民法819条(単独親権制度)改正を求め共同親権・共同監護制度の導入・ハーグ条約締結の推進と活動を行っています

トピック

アンジェリーナ・ジョリー、ブラッド・ピットとの面会をめぐり親権を失う可能性も!

出典:平成30年7月140日 ELLE girl

アンジェリーナ・ジョリー、ブラッド・ピットとの面会をめぐり親権を失う可能性も!

アンジェリーナ・ジョリーとブラッド・ピットには養子と実子を合わせて6人の子どもがいるが、物理的な親権は一時的に母親が保有している。そのため、子どもたちと一緒に暮らし、養育しているのはアンジーだけれど、親権を剥奪される可能性が浮上! ニュースサイト「The Blast」は、ある裁判書類を入手。「父親と会えないのは子どもたちにとって有害」「父親と母親の両方と健全で、強い関係を持つことが子どもたちにとって重要」とする判事の見解が記載されているという。
つまりアンジーが子どもたちとブラッドの面会を制限しているため、「子どもたちが父親と連絡することができないままであれば、状況に応じて子どもたちが母親と過ごす時間を減らし、物理的な親権を父親に与える」ことに! 判事はアンジーに対して「子どもたちの携帯電話の番号をブラッドに教え、ブラッドがいつでも電話をかけていいようにする」「ブラッドと子どもたちとのテキストメッセージを勝手に読まない。通話も監視しない」と忠告している。
さらに裁判所は、ブラッドと子どもたちの面会も細かく指示。6月8日から17日にかけては現在アンジーと子どもたちが住んでいるロンドンで、1日1人から2人の子どもと4時間程度面会。6月末から7月初めにかけては1日10時間、7月8日から14日にかけては4日間連続で会うことができるという。また7月末には、ブラッドの住んでいるカリフォルニアで子どもと過ごすことができるものの、いずれの場合もセラピストが同席する予定。ちなみに長男マドックスは16歳なので、自分で父親と会うかどうか決めていいことになっているそう。
子どもたちがブラッドと過ごしている間、アンジーは1日1回あらかじめ決められた時間にしか電話できないという。関係者によると「アンジーは子どもたちのことだけに集中している状態」。そんな彼女にとっては耐えられないようなスケジュールだろうけれど、これを守らない限り、親権がブラッドに移ってしまうのもあり得る話。ブラッドとの離婚申請後、公の場にたびたび子どもたちを連れて登場しているアンジー、何よりも6人の子どもたちの幸せを最優先にしてほしい。

突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇

出典:平成30年7月12日 東洋経済ONLINE

突然子どもに会えなくなる「虚偽DV」の悲劇

名古屋地方裁判所は4月、「DV加害者」と不当に認定された夫側の主張を認め、妻と県に55万円の賠償を命じる判決を下した。
これまで、離婚して子どもを引き取った側がDV等支援措置を使って面会交流を妨害することがあっても、被害者の申し立ての真偽や、身の危険が本当に及ぶのかという緊急性についてはほとんど考慮されてこなかった。その意味では画期的な判決である。
本裁判の経緯を当事者の夫と妻側の弁護士に話を聞いた。

 仕事から帰ってくると、妻と子がいない。突然のことに呆然としているうちに、離婚調停を求める書類が届く。妻と子の消息をたどるために役所に行くと、住所がブロックされ消息がわからなくなっていた――。

 結婚したカップルのうち3分の1が離婚する現代。こうした話は珍しくない。典型的なのが、住民基本台帳事務におけるDV等支援措置(以下、DV等支援措置)を使っての親子引き離しである。

 この措置は本来、DV加害者がDV被害者の居所を探索することを防止し、被害者保護を図るためのもの。いったんこの措置が取られると、管轄の市区町村が“被害者”の住民票や戸籍をブロックする。そのため加害者は被害者の消息を追えなくなる。
 被害者の申し立ての真偽や、身の危険が本当に及ぶのかという緊急性についてはほとんど考慮されない。加害者による異議の申し立てを受け付けることもない。虚偽であったとしても“被害者”として虚偽申告した者に対して何の罰則もない。

 離婚紛争においてこうした制度の欠陥を“悪用”し、面会交流を妨害するケースが後を絶たず、減る兆しはこれまでまるでなかった。

 そうした中、今年4月、名古屋地方裁判所でこれまでになかった判決が下された。
 「虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ」(5月8日付産経新聞)

 記事の内容は次のとおり。

 DVの話を警察官が鵜呑みにした結果、不当にDV加害者と認定され子どもに会えなくなってしまったと夫側は主張、妻と県に損害賠償を求めた。名古屋地裁は夫の主張を認め、妻と県に55万円の賠償を命じる判決を下した。

 ニュースを知って私は驚いた。措置によって子どもと会えなくなったという話は当事者の口から何度も聞いてきた。しかし、こんな形で「DV加害者」の主張が認められる判決は一度も聞いたことがなかったからだ。

 詳細を知りたいと思った私は、名古屋へ行き、双方の代理人と父親に話を聞いた。

■帰ってきたら妻と娘がいなかった

 「夜、仕事から帰ってきたら家の中が真っ暗でした。ガランとしていて、妻と娘は家にいない。その日の夜はショックで一睡もできませんでした。仕事に行っても集中することが全然できなくてミスばかり。突然、涙があふれてくることも当時はありました。別居の4日前には、妻の希望で2泊3日の家族旅行を楽しんだ直後のことでした。今考えると、計画的な行動だったのではないかと、妻の行動に恐怖さえ感じています」
 そう話すのは公務員の佐久間利幸さん(40代、仮名)である。

 2006年、利幸さんは広子さん(40代、仮名)と結婚。翌2007年9月には長女の静香ちゃん(10歳、仮名)が誕生する。2012年の年末、3人での共同生活に終止符が打たれる。それは利幸さんが留守をしている間に、広子さんが当時まだ5歳の静香ちゃんを連れて、別の町にある実家に身を寄せたからだ(2013年3月、母子はアパートに移転)。

 「娘の写真を見るのがつらいです。元気ではつらつとした子どもだったのに、広子の弁護士から送られてくる今の娘の表情は虚ろなんです」
 アンパンマンのようにふっくらとして、いかにも優しそうな利幸さんは、そう言って肩を落とした。

 利幸さんの代理人、梅村真紀弁護士に別居後の経緯を聞いた。

 「2013年3月に離婚と面会交流という2つの調停が始まり、同年5月に裁判所で試行面会が実施されました。これは面会室で30分だけ会わせ、その後の面会交流の方針を決めていくというもの。静香ちゃんはすごくお父さん子でしたから再会できてとても喜んでいました」
 裁判所にも関係良好と認められる。7月には「審判で面会が決まる前の段階であっても月に1回は会わせるように」と裁判官は広子さんに約束させた。

 面会の様子について利幸さんは語る。

 「2013年8月からは月1回、娘と会いました。別居する前と同様に祖父母やいとこといった親戚と過ごしたり、プールに行ったり。家に戻ってきたときは、自分の部屋のいすに座ってぐるぐる回ったり、自分のおもちゃで遊んだり、毎回楽しく過ごしました」

 面会交流の実績が評価されたのか、2014年5月末の審判は利幸さんにとってかなり好条件な取り決めとなった。第1週末は宿泊、第3週は日帰りという月2回の面会交流のほか、春夏冬休み期間中の長期宿泊面会、学校行事への参加や手紙や贈り物を送ったりする権利が認められた。

 その後はどうなったのか。梅村弁護士は続ける。

■娘を「精神的に不安定」として通院させ始めた

 「審判確定の3日後、広子さんは『娘は精神的に不安定』として静香ちゃんを通院させ始めました。主治医に面会交流に関する意見を書いてもらおうとしたんです。それから1週間後の6月第1週、宿泊面会が実施されました。ところが面会はそれっきり。『子どもが精神的に不安定』『主治医の許可が下りるまで面会は不可』といった理由で拒絶されてしまったんです。
 そこで翌7月、間接強制を申し立てました。これは面会交流を不履行するごとに間接強制金という“罰金”を支払うというもの。9月に申し立てが裁判所に認められ、広子さんは1回の拒絶につき1万円の“罰金”が科せられることになりました(額はその後1回につき4万円と増額)」(梅村弁護士)

 10月に入ると突然、児童相談所から電話がかかってくる。利幸さんは話す。

 「“夫の性的虐待の疑い”で静香を一時保護したとのこと。期間は2カ月。それまでの面会交流審判や間接強制決定の際、広子からそういった主張は一切ありませんでしたし、もちろん僕には身に覚えがありません。そもそも別れて暮らしているのにどうやって性的虐待を働くのでしょうか。まるでタヌキに化かされたような気分でした。
 静香がどこに保護されているのか、児童相談所は教えてくれません。『妻が娘を通院させている病院と関係あるんですか』と聞くと、『通院させている病院は一切かかわっていません』と説明されました」(利幸さん)

 一時保護は2カ月超、実施された。「お父さんのところに帰りたい」と訴えた静香ちゃんの意思は尊重されず、広子さんのところへ戻された。当然ながら、利幸さんからの性的虐待は確認されなかった。

 静香ちゃんの一時保護先は、広子さんが通院させていた病院であった。児童相談所は虚偽の説明を行っていたのだ。

 2015年1月、利幸さんは静香ちゃんの授業参観に駆けつける。

 「休み時間に『今度いつパパのところにお泊まりができるの?』と娘に聞かれました。『お母さんが認めてくれたらね』と答えると、娘は、さっそく妻のところへ聞きに行きました。しばらくして泣きじゃくる娘の声が廊下から聞こえきました。『どうしたの?』と聞くと、娘は『ママが……ママがお家に泊まるの……だめって言うの……』としゃくり上げていました」(利幸さん)
 静香ちゃんは荒れた。

■児相に一時保護を要請し、抗精神病薬も飲ませる

 手を焼いた広子さんは、反抗して暴れるようになった静香ちゃんの一時保護を児童相談所に要請したり、抗精神病薬を飲ませたりするようになった。小学校には行けたとしても遅れて登校したり、保健室にずっといたりという状態だった。

 記事に記された損害賠償請求訴訟は2016年8月、名古屋地裁で始まっている。梅村弁護士は話す。

 「審判で決まった面会交流や間接強制。広子さんはこれらから免れる目的で動きました。2016年3月末、広子さんはDV等支援措置の申し出を行い、静香ちゃんとともに転居してしまいます。これにより利幸さんは住民票などの閲覧をブロックされるようになりました。私たちが損害賠償請求を起こしたのは、制度を悪用して利幸さんと静香ちゃんの面会交流を妨害し、名誉を毀損した広子さんの行為に対してです」(梅村弁護士)
 県も訴えている。

