勝訴。ただ、妻はその後に離婚請求訴訟を提起し、「息子を連れ去られるおそれがある」として面会交流を拒絶しており、平行線が続いている。

 法律上、面会交流の回数や頻度など具体的な内容は、親同士で協議して決める。決められない場合、家庭裁判所に調停を申し立てることができる。

 15年に全国の家庭裁判所が受理した面会交流を巡る調停件数は1万2264件で、10年前の2・4倍。日本弁護士連合会の調査では調停で合意に至っても、同居する親が会わせてくれないなどの理由で「全く面会できていない」ケースが4割超にも上っている。

親権者を夫とする異例の判決
 子どもと別居親との面会交流はどうあるべきか-。昨春、ある家裁の判決が話題になった。

 娘を連れ出し別居した妻と、5年以上娘と会えていない夫が親権を争った裁判。千葉家裁松戸支部は「月1回の面会交流を認める」とした妻よりも、「年に100日」とした夫の提案を評価。子との交流を相手に幅広く認めた親を親権者とする「寛容性の原則」を適用し、親権者を夫とする異例の判決を出した。

 迎えた今年1月の東京高裁判決。高裁は「子の健全な成長は別居親との面会だけで確保されるわけでない。娘は妻と一緒に生活して順調に成長し、今後も同居を望んでいる」として、妻に親権を認めた。

 福岡大法科大学院の小川富之教授(家族法)は「(親同士の関係がもつれた)『高葛藤』のケースでは、面会交流が必ずしも子の利益につながるとはいえない。子の健全な成長につながるよう、高裁は事情を総合的に考慮した」と評価する。

DVや虐待が絡むケース、慎重な意見も
 子どもの視点に立ち、面会交流の支援に乗り出した自治体もある。

 兵庫県明石市は、専門家が子どもに心理的なケアを行ったり、離婚前の親向けに子どもの気持ちを考える講座を開いたりしている。昨秋からは、面会交流のコーディネート事業も始めた。市の施設を提供し、面会交流ができない親の間に入って子どもの受け渡しや付き添いを行う。同様の支援をする民間団体もあるが、同市の場合、無料で利用できるのがメリットだ。

 担当者は「子どもが別居親と会いたがっても、親同士が衝突して面会交流に至らないケースは少なくない。日程なども含めて調整し、親同士が顔を合わせることなく実施できる」と説明する。現在までに3家族が計6回利用したという。

 面会交流を促進する法制定の動きもある。超党派の議員連盟は昨年、「親子断絶防止法案」を策定。国会への提出を目指している。ただ、ドメスティックバイオレンス(DV)や虐待が絡むケースもあるため、慎重な意見も根強い。

 早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「現在の法案は、面会交流の取り決めや、実行の責任を親に課すものになっており、父母の対立をいたずらにあおってしまう。困難な家族を、国や自治体が支援できるような法律が必要ではないか」と指摘する。

日本における子供の貧困を人的資本投資、共同親権の側面から考察する

出典:平成29年3月14日 SYNODOS

日本における子供の貧困を人的資本投資、共同親権の側面から考察する

畠山勝太 / 国際教育開発

図、注釈、参考文献はこちら を参照ください。

2.なぜ日本の子供は貧しいのか?
 
2.1 若者の貧困
 
前述のとおり、日本における子供の貧困の原因は、子供が暮らす家庭の貧困、すなわち親世代である若者の貧困にある。もちろん、少子高齢化が進む日本では高所得の高齢者の存在が貧困ラインを引き上げ、若者が貧困ライン以下でカウントされやすいという事実はある。
 
しかし、国税庁の民間給与実態統計調査の結果によると、事実としてこの20年間を見ても、20代の年収は減少している(20代後半だと、平成9年の373.4万円を頂点として、平成26年には343.5万万円へと下落している)。ではなぜ日本の若者は他の先進諸国と比べて貧しいのかというと、その一因として彼/彼女らに対する人的資本投資が十分に行われていない点を挙げることができる。

上の図6は、OECD諸国の高等教育総就学率を示している。日本の高等教育総就学率は先進国の中では低い方に位置しており、若者は十分な高等教育を受けられていないことが読み取れる。アメリカイギリスでは、労働者に求める教育水準が中等教育修了で十分で、かつ肉体的な強靭さが求められるため労働者の多くが男性であった第二次産業から、労働者に求める教育水準が高等教育修了程度で、かつ肉体的な強靭さが求められない第三次産業へと主要産業が移行した際に、男性の教育水準がそれほど上昇しないという男子の落ちこぼれ問題が発生した。しかし日本の場合、国全体でこの落ちこぼれ問題を起こしている状態にあり、子供の親世代の貧困の一因になっていると考えられる。

そして上の図7は、OECD諸国の期待教育年数を示している。図6で示したように日本は高等教育の就学率が低く、結果として期待教育年数も先進国の中では低い方になっている。特に日本の16.4年という値は、先進国の上位グループから2年近く差をつけられている状態であり、若者の平均教育水準を見た時に、大学院を誰も修了していないのと、全員修了しているぐらいの差が存在していることを意味している。
 
幼い子供たちの親は、この若者たちである。つまり、日本は先進国としては若者の教育水準が低く、人的資本蓄積が低水準にとどまっていることが、日本の子供の貧困の一因となっていると考えられる。
 
 
2.2 ひとり親家庭の子供の貧困と養育費問題
 
日本の子供の貧困を考えるときに、親世代の低い人的資本水準に加えてもう一つ考慮しておくべきものがある。それはひとり親世帯の子供の貧困である。OECDの家族データベースによると、OECD諸国のひとり親世帯の相対的貧困率は、その親が仕事をしていない世帯では平均62.6%、仕事をしている世帯では平均20.0%となっている。これに対して日本のひとり親世帯の貧困率は、厚生労働省の最新の国民生活基礎調査の結果によると54.6%、総務省統計局の最新の全国消費実態調査の結果によると60.0%である。日本のシングルマザーの労働参加率は80%超(厚生労働省平成23年度全国母子世帯等調査)と先進国の中でもトップクラスであるにもかかわらず、貧困状況は先進諸国の働いていないひとり親世帯のそれとほぼ同程度となってしまっているのだ。
 
もちろんこれには、ひとり親世帯の親の教育水準が低い傾向があることや、日本の労働慣行がひとり親には厳しいことなど様々な要因を挙げることができるが(これらも字数の関係で本稿では割愛し、また別の機会に論じることとする)、その一つとして日本のひとり親世帯の養育費の受け取り率が低いことと共同親権が導入されていないことも挙げることができる。
  
前述の全国母子世帯等調査によると、日本のひとり親世帯の養育費受け取り率は、平成18年で19.0%、平成23年で19.6%となっている。これに対して上の図8はOECDの家族データベースに掲載されている2000年段階での他国の養育費受け取り率を示している。日本の現状と図8を比べると、日本の養育費の不払い率が先進国の中では高いことが読み取れる。
 
この養育費不払い問題には三つのアプローチが存在する。一つ目は政府が養育費を強制徴収する方法であるが、これを運営するためには高い行政コストが必要なのに対して回収率が見合わないという問題がある。もう一つは政府が養育費を立て替え払いする方法であるが、これが実施されているのは高負担高福祉型の国であり、高負担型の国ではない日本ではこのスキームの持続可能性に疑問が生じる。これらの他に、離婚の際の養育費の取り決めの義務化と共同親権の導入という方法も存在する。
 
日本の離婚の大半は裁判所が関与しない協議離婚であるが、この際に養育費の取り決めが曖昧なままとなり、そして親権がどちらかの親に与えられるため、与えられなかった親にとっては養育費が子供との面会を得るための手段に過ぎなくなり、結果として面会も出来ず養育費も不払いとなるケースが見られる。このような状況に対処するために共同親権の導入が検討される必要がある。以下では、アメリカでなされてきた研究の数々を紹介することで、日本での共同親権導入のインパクトについて示唆を得ることとする。
 
アメリカでも1960年代までは、現在の日本と同様に、離婚後の親権は主に母親側に与えられていた。しかし、70年代になると情勢が一変し、各州で共同親権が取り入れられた。しかし、州によってこの共同親権を導入するタイミングにバラつきが生じたため、このバラつきを利用した自然実験によって、共同親権の導入が与えるインパクトが分析された。
 
共同親権の導入は離婚後の養育費の支払いに影響を与えるが、これは一見すると共同親権導入そのものの恩恵によるものか、それともそれによる養育費徴収の強化によるものなのか判別がつかないため、日本の状況に対する政策的示唆を得ることは難しい。
 
しかし、パネルデータを用いてどちらが正しいのか検証したNepomnyaschy (2007)によると、このどちらの影響も存在している。すなわち、共同親権の導入によって離婚後の父親の子供との面会頻度が上昇し、このことが子供に対する親近感を失うことを抑止し、子供が金銭的に困らないように養育費を確実に支払うようになる。また、養育費を徴収されるようになると、支払った養育費が離婚した母親によって子供のために適切に使われているのかモニタリングする誘因が発生するため、子供との面会頻度が上昇するというわけだ。
 
一方、共同親権の導入がどの程度養育費の支払いに影響を及ぼすかについては、Allen et al. (2011) の推計によると、離婚後のシングルマザーが養育費を受け取る確率を8%程上昇させることが分かっている。
 
そして、養育費の支払いは単純にシングルマザー家計の貧困を緩和するだけでなく、この家計に属する子供の貧困を人的資本投資の増加という形で緩和することにつながる。なぜなら、養育費は他の所得源と比較したときに、より子供のために使われるという性格を持ち合わせており、養育費によって福祉の対象から抜け出せることでそこに伴うスティグマから抜け出せるからである。
 
これは具体的にどういったことかというと、日本の生活保護世帯の子供の大学進学が分かりやすい例となる。現在の日本では、子供の大学の授業料は生活保護の減額対象となるなど、いかにも教育を重視していない国らしい、人的資本投資という側面を無視した福祉行政が取られている。この行政制度もさることながら、生活保護世帯の子供が大学へ行くなんて贅沢だという残念な世論も見られる。この結果、「世帯分離」を取ることによって生活保護が減額されることなく奨学金で大学へ進学するという方法があるにもかかわらず、生活保護世帯の保護者と子供は、自分たちが大学へ行くのは贅沢・世間に申し訳ないという意識から、大学進学という選択肢を取らず就職を選ぶケースもありうる。
 
これが、福祉の対象となるスティグマであり、そしてそのスティグマが人的資本投資を阻害するケースである。そしてこれは大学進学以外にも発生しうる事象で、例えば生活保護世帯の中学生が塾に行くのは贅沢だ、小学生が博物館に行くのは贅沢だ、幼稚園児が絵本を買ってもらうのは贅沢だ、という福祉の対象に入ることによるスティグマが存在すれば、教育の投資収益率が高い早期の段階においても人的資本投資が阻害されてしまう。ところが、養育費の受け取りによって福祉の対象から抜け出せば、言及したようなスティグマから自由になることができ、生活保護による収入増加と養育費による収入増加の額が等しかったとしても、後者の方がより人的資本投資にリソースが割かれるようになるということである。
 
実際に、離婚したシングルマザーが父親による自発的な養育費の支払いを受け取っている場合、所得が上昇する効果以上に、養育費の受け取りは子供の言語能力などの学習成果を向上させることが分かっている(Argys et al. 1998)。さらにBaughman (2014)は、養育費の受け取りは健康保険への加入を促し、健康状態そのものも改善することを見出した。これらは先にも言及したように、支払われた養育費が子供のために使われているか離婚した父親による監視の目が入るため、その他の収入源によるリソースと比べてより子供のために使われる、すなわち子供の人的資本投資に回されるからである。
 
以上のことから、共同親権を日本に導入した場合に子供の貧困に対していくつかの政策的な示唆を導き出すことができる。まとめると、日本のシングルマザーの子供の貧困の度合いは深刻だが、この一因として、養育費の受け取り割合が低いことが挙げられる。共同親権の導入によって養育費の受け取り割合が上昇すれば、現在のシングルマザーの子供の貧困問題が緩和されるだけでなく、教育や保健といった人的資本投資が増加することで、未来の子供の貧困問題も緩和されることが考えられる。
 
しかし、注意しておきたいのは、共同親権の導入は現在婚姻関係にある男女間の力関係に影響を及ぼすということだ。たとえばアメリカでは共同親権の導入によって、婚姻状態にある母親の労働参加率が上昇し(Nunley and Seals 2011)、労働時間も増加したことが分かっているが(Altindag et al 2015)、これは共同親権導入以前は離婚後に父親が子供に会えなくなるという脅威の存在が婚姻状態にある母親に交渉力を与えていたが、共同親権導入後はこれが消滅するため、婚姻状態にある母親の交渉力が低減した結果だと考えられている。
 
前述の影響は女性の労働参加を促進するので好ましいものではあるが、好ましくない影響も存在する。一般的に母親の方が父親よりも子供の教育を重視するため、共同親権導入による父親側の家庭内の資源配分に対する権限強化は、私立学校への進学といった子供への教育投資額を減少させることも分かっている(Nunley and Seals 2011)。
 
また、日本の離婚理由では、身体的な暴力、精神的な虐待が少なくない割合を占めている。共同親権導入による男女間の力関係の変化は離婚前においてはDVの発生件数の上昇などの影響が考えられる。また、面会機会を契機としたストーカー殺人事件なども報告されているため、暴力や虐待により離婚した元夫婦が共同親権を持つことの危険性も考慮される必要がある。養育費の不払い問題に対処するための共同親権の導入には上記のような問題が存在するため、導入を考えるのであれば、事前に様々な対処策を講じておく必要がある点は見過ごされてはならないであろう。
 
 
3.なぜ政府は子供の貧困問題の解決を優先すべきなのか?
 
ここまで議論してきたように、日本の子供の貧困率は高く、これを阻止するためには人的資本投資の増加、制度の改善などを行う必要があり、政策的優先順位は高いと考えられる。なぜなら、子供の貧困は過小な人的資本投資を招いてしまい、将来の貧困の原因になるだけでなく、国の経済発展の足かせになる可能性があるからである。
 
日本財団子供の貧困対策チームによる『徹底調査 子供の貧困が日本を滅ぼす 社会的損失40兆円の衝撃』(文藝春秋)は、子供の貧困が招く過小な人的資本投資によって、具体的にどのような経路を辿って、どの程度の経済損失が発生するのかを推計している。この本はそれ以外にも子供の貧困について具体的な事例や解決策の提示などを行っているので、ぜひ一度目を通して頂きたいが、ここでは経済損失の部分について紹介したい。
 
日本財団子供の貧困対策チーム(2016)によると、例えば非貧困世帯出身の男性の最終学歴が中卒であるのは4.6%であるが、貧困世帯出身の男性のそれは23.8%と5倍近い差が存在したり、非貧困世帯出身の男性の最終学歴が大卒であるのは45.0%であるが、貧困世帯の男性のそれは15.0%と非貧困世帯の1/3に留まっているなど、貧困世帯の子供が受け取る人的資本投資の少なさが、人的資本投資のアウトプットの格差を引き起こしている。この人的資本投資のアウトプットの格差によって、両者の間にはアウトカムレベルで「就業率」「雇用形態」「同じ雇用形態間での所得格差」の3つの格差が生まれる。
 
この3つの格差は貧困家庭出身者の生涯所得を平均して1600万円程度押し下げ、政府に対しても、貧困家庭出身者一人当たりに追加的に600万円の支出増/収入減という影響を与える。これを子供全体の6人に1人の割合で当てはめると、個人所得が40兆円減少し、政府も16兆円の損失を受けることとなる。そして、この推計値は治安への影響を除外しているなど過小な人的資本投資が招く悪影響の全てを網羅しているわけではないことを考えると、いかに子供の貧困が招く人的資本の過少投資の影響が大きく、政府にとって優先順位の高い政策課題であるかが分かるかと思われる。
 
 
4.まとめにかえて――日本は子供の貧困を克服することで日本を取り戻せるか?
 
20年前の日本は、GDP世界一のアメリカに迫る世界の超大国であり、途上国支援のODAの額も世界一であった。しかし、現在の日本はGDPで2位の座を中国に譲っただけでなく、既に倍近い差を付けられている。国民一人当たり所得で見ても、既にOECD諸国の中でも下位に位置し、イタリアなどと同程度の水準となっている。そして、ODAの額も4位へと転落し、5位フランスに肉薄され逆転されるのも時間の問題となっている。
 
日本が超大国の座から転落しつつあるのにはもちろん様々な理由があるが、その一つに子ども・若者政策の失敗が挙げられる。日本は高等教育への公支出が少なく、若者の所得が伸びなかった。30代男性の1/3の所得が300万未満で、そのうちの2/3が未婚という現状が象徴するように、若年低所得層で未婚率が高く、出生率も改善しなかった。そして、生まれてきた数少ない子供たちが貧困に陥らないような制度整備も不十分で、人的資本蓄積のために最も重要な時期に十分な投資が行われてこなかった。この結果、稼ぎ手の数が少ないにもかかわらず、その稼ぎ手達が十分稼げず、日本は超大国の座から転落しつつある。
 
高負担・高福祉型の社会であれば、全ての人達に手厚い対策を施すことができたであろう。しかし、残念ながら日本は高負担型の社会ではないため、手厚い対策を施せる対象が限定された。ここで、未来の稼ぎ手となる子供・若者が対象として選ばれていれば、日本がここまで転落することはなかったのかもしれない。世代間対立を煽りたいわけではないが、現実は高齢者に対する支出はGDPの約11.2%にも上るのに対し、子供を含めた家族へのそれはわずか約1.3%であった。
 
「日本を取り戻す」という陳腐なスローガンをよく耳にするが、超大国の座を取り戻すためには、まず稼ぎ手の数を確保し、そしてその稼ぎ手達が十分に稼げるよう、子供・若者の貧困問題に取り組み、人的資本を質量ともに充実させる必要がある。
 
そのためには、高負担・高福祉型社会へ転換し、手厚い対策を施せる対象を拡大させるか、あるいは現行の高負担型ではない社会を続けるのであれば、手厚い対策が施される対象を子供・若者へとシフトする必要があるだろう(日本の人口ピラミッドと票田を考えると後者の方が実現可能性は低いのかもしれない)。いずれにせよ、「日本を取り戻す」ためには政治的に大きな決断が必要とされている。
 