 「広子さんが支援措置を受けるための要件を満たしていないことを認識しえたはずなのに、県警は『要件を満たす』との意見を安易に付しました。学校行事参加や手紙などの送付という、審判で確定した権利が利幸さんにあることを知ってもなお『住所秘匿』を認める支援措置の意見を撤回せず名誉を毀損し続けたんです。だからこそ県も訴えることにしたんです」(梅村弁護士)

 2018年4月、名古屋地裁の福田千恵子裁判長は利幸さん側の損害賠償請求に対し、広子さんによるDV等支援措置の目的外使用を認定した。また愛知県に対してもDV支援措置の要件を満たすか否かの通常尽くすべき調査義務を尽くしていないとして違法性を認め、広子さんと県に対し請求した金額330万円のうち55万円の支払いを命じたのだった。

■妻とその代理人の主張

 妻の広子さんやその代理人は、どのようなことを主張しているのだろうか。2012年から広子さんの代理人を務める可児(かに)康則弁護士に話を聞いた。損害賠償を求められたとき、何を主張したのか。

 「まず申し上げたいのは、広子さんが支援措置の申し立てを行ったことは違法ではない、ということです。同居中に彼女は身体的暴力を複数回、暴言は日常的に受けていました(被害者要件)。そのことから別居後3年経っても、利幸さんに対する恐怖や不安感をぬぐえずにいました(危険性要件)。DV等支援措置が取られる要件(被害者・危険性要件)はどちらとも満たしていたんです」(可児弁護士)
 2014年5月、宿泊付きの面会を含む月2回の面会や学校行事への参加などという条件で取り決めが行われた。しかし2016年2月、静香ちゃんの主治医から『当面、面会(直接)交流は控えるべき』という意見書が出た。「3月に広子さんがDV等支援措置を申し立てた時点で、利幸さんの面会交流や学校行事への参加は子の福祉の観点から認められない状況にあったと考えます。広子さんは住民票を移していません。だから支援措置がかかっているかどうかは別として母子の住所を利幸さんが知ることはできません」(可児弁護士)。
 行方不明者届の不受理届を出すため広子さんは警察署に行った。理由は、静香ちゃんの学校行事に夫の利幸さんが参加することに静香ちゃんが拒否的な反応を示したこと、夫に知られた住所で暮らすことに母子ともに限界を感じ、引っ越すことにしたからだという。

 「警察に転居のことなどを話し、行方不明者届の不受理届の提出をお願いしたところ、担当の警察官から『支援措置を使ったほうがいいですよ』と親身なアドバイスをもらいました。それを受け、彼女は警察に備え付けてあった支援措置の申出書をもらって、必要事項を書き、警察に意見をもらったうえで、市役所に提出しました。このとき警察のアドバイスがなければ広子さんが支援措置を申し立てることはなかったと考えています」(可児弁護士)

 支援措置に加害者の主張が考慮されていない現状について、可児弁護士はどう考えるのか。

 「この依頼者に限らず、一般的にDV被害者は、恐怖や不安を感じているということを理解していただきたいと思っています。第三者からすると『それほどでもないんじゃないか』と思うことはあるかもしれませんが、本人は、言い知れぬ恐怖や不安を抱いているのです。

 今後、被害者が支援措置を申し出るとき、『危ないかどうかは自分できちっと判断しないと後で責任を問われる可能性が出てきます』と言われたり、今回のように後で損害賠償が普通に認められたりしたら、ただでさえ恐怖や不安を持つ被害者は、怖くて、誰も、支援措置の申し出ができなくなってしまいます」(可児弁護士)
 論理的で理路整然としている可児弁護士の話を聞くと、なぜこんな判決になったのかわからなくなってしまう。そこで梅村弁護士に再び質問をした。警察のアドバイスがあったからこそ広子さんは支援措置を申し立てたのではないのだろうか。

 梅村弁護士によると、別居して以来、彼女は何度か警察に相談に行っていた。その相談時期はいずれも、裁判などで自分の言い分が通らず不利益な取り扱いを受けた後だった。2013年7月に『同居中に暴力を受けた』と警察に相談に行っているが、その直前、警察から、彼女自身が静香ちゃんへの虐待の疑いで質問をされていた。
 「2015年6月には『夫に住所がばれた』『夫が学校行事に参加する』ということを彼女は警察に相談しています。その直前、面会交流審判の不履行1回につき4万円の間接強制金を払えとの裁判所の決定が出ています。

 2016年3月末、警察を訪れたことで、支援措置が取られました。実はその前の1月末、利幸さんが授業参観に参加し途中で帰った後、静香ちゃんは学校内で広子さんに攻撃的な態度を取ったそうなんです」(梅村弁護士)

■これ以上学校に来てほしくないと考えて取った措置

 不利益を打開するために警察に行ったということなのだろうか。しかしそれだけでは、警察からアドバイスされて支援措置を取ったという説を覆せないのではないか。そんな私の疑問に梅村弁護士は続ける。

 「2015年の訪問時、広子さんは警察官から『110番すればすぐに警察が訪問するようにできます。あと保護命令という制度もあります』と提案されています。そのとき彼女は『何か具体的な行動を彼が取ってくるわけでもない。だから結構です』と言って提案の実施を断っています。

 2016年3月に警察に相談へ行ったときは態度が一変、結果的に支援措置を申請しています。1月末の授業参観で利幸さんが途中で帰った後、静香ちゃんは広子さんに攻撃的な状態になったから、広子さんは、これ以上、利幸さんに学校に来てほしくないと考えました。そのために実行したのが転居と支援措置の申請だったのです。そして実際、学校や教育委員会は措置を受け、利幸さんに静香ちゃんの学校情報を秘匿するようになりました」(梅村弁護士)
 なるほど、住民票を移動させないなら、住民票で転居先がバレないので支援措置の必要はない。学校行事への参加等を妨害する目的があったと考えるのが普通だろう。

 学校行事へ参加したときを含め、これまでに、利幸さんによるDVは本当になかったのだろうか。

 「審判のとき、妻側は面会を拒絶する理由として同居中のDV被害を主張していました。しかし、利幸さんが詳細に反論したところ、同主張を主たる争点とするのをやめてしまいました。でも支援措置では利幸さんに反論の機会はありませんし、この時点で別居して4年経っています。万一、同居中の暴力があったとしても、それをもって『現在もDV被害を受ける危険性がある』と考えるのは無理があります」(梅村弁護士)
 広子さんが警察を2度目に訪れた2015年6月から3度目の2016年3月まで、その間に差し迫った暴力の危険はまったくなかったのか。それについて梅村弁護士はこう説明する。

 「2016年3月の県警の相談票には『引っ越します』とだけ記載されていました。実際、DV被害について広子さんから警察に説明することも、逆に警察から広子さんに聞くこともなかったそうです。県警は過去にDV相談の実績が存在すればどれだけ時間が経過しようとも『現在もDV被害を受ける危険性あり』という意見書を出してしまうのです」(梅村弁護士)
 そういう意味でも今回の判決は画期的と言えるだろう。今後、支援措置の目的外使用というのはなくなっていくのではないだろうか。

 判決を出した福田千恵子裁判長は『支援措置はDV被害防止目的のために用いられるべきもの』『支援措置の不正目的使用は社会問題。それは県もわかっているはず』と発言したという。つまりこの紛争を利幸さんだけの特別な事案ではなく一般化できる問題だと判断したということだ。

 「これは地味だけれど現在支援措置の目的外使用により被害を受けている人すべてに適用できる画期的な判決。絶対維持しなきゃいけない判決だと思っています」(梅村弁護士)

2016年3月に警察に相談へ行ったときは態度が一変、結果的に支援措置を申請しています。1月末の授業参観で利幸さんが途中で帰った後、静香ちゃんは広子さんに攻撃的な状態になったから、広子さんは、これ以上、利幸さんに学校に来てほしくないと考えました。そのために実行したのが転居と支援措置の申請だったのです。そして実際、学校や教育委員会は措置を受け、利幸さんに静香ちゃんの学校情報を秘匿するようになりました」(梅村弁護士)
 なるほど、住民票を移動させないなら、住民票で転居先がバレないので支援措置の必要はない。学校行事への参加等を妨害する目的があったと考えるのが普通だろう。

 学校行事へ参加したときを含め、これまでに、利幸さんによるDVは本当になかったのだろうか。

 「審判のとき、妻側は面会を拒絶する理由として同居中のDV被害を主張していました。しかし、利幸さんが詳細に反論したところ、同主張を主たる争点とするのをやめてしまいました。でも支援措置では利幸さんに反論の機会はありませんし、この時点で別居して4年経っています。万一、同居中の暴力があったとしても、それをもって『現在もDV被害を受ける危険性がある』と考えるのは無理があります」(梅村弁護士)
 広子さんが警察を2度目に訪れた2015年6月から3度目の2016年3月まで、その間に差し迫った暴力の危険はまったくなかったのか。それについて梅村弁護士はこう説明する。

 「2016年3月の県警の相談票には『引っ越します』とだけ記載されていました。実際、DV被害について広子さんから警察に説明することも、逆に警察から広子さんに聞くこともなかったそうです。県警は過去にDV相談の実績が存在すればどれだけ時間が経過しようとも『現在もDV被害を受ける危険性あり』という意見書を出してしまうのです」(梅村弁護士)
 そういう意味でも今回の判決は画期的と言えるだろう。今後、支援措置の目的外使用というのはなくなっていくのではないだろうか。

 判決を出した福田千恵子裁判長は『支援措置はDV被害防止目的のために用いられるべきもの』『支援措置の不正目的使用は社会問題。それは県もわかっているはず』と発言したという。つまりこの紛争を利幸さんだけの特別な事案ではなく一般化できる問題だと判断したということだ。

 「これは地味だけれど現在支援措置の目的外使用により被害を受けている人すべてに適用できる画期的な判決。絶対維持しなきゃいけない判決だと思っています」(梅村弁護士)

■相談内容の真偽にかかわらず支援措置が受けられる現状

 ただし、この判決だけで警察が大きく変わるとは梅村弁護士は考えていないという。

 「警察はDVの訴えが虚偽か否かを調査することよりも、コストや手間を優先するでしょう。門前払いした相談者がその後、被害に遭った場合、安くても数千万円以上という損害賠償請求を県は受けるかもしれません。そうなるぐらいなら、利幸さんのような支援措置悪用による被害者を作り続けたほうが55万円程度と安上がりですし、調査の手間もかかりません」(梅村弁護士)
 仮に警察が支援措置の要件をしっかり吟味するようになったとしてもあまり期待はできない。被害者が配偶者暴力相談支援センターに相談するという別の方法があるからだ。ここに相談に行けば『相談証明書』という書類を必ずもらえ、これさえあれば、相談内容の真偽にかかわらず支援措置が受けられるという。