図、注釈、参考文献はこちら を参照ください。

<社説>ハーグ条約初適用 主旨周知し子の利益守れ

出典:平成29年3月2日 琉球新報

<社説>ハーグ条約初適用 主旨周知し子の利益守れ

 不幸な境遇に置かれた子の利益を第一に考えたい。そのためにも条約の周知を徹底したい。
 県内の女性が「ハーグ条約」に基づき、米国人父親の両親と暮らす1歳の娘の返還を求めた申し立てについて、米フロリダ州連邦地裁は母親の請求を認めて娘の返還を命じる決定を出した。「子どもの通常の居住国は日本」と同地裁は判断した。
 今回の裁判は米国人と結婚し、米本土で暮らしていた女性が妊娠中に夫の暴力に遭い、帰国したことが発端となった。娘は帰国後に生まれている。その後、娘の親権を主張する父親の訴えを裁判所が認め、女性は子どもを失った。
 夫の暴力で夫婦関係が破綻した経緯を考えても、条約に基づく地裁決定は妥当だ。一日も早く、女性が娘と再会できるよう当事者や関係者の理解を求めたい。
 両親の離婚などで国境を越えて引き離された子どもの取り扱いを定めた「ハーグ条約」に日本は2014年4月に正式加盟した。条約は子どもを元の居住国に戻すことが原則で、県内からの返還申し立てが認められたのは初めてだ。
 国際結婚の増加に伴い、その後の離婚で一方の親が子どもを連れ去り、もう一方の親に面会させないという「子の連れ去り」が問題視されるようになった。
 国境を越えた連れ去りは、言葉や生活基盤など子どもを取り巻く環境を大きく変えてしまう。成長に有害な影響を与えかねない。特に家庭内暴力が要因となって国際結婚が破綻した場合、子どもの処遇は深刻な問題となる。子どもの利益を守るためにも「ハーグ条約」の円滑な運用が必要だ。
 憂慮されるのは正式加盟から約3年を経過した現在でも「ハーグ条約」の存在自体が十分に周知されていないことだ。
 沖縄のように米軍基地が集中する地域では、条約の適用対象となり得るような事案がほかにも起きている可能性がある。条約に基づく子どもの返還請求の手続きを知らないまま、当事者が泣き寝入りするようなケースを防がねばならない。
 沖縄は復帰前から国際結婚を巡る課題と向き合い、解決を模索してきた。その経験を踏まえ、「ハーグ条約」の運用にも積極的に関わる必要がある。市町村に担当窓口を置くなどの主体的な取り組みが求められる。不幸な親子を救うための手だてを急ぎたい。

家族と法(上) 離婚しても子に会いたい 交流求め、調停・審判急増

出典:平成29年2月28日 日本経済新聞

家族と法(上) 離婚しても子に会いたい 交流求め、調停・審判急増

離婚や遺産相続など全国の家庭裁判所が担当する「家事事件」が、年間100万件を超えた。離婚後の子供との面会をどうするか。介護負担を相続に反映させるべきか。紛争のかたちは複雑になっている。解決を願う当事者の思いから、司法が抱える課題を探る。

 「お父さんと会うのはイヤ。毎月100万円くれるなら会ってもいい」。北陸地方に住む50代の男性は昨年10月、送られてきた書面に印刷された「娘の言葉」に絶句した。差出人は別居中の妻の弁護士。妻は2年前、長女(8)を連れて家を出た。以来、娘の姿は一度も見ていない。

「娘の本心は?」

 2015年春、離婚を前提に長女との面会を求める調停を起こした。しかし家庭裁判所は「長女が拒んでいる。面会は認められない」と諦めるよう促した。「娘と引き離される前日まで同じ布団で並んで寝ていた。『会いたくない』が本心のはずがない」。調停は合意に至らず、今月からはより訴訟に近い形の「審判」が始まった。
 離婚前後に父母が別居したとき、どちらが子供といっしょに暮らし、離れて暮らす親との面会をどうするか。法的な争いが急増している。15年に面会をめぐる調停や審判は全国の家裁で1万4241件。10年間で約2.5倍に増えた。
 離婚で家族がばらばらになって「縁が切れる」という感覚が薄まり、離婚しても父母ともに子供と会うべきだという意識の変化が背景にある、と司法関係者はみる。
 昨秋、東京家裁が1つの決定を出した。別居中の母親に月1回娘を会わせる約束を守らない50代の父親に対し、「1回の面会拒否で100万円」の支払いを命じる決定をした。高裁で30万円に減額されたが、子供との交流を重んじた新たな判断として注目された。
 離婚紛争の専門家によると、欧米では離れた親に宿泊を伴う長期間の面会を認めるケースが多い。しかし日本の裁判所では、特に父母間の対立が激しい場合、親権を持ち同居する親との関係維持が優先されやすい。同居する側が「会わせたくない」と考えれば、一方の希望は通りにくい。
 棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「別居前の子育てへの関わり方や親子関係を丁寧に考慮したうえで、問題がなければ少しずつ面会の実績を積み上げられるような判断が裁判所に求められている」と話す。

子の利益優先を

 人口動態調査によると、両親が離婚した子供は年間22万人。今の出生数で考えると、5人に1人が経験している計算だ。面会場所を提供するなどして離れて暮らす親子を支援する家庭問題情報センター(FPIC)の山口美智子理事は「父母にはそれぞれ葛藤があるが、子供の思いをくみ取る姿勢を親も司法も忘れないでほしい」と訴える。
 もともと面会交流の規定は民法には明確にはなかったが、12年施行の改正法に「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。超党派の議員連盟は昨年末、離婚後も親子関係が続くよう促す法案をまとめた。
 ただ離婚の背景にドメスティックバイオレンス(DV)がある場合も考えられ、反対意見も強い。法整備で面会が広まるかどうかは不透明だ。
 会いたい親、会わせたくない親。どちらも裁判所に解決を求める。親の離婚に直面した子供のため、どんな解決策を示すのか。「全員が納得するような大岡裁きを期待されても困る」(ベテラン家事裁判官)とため息が漏れるなか、きょうも「子をめぐる争い」が裁判所に持ち込まれる。

娘の返還、米地裁が認定 ハーグ条約に基づき沖縄在住女性が要求

出典:平成29年2月28日 沖縄タイムズ

娘の返還、米地裁が認定 ハーグ条約に基づき沖縄在住女性が要求

【クリッシー悦子米国通信員】国際結婚が破綻した後の子どもの扱いを定めたハーグ条約に基づき、沖縄県内に住む40代女性が米国人夫との間に生まれ、米国で夫の親族と暮らす1歳9カ月の娘の返還を求めた申し立てで、米フロリダ州連邦地裁は17日(現地時間)、女性側の要求は妥当として夫側に子どもの返還を命じた。娘が普段から住む場所(常居所)が日本国内だと認定された。女性側の代理人によると、日本がハーグ条約に加盟した2014年以降、子の返還申し立てを認めたのは県内で初めて。

 女性側代理人の武田昌則弁護士(琉球大学法科大学院教授)によると、女性は同年5月に在沖米陸軍所属の米国籍の男性と結婚。15年3月に米本土に夫と転勤転居したが、妊娠中にDV被害を受けたことなどで帰国。同年7月に長女を出産した。

 その後、夫側から「娘と親族の結婚式に参加してほしい」と懇願され、同年10月、夫の実家があるフロリダ州に渡航したが、夫から虚偽のDV告発を受けて逮捕された。娘は夫の両親に引き取られ、パスポートも夫が保管。夫側は子どもの親権を主張する訴訟を同州の裁判所に起こし、娘は夫の母親が引き取るべき、との決定が出た。

 女性は同州のシェルターに約2カ月滞在し、支援を受けながら娘の返還を求め続けたが認められず帰国。16年10月、ハーグ条約に基づき、同州連邦地裁に娘の引き渡しを申し立てた。17年1月には同裁判所での審理にも出頭。女性側は「娘は県内で出生し、国民健康保険や光熱費、住居費も母親が負担している」と訴え「結婚式のために渡米した際は、夫も、娘を連れての帰国を認めていた」などと主張した。

 夫側は「女性は米国に永住するつもりで渡米し、片道の旅券しか購入していない」などと反論したが認められなかった。

 決定を受け、女性は「大変なこともあったが、娘が帰ってくることを家族ともども喜んでいる」と語った。

 ハーグ条約は、連れ去りなどが始まった時、常居する国が条約締約国の場合、締約国に子どもを返還するよう求めている。武田弁護士は「妥当な判断。国際結婚が破綻した際のリスクを知ってほしい」と語り、今後、夫側と娘の引き渡しを調整する。一方で「同様のケースで母親の主張が認められなかった場合もあり、子どもが帰るまで安心できない」と語った。

 【ことば】ハーグ条約 正式名称は「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」。一方の親が16歳未満の子どもを配偶者に無断で国外に連れ去った場合、原則として、いったん子どもを元の居住国に戻すことなどを定めている。1980年にオランダのハーグ国際私法会議で採択され、83年に発効。日本は2014年に条約に加盟し、16年11月の時点で95カ国が締結している。

親子断絶防止法案(仮称)」 離婚後の子どもにとって最善の利益とは?

出典:平成29年2月24日 TBS 国会トークフロントライン

「親子断絶防止法案(仮称)」 離婚後の子どもにとって最善の利益とは?