 どう転んでも虚偽DVはなくならないのだろうか――。だが、梅村弁護士は光も見出している。

 「救いだったのは福田裁判長が『加害者とされた者に反論する機会を与えるなどDV防止法の制度の根本を見直したほうがいい』ということを判決に書いてくれたことです。本来、男性女性関係なく、DV被害者は保護されるべきですし、制度を悪用する者はそれが女性であっても厳しく対応されるべきです」(梅村弁護士)
 最後に当事者の利幸さんに、今後この問題をどのように解決していきたいかを聞いた。

 「判決にもあるとおり、法制度を変えてほしいと思います。これは僕だけの問題じゃない、誰にも起こりうる問題なんですから。娘にとっては母親だけでなく、父親やほかの親族も大事な存在ですし、大切な財産です。制度を悪用してでも子どもを支配下に置いた者が優先される世の中ではなく、父母に祖父母、いとこたちという、静香が大好きな親族たちにいつでも会える環境をつくってやりたいです。それが親としての子どもに対する本当の責任・義務だと思っています。養育費を支払うことだけが父親の義務ではありません」(利幸さん)
 4月末に判決が出たのと同じ月に、実は支援措置が延長されていた。そう考えると、利幸さんが損害賠償に勝訴したからといって、自動的に会えるようになるというわけではないのだ。利幸さんと静香ちゃん、そして広子さん。3人が納得し、円満な形で会えるようになることを私は祈っている。

西牟田 靖 :ノンフィクション作家・フリーライター

ハーグ条約の執行を円滑に

出典:平成30年7月6日 日本経済新聞

ハーグ条約の執行を円滑に

 国境を越えた子どもの連れ去りを解決するための国際ルール「ハーグ条約」について、国内の実施法を見直す議論が始まった。
 法制審議会の部会がこのほど、改正の試案をまとめた。子どもの負担にならないよう十分に配慮しながら、円滑に執行できるような改正をしてほしい。
 国際結婚の破綻などで、片方の親が無断で子どもを自分の母国などに連れていくケースは少なくない。原則として子どもをもとの居住国に戻すのが、ハーグ条約のルールだ。日本では2014年に条約が発効した。
 住み慣れた居住国にいるのが子の利益になる、という考え方が基本にある。もとの居住国で虐待の危険などがある場合には、返還はされない。最終的には、裁判所が返還の可否を判断する。
 問題は、返還が確定したのに、実現しないケースが相次いでいることだ。例えば、裁判所の執行官が連れ去った親のもとに子どもを引き取りにいく強制執行の仕組みがある。その際、親と子が一緒にいなければ強制執行は認めない。その場で親が子どもを抱え込む場合は、引き離すことはできない。
 試案では、連れ帰った親がその場にいなくても、もう一方の親が立ち会えばよい、などの見直しを盛り込んだ。国内の夫婦同士の離婚でも、親権を失った親が親権者に子どもを引き渡さないことがある。法制審ではこれについても同様の法整備を行う方向だ。
 ハーグ条約をめぐっては、米国務省が日本を「不履行国」と認定するなど、国際的な批判が起きていた。執行力を高め、実効性を確保するのは妥当だろう。
 一方、何より大事なのは、親の間で板挟みになっている子どもの負担をできる限り軽減することだ。強制執行にあたっては、子どもの心情に十分配慮し、丁寧な対応を徹底してほしい。
 強制執行に至る前に、早期に問題が解決できるよう、条約に基づく父母の話し合いの支援なども充実させたい。

39歳「離婚」の親権争いに敗れた男が見た真実

出典:平成30年7月6日 東洋経済ONLINE

39歳「離婚」の親権争いに敗れた男が見た真実

単純計算すると3組に1組の夫婦が離婚している日本。そこにいたるまでの理由は多種多様だ。そもそも1組の男女が、どこでどうすれ違い、離婚という選択肢を選んだのか。それを選択した一人ひとりの人生をピックアップする本連載の第2回。現代社会が抱える家族観や結婚観の揺らぎを追う。

■「お父さんに挨拶してほしい」がすべての始まり

 「離婚してから、8年間、子どもに会わせてもらえなかったんです。本当に会えたのはつい最近なんですよ」
 大地さんは、関東地方の某ファミレスで、おもむろにそう切り出した。

 鈴木大地さん(39歳、仮名)は、8年前に2歳下の妻と離婚。短髪の黒髪でがっちり体形だが、元保育士という職業柄なのか、つねに穏やかでおっとりした話し方で、優しいオーラを醸し出している男性だ。誰からも好かれそうな好感が持てる雰囲気がある。

 なぜ、大地さんが、妻である里美さん(当時24歳、仮名)と離婚することになったのか、その壮絶な軌跡を追った。
 小さい頃から、子どもが大好きだった大地さんは、大学を卒業後、公営施設の保育士という職に就いた。当時、男性保育士は、まだまだ珍しいという時代。働き始めて、2年後に友人の紹介で出会ったのが、同業者の里美さんだった。

 里美さんは、かわいかったが、とにかく押しが強い女性だった。勢いに押されて付き合い、1年が経ったころ、里美さんから「お父さんに挨拶してほしい」と切り出された。いつの間にか、あれよあれという間に、結婚まで話が進んでいた。
 「結婚まで何回か、ちょっと急ぎすぎじゃないかと感じたんですけど、指輪がどうとか、式がどうとか、その流れを自分で止められないんですよ。妻は別れるか、結婚するかと、2択を突きつけてくれるんですよね。自分から主体的に結婚したいというよりは、向こうに乗っかっちゃったという感じですね。『勢いで結婚』ってこういうことなのかと思ってました」

 大々的に結婚式を行った後、あまり間を置かずに、第1子の息子が生まれた。その1年間は、いちばん幸せな時間だったと大地さんは振り返る。当時は、イクメンという言葉が世の中に出始めた走りでもあった。保育士という職業は、ある意味、子育てのプロである。大地さんは、平日でも帰宅すると息子を寝かしつけ、休日も家事に育児にと奔走した。

 大地さんは、まさに世間がイメージする、イクメン像そのものであった。フルタイムの共働きということもあり、家事も育児も完全に妻と分担して行い、そこには男女の差などないと思っていた。大地さんは公務員で、経済的にも安定しており、特に不満もなく幸せの絶頂だった。今の時代、はたから見たら、誰もが羨む勝ち組夫婦に見えただろう。

 そんな夫婦生活に綻びが見え始めたのは、里美さんが、「仕事を辞めたい」と言い出したことだった。里美さんは、第1子を抱えながらも、数カ月後には職場復帰を果たしていたが、子育てと仕事の両立に悩んでいた。息子のために、少しでも早く帰宅しようとする里美さんを職場の上司は、事あるごとに責め立てた。いわゆる、パワハラだ。
 精神的に病んでしまった里美さんは、大地さんとも話し合い、職場を退職することにした。くじけずに、また新しい職場で働けばいい、そう思っていた。しかし、一度職を辞めてしまうと里美さんは、なかなか職を探そうとはしなかった。

 日中は子どもと一緒にいてダラダラとしているだけで、時間を持て余してボーッとしている。さらに、ネットゲームに夢中になり、何時間もパソコンの前に陣取っていた。

■マルチ商法にハマり、食事は何種類ものサプリ
 そのうち、まるで空虚な心のすき間を埋めるかのように、健康食品のマルチ商法にのめり込むようになった。気がつくと、家中、高額なサプリやフライパンなどの調理器具で埋め尽くされていた。

 「退職してから、妻の交友関係がガラリと変わったんです。健康食品のボス格の人の怪しげなセミナーとか、『女の幸せは家族の健康のために生きることなのよ』というセミナーに、すごく楽しそうに出るようになったんです。これはヤバイと思って、それはおかしいよと説得しようとしたんです。
 でも元妻も理論武装して、『これは、普通の空気清浄機とは違って、良いものが発生して子どものためにもいいんだよ』と言って、絶対に聞かない。いくら言ってもまるで洗脳されているようで、まったく聞き入れてくれないんです」

 いつの間にか、家庭の食事は、何種類もののサプリに変化していた。息子が生まれた直後は、毎日離乳食を作っていたが、そのうち息子の食事も毎食数粒のサプリと特製ドリンクで代用させるようになった。

 「2歳とか、3歳の子どものご飯が、皿に何粒かのサプリですよ。さすがにマズイと思って、『こういうものを子どもに食べさせてるのは、俺はいいと思わないよ』と言ったんです。だけど、彼女の理論は、これでビタミンとかミネラルとか、人間に必要なすべての栄養がまかなえるんだから、これほどいいものはないと力説するんです。やはりそれだけではお腹が空いたのか、子どもたちはお菓子を食べていましたね」

 こんなものは、毎日は食べられない――、何度も夫婦で話し合ったが、体に良い、と一点張り。それどころか、サプリを食べようとしない大地さんに怒り狂った里美さんは、突然目の前の皿をつかんでたたきつけたこともある。
 「なんでわかってくれないの!」

 大地さんは、かろうじて皿が当たるのを避けることができたが、頭にでも当たっていれば大ケガになるところだった。

 入所時は手取り約20万円だった大地さんの給料は、公務員でしかも管理職まで順調に上り詰めたということもあり、数年後には約35万円まで昇給していた。しかし、その財布を握っているのは、里美さんだった。大地さんには、月3万円の小遣いが渡されるだけで、ほかの支出にはいっさい手をつけることができなかった。
 新築で購入した分譲マンションのローン返済は8万円。しかし、それ以外の収入のほとんどが、高額なマルチ商法の商品に費やされていった。夏と冬のボーナスも、空気清浄機や鍋セットなどの高額商品に、おカネが湯水のように消えていく。大地さんは何度もそのおカネの使い道に異議を唱えた。

 「値段を聞くと、10万円のフライパンとか当たり前のように買ってるんです。ありえないってなるじゃないですか。『なんでこんな高いもの買ってきてんの?』と言い合いになるんです。でも妻も強い思いをぶつけてくるので、どっちかが折れるしかないんですよ。
 おかしいと言えば『責めてる』となじられるし、でも言わなきゃ自分の好きなようにおカネを使われて、それこそ貯金もなくなる。ただ、自分から積極的に別れたかったわけじゃないので、向こうの機嫌を損ねたくなかったんですよ。でも、改善はしてほしいから、なんて言っていいのかわからなかったんです。本当に、どうしようもなかった」

 そう言って、大地さんはうなだれた。何とか夫婦の関係を修復させようとしている矢先に第2子の妊娠がわかった。

■第2子出産に立ち会わなかったことを根に持つ妻

 第2子の出産には、大地さんももちろん立ち会う予定だった。しかし、運の悪いことに大地さんは胃腸風邪にかかってしまい、医師に、立ち会いは断られた。そのため、泣く泣く出産に立ち会うことができなかった。

 「勤務先の保育園でうつされたのか、下痢と嘔吐がひどかったんです。妻にも、本当に悪いと思ったんですが、行けなかったことを、すごく根に持っていましたね。『私が大変なときに、どうしてあなたは病気になったの!  ほかのパパは、毎日仕事帰りに寄ってくれたのに、私だけ誰も来なかったからすごく寂しい思いをしたんだから!』と怒り狂ってました。よりによって、なんでこんなタイミングで病気になったのか、確かに僕自身も反省するところもありましたけど、しょうがないですよね」
 里美さんは一種の被害妄想のごとく、当時のことを蒸し返しては、大地さんをことあるごとに責め立てた。待望の第2子は、男の子だったが、生まれてから、溝が埋まるどころか、2人の間は、ますます冷めきっていくばかりだった。その頃からすでにセックスレスとなっていた。

 第2子出産を境に、里美さんのマルチ商法の波がいったん収まると、まるで埋め合わせるかのように、今度は狂ったような夜遊びが始まった。

 大地さんが仕事から帰ってくると、里美さんが入れ代わりに出ていって朝方まで帰ってこない、そんな日が週5日くらい続く。そのうち、土日も大地さんに子どもを預けて、日中は独身の友達と遊びに行くようになる。
 当時、里美さんは20代後半、地元の同級生たちは独身生活を謳歌していた。そんな生活が無性に羨ましく感じていたのかもしれない。

 「それこそ、学生みたいに夜中に海に遊びに行ったりしてましたね。あとは、飲み会や、クラブとかに行っていたみたいです。百歩譲って、子育ての息抜きにもそういう時間は必要かもしれないと僕は思ったんです。

 ただ、子どもが夜起きると、『ママがいないよぉ』と泣きだすんですよ。いい加減にしてほしいって思いましたね。俺は保育士だから子どもの面倒は見られるけど、この子たちは、起きたときにママがいない、寂しいって泣いてるから、せめて夜は出ていかないでくれと、何度も話したんです。だけど、それをいくら言っても構わず出ていってしまうんです」

 里美さんの夜遊びはとどまることを知らなかった。まるでそれは遅れて咲いた青春の徒花ようだった。「私は、昼間、子どもの面倒を見てるんだから、あなたは夜見ればいいじゃない――」。そう言い放って、子どもが泣いていても、構わず家を飛び出していった。もうそれを止めることはできなかった。

 ある夜、大地さんは、見知らぬ男の車に乗っている里美さんを偶然に家の近くで発見した。里美さんは、大地さんに見せたこともないような笑顔を振りまき、男の車に乗り込んでいった。あっという間に、車は都会の喧騒の中に消え去っていく。まさか、と思ったが、どうしても信じたくなかった。
 ある日、日課の掃除をしていると1枚のプリクラが落ちているのが目に入った。男とピースサインをしている無邪気な顔の妻がそこには写っていた。その頃から、妻の浮気は疑惑から確信へと変わっていった。

 休日はよく、親戚の法事で出かけると言って出ていった。数日後、義母から電話がかかってきて、「この前は法事で大変でしたね」と言うと、「ええ?  法事なんか、ここ数年1度もないわよ」と驚かれた。

 「これまでの話は、全部うそだったのか、と思ったんです。今思うと、その頃にはすでに男ができていたんだと思います」
■シングルマザー支援団体との出会い

 里美さんは、二人姉妹の長女として育った。親は厳格で、特に母親には厳しく門限も決められていた。女たるもの、家事も育児も完璧にこなしてこそ一人前、そういう教えをたたきこまれた。里美さんは、そんな家庭環境で育ったため、結婚は、異様に厳格な母親から逃れるための唯一の逃避だったのかもしれない。

 実家暮らしだった里美さんは、母親から逃れるためには、結婚して、家を出るしかなかった。
 「私は、あんな母親にはなりたくない!」

 それが里美さんの口癖だった。自由に生きたいし、自由に子どもたちを育てたい――。里美さんが長年背負っていたのは、重い母の幻影であった。

 その幻影を、里美さんは大地さんにふと、見たのかもしれない、あるいは、結婚制度そのものに見たのかもしれない。母から逃れるための結婚が、皮肉にも今度は、里美さんをがんじがらめに追い詰めていた。

 「子どものために、そばにいてほしい」という大地さんの言葉は、まさに里美さんの自由を奪う憎むべきものだった。そうまるで、あのときの母のように、また私を縛ろうとしている――。

 里美さんは、いつしか、ことあるごとにうつろな目で「離婚したい、別れたい」という言葉を口にするようになった。もちろん、浮気相手の男性がいたということもあった。しかし、それは一過性のものだった。決定的だったのは離婚を後押しする支援者がいたことだ。

 その頃から、里美さんは、過激な思想を持つシングルマザーの支援団体の活動にのめり込むようになっていったのではないかと、大地さんは考えている。それは、かつて里美さんがマルチ商法にハマったときとそっくりの熱を帯びていたからだ。
 「彼女にとってマルチ商法に代わるものが、シングルマザーの支援団体だったんですよ。我慢して結婚生活を続けるよりも、一人で自分らしく生きたほうがいいという思想のおばさんたちにつかまっちゃったんです。『子どものためにも、離婚しないでほしい』とお願いすると、『私を束縛するのか』『自由を奪う憎いやつ』と言って、僕を敵視して、にらみつけるようになったんです。

 僕は、『自分がやりたいことがあればやればいいよ、それは応援する。でも、もし俺のことが嫌いじゃなかったら別れなくてもやれるはず』と、彼女を何度も説得したんです。でも、『ここにいて私は幸せじゃない。自分が幸せなら、子どもたちも幸せになれるから、だから別れなきゃいけない』と、まるで洗脳されたかのように同じことを繰り返すだけなんですよ」
 結婚は、自分を縛るもの――、それから解き放たれないと自由になれない。そんな里美さんの強い思いは、いくら大地さんが説得してもまったく揺るぎようがなかった。

 お互いの両親を挟んでの話し合いの機会が幾度となく繰り返された。しかし、両親を交えての話し合いは、皮肉にも逆に泥沼と化して、火に油を注ぐこととなる。

 「妻の言い分としては、『子育てのはけ口として遊んでいただけで、浮気なんかしてない』という主張の一点張りでした。実の娘がそう言うので、親心としては信じたかったんでしょうね。

 義理の両親はむしろ俺の親に対して、『お宅の息子さんは、うちの娘を大切にしてない』と責めるんです。そうすると、うちの親もいい気はしない。結果的に、親同士も険悪な雰囲気になって、離婚ムードが加速していったんです」

■モラハラ夫の烙印

 この段階で、ようやく大地さんの中で、離婚という二文字が現実味を帯びてきた。親同士も激しくののしり合っているし、離婚はもはや避けようがない。

 しかし、せめて、1歳と3歳の子どもたちは絶対に自分が引き取って育てたい――。そう思うようになった。
 親権には、「監護継続性」、つまり、現在子どもと同居している親の現状を尊重するという原則がある。

 里美さんはそれを察知してか、離婚調停が始まる矢先に、何の予兆もなく、実家に子ども2人を連れ去った。明らかにシングルマザーの支援団体の入れ知恵によるものだと、大地さんは直感した。

 大地さんが親権を取るには、何とかして妻の不貞やこれまでの子どもへのかかわり方を証明する必要がある。その頃から、何か証拠になるものはないだろうかと大地さんは、身の回りを気にし始めた。お互いの予定を書き込んだカレンダーは、妻が毎日遊び歩いていた証拠になるはずだった。
 さらに、床に無造作に置かれた里美さんの携帯電話――。そこには、不倫相手とのメールのやり取りがつぶさに残っているはずだった。しかし、里美さんは、大地さんより何枚も上手だった。

 「これは、調停で争いになるなと思ったときには、カレンダーが突然家から消えていたんです。彼女の携帯電話も、中身は全部データが消去されていた。僕が気づいたときには、彼女の不倫の証拠になりそうなものは、すべてなくなっていた。男とのプリクラは、日付がなかったので、証拠としてはまったく扱ってもらえなかったんです。
 メールのやり取りも、深夜に何度も『子どもが泣いてるから帰ってこい』というメールが僕の携帯には入ってるのに、それは僕の携帯だから、証拠にはならなかったんです。やられた感は、半端なかったですよ」

 それどころか、子どもたちを実家に連れ去られた後に、何度も里美さんに電話をかけたことを逆手に取られ、大地さんはモラハラ夫の烙印を押されてしまった。

 担当の調停委員は、60代と思しき、頭が固そうな男女だった。子どもたちの親権を取るつもりだった大地さんだが、調停委員は旧態依然とした考え方で、男性の子育てに関してはまったく理解がなかった。

 「調停委員は最初から『え?  あなたに子どもが育てられるの?』という態度なんです。幼少期は母が育てるものだと当たり前のように言われましたね。60歳くらいのじいさんがそう頭ごなしに言ってくるんですよ。そりゃあ、あなたの時代は、男が外で働いて母が家庭と子育てという家族モデルかもしれませんが、僕らは核家族で共働きで、僕は保育士だし、バリバリ子育てしている。でも、いくら訴えても、まったく通じないんです。法律界はそんな古い社会常識が規範になっているので、本当に、悔しい思いをしましたね」
 もし子どもたちの親権を取れたら、昼間大地さんが仕事している日中は、両親が全面的にバックアップして、面倒を見ると両親は快諾してくれていた。しかし、調停員たちは、大地さんが「男」というだけで、全然納得しなかった。