ずっとやってらした「親子断絶防止法案(仮称)」が一応まとまったということで、今日はその話を伺った。

 「我が国では9割が協議離婚、残りの1割が調停離婚。私がショックだったのは、親の離婚に毎年13万~15万の未成年のお子さんが巻き込まれている。そして、養育費などの経済的問題はもちろんですが、離婚に至るまでにお父さんとお母さんの、ののしりあいやDVによって、自分が悪いんじゃないか、自分が原因ではないかと思ってしまい、トラウマやPTSDが残る。さらに離婚後、親に会えないという喪失感。離婚でいろんな問題が子どもたちに起こってくる。これを放っておいていいか、ということです」

 具体的には? 「(1)養育費、それに面会交流の回数ややり方をキチッと取り決めをして、書面に残す。(2)定期的・安定的な面会交流ができるように国や地方自治体が支援する。というのが中心です。もちろんDVや児童虐待などの特別なケースには配慮します。子どもの意見というのも大事です。ただ子どもの判断で決める、はダメです。子どもに負担を押しつけることになりますし、子どもの成長段階・発達段階で考え方が変わってきますからね」

 罰則がついていないから実効性ない? 「いや、義務ではなくて、子どもにとって親がいかに必要か、親は互いにいがみ合うのでは無く、愛情を持って子どもに接してほしいから作ったんです」

 家庭のことに国が口を出すのはいかがなものか、という意見もあるが? 「私もそう思います。ただ、私にとってこの問題、永遠のテーマなんです。児童虐待防止法、高齢者虐待防止法、いじめ防止対策推進法、発達障害者支援法などなど、20数本の議員立法に関わってきました。少数の問題であってもどれも家庭の問題に関わってくるんですよね。国が支援することはたくさんあると思います。たとえば、養育費を払わない人は7~8割もいます。面会交流をしている人は6割くらいです。これに対応するために、適正にアドバイスする資格を持った人や場所をどう作るか。DVかどうか判断するのも難しい。シェルターだって財源難で減る中、どうNPOを支援するかとか、支援体制を作ることが国の役目と思っています。この法律案は通ってから施行までに2年半の猶予をおいている珍しいものなんです。つまり、それだけ準備に時間がかかるということなんですね」

 今、超党派議連でまとめたこの法案を、各党が持ち帰って精査しているところだという。入っていない共産党にも行って笠井政調会長に説明をしてきたとのこと。「今国会で成立させたいのですが、実は付託するのが法務委員会なので、あの『テロ等組織犯罪処罰法改正案』がありますから、どうなるかなあ?」

Japanese courts rule Minnesota children will stay in Japan(日本の裁判所がミネソタ州から連れ去られた子供たちを返還させないとの判決を下す)

出典:平成29年2月17日 MPRNEWS(アメリカ)

Japanese courts rule Minnesota children will stay in Japan(日本の裁判所がミネソタ州から連れ去られた子供たちを返還させないとの判決を下す)

※下記は掲載記事の日本語訳です。

日本語訳出典:絆CPR
https://www.kizuna-cpr.org/james-cook-hague-case

日本の裁判所がミネソタ州から連れ去られた子供たちを返還させないとの判決を下す。
問題 マンダ・リリー ・ 2017年2月17日

今週金曜日、日本の裁判所は、国際的親権争いの渦中にあるミネソタ州生まれの子どもたちが日本に留まることを認める判決を出した。
ジェームズ・クックと有光ひとみ(有光工業株式会社の代表取締役の娘)は、日本か米国どちらが4人の子どもの母国であるかどうかを議論している。
この夫婦の事件は、日本の裁判所を通じて2年以上の時間を費やしてきた。金曜日の判決は、米国を子どもたちの本来の居住国として認めた前回の法的措置を覆した。

2014年7月、日本人の有光ひとみは、夫婦の4人の子どもたち(8歳と13歳の双子2組)を連れて日本に休暇で訪れていた。この夫婦の関係はこの時拗れており、子供たちと母親にとって良い休暇になることになるだろうと日本の祖父母を訪れる6週間の旅行に同意した。
それから2年以上経つが、有光と子どもたちは、まだ米国に帰っておらず、彼女とクックは子どもたちの親権のために裁判所で争い続けている。
日米両国が締結している国際条約であるハーグ条約により、クックは日本の裁判制度を利用することが認められ、裁判所は2015年1月(訳注:2016年1月の誤り)、子供たちがミネソタ州に帰るべきであると判断した。一方、同年クックは、ヘネピン郡裁判所を通じて有光との離婚を申請した。その過程で裁判官は、クックに子供たちの暫定的親権を認めた。

それ以来、有光は子どもを米国に戻すことを拒否しており、彼女は日本とミネソタの裁判所命令を侮辱していることになる。
関連:国際法がミネソタ州の親権争いを縺れさせる http://www.mprnews.org/story/2017/02/10/international-law-tangles-minnesota-custody-battle-
金曜日の判決は、日本の裁判所の2015年(訳注:2016年)の判決を覆す。大阪地方裁判所は、有光が先月提出した申立てに同意した。同氏は、クック氏は住宅や学校の費用を支払う手段がなかったため、ミネソタ州に子供たちを戻すことができなかったと書いている。それには、「米国に戻った場合、子どもたちが損なわれる重大な危険にさらされる」と書かれた。

裁判所は、クック氏には4人の子どもたちを扶養するための資金が不足していると判断したが、弁護士のビクトリア・テイラー氏は、この判決の取り消しはハーグ条約に沿わないと主張している。

「これは国際的な事件になるだろう
とテイラー氏は述べた。
テイラー氏は、依頼人のクック氏と米国国務省に連絡をとり、子どもたちの帰国を確実にするために日本に対してどのような制裁を課すことが妥当か見極めると述べた。

「全国女性シェルターネット」が展開する東京高裁への要望

出典:平成29年2月6日 月刊リベラルタイム3月号

「全国女性シェルターネット」が展開する東京高裁への要望
月刊リベラルタイム3月号「「全国女性シェルターネット」が展開する東京高裁への要望」

 米大統領選当選直後にトランプ氏と面談した安倍晋三首相が、トランプ氏の孫娘であるアラべラ・ローズちゃんのPPAP動画を話題にしたが、幼い子どもは実に可愛いものだ。まして、それが血のつながっ た肉親であればなおのこと。母親、父親にかかわらず自分の子どもはいとおしい。

 しかし、日本では親権者や養育者を決定する際には、母親が養育するのが望ま しいとする「母親優先の原則」や成育環境が変わるのは子どもに不利益との考え方から「継続性の原則」が重要な要件となっ ている。加えて、DV防止法によって、一方的に父親が悪者にされるケースもある。

 例えば、夫婦喧嘩が激しくなり、妻が子どもを連れて実家に帰り別居となった場合、子どもの親権を父親とするのはかなりの困難が伴うのだ。実家に帰った妻が病院に行き「ストレス性腸炎」等という診断書をもらっていればなおさらだ。妻がDVシェルターに入ると、裁判所は「DVがあった」と見なしてしまうケースが多い。全国女性シェルターネットというNPO(特定非営利法人)の理事である近藤恵子氏は「被害者が逃げて来たという事実が、DVの明確な証拠」と話している。実際、DVがなかった場合、なかったという事実の証明は難しい。DVがなくてもあったと見なされてしまう冤罪もある。あるいは「DVで訴えた」という事実が残る。そして、たいていの場合、DV防止法による「接近禁止命令の訴え」を妻が出す。すると裁判所はDVがあってはならないので、「接近禁止命令」を下すのだ。すると、子どもに会えない父親は「継続性の原則」から親権争いでは立場は弱くなる。

 そうなれば、離婚した夫婦間での子どもの親権争いは大きく夫に不利になる。余りにも辛いので、夫が自力で子どもを取り戻そうとすれば、妻は警察官を呼び、逮捕にでもなれば、親権争いでは負けと なる。いうまでもないことだが、これはDV等存在しない場合である。こうしたケースを未然に防ぐために「親子断絶防止法案」が検討されているが、いまや骨抜き状態になっている。前述したように子どもが可愛いと思うのは、父親も、母親も同様だろう。ところが、現状の日本ではきわめて父親に不利な状況がある。「父親は強く、母親は弱い」という固定観念から男女共同参画関係予算では「女性に対するあらゆる暴力の根絶」に一千億円を超える予算が与えられている。

 そんな予算の恩恵にあずかっている全国女性シェルターネットが、ある裁判の判決を巡って、署名活動や東京高等裁判所への要望を行っているという話が聞こえてきた。この裁判は五年以上別居状態の夫婦が長女の親権を争った裁判で、千葉家庭裁判所松戸支部は、二〇一六年三月二十九日に「夫を親権者と定め、同居する長女を夫に引き渡すよう」命じた判決を出した。妻が控訴したため、一七年一月二十六日には東京高等裁判所で判決が出ているはずだが、昨年行われた相談員研修会〜DV被害者について学ぶ〜で、全国女性シェルターネットはこの裁判の判決を妻の勝訴としたいために、高裁に圧力をかけようと署名活動を実施した。これは内閣府主催の講演会で、講師は全国女性シェルターネット理事の近藤恵子氏。国費で行う講演会で、NPOがそうした訴えをしていいのだろうか。

 この際に配布された文書には「夫からの暴言、暴力、精神的虐待、経済的虐待等から結婚四年後に別居」等と裁判では事実とは認められていない記載がある。事実がねじ曲げられている。この団体が前述裁判に血道をあげるのは、奈辺にあるのか。

面会交流 拒否1回100万円「あまりに過大」30万円に

出典:平成29年2月11日 毎日新聞

面会交流 拒否1回100万円「あまりに過大」30万円に

東京家裁決定は「1回の拒否に100万円の制裁金」
 別居している長女との月1回の面会交流が裁判で認められたのに長女と同居する夫が応じないとして、妻が1回の拒否につき100万円の制裁金の支払いを夫に命じるよう求めた裁判で、東京高裁は8日付で、請求を認めた東京家裁決定(昨年10月)を変更し、1回30万円に減額する決定を出した。川神裕裁判長は「100万円はあまりに過大で相当ではない」と指摘した。

 妻は取り決めを守らない親に裁判所が制裁金の支払いを命じる「間接強制」を申し立てた。同様のケースでは拒否1回につき5万~10万円程度が多く、家裁決定は異例の高額だとして注目された。
 高裁決定は「小額の支払いを命じるだけでは面会交流は困難」と家裁の判断を支持する一方、金額について「(面会拒否を続けた)夫の態度を考慮すると理由がないものではないが、相当ではない」と判断した。
 高裁決定などによると、夫妻は離婚裁判中で2011年から別居。東京家裁が15年に妻と長女の月1回の面会を認めて確定したが、夫は面会に応じなかった。100万円の間接強制を認める家裁決定後、妻と長女は5年ぶりに面会した。【伊藤直孝】