 「調停委員に、『日中も自分で子どもの面倒は見るべきでしょ』と言われるんです。昼は、仕事をしているからどう考えても無理ですよね。収入はむしろ、僕のほうが多いんですが、妻は経済的には、義父の援助があり、日中も育てられるというとその主張がそのまま通ってしまった。それまで彼女は、結婚期間は子育てをあまりしなかったと言っても、改心したと言ってますよ、となる。結局、彼らにとって母親が親権を取るのは、出来レースなんですよ」
 結局、調停でも妻の言い分が認められ、裁判官は、事務的に親権は母親だと告げた。なぜ、男親というだけで認められないのか――。逆差別ではないのか。あまりに理不尽で非情な裁判所の判断に、大地さんは大きなショックを受けて、崩れ落ちた。親権を争って、さらに裁判まで持ち込むこともできたが、もはや精神的にも肉体的にも、限界が近づいていた。これ以上はもはや争えない――、そう絶望して結果を受け入れるしかなかった。

■子どもとは8年間会えず
 離婚してからも大地さんの苦難は続いた。

 調停では、子どもたちとは、定期的な面会交流の約束があったが、結果としてそれが守られることはなかった。大地さんは何度も何度も、せめて子どもに会わせてほしいと里美さんに懇願したが、次第に音信不通になることが多くなり、しまいには、住所も変わってしまい、どこに住んでいるかもわからなくなった。そのため、大地さんは、この約8年間つい最近まで子どもと一度も会えなかった。

 それでも、大地さんは毎月養育費を支払い続けてきた。毎月1人当たり3万円で、計6万円。これまで一度も滞ったことはない。そして、片時も子どもたちのことを忘れたことはなかった。

 「子どもの成長はFecebookにあげるから、そこで見ればいいんじゃない?」

 数年ぶりに、気まぐれで連絡があった里美さんから一方的にそう告げられると、大地さんは、毎日、スマホの画面越しに子どもの成長を食い入るように見つめる日々が続いた。里美さんのFecebookページには、子どもたちのことだけでなく、里美さんのプライベートな男性関係が書かれていることもあった。里美さんは、大地さんと離婚後、別の男と結婚と離婚を繰り返していた。もしかしたら経済的にも困っているかもしれない、逆にここがチャンスだと思った。
 「お願いだから、子どもに会わせてほしい。何かあったら、子どもたちに経済的にも援助してあげられるから!!」

 そう懇願すると、里美さんはあっけなく要求に応じた。8年ぶりに飲食店に現れた子どもたちは、離れ離れになったときの乳飲み子ではなく、しっかりとした子どもに成長して、キラキラして、まぶしかった。

 上の子は小学6年生で、思春期に入ったばかりでやんちゃさが目立っている。大きくなったなぁ、ちゃんと育ててくれたんだと、大地さんは、素直にそう思うと感極まった。
 「子どもたちは僕にすごく自然に接してくれましたね。本当に、普通に家族みたいな感じ。というか、家族だったんです。それを思うと、この8年間は本当になんだったんだろう、不毛な時間を過ごしていたと思わざるをえませんでした」

 そう言って、大地さんは、あふれ出る涙をぬぐった。

■離婚調停の9割以上が親権は母親

 大地さんは、保育士を辞め、現在は司法書士として、事務所を立ち上げて活動している。

 司法書士の資格を取ったのは、自分自身が、法的な知識に耳を傾けてもらえる地位にないと、何を言うにも説得力がないと感じたからだ。離婚に関しても、あまりにも無知で悔しい思いをした。保育士を辞めて3年間、死に物狂いで勉強をして、資格を取った。大地さんは、これまでの経験を通じて、子どもと自由に面会ができなかったというつらい思いが根底にある。

 「今となっては、元妻が悪かったとは思わないです。彼女は彼女で自分を守ろうとしたんだと思いますね。だから、恨みとかそういう感情はないんです。ただ、子どもとの面会が自由にできなかったのは、ずっと、トラウマとして僕の心に影を落としているんです。子どもには、一生会えないんじゃないかと思っていた。それを考えると、やっぱり社会もおかしいと思います。

 ママが子どもを取り上げられる悲しみは耐えがたいと思うんですが、パパもそれは一緒なんですよ。なのに、公的機関のジャッジは偏っていると思うんです。男女平等にみてくれない。それには、本当に今でも、憤りを感じているんです。ただ、そんな社会は少しでも変えていければと思っています」
 離婚問題に詳しい元裁判官の男性によると、「母親の親権がデフォルトで、父親については問題点をあげつらうのが慣例となっている」という。「建前では、子どもの親権は性別ではなく、どちらが適切に養育できるかだが、明確にそこには男女差別がある」と断言する。今もなお、母親が子どもを虐待しているなど、よほどのことが明らかにならないかぎり、父親が親権を取れる望みは少ないのが実態だそうだ。

 裁判所の統計によると、離婚調停(またはそれに代わる審判事件)で子ども親権が母親に渡るのがほとんど。父親に親権が渡るのは1割以下だ。
 保育士でもあり、イクメン世代の走りである大地さんが離婚で感じた憤りと理不尽は、現代社会の家族のあり方が大きく変化している中で、個別のケースに真摯に対応できていないずさんな離婚調停の結果でもある。これも離婚というドラマの過酷な現実の1つなのだ。
菅野 久美子 :フリーライター

ハーグ条約の執行を円滑に

出典:平成30年6月30日 日本経済新聞

子の引き渡し 意思尊重が課題 ハーグ条約対応へ法制審議論

 国際結婚の破綻などによる夫婦間の子どもの引き渡しを迅速にするため、法制審議会(法相の諮問機関)は29日、民事執行法部会で議論を開始した。国境を越えた子どもの引き渡しを定めるハーグ条約に沿い、裁判所に引き渡しを命じられた親の立ち会いがなくても、申し立てをした親がその場にいれば保護を可能にする。子どもの意思をどう尊重するかが課題となる。

 1983年に発効したハーグ条約は子どもをめぐる国境を越えた争いを解決するルールを定める。2018年6月21日時点で98カ国・地域が加盟している。一方の親が他方の親の同意なく、国をまたいで子どもを母国に連れ帰った場合、元の居住国に戻す「強制執行」の手続きを定める。慣れ親しんだ国にまず戻し、子の育つ環境を裁判や当事者間の協議で決める。
 法制審が29日に示した新たなルールのたたき台は、子どもの心情に配慮し、執行官が無理やり子どもを引き離せない規定は維持した。返還を拒む親の説得や自宅の捜索は可能となるものの、子どもを力ずくで連れ出すなど「威力の行使」は認めない。米国や英国と比べると強制力が弱いとの批判もあるが、子どもの精神面への影響を防ぐことを最優先する。
 両親の関係が破綻する中で、子どもの意思をどう酌み取るかは大きな課題だ。国際結婚が破綻した場合、実際の親権や子どもが育つ環境については元の居住国へ帰国後、決める。もう一方の親の同意なく連れ帰った親が裁判で「子どもの意思だった」と主張することもある。強制力を高めた結果、子どもの意向が度外視されないよう、生育環境には最大限配慮する。
 上川陽子法相は29日の閣議後の記者会見で「子どもが混乱しないよう、心身の負担に最大限配慮する」と強調した。執行官などが「子の心身に有害な影響を及ぼさないよう配慮しなければならない」との規定を盛り込む方向だ。
 政府は早ければ19年の通常国会に、国内の夫婦について明文化する民事執行法と、国際事案についてのハーグ条約実施法の改正案を提出する。

子供の連れ戻し親不在でも 法務省、ハーグ条約に対応

出典:平成30年6月27日 日本経済新聞

子供の連れ戻し親不在でも 法務省、ハーグ条約に対応

法務省は国際結婚の破綻などで一方の親が母国に連れ帰った子どもを元の国に連れ戻すための関連法改正を検討する。虐待などの危険があってもすぐに保護できないとの日本への国際的な批判に対応する。2019年にも国境を越えた子の引き渡しを定めるハーグ条約に沿った国内の関連法改正をめざす。

上川陽子法相は26日の閣議後の記者会見で「国際的な子の引き渡しについて、必要な規律の見直しを検討する」と明らかにした。連れ帰った親がその場にいなくても連れ戻せるようにする。

秋にも要綱案を取りまとめる法制審議会(法相の諮問機関)の民事執行法部会で改正案の細部を詰める。国境を越えた子の引き渡しに関するハーグ条約実施法と、国内の夫婦間の引き渡しに同様の規定を設ける民事執行法を改正する。

迅速保護可能に

ハーグ条約には一方の親がもう一方の親の同意なく国をまたいで母国に連れ帰った子どもを、元の居住国に戻す強制執行の手続きがある。もう一方の親の申し立てで家庭裁判所の執行官が代わりに子を保護し、元の国に連れ戻す。日本は14年に加盟した。
現在の日本のルールは連れ帰った親がその場にいなければ、家庭裁判所の執行官は子を保護できない。強制執行による子の保護は、引き渡しに応じない親に制裁金を科した上で一定期間が経過した時に限っている。こうした日本独自のルールは引き渡しまでに時間がかかる。
厚生労働省の人口動態調査によると、夫妻のいずれかが外国人の国際結婚は1989年以降、2016年まで2万件以上で推移している。グローバル化で多様な家族が増え、国境を越えた紛争も生じやすくなるとみて、法整備を急ぐ。

虐待など条件

法務省が検討する新たなルールは(1)連れ帰った親が経済的に裕福または極端に困窮しているなど、制裁金を科しても引き渡しに応じないとみられる(2)虐待や育児放棄など、子どもへの急迫の危険を防止する必要がある――場合にも強制執行を可能にする内容だ。
執行官は申し立てをした親がその場にいれば子どもを保護できるようにする。従来は虐待や十分な教育を受けさせていないようなケースでも、連れ帰った親が故意に隠れてしまえば保護はできなかった。申し立てた親が病気や経済的事情で来られなくても、裁判所の判断で子の親族などが代理人になれる。
連れ帰った親が自分以外の住居に子をかくまい、連れ戻しに同意しないよう頼んでいても、もう一方の親の申し立てがあれば連れ戻しをできるようにする。
子どもの意思を尊重するため、従来と同様、一定の年齢に達した子どもが連れ戻しを拒否すれば、強制執行できない。連れ戻しで子どもに重大な危険が及んだり、申し立てた親が元の国で子どもの世話や教育などをしていなかったりすれば、強制執行は認められない。
米国務省は迅速な引き渡しができないとして5月に日本を「条約の不履行国」と認定。国際的な非難が高まっていた。

国連人権理事会(第38会期) 「子供の連れ去り問題」に関する藤木俊一氏によるスピーチ

出典:平成30年6月26日公開 テキサス親父日本事務局

【動画解説】

第38会期国連人権理事会で、初めて「子供の連れ去り問題」に関するスピーチを行いました。
この問題は、複雑で、法律を悪用する悪徳弁護士たちの稼ぎ口になっており、その影では、親と引き離された子供の多くが泣いており、これが原因で悲惨な結末を迎える子供達も絶えない。