<子の幸せは?> 親子断絶防止法案、「面会交流」めぐり賛否

出典:平成29年2月10日 中日新聞

<子の幸せは?> 親子断絶防止法案、「面会交流」めぐり賛否

 離婚後の親子の面会を促す「親子断絶防止法案」(通称)をめぐっては、賛成と反対、双方から切実な声が聞かれる。日本では離婚の際に子どもの親権者を決める必要があるが、離婚が珍しくない時代になり、その後の面会交流をめぐる争いも多い。双方の意見を聞いた。
 「子どもの連れ去りが少しでも減ることが期待できる」。「親子断絶防止法全国連絡会」事務局長の平田晃久さん=東京都=は、法の成立に期待する。メンバーの中には、婚姻中に配偶者が子どもを連れて出ていき、なかなか会えない人が多数いるという。
 平田さんは「日本では婚姻中でも、子どもを連れて出て行かれた時点で、実質的に親権を失う」と話す。先月二十六日、別居中の夫婦が長女(9つ)の親権を争った訴訟で、東京高裁は妻と長女の面会交流を年間百日としていた夫を親権者とした一審千葉家裁松戸支部判決を変更。既に同居している妻を親権者と認めた。二審判決は、同居の親を優先する「継続性の原則」に基づいているが、親権訴訟では圧倒的にこの原則が適用されることが多い。
 別居中の親が子どもとの面会を希望し相手に応じてもらえない場合、調停で同意するか、審判で面会交流が決まるまで、ほとんど会えないという。「毎日のように絵本を読んであげたり、一緒に遊んだりしたわが子と引き離され、調停や審判で争っている間に何年もたってしまう。そんな悲劇はなくなってほしい」と訴える。
 また、調停や審判をしても、認められるのは月一回かそれ以下の面会交流だけというケースも多い。法制化によって、宿泊もできるようになるなど、面会交流の内容が充実することも望んでいる。
◆DVの場合は慎重に
 子どもと同居する親を支援する団体からは、懸念の声が上がる。
 ひとり親家庭を支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ」(東京都)の赤石千衣子理事長は、二〇一一年の民法改正で面会交流の規定ができて以降、裁判所の審判や調停で、「夫婦間にどんな事情があっても面会交流をするよう促されるケースが多くなった」と感じている。
 例えばドメスティックバイオレンス(DV)で被害者に近づかないよう裁判所が命じた事案でも、子どもへの暴力がないとして面会交流をさせる判断が下されているという。
 長崎市では先月、面会交流の取り決めをしていた元妻が、子どもを送り届けて元夫に刺されたとみられる殺人事件が発生。「子どもや同居親の命が危険にさらされる恐れがある」と、法制化を危惧した。
 児童精神科医にも、法案を懸念する声がある。あいち小児保健医療総合センター(愛知県大府市)の古橋功一医師は「夫婦間DVで、子どもへの直接的な暴力がなくても、子どもへの悪影響は大きい」と話す。
 夫から妻へのDVを見ていた子どもは、父親と別居した後に暴力などの行動を起こすことがあるという。「父親は『自分が離れたことで、子どもが不安定になった』と思うが、そうではない。父親が近くにいなくなり、恐怖で閉ざしていた心が動くようになったため、そうした行動がでてくる」と指摘する。
 また、中には父親の影におびえ、似た人を見たり、似た声を聞くだけで怖がる子どももいるという。その場合、面会交流が適切でないとの意見書を書くことがあるが、裁判所が面会交流をさせる決定をする例が増えているという。
 「もちろん会わせてよいケースはあるが、とにかく会わせるというのは危険」と警鐘を鳴らす。
 (寺本康弘)

【それは無能、無責任な第三者の言い訳です】「夫婦がいがみ合っているなら子どものためにも離婚した方が良い」という理論は、自殺者の意思決定過程と同一

出典:平成29年1月19日 土井法律事務所ブログ

【それは無能、無責任な第三者の言い訳です】「夫婦がいがみ合っているなら子どものためにも離婚した方が良い」という理論は、自殺者の意思決定過程と同一

良心的な人の中にも夫婦がいがみ合っているくらいなら、離婚をした方が、子どものためにも良いという人がいます。

これは、自死に踏み切るときの人の考え方と同じです。

とてもわかりやすい例なので紹介してみることにしました。

特徴的なことは、選択肢が極端に限られていることです。

選択肢A:子どもの前でいがみ合いながら夫婦生活を続ける
選択肢B:離婚する

さあどちらを選ぶということですからこれはまともな大人の思考ではありません。
選択肢Aには、バリエーションがあるはずです。

選択肢A-1
いがみ合いの原因を探究して、あるいは原因はともかくいがみ合いをやめる。
ということがまともな人間の選択肢です。

また、選択肢A-2
いがみ合いを続けながらも子どもの前では、仲良くふるまう。

あるいは,選択肢A-3
いがみ合いを弱くしつつ楽しい共同行動も増やす。

まあ、
選択肢Aー3が実際的でしょう。

そもそも、多少の軋轢があるということが普通だと思うし、それが健全な姿だと思いますよ。

全く、喧嘩もない夫婦、ニコニコと意見の違いを昇華させていく夫婦そういうのは現実的なのでしょうか。

意見の違いがあって、言いたいことを言うために。
少し相手に遠慮があるからこそ、多少の怒りという勢いが必要なのだと思います。

全くいさかいのない夫婦は、どちらかが我慢したり、あきらめたり無理をしているんじゃないかなとそう思うのは、少しひねくれていますか?

問題は、悪口言われたり、多少ひどい扱いを受けても修復する力があるかどうかということになると思います。

これは、子どもにとって、一番有益です。けんかないし、意見対立が不可避でも、それで終わりにならないということを目の前の身内を見て学習するということです。

大事なことは、嫌なことはなかったことにするということと、水に流す力ですね。
絶対一緒にいるということです。それができれば、いさかい、大いに結構だと思います。

自死の思考パターンも全く同じです。

例えば、このまま会社で苦しみ続けるか死ぬことによって苦しみから解放されるかという選択肢しかなくなってしまうのです。

当事者から聞くと、会社を退職するという選択肢も出てこないのだそうです。

もちろん、会社の人間関係を修復しよう等と言う前向きな考えにはなりません。

自死の場合は、いろいろな嫌なことがあり、自力で回復することができないという不可能感と自分には有効な味方がいないという極端な孤立感のため、だんだん焦りが高まっていきます。

落ち着いてものを考えることができなくなり、第三の選択肢が思い浮かばなくなり、自死をすることで死亡した後のこと等も漠然としか考えられなくなるようです。
何をやってもうまくいかないだろうという悲観主義的な思考も現れます。

ある意味、それは、自分がそういう立場に追い込まれているということになります。

ところが、離婚の場合は、第三者が、当事者に対して「親が喧嘩ばかりしていたら子どもも不幸でしょうと」無責任なアドバイスをしているのです。
悪魔のささやきです。

外にも選択肢があるのに、第三者がそれを切り捨てたり、目隠しをしたりしているわけです。
犯罪的だと思います。

離婚が子どもに対して、長期にわたり負の影響を与えること自体は確立した結論です。

離婚という他人の人生、特に子どもの健全な成長にかかわる弁護士、裁判所関係者は、病的な視野狭窄型の選択を迫るのではなく、一次的には、夫婦が子どもを育てていくという選択肢を追及するべきではないでしょうか。

お互いを好きあって結婚した夫婦です。不和が生まれるのには、それなりの理由が必ずあります。離婚して子どもとはなれるくらいならば、これまで生き方を我慢して修正するべきです。

そういう問題提起を専門家は行うべきです。

他人の人生なんてどうでも良い、子どもの成長も、子どもの自己責任だという大人があまりにも多く、それを自覚しない専門家が多すぎると思います。

また、人間同士の関係を修復する力が極端に弱く、夫婦というのは、憐れみの対象である被害者になりやすい依存傾向のある人間と攻撃すべき対象である自己愛型パーソナリティ障害者の組み合わせだと信じているかのような無能な専門家にはなりたくないと強く思っております。

<子の幸せは?> 離婚後も親の責任意識を

出典:平成29年2月9日 中日新聞

<子の幸せは?> 離婚後も親の責任意識を

 離婚後に別々に暮らす親子に交流を促す「親子断絶防止法案」(通称)の国会提出を、超党派の国会議員連盟が目指している。別居した親が子どもに会おうとしても同居親の同意を得られず、調停や訴訟の件数が増えていることが背景にある。ただ、ドメスティックバイオレンス(DV)の被害者には、元配偶者と子どもの面会に強い不安を感じる人も少なくない。子どもにとって何が一番良いのか。それをめぐる意見の対立も深い。議連事務局長の馳浩衆議院議員に法案の狙いを聞いた。

親子断絶防止法へ活動 馳衆院議員に聞く
 -法案の目的は。
 子どものいる夫婦が離婚した場合、養育費の支払いと面会交流を通じて子どもの成長を見守ることは親の責任として果たす必要がある。しかし、実態はいずれも十分ではない。離婚にはそれぞれの事情があるが、養育費が支払われないことで、子どもが経済的に困難になってはいけないし、両方の親と交流を続けることも必要だ。
 -法律で定める必要があるのかという意見がある。
 家庭の問題に法律が入ることは難しい。しかし、社会で一定のルールはつくっておく必要がある。法案に罰則規定はなく強制力がないといえばそれまでだが、法制化によって、養育費を払う、面会交流をするという意識を浸透させられると考えている。
 離婚やその後については、夫婦でしっかり話し合い、合意することが大切だ。だまって子どもを連れて出て行くケースがあるが、それは基本的にはいけない。話し合うのに危険があれば、児童相談所やDV被害者の支援機関に相談するなどしてほしい。第三者に入ってもらうのがよい。
 -子どもを面会交流させることに、強い不安を持つ人も少なくない。
 法案は「子どもの最善の利益を考えて」と強調している。全く会わせないことがいいという判断もあると思う。子どもへの虐待や夫婦間でのDVがあった場合についての配慮も法案には具体的に盛り込んである。
 どちら側からも法案の内容では不十分という意見がある。双方の話を聞き、原案をずいぶん修正した。各党に持ち帰ってもらっているが、全会派の合意を得て成立させたい。

養育費・面会交流 取り決め書面に
 超党派議連は二〇一四年三月に発足。自民、民進など衆参の国会議員七十人で構成している。法案は、離婚後も父母が子どもと面会交流などを通じて、継続的な関係を持ち続けることが原則として「子の最善の利益に資する」と掲げる。現状では、取り決めがないことが多い養育費の支払いや面会交流の実施について、離婚時に書面にするよう努めることを柱としている。同居親が実現するようにするとしている。
 法案が議論される背景には、父親を中心に面会を求める別居親が増えていることがある。面会交流の調停や審判を父親が申し立てる件数は、十年前の二・六倍。厚生労働省の一一年度の調査によると、父親と子どもが別居していて、定期的に面会交流をしているのは27・7%にとどまっている。
 夫婦の一方が、相手に黙って子どもを連れて出て行き、離れて暮らす親が子と会えない事態が各地で起きていることを受け、法案は国や自治体に対し、防止に向けた啓発も促す。
 議連の中で協議を重ね、法案は修正されてきた。当初、子どもの意思を重視する趣旨の条文はなかったが、面会交流の実施については、子どもの意思を確認する機会の確保に努め、その意思を考慮することを盛り込んだ。また、児童虐待や元配偶者へのDVなどがある場合は「特別の配慮がなされなければならない」としていたが、より具体的に、面会交流を行わないことを含めた特別の配慮を求めている。
 超党派議連は法案を各党に持ち帰り、議論している段階。今国会での成立を目指している。
 (寺本康弘)

離婚「裁判沙汰」抵抗なく 家裁の案件、16年100万件超

出典:平成29年2月9日 日本経済新聞

離婚「裁判沙汰」抵抗なく 家裁の案件、16年100万件超

 家庭裁判所が扱う「家事事件」が2016年に初めて100万件を超えることが確実になった。大きな要因の1つが、離婚をめぐる夫婦のトラブルが数多く家裁に持ち込まれるようになったことだ。養育費や子供との面会をめぐる争いが増えており、専門家は「対立が深まって裁判所頼みになる前に、問題を解決できる仕組みが必要」と指摘する。
 「夫婦が激しく争い、歩み寄りが難しい案件が増えた」。離婚を巡る争訟に詳しいベテラン裁判官は実感を語る。人口動態調査によると、2015年の離婚件数は約22万6千件。前年より増えたが、30万件近くあった00年代前半と比べると低い水準だ。結婚件数そのものが減っていることなどの影響とみられる。
 しかし、離婚に絡む法的な争いは増えている。例えば、子供と一緒に生活して世話をする「監護者」を定める調停と審判の申し立ては15年に4562件と、10年間で3倍以上になった。1組の夫婦が離婚や養育費の支払い、子供との面会など複数の事件で争うケースも目立つ。
 専門家は夫婦の問題が裁判沙汰になるのを敬遠した風潮が弱まり、裁判所に解決を求めていると分析する。早稲田大の棚村政行教授(家族法)は「インターネットで(調停などの)手続きや専門の弁護士を簡単に調べることができるようになり、裁判所で決めてもらおうと考える人が増えた」とみる。
 東北大の水野紀子教授(民法・家族法)は「これまでも養育費や面会を望みながら泣き寝入りしていた人は多かったはずだ」と指摘。「婚姻中から十分な生活費が渡されずに困るケースなどもあり、早い段階で行政が関わり、離婚の条件や子供の養育の問題を解決できる仕組みが必要だ」と話す。
 対策を講じた自治体もある。兵庫県明石市は14年から離婚届を出す人らに対し、養育費支払いの期限や面会の内容・頻度を書き込む合意書などを配っている。法務省は明石市の例を参考に合意書作成の手引をまとめ、全国の市区町村にこうした取り組みを促している。
 家裁は離婚のほか、後見や相続などに関わる審判や調停を中心に手がける。高齢化の進行を映して後見人の選任・監督や相続放棄なども増えており、家事事件全体の件数を押し上げた。
 一方、一般の民事事件・行政訴訟、窃盗などの刑事事件、少年事件はいずれも減少傾向にある。刑事事件についてみると、16年1~11月に全国の裁判所が受理したのは被告の人数ベースで約91万件だった。16年は初めて家事事件が刑事事件を上回る可能性がある。

“DV冤罪も…”我が子に会えない父親たちの苦しみ

出典:平成29年2月8日 BLOGOS

“DV冤罪も…”我が子に会えない父親たちの苦しみ

DV認定はされずも、親権は母親に
人口動態統計によると、日本では、年間20万件以上、つまり夫婦の3組に1組が離婚している。人口1000人あたりの離婚率は1.77(2016年)だ。そんな中、子どもと会えない親たちがいる。
先日も、別居中の夫婦が、9歳の長女の親権をめぐって争った裁判の判決があった。千葉家裁松戸支部(庄司芳男裁判官)は2016年3月、長女と別居しながらも、「年間100日、母親が子どもと面会できるようにする」と提案する父親に親権を認めていた。しかし、17年1月26日、東京高裁(菊池洋一裁判長)は、子どもと同居する母親を親権者とする判決を下した。傍聴席には、自らも子どもと会えない時期があったノンフィクション作家の西牟田靖さんが座っていた。『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)を上梓したばかりだ。
東京高裁での親権争いは、母親に親権を認めた結果になった。判決によると、母親は10年に長女を連れて実家に帰った。別居する父親は何度か長女と面会していたが、夫婦関係が悪化するにつれて、面会交流が難しくなっていた。この裁判では、「年間100日」という、欧米では標準的な面会交流の日数を提案している父親に親権を認める千葉家裁の判決を東京高裁がどう判断するのかが焦点だった。
いわゆる、フレンドリー・ペアレント・ルール(友好的親条項)というものがある。離婚後に子どもの親権を決める際、別居の親と子どもの面会交流に協力的か、別居の親を子どもに肯定的に伝えることができるか、など親権者として適正かどうかを判断する。千葉家裁はこのルールにそった内容だった。しかし、日本でこのルールを適用したのは異例だったと言える。
一方、東京高裁は継続性の原則を重視し、長女と同居する母親に親権を認めた。つまり、生活環境が安定していれば、現状維持となる。異例だった千葉家裁判決とは違い、これまでの判例通りの判断をした。別居時に、一方が子どもを連れて出ていくことを“連れ去り”と言われることがあるが、継続性の原則は、どんな形であれ、一緒に住んでいる親を親権者として認めるものだ。
私は判決言い渡しを傍聴していたが、西牟田さんも傍聴席にいた。その後、夫と妻それぞれの会見が司法記者クラブであったが、2人とも会見に参加した。母親に親権を認めた点に「結局、継続性の原則が勝つのか...」と思ったようだ。また、夫側の会見では、妻側が“夫はドメスティック・バイオレンス(DV)の加害者”と主張し、それを前提に署名活動が行われていた点に、弁護団は憤慨していた。裁判では証拠がなく、DVは認定されなかった。
 『わが子に会えない』でも、妻側にDVを主張されて、警察に逮捕されるケースまで描かれている。西牟田さんはDV冤罪について「人はそれなりの正義を持っている。強固であるほど意見や立場の異なる人たちに関する許容度は減るのではないか」と感想を持ったようだ。
この裁判では、夫側が判決を不服として上告した。最高裁が受理すれば、裁判は続く。私としては、夫婦の関係崩壊は仕方がないとしても、実際に子どもへの危険がない限り、親子ができるだけ自由に面会できる権利や環境整備をしてほしい、と願うばかりだ。

別居親子交流、子ども第一で

出典:平成29年2月8日 毎日新聞

別居親子交流、子ども第一で

別居中の両親が長女(9)の親権を争った訴訟の控訴審で1月、母を親権者とする判決が出た。裁判では、離れて暮らす親と子の面会のあり方が焦点の一つだった。別居親を中心に面会促進をめざす法整備を求める声が上がる中、子を尊重した面会交流をどう実現させるかの議論が広がっている。