普段は、人権が~!と言っている人権屋弁護士達、人権擁護を銘打っているNPOも、この子供の連れ去り事件に関してはダンマリを決め込んでいる。

その理由は、彼等の連れ去りビジネス、離婚ビジネスの種だからだ。

他人を不幸に陥れて金を稼ぐ弁護士やNPOを許す事はできない。

これは、法の抜け目を利用したものであり、日本政府は、これらの被害者に目を向けて、早急な対応をすべきである。

弁護士が増えすぎたことの弊害でもあるが、プロ意識のない弁護士や食えない弁護士が増えたことも、これらの問題が発生する原因であり、根本的な法体系の見直しが急がれる問題である。

日本は、共同親権を認める様にすべきであり、さらに、ハーグ条約の履行をいち早く行うべきである。

離婚夫婦、子供引き渡し迅速に ハーグ条約実施法改正へ 法制審部会が試案取りまとめ

出典:平成30年6月26日 産経新聞

離婚夫婦、子供引き渡し迅速に ハーグ条約実施法改正へ 法制審部会が試案取りまとめ
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 海外での結婚生活が破綻するなどした親が日本に子供に連れ帰る事例が国際問題化する中、法制審(法相の諮問機関)の部会が、引き渡し(返還)が確定した子供を、連れ帰られた親に渡す実効性を高めるための試案をまとめる方針を固めたことが25日、分かった。連れ帰った親本人がいなくても、裁判所の執行官が子供を連れ出せるようにすることなどを盛り込み、今夏にも民事執行法・ハーグ条約実施法改正の要綱案をまとめる。
 現状では手続きの煩雑さのため、引き渡し確定後も子供がそのまま日本で暮らすことが多く、国際社会から制度の見直しが求められていた。
 ハーグ条約は国際的な子供の連れ帰りに関する国際条約で、日本は平成26年に締結。だが、実効性が不十分だとして、今年5月に公表された米国務省の年次報告書では、日本は「条約不履行国」に分類されている。
 法制審民事執行法部会は国内の連れ帰り事案を対象に、引き渡しの実効性を高めるために民事執行法の改正を検討。国境を越えた連れ帰り事案はハーグ条約実施法が適用されるが、問題点に類似性があることから、一括して要綱案を取りまとめる。
 一方の親が子供を日本に連れ帰った場合、現行制度では引き渡しまでに、(1)連れ帰られた親が引き渡しを申し立てる(2)引き渡し命令が確定する(3)連れ帰った親に、引き渡すまで制裁金を支払わせる「間接強制」を申し立てる(4)間接強制が確定する(5)相手が従わない場合、裁判所に引き渡しの「代替執行」を申し立てる(6)裁判所の執行官が(代替)執行する-という複雑な手続きが必要だ。
 間接強制の手続きが必要となるために時間がかかる上、代替執行の際には子供と連れ帰った親が一緒にいることが引き渡しの必須条件になっていることから、親が子供を隠すなどして抵抗した場合は執行ができなかった。
 法制審の改正試案では、間接強制の手続きを原則不要とする▽連れ帰った側の親と子供が一緒にいなくても代替執行できるようにする▽代替執行の際は原則、連れ帰られた親側を立ち会わせる-が柱で、一連の手続きに際しては子供の利益に配慮することを求めている。 
      ◇
 現状では、子供の引き渡しの代替執行が確定した例のうち、半数以上のケースでは引き渡されていない。こうした状況になった場合、現状では全く異なる裁判手続きが必要となるが、ハーグ条約実施法の改正により、手続きはスムーズに進むことになりそうだ。
ハーグ条約は、「16歳未満の子供を一方の親が無断で連れ帰った場合、加盟国は子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負う」などと定めている。
 しかし、日本は条約にのっとっていないのが現状だ。外務省によると、ハーグ条約が発効した平成26年4月から今年6月までに、裁判で引き渡しの命令が確定したのは23件。このうち7件で代替執行が認められたが、7件のうち4件では引き渡しに至っていない。
 現行制度では、代替執行を申し立てる前に「間接強制」の手続きを取ることが必須で、引き渡しの足かせになっている。この手続きが前提なのは、「いきなり代替執行をすると、子供に負担を与える恐れがあるから」(法務省幹部)だが、裁判の終了までには相当の時間を要することもある。
 加えて、代替執行の際は子供と連れ帰った親が一緒にいることが条件で、一緒にいても親が抵抗すると「子供に悪影響を与える」などとして執行ができず、連れ帰った側の“抵抗得”になっている。
 抵抗などで代替執行がうまくいかない場合は、不当に拘束された人の釈放を求める「人身保護請求」という全く別の裁判を起こすことが一般的となっている。
 最高裁は今年3月、人身保護請求の上告審判決で、「確定した引き渡しの命令に従わないのは原則違法」との判断を示した。引き渡しを求める側にとっては追い風とみられるが、国外にいる親が、日本で新たな裁判を起こす負担は依然として大きい。
 一方、連れ帰った親にしてみれば、「子供のため」という思いが強い。最高裁判決の事案でも、連れ帰った母親は「子供の意思で日本にいる」「無理に連れ帰ろうとしているのはむしろ父親だ」と主張していた。
 夫婦間には他人が立ち入れない難しさがある。手続きの迅速化だけでなく、引き渡しには子供の利益への配慮が求められる。(半田泰)

離婚夫婦間、親権ない親不在でも子引き渡し明記 法制審部会 要綱案

出典:平成30年6月23日 読売新聞

離婚夫婦間、親権ない親不在でも子引き渡し明記 法制審部会 要綱案
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 法制審議会(法相の諮問機関)の民事執行法部会は、離婚した夫婦間で子供を引き渡す際のルールを明確化する要綱案をまとめる方針を固めた。現状では裁判所の執行官が、親権を失った状態で子供と同居する親に拒まれ引き渡しに至らないケースが大半だが、要綱案には、親権のない親の自宅不在時でも執行官が親権を持つ親に子供を引き渡せることなどが明記される見通し。法務省は来年中の同法改正を目指す。
 離婚を巡る家裁の審判や調停の結果、親権を失った親から、親権を認められた親に子供をどう引き渡すのかを定めた規定は現行法にはない。裁判所が子供を引き渡すよう命じても、同居の親が従わない場合、執行官が自宅などに出向くが、親が不在だったり拒んだりした場合は断念する運用を続けてきた。

※以下、記事PDF参照

「パパ、ママいらん」でも「帰りたい」 亡くなった5歳児が、児相で語っていたこと

出典:平成30年6月7日 HUFFPOST

「パパ、ママいらん」でも「帰りたい」 亡くなった5歳児が、児相で語っていたこと

東京都目黒区で3月、船戸結愛ちゃん(5)が死亡した。虐待をしていた疑いで、父・ 雄大容疑者(33)と母・ 優里容疑者(25)が警視庁に逮捕された。

結愛ちゃんは、2018年1月に東京に来るまで、一家で香川県善通寺市に住んでいた。

県や児童相談所は、どのように対応してきたのか。

県の記録からは、一家のいびつな関係が浮かび上がってきた。

「子どもの泣き声がひどい」

県西部子ども相談センター(児童相談所)が、初めて虐待の疑いを認知したのは、2016年の夏だった。

この年、優里容疑者は雄大容疑者と再婚。

雄大容疑者は4月に隣の三豊市の会社で働き始めたという。

8月25日、近所の人が「子どもの泣き声がひどい」と児相に通報した。

優里容疑者は、19歳で結愛ちゃんを妊娠したとき「若年妊婦」として善通寺市の保健師がケアしていた。児相は市の保健師に問い合わせたが、出産当時の記録では、虐待をする兆候や育児に困っているような相談歴もなかった。

児相は、結愛ちゃんが通う幼稚園に問い合わせたが、園の回答は「特に問題はない」。家を訪ねたが不在だった。

これらの情報から、児相は保護ではなく「簡易相談事案」として様子を見ることにした。

クリスマス、結愛ちゃんを一時保護

翌9月には、弟が生まれた。

9月5日の記録には「第2子出産のため、検診などで結愛ちゃんのフォローを」などと記された。

その後は通報なども無かったが、12月25日のクリスマスの日に、結愛ちゃんが一人で外に出されているところを、近所の人が目撃。通報から香川県警が結愛ちゃんを保護し、児相が対応することになった。

この時、病院では「下唇が切れ、まぶたの上にはたんこぶがあった」と診断された。担当した医師は「日常的な虐待の傾向がある」と診断書に記した。

結愛ちゃんは軽度の傷ではあったが、虐待ケースとして児相に一時保護された。

一時保護施設では、担当の職員にとてもなついており、楽しそうに過ごしていたという。

担当職員は結愛ちゃんについて「かわいらしく、よく甘えてくる子だった。そして明るく、とても人懐っこい子どもだった」という印象を持っていた。

結愛ちゃん「うまく言えない」と父に手紙

年が明けた2017年の1月29日、親子面談があった。お父さんへ言いたいことはないか、と問われた結愛ちゃんは「気持ちを口でうまく言えない」と言った。

雄大容疑者は結愛ちゃんに手を挙げたことを認め、「悪かった」「もうしない。できるだけ優しくするから、いい子にしててくれ」などと謝った。

結愛ちゃんは、久しぶりに会った両親を「バイバイ」と、元気に見送った。言えない気持ちは「手紙にする」と話し、覚えたての文字ですらすらと手紙を書いていたという。

この親子面談の様子、そして幼稚園での見守りで毎日様子を確認できるという判断で、2月1日、一時保護が解除された。結愛ちゃんは自宅に戻った。

雄大容疑者は、香川県警に傷害容疑で書類送検されたが、のちに不起訴になった。

初めての一時保護だったので、指導措置は付かなかった。この措置が付くと、保護者は児童福祉司の指導を受けることになり、従わない場合は子どもが一時保護されたり、強制入所させられたりする。

「措置がないからと言って、何も無いわけではありません。常に様子を見て、とにかく本人確認ができる体制を整えるため、家庭訪問をつづけ、民間との連携を進めていた」と県の職員は話す。「この頃は、行政の呼び出しや指導にも、拒否することなく応じていた」という。