 ●訴訟、面会焦点に
 1審・千葉家裁松戸支部と2審・東京高裁の判決によると、夫婦関係の悪化から母は2010年、当時2歳の長女を連れて実家に身を寄せた。1審で父は「自分が親権者になれば、母に年100日の面会交流を認める」という共同養育計画を提案。1審はこれを評価し、娘と離れて暮らしてきた父を親権者とする異例の判決を下した。
 しかし東京高裁は、父の計画に難色を示した。「距離の離れた父母宅を年100日往復するのは体への負担、学校や友人との交流への支障が生じる恐れがあり、長女の利益になると限らない」と判断。親権者は母親とするのが相当とした。
 父側は母親が長女を連れて別居したことを「一方的な連れ去り」と主張したが、高裁は「仕事で多忙な父に長女の監護を委ねるのは難しく、険悪な夫婦間では事前の協議も困難」と判断した。
 小川富之・福岡大法科大学院教授(家族法)は「親権者は、子の健全な成長に関する事情を考慮し、子の利益の観点から決めるべきこと、面会交流は考慮事項の一つに過ぎないことが明確に示された」と評価。配偶者から子を引き離す「子連れ別居」については、「子の利益になるかどうかを基準に判断するという姿勢が示された点も重要」と解説する。
 棚村政行・早稲田大教授(家族法)は「1審の見直しは妥当」としつつ、新しい面会交流のあり方への言及がないことを批判した。「新たな親子関係を築くための一歩踏みこんだ発想がない」
 面会交流に関する調停申し立ては近年急増。15年の受理数は1万2264件で、10年で2倍以上に増えた。子どもとの面会ルールを定めずに離婚したり、父母間で取り決めることが難しかったりする現状が背景にある。日本では離婚後は単独親権制で、親権者の約9割が母親。申し立ての大半は父親によるものとみられる。
 ●DV原因、ためらい
 当事者から法整備を求める声もあり、超党派の国会議員でつくる親子断絶防止議員連盟(会長・保岡興治衆院議員)が昨年、面会交流の促進を柱とした「親子断絶防止法案」をまとめた。
 だがDV(配偶者間暴力)や虐待がからむ離婚では、加害者に子を会わせることをためらう親も少なくない。司法統計によると、妻からの離婚調停申し立ての動機は▽生活費を渡さない▽精神的虐待▽暴力--が上位四つのうち三つを占める。このため法曹や被害者支援団体を中心に、反対意見が噴出。一部が修正されたが、「面会交流を理由に関係を維持すれば、被害が続きかねない」といった慎重論は根強い。実際、ストーカー被害を訴えた長崎市の女性が元夫に殺された1月の事件は、子の面会のため女性が元夫の所に出向いた時に発生していた。
 夫のDVが原因で離婚したある女性は、殴られた記憶がよみがえり、再び夫と関わり、子どもを面会させることが怖くて仕方ない。「裁判所もこうした気持ちには配慮してくれない」と涙ぐむ。離婚訴訟では夫のDVが認定されたものの、元夫と子どもとの月1回の面会交流が決まってしまった。面会のたびに母子ともに精神的に不安定になる。「親子の心理を丁寧にみてくれ、安心して子を預けられる環境整備が先決ではないか」
 ●少ない第三者機関
 面会交流では、面会場所の提供や立ち会い、子の受け渡しで当事者を支援する第三者機関がある。だが公益社団法人「家庭問題情報センター」など全国で約40団体のみ。行政の補助金など資金援助はほとんどなく、財政的に厳しい。利用料も1回5000~1万円ほどかかり、利用が広がらないのが現状だ。多くの面会交流は父母か代理者で行われ、当事者の自助努力しだいであることが日本で面会交流が活発化しない背景にある。
 支援団体の一つ、NPO法人ウィーズ(千葉県船橋市)の光本歩副理事長は、自身も両親の離婚を経験した立場から「親との関係性を子ども自身が決めることが大切」と考える。法案については「離婚後も、両親が子の養育に責任を果たさなければならないことに社会の関心が高まるなら歓迎だ」とした上で、「支援者や司法が両親に長期的な計画作りを促し、子の成長に応じて意思を確認することが不可欠だ」と話す。
 棚村教授は法案を発展させ、国や社会が子の養育を支える「子ども養育支援基本法」を作る必要があると提言する。「現在の法案は離婚時の面会交流・養育費の取り決めやその実行について、親個人に責任を課す法律構成。これでは父母の対立をあおり、子の利益を損ないかねない」と懸念。「子の養育の合意形成、それが適当かどうかの判断、その後の実行や生活安定に至るまで、困難を抱えた家族を国や社会が支援する法制度が必要だ」と話した。【中川聡子】

親子断絶防止法案の要旨
▽離婚後も父母と子の継続的な関係維持を促進する(基本理念)
▽父母とどう関係をもつか、子どもに意思を聞くよう努める
▽児童虐待防止法とDV防止法の趣旨を尊重する
▽離婚時に面会交流と養育費分担を書面で決める
▽子どもと暮らす親は面会交流の実現に努める
▽面会交流が子の利益に反する恐れがあれば、特別の配慮をする
▽国は離婚後の父母の共同親権制度の導入や養育費確保のあり方を検討する

離婚後の親子、交流促進を=超党派議連が議員立法

出典:平成29年2月6日 時事通信

離婚後の親子、交流促進を=超党派議連が議員立法

 自民、民進両党など超党派の「親子断絶防止議員連盟」(会長・保岡興治元法相)は、離婚や別居で婚姻関係が破綻した父母の一方と、離れ離れになった子が面会や交流を通じて、継続的な親子関係の維持を促進するための法案をまとめた。離婚の際、子の監護に要する費用の分担や子との面会頻度を、書面で取り決めるよう努力義務を課したのが柱。各党で今国会へ共同提出を目指す。
 法案は基本理念で、離婚後の継続的な親子関係の維持について「実現が図られなければならない」と規定。その上で「子に意思を表明する機会を確保するよう努め、健全な成長、人格形成が阻害されることがないようにしなければならない」とした。
 また、法案は、父母に対し、子との定期的な面会、交流を安定的に行い、親子としての良好な関係を維持するよう求めた。国は必要な啓発活動や援助を行うとし、地方自治体にも、国と同様の活動などを行う努力を促した。

親権訴訟 連れ去り後を絶たない争い 今後どうなる 1・2審逆転訴訟からひもとくと…

出典:平成29年2月5日 産経新聞

親権訴訟 連れ去り後を絶たない争い 今後どうなる 1・2審逆転訴訟からひもとくと…

 夫婦仲が悪くなるなどして別居や離婚をせざるを得なくなったとき、子供の幸せや利益はどうしたら守られるのか-。別居中の40代の夫妻が長女(9)=妻と同居中=の親権を争った訴訟で、1月26日、東京高裁で控訴審判決が言い渡された。この訴訟では、1審の千葉家裁松戸支部が従来とは異なる判断枠組みを示し、夫側を勝訴としたことで注目されていた。しかし、東京高裁は従来の判断基準を尊重し、妻を勝訴とする逆転判決を言い渡した。離婚が珍しいことではなくなり、親権争いの増加も見込まれる日本で、一つのモデルケースとなったこの訴訟を通じ、親権決定の在り方を検証する。(社会部 小野田雄一)

揺らぐ従来枠組み

 判決後、妻側は「1審判決は従来の枠組みを否定した誤った判決だった」と指摘。夫側は「従来枠組みは子供の連れ去りを助長するものだ。高裁判決は現実に起きている問題を見ていない」と批判した。この訴訟は夫側が上告し、最高裁で争われる見通しだ。

 ただ、政治の世界では夫側の問題意識に沿った立法も計画されている上、国境をまたぐ子供の連れ去りを禁じた「ハーグ条約」への加盟などで、従来枠組みの妥当性が揺らいでいるのも事実だ。

 判決によると、夫妻は平成18年に結婚し、翌年長女が生まれた。しかし長女の養育方針などをめぐって不仲となり、けんかをするようになった。22年、妻が夫の不在時に長女を連れて自宅を出た。当初、妻は夫に長女と面会させていたが、面会方法などをめぐって対立し、同年9月以降、面会は実現していない。その後、妻は夫が持つ長女の親権を渡すよう夫を提訴。夫は長女を引き渡すよう妻を反訴していた。

寛容性の原則重視の1審

 1審は、夫が「自分が親権者になったら、年間100日、妻と長女を面会させる」と訴えたことを重視。「長女が両親の愛情を受けて健全に育つためには、夫と長女の面会を月1回程度としたいと考えている妻よりも、夫に養育される方が望ましい」と判断し、夫に親権を認め、妻から夫へ長女の引き渡しを命じた。

 この1審判決は、欧米的な「フレンドリーペアレントルール」(相手の親に、より有利な条件を提示した親を有利とする基準=寛容性の原則)を重視した初の事例として注目された。

 従来、親権者を決めるにあたっては、(1)継続性の原則(現在の子供の成育環境に問題がないのであれば、その環境からあえて子供を引き離すべきではないという考え方)(2)母親優先の原則(子供は母親に育てられる方が望ましいとする考え方)(3)愛着の原則(子供がなついている親を優先すべきだとする考え方)(4)子供の意思(子供が一緒に暮らしたいと望む親を有利とする考え方)-など、複数の基準を総合的に考慮するのが判断の枠組みとなっていた。

 一方、「寛容性の原則」はこれらの基準に比べ優先度の高い基準ではなかったとされる。1審判決は、寛容性の原則を高く評価し、従来の判断枠組み上は有利だったはずの妻を敗訴としたことで注目された。

 しかし控訴審となった東京高裁の菊池洋一裁判長は、「親権者を決めるにあたっては、寛容性の原則のみを重要視するのは不適切で、さまざまな状況を総合的に判断すべきだ」と従来の枠組みに沿った判断を示した。

 その上で、長女の現在の成育状況に問題はない▽100日面会は、夫と妻の間を移動する長女にとって負担が大きい▽長女は母親と一緒に住み続けたいとの考えを持っている-ことなどを考慮。妻を親権者とすることを決定した。

 ただ、妻側は「夫からは金銭的・肉体的・精神的なドメスティックバイオレンス(家庭内暴力、DV)があった」と主張したが、菊池裁判長は「DVは認められない」と退けた。

今国会提出目指す親子断絶防止法

 夫側はこの判決を厳しく批判した。

 判決後に会見した夫側は「現実的に、子供を連れ去って学校などに入れ、DVをでっち上げ、子供に相手の親の悪口を吹き込んで子供の意思をゆがめて親権を取ろうとする行為が相次いでいる。従来基準は、連れ去りをした方が有利になるというおかしなものだ」と指摘。「寛容性の原則は、連れ去りやDV冤罪(えんざい)、子供の意思がゆがめられることなどを防ぎ、両親から子供が愛されて育つことで子供の利益を守るための概念だ。こんな判決では、連れ去りはなくならない」などと話した。