2月23日、幼稚園からの聞き取りでは「元気で変わりないが、食べすぎる傾向があった」と報告されている。

父親は、普段は仕事で忙しく、帰宅は深夜に及ぶことが多かった。そのため、子どもたちと話す時間はほとんどなかった。

その後、3月14日の家庭訪問では「徐々に父子関係に改善が見えてきていた」という。

パトロール中の警官が見つけ、2回目の保護

児相から一家を注視するよう伝えられていた地元の丸亀署では、警官が頻繁に見回りにまわっていたという。

3月19日、一人で外にいた結愛ちゃんを警官が目撃した。

母は「一緒に遊んでいて、私だけちょっと家に戻っていただけだった」と話した。

しかし、結愛ちゃんはけがをしている様子で、署で身柄を保護し、病院での診察をすることになった。

舌が切れて唇に赤い傷があり、両膝には擦り傷、お腹には5cm程度のアザがみられた。

傷について問われた結愛ちゃんは、病院の医師に「お父さんに叩かれた」と訴えた。

だが、両親は「転んだだけ」「叩いたわけでない」と否定した。

この件を受けて、2回目の一時保護が決定した。

このころ、結愛ちゃんは「パパ、ママいらん」「前のパパが良かった」と言うようになっていた。

だが、5月14日の親子面談では、一時保護所の心理士に「おもちゃもあるし、お家に帰りたい」と話すこともあった。

児相は、育児支援対策室やこどもメンタルヘルス科のある善通寺市の四国こどもとおとなの医療センターに協力をあおぎ、結愛ちゃんが病院のセラピーを受けることや、祖父母の家に定期的に預けること、叩かないことなど五つの約束を両親ととりつけた。

雄大容疑者は5月にも傷害容疑で書類送検されていたが、再び不起訴になっていた。

そして児相は、7月31日に、指導措置付きで保護を解除した。

5歳児に対し過大な期待「モデル体型を維持」

父親は、児相の聞き取りに対し「きちんとしつけないといけないから」と繰り返し説明していた。

県の職員は「5歳児に対して、父親が過大な期待をしていた。とにかく養育や作法について、強いこだわりが見えた」という。

細かなこだわりは、結愛ちゃんの言動からも推し量られた。結愛ちゃんは職員に対し「勉強しないと怒られるから」と伝えていた。

人に会うときは、しっかりおじぎをして、あいさつをしないといけない。

ひらがなの練習をしないといけない。

はみがきは自分でやり、怠ってはいけない。

太りすぎてはいけない。

また、雄大容疑者は体重に対しても異常に気にするそぶりがあり、優里容疑者に「子どもはモデル体型でないと許さない。おやつのお菓子は、市販のものはダメだ。手作りしろ。野菜中心の食事を作れ」と言っていたという。

また、一時保護を解除したときにした「祖父母の家に定期的に預ける」という約束も、「祖父母は子どもを甘やかす。歯磨きすら一人でできなくなる。だからもう行かせたくない」などと言い、だんだんと預けることがなくなったという。

虐待の兆候が見分けにくかった

結愛ちゃんは、家に戻されてからも、週に1~2回程度、善通寺市の子ども課(児童センター)か四国こどもとおとなの医療センターに通うようになった。

一時保護が解除されて一週間ほど経った8月8日、児童センターに結愛ちゃんと優里容疑者が来なかったことを不審に思った職員は、児相に連絡を入れた。

だが、特に虐待の兆候が見られたわけではなく、8月中も結愛ちゃんは4回児童センターへ来た。

その後「児童センターは遠くて通いにくい」という優里容疑者の申し出から、家に近い医療センターへ通うことになった。

8月30日、医療センターに訪れた結愛ちゃんを、医師が診察したところ、けがをしていることが分かった。

医療センターは児相へ報告。「こめかみにアザがあり、太ももにもアザがある」と伝えた。

優里容疑者は、けがを特に隠す様子はなく「気が付かなかった。私は見ていないので、分からない」と返答。

しかし、結愛ちゃんは「お父さんが叩いたの。お母さんもいたんだ」と訴えた。

これに対し、優里容疑者は「最近、結愛はよく嘘をつく。家ではしつけも厳しいし、一時保護所の居心地が良かったので、そこに行きたいがためにそういうことを言っている」と説明をした。

アザは数cmであったことと説明などから、児相は虐待と判断するかどうか見極めが厳しかったという。

なにより、一時保護をしたくても、2カ月以内の短期的な親子分離はできるが、長期的な分離を考えたとき「家庭裁判所の許可が下りないレベル」(記事末尾の【補足追記】を参照)と判断。

親との関係性を築き始めたなかで、無理やり一時的に親子を引き離す「介入的関わり方」をした場合、対立的関係になり、かえって親の児相に対する反発を強めて、児相が関われなくなる恐れがある。

寄り添って親のケアを含めて関係を切らないことが安全だとし、引き続き、医療センターなどを通じて見守りをしていくことに決めた。

引き続き、医療センターなどを通じて見守りをしていくことに決めた。

この騒動後、児相は9月8日に家庭訪問をしている。

このとき、優里容疑者は結愛ちゃんの最近の様子について職員に「父親が怖い、という気持ちはあると思う。だけど、父親は遅くに帰ってくるので、接する時間が少ない。なので、ぎこちないけれど話をすることもある」「土日には祖父母のところに行っている」と言った。

父親の雄大容疑者についても「できないと、すぐ怒って手を上げてしまっていた以前とは、違うように接している」と説明した。この日、結愛ちゃんにアザは見られなかった。

ただ、9月13日に様子を確認した際に、太ももにまたアザが見られた。しかし、この日結愛ちゃんは、父親に殴られたとは言わなかった。8月末と同じように、一時保護ができるレベルではなかったという。

幼稚園を辞め、日々の確認も難しくなったので、警察署や病院、市の子ども課と連携をし、定期的に結愛ちゃんの様子を直接確認できるように体制を強化した。

これ以降、結愛ちゃんにアザなどのけがは確認されなかった。

週2回ほどのアートセラピーが好きだった

このころ、結愛ちゃんは医療センターで行われていたアートセラピーが好きで、週に2回ほどの頻度で通っていたという。

このセラピーは、言葉でうまく気持ちを表現できない子どもや、自己主張が苦手な大人でも利用される手法のひとつだ。

アート(芸術)とサイコセラピー(精神療法)の二つの要素を併せ持ち、絵を描いたり話したりしながら、自分の思いを表現していく。

結愛ちゃんの生活にも、改善の兆しが見えていた。

10月23日の家庭訪問では、ニコニコと笑顔を見せて会話をし、月末に訪問した時は、「どうぞ」と元気よく玄関を開け、職員を迎え入れてくれたという。

アートセラピーについては「いろいろ話を聞いてもらえる」ととても気に入った様子だったという。

だが、優里容疑者は「もうすぐ仕事の都合で、東京へ引っ越すことになっている」と話すようになっていた。

優里容疑者は「引っ越しても、同じような病院を紹介してもらう」と職員へ伝えていた。しかし、「もうすぐ小学生にあがるので、期間が短いし、幼稚園や保育園には預けるつもりはない」とも言っていた。

転居によりケアが途切れることを恐れた児相職員は「社会的なつながりが途絶えてしまう」と懸念し、園に入るよう強く勧めた。

雄大容疑者が先に東京へ、体重も増えてきた

11月末の家庭訪問では、少し陰った表情をしていたという結愛ちゃん。しかし12月に入り、雄大容疑者は先に東京へ引っ越した。

週1回ほどのペースで体重を量っており、だんだんと体重は増え、2018年1月上旬には16kgを超えていた。

結愛ちゃんにけがもなく、健康的な生活ができていたため、検診をした1月4日、児相は所内協議をして指導措置を解除した。「父親がいなくなったからもう大丈夫、などという安易な判断ではなかった。親子としての改善ができてきたように見えていた」という。

児相は解除の理由について「指導ではなく、ケアや支援が必要なケースだった」と話す。

緊急性が高いケースとして移管

結愛ちゃんたちは後追いで「1月8日に引っ越す」と優里容疑者は伝えていたが、転居先についてはかたくなに言わなかった。

1月中旬に結愛ちゃんと弟を連れ、優里容疑者は東京へ行った。それを受け、児相は1月18日に市を経由して転居先を調べた。

1月23日に転居先が分かり、すぐに管轄である品川児童相談所へ連絡をした。

1月29日には「緊急性の高い案件」としてケース移管することになった。担当者は「すぐにでも本人に会って確認をしてほしい。指導措置は4日に解除になっているが、指導を積極的に続けてほしい」と伝え、数百ページあった2016年8月からの全記録を送付した。

弟の健診もあるため、引継ぎの際には「健診の時に結愛ちゃんの確認をして」とも頼んでいた。

品川児相は「転居で環境も変化している。どこまでできるか分からないが、対応は考える」と答えた。品川児相では緊急受理会議が開かれ、ケース移管の受理が決定した。

しかし、その後2回ほど「ケース移管でしたか?情報提供でしたか?」と問い合わせがあるなど、すれ違いが見られた。

県はそのたびに、「ケース移管であり、緊急性が高い。終結したケースではない。早く会って本人確認を」と伝え、2月5、6日には母親に電話を入れた。

しかし、優里容疑者が電話に出ないため、7日に雄大容疑者へ電話をした。

雄大容疑者は児相を拒否

品川児相に引き続きケアをお願いしている旨を伝えると、雄大容疑者は「それはなんなんだ。強制なのか?任意なのか?」と憤りを見せた。「あいさつもしており、地域の行事にも参加している。近所とのかかわりもあるのに、児相の職員が訪ねてくるなんて、周りから変な目で見られるので嫌だ」と受け入れる余地がなかった。

県は「引っ越したばかりで落ち着かないだろうから、香川県の児相もまだ関りを持たせてもらいます」と伝え、品川児相についての紹介をした。

しかし、2月9日に品川児相が家庭訪問をした際、結愛ちゃんには会えなかった。訪問の連絡をしていなかったこともあり、対応した優里容疑者は「弟はいるが、結愛は出かけていていない」と答えた。

連休が明けた2月13日、県が品川児相へ確認の連絡を入れると「信頼を築くにはまだ時間がかかる。警戒されてしまった部分がある」と伝えられた。

県の職員は焦りを募らせていた。この職員は取材に「指導措置があるから対応する、措置がないから安全というわけではないのは、分かっていると思っていた。香川にいたときは少なくとも週に1~2回は本人に会えていたので、かなり心配な状態だった」と話した。

一方で、医療センターも「母親と連絡が取れない」と心配し、品川児相にいままでのアートセラピーの情報やあちらの医療機関について伝えるため、資料提供を申し出ていた。

姿を見せない結愛ちゃん

すでに結愛ちゃんが東京へ引っ越してから、1か月が経とうとしていた。

幼稚園や保育園にも通わされず、ほとんど周囲とのつながりを断たれていたとみられる結愛ちゃんは、弟の健診にも、そして2月20日にあった小学校の説明会にも、現れることはなかった。