 こうした夫側の問題意識に基づく法律の制定を目指す動きも出ている。

 超党派の国会議員らでつくる「親子断絶防止議員連盟」は、親子断絶防止法案の今国会への提出を目指している。法案は(1)夫婦は別居や離婚する際は、子供と同居しない親と子供が定期的に面会できるよう、面会方法を書面で取り決める(2)国は夫婦の取り決めをサポートするというものだ。また、別居の背景にDVがあった場合や面会が子供の意思に反する場合は、配慮することも盛り込んだ。

 同法案は罰則規定のない理念法。同連盟で中心的な役割を担う馳浩・前文部科学相(55)は「日本はハーグ条約に加盟し、国際的な子供の連れ去りは認めないということになった。しかし、国内での連れ去りが後を絶たないことは問題として把握している」と指摘。「子供をどちらが取るかをめぐって、夫婦が対立するのは子供にとって望ましくない。そうした事態を防ぎ、子供が両方の親から愛される社会を目指すべきだ」と話した。

 ただ、同法案をめぐっては、一部の女性人権団体などから「離婚や別居は夫のDVが原因であることが多い。DVの本質は暴力ではなく、相手を支配しようとする欲求だ。法案はDVに配慮するとしているが信用できない。実際に成立すれば、DVをする夫にも際限なく子供との面会を認める根拠ともなりかねない。子供や女性の権利が侵害される恐れが強い」と批判の声も上がっている。

単独親権と共同親権

 1月26日の高裁判決は従来基準に沿ったものとなったが、親子断絶防止法案やハーグ条約加盟などの社会的動きは、「連れ去りは不当だ」とする夫側の主張が無視できないものになっているということを示している。さらに識者の間でも、離婚・別居する夫婦間に必要以上の対立が起きるのを避けるため、現行の単独親権を改め、欧米的な共同親権を日本にも導入すべきだという声も上がっている。

 こうした社会的動向に照らせば、子供の親権を決定する判断基準は現在、過渡期にあるといえる。両親が離婚・別居した子供にとって、何が幸せなのかという基準も一定ではない。今後、同種訴訟などで判例が積み重ねられれば、従来の判断枠組みが徐々に変わっていく可能性も十分にあるといえそうだ。

「わが子に会えない」 父親18人の苦悩をルポ

出典:平成29年2月5日 毎日新聞

「わが子に会えない」 父親18人の苦悩をルポ

 ノンフィクションライターの西牟田靖さん(46)が、離婚後に子供に会えずに苦悩する父親の姿をつづった「わが子に会えない」(PHP研究所)を出版した。自らも離婚後、一人娘に会うために苦労を重ねた西牟田さんに、父親たちに起きている現状を語ってもらった。【米田堅持】

父親からの問題提起
 西牟田さんは、神戸学院大学を卒業してIT企業に就職したが、8カ月で辞めた後、フリーのライターとなった。北方領土や竹島などを自らの足で歩いたうえで「誰も国境を知らない」(朝日文庫)▽「僕の見た『大日本帝国』」(角川ソフィア文庫)など、ニュートラルな目線のルポを書き続けてきた。最近では多数の本を収集した人たちを訪ね歩いた「本で床は抜けるのか」(本の雑誌社)のように身近な話題を掘り下げたテーマでも出版している。これらのルポも、先入観を排して一歩引いた中立的な視点で現場で奮闘する当事者たちを描いてきた。
 今回の「わが子に会えない」では、父親ばかり18人から聞き取ったエピソードがつづられており、母親サイドの話はない。これまでの西牟田さんの作品にはない、父親サイドのみで出版したことについて「母親から見た問題提起は数多くされていたが、父親から見た問題提起や体験が語られることはなかった」と執筆の動機を話す。自らも離婚を経験し「娘と面会するためにいろいろな苦労を重ねる中で、今まで見えてこなかった父親たちの言葉を形にしようと考えた」という。
父親たちのイタコとして
 父親たちは、自らが同様の境遇に置かれているので取材を受けてくれたが、それぞれの事情もあり3人が出版前に掲載を拒否したという。掲載された18人の言葉は、子供や離婚の経験の有無にかかわらず、一気に読むのは難しいほど重い。西牟田さんは「2人分はキーボードで入力したが、全員をキーボードで書き上げることは、自らの経験とも重なって手が止まってしまい不可能だった。音声入力ソフトを使って入力し、父親たちの言葉を伝える『イタコ』に徹することで書き上げることができた」と執筆時の心境を述べた。
男女同権のはずが
 取材を進めるうちに、父親たちの苦悩の背景には「硬直した既成概念が多くの苦悩と犠牲者を生んでいることに気づいた。男女同権と言いつつ、親権を例に挙げれば、個別の事情を精査せずに、(結論ありきで)母親とされるケースが圧倒的に多い」と西牟田さんは話す。
 そうした個別事情が反映されにくい背景のひとつに、西牟田さんは現場の人手不足を挙げる。「裁判所も含めて現場は圧倒的に人が足りない。親権だけでなく、子供との面会交流についても余裕がなく、実質的な審理が行われないことも珍しくない。それが『親権は母親、面会は1カ月に1度で2時間』という相場を形成し、画一的な判断が積み上げられてきた」という。そして「『勝訴の方程式』が生まれたことで、親子の幸せを無視したビジネス優先の弁護士が暗躍する土壌ともなっている」と指摘する。
共同親権をめざして
 父親たちの苦悩が表面化してきた大きな要因のひとつに、2001年の配偶者暴力防止法(DV防止法)の施行があるという。「危険な暴力から被害者や子供たちを守るべき法律が、家族を引き裂く副作用も起こしている。痴漢と同様に、DV(ドメスティックバイオレンス)といえば加害者は男性と決めつけられ、被害者が加害者になってしまうケースさえある」
 さらに西牟田さんは「男性が実質的な傷害罪の被害者だった場合でもシェルター利用のハードルは高く、加害者だった女性がDVを申し立てれば、男性側の言い分は一切無視されるのは、男性差別と言わざるを得ない」と語気を強める。また「急に子供に会えなくなるのは、父親から見れば災害にあったか拉致されたようなもの」とも語る。
 「日本では過去に家制度があり、別れたら母親は外へ出され、子供に会えない風潮があった。現在は逆になり、別れた子供に会うことを望む父親も増えている。子供は離婚しても多くは両親に会いたがるし、会わせるのが本来の姿だろう」と語る西牟田さんは、子供の気持ちを考えることが「子の福祉」を考える上で重要だと述べる。
 また、親権については「もちろん、子供や母親に危害を与えるようなケースの対策は必要だ。米国などでは親権はどちらか片方が持つのではなく、共同親権で男女の別なく子供に関わり、離婚時に行政が介入して子供の養育などについてきちんと取り組んでいる。日本でも、思考停止して親権は母親と決めつけるのではなく、共同親権を実現した上で、共同養育計画をたてていくべきだ」と提言する。
 今後については「母親サイドからも書いてほしいという声もある。男女が差別されず、離婚後も子供の幸せを一緒に考えられるようにすることに異論を挟む人はいないだろう。母親や子供の目線での取材も考えていきたい」と語った。

「100日面会」で注目の親権訴訟 背景には団体間の“代理戦争”

出典:平成29年2月4日 週刊文春

「100日面会」で注目の親権訴訟 背景には団体間の“代理戦争”

 別居中の夫妻(ともに40代)が、妻と同居する長女(9)の親権を争った訴訟の控訴審判決が1月26日、東京高裁で言い渡された。一審は、夫を親権者と認め、妻から夫へ長女を引き渡すよう命じたが、高裁は親権者を妻とする逆転判決を言い渡した。

 裁判関係者が打ち明ける。

「この訴訟は、一夫婦の争いを超え、夫妻をそれぞれ支援している団体間の“代理戦争”的な側面があるのです」

 官僚の夫と元国連職員の妻は不仲になり、2010年、妻が夫の留守中に長女を連れて家を出た。最初の数カ月、夫は長女に会えたが、それ以降の面会は途絶えた。

 その後、親権訴訟に発展。昨年3月、一審千葉家裁松戸支部は夫が「妻には長女と年100日会わせる」と約束したことを重視。「夫と長女の面会を月1回と望む妻より、夫に養育されるのが相当」とした。

「従来の親権訴訟は、現在の環境から子供を引き離すべきではないとする『継続性の原則』が重視され、同居中の親が有利でした。しかし一審判決は、相手側に寛容な親を有利とする欧米流の『寛容性の原則』を初適用し、注目されました」(司法担当記者)

 この一審判決に、妻を支援する女性団体が反発した。

「『妻は夫から家庭内暴力を受けていた。弱い立場の女性を守らず、世間一般のDV夫を有利にする不当判決だ』とする書面を高裁に提出していました」(前出・裁判関係者)

 26日の高裁判決は「現在の成育環境や長女の意思を総合的に考慮すべきだ」と指摘し、従来通りの判断を示した。ただ、夫のDVは一審に続き、認定しなかった。

「夫側は、妻に子供を連れ去られた男性らでつくる団体が支援しています。団体の主張は『子供を連れ去ってDVを捏造し、継続性の原則を悪用して親権を奪う手法が横行している』というもの。判決後、夫側は『高裁は卑劣な手法にお墨付きを与えた』と批判しました」(前出・司法担当記者)

 子供との面会交流を求めた調停の件数はこの10年で2倍以上に増えているという。

「今国会では超党派議連が面会支援の法案提出を目指しています。一方で、DVや虐待への懸念から安易な面会支援は問題だと反対する声も根強いのです」(同前)

 本訴訟は最高裁まで争われる見通しだという。

 

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更新 2017-05-28 (日) 19:54:21
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