この間、品川児相が本人の姿を確認することは一度もなかった。

そして、3月2日、結愛ちゃんは12キロまで痩せた状態で亡くなった。

品川児相は3月に事件が発覚した際、取材に対し「香川県から援助を引き継いだものがなかった。そのため品川児相の援助方針が決まってないなかった」などと回答していた。

なぜこのような痛ましい事件を防げなかったのか。現在、香川県と東京都で、検証が進んでいる。

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【補足追記】

厚生労働省によると、長期にわたって親子分離をしようとするには、施設へ入所させるなどの措置をとるが、その場合、原則として親権者の同意が必要だ。

一時保護は児相の判断で実行できるが、児童福祉法に基づき、原則2カ月以内と定められている。

その期間内に子どもを家に戻すかどうかを、児相は判断しなければいけない。

親権者などが長期の分離に同意しない場合、児童相談所の所長が、家庭裁判所に「児童福祉法28条1項の承認の審判」(28条審判)を申し立て、そこで承諾を得る必要がある。

家庭裁判所が審判で承認を出す条件は、「児童を虐待し、著しく監護を怠り、保護者に監護させることが著しく児童の福祉を害する場合」。

今回のケースで、香川県の児相(西部子どもセンター)が、「家庭裁判所の許可が下りない」としたのは、結愛ちゃんの虐待について把握した事実では、「28条審判」を申し立てても、家裁の審判で長期分離が認められる条件を満たさないだろう、と判断したことを指す。

5歳児「おねがい、ゆるして」 遺棄致死疑いで両親逮捕

出典:平成30年6月6日 日本経済新聞

5歳児「おねがい、ゆるして」 遺棄致死疑いで両親逮捕

 東京都目黒区で娘の船戸結愛ちゃん(5)を虐待して父親が起訴された事件で、警視庁捜査1課は6日、結愛ちゃんを放置して死亡させたとして、無職、雄大容疑者(33)と母親の無職、優里容疑者(25)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。2人は容疑を認めている。
 逮捕容疑は、1月下旬ごろから、結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態に陥らせたうえ、雄大容疑者が殴るなど虐待。発覚を恐れ、妻と共謀して医師の診察を受けさせずに放置し、肺炎に基づく敗血症で結愛ちゃんを死亡させた疑い。
 同課によると、結愛ちゃんは1月下旬から1日1回しか食事が与えられない日もあり、死亡時の体重は5歳児の平均を約7キロ下回る約12キロだった。
 雄大容疑者は結愛ちゃんを毎日午前4時ごろに起床させ、ノートに文字の書き取りをさせていた。ノートには「きょうよりかもっともっとあしたはできるようになるから。もうおねがい、ゆるして、おねがいします」などと書き残されていた。
 同課によると、香川県から転居した後、結愛ちゃんを太ったと思った雄大容疑者がダイエットさせるためにノートに体重を記録させるなどしていたという。
 雄大容疑者は2月に結愛ちゃんを殴って負傷させたとして、傷害容疑で逮捕、起訴されていた。

 死亡した結愛ちゃんが大学ノートにつづっていた文章は次の通り。
 もうパパとママにいわれなくても しっかりとじぶんから もっともっときょうよりかあしたはできるようにするから もうおねがい ゆるして ゆるしてください おねがいします
 ほんとうにもうおなじことはしません ゆるして きのうぜんぜんできなかったこと これまでまいにちやってきたことをなおす
 これまでどんだけあほみたいにあそんだか あそぶってあほみたいだからやめるので もうぜったいぜったいやらないからね ぜったいぜったいやくそくします

死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑

出典:平成30年6月6日 朝日新聞

死亡の5歳、ノートに「おねがいゆるして」両親虐待容疑

 東京都目黒区で虐待を受けたとされる船戸結愛(ゆあ)ちゃん(5)が3月に死亡した事件で、警視庁は6日、すでに傷害罪で起訴されている父親の無職船戸雄大容疑者(33)を、保護責任者遺棄致死の疑いで再逮捕し、母親の優里容疑者(25)も同容疑で新たに逮捕した。同日発表した。2人とも容疑を認めているという。
 捜査1課によると、2人は1月下旬ごろから結愛ちゃんに十分な食事を与えずに栄養失調状態に陥らせ、2月下旬ごろには結愛ちゃんが衰弱して嘔吐(おうと)するなどしたにもかかわらず、虐待の発覚を恐れて病院を受診させることをせずに放置。3月2日に低栄養状態などで起きた肺炎による敗血症で死亡させた疑いがある。
 雄大容疑者は2月末ごろに結愛ちゃんを殴ってけがをさせたとして傷害容疑で逮捕、起訴されていた。
 結愛ちゃんの体重は死亡時、同年代の平均の約20キロを下回る12・2キロだった。部屋からは、「もっとあしたはできるようにするからもうおねがいゆるして」などと結愛ちゃんが書いたノートが見つかっていた。毎朝4時ごろに起床し、平仮名の練習をさせられていたという。
 都や一家が以前住んでいた香川県などによると、結愛ちゃんは同県で2016年と17年に計2回、県の児童相談所で一時保護された。2回目の保護が解除された後の同年8月末には、病院から「こめかみ付近と太ももにあざがある」と児相に通報があり、結愛ちゃんは「パパに蹴られた」と話したが、県は一時保護の必要はないと判断していた。
 一家は今年1月に目黒区に転居。県の児相から引き継ぎを受けた品川児相が2月9日に家庭訪問していたが、優里容疑者とは会えたものの、結愛ちゃんには会えなかったという。
 雄大容疑者については、結愛ちゃんに暴行を加えてけがをさせたとして香川県警が昨年2月と5月に傷害容疑で書類送検していたが、いずれも不起訴になっている。

衰弱させた状態で放置、5歳虐待死で両親逮捕

出典:平成30年6月6日 読売新聞

衰弱させた状態で放置、5歳虐待死で両親逮捕

 東京都目黒区で今年3月、虐待を受けた女児(当時5歳)が死亡した事件で、警視庁は6日、父親で無職の船戸雄大被告(33)(傷害罪で起訴)と、母親の優里容疑者(25)を保護責任者遺棄致死の疑いで逮捕した。

 直接の死因は暴行によるものではなかったが、衰弱させて放置したことで死亡したと判断した。女児はネグレクト(育児放棄)も受け、ノートには謝罪の言葉が並んでいたという。

 発表によると、両親は今年1月下旬以降、長女の結愛(ゆあ)ちゃんに十分な食事を与えず、2月下旬には船戸被告から暴力を受けた結愛ちゃんが極度に衰弱し、嘔吐(おうと)するなどしたのに病院に連れて行かずに放置した疑い。結愛ちゃんは3月2日に死亡。死因は、低栄養状態や免疫力低下で引き起こされた肺炎による敗血症だった。

子供連れ去り巡るハーグ条約 日本を「不履行国」認定 米国務省

【ワシントン=時事】米国務省は16日、国際結婚破綻時の子供連れ去りに関する年次報告を公表し、日本を連れ去り問題の解決手続きを定めた「ハーグ条約」に基づく義務の「不履行国」に認定した。
 日本が認定されるのは、同条約に加盟した2014年以降で初めて。条約順守を求める圧力が高まる可能性がある。
 年次報告は日本に関し、連れ去りが報告された子供の数が14年以降で44%減少するなど「重要な前進があった」と指摘。連れ去り防止や当事者間の仲介で、日米両政府の「強力かつ生産的な関係が、問題解決を後押ししてきた」と一定の評価を示した。
 一方で、子供の返還を命じる司法判断が出ても「命令を執行する効果的手段がない」ことを問題視。その結果、連れ去り事案のうち22%は解決に1年超を要し「執行プロセスが過度に長期化している」と記した。
 今年の報告では、中国、インド、ブラジル、アルゼンチンなど、日本を含め計12カ国が義務不履行国として記載されている。
 日本にいる息子の返還を求めるジェフリー・モアハウスさんは年次報告を受け、取材に「日本政府が自国の司法判断を執行できない現状の改革に取り組む機会になる」と期待を示した。娘との再会を願うポール・トーランドさんは「日本は家族に関する法制度を見直す必要があるし、子供が、離婚した親の両方を知り愛する権利についても、見方を改めてほしい」と語った。

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※以下、Youtube掲載の米議会の動画です。
米国務省はショーン・アンド・デイビッド・ゴールドマン国際児童虐待防止・帰還法に違反して日本を非合法と認めた。議会は日本に対する制裁措置を求めている。

日本、ハーグ条約「不履行国」に=加盟後初、子供連れ去り年次報告―米国務省

出典:平成30年5月17日 時事通信

日本、ハーグ条約「不履行国」に=加盟後初、子供連れ去り年次報告―米国務省

 【ワシントン時事】米国務省は16日、国際結婚破綻時の子供連れ去りに関する年次報告を公表し、日本を連れ去り問題の解決手続きを定めた「ハーグ条約」に基づく義務の「不履行国」に認定した。

 日本が認定されるのは、同条約に加盟した2014年以降で初めて。条約順守を求める圧力が高まる可能性がある。

 年次報告は日本に関し、連れ去りが報告された子供の数が14年以降で44%減少するなど「重要な前進があった」と指摘。連れ去り防止や当事者間の仲介で、日米両政府の「強力かつ生産的な関係が、問題解決を後押ししてきた」と一定の評価を示した。

 一方で、子供の返還を命じる司法判断が出ても「命令を執行する効果的手段がない」ことを問題視。その結果、連れ去り事案のうち22%は解決に1年超を要し「執行プロセスが過度に長期化している」と記した。

ハーグ条約「日本は取り組み不十分」米認定

出典:平成30年5月17日 日本テレビ

ハーグ条約「日本は取り組み不十分」米認定

アメリカ政府は16日、国境を越えて連れ出された子どもの返還を定める「ハーグ条約」に関する報告書を公表し、日本を初めて「取り組みが不十分な国」に認定した。

ハーグ条約」は国際結婚の破綻などで配偶者の了解を得ずに子どもを国外に連れ出した場合、子どもを元の国に戻すことを定めたもので、日本も加盟している。アメリカ国務省は16日、各国の対応状況に関する報告書を公表し、日本や中国など12か国を「取り組みが不十分」と認定した。

日本の認定は初めてで、政府の取り組みに「進展がみられる」とする一方、「子どもを連れ去った親が返還命令に従わない場合、強制執行する方法がない」と問題視している。その結果、返還命令の22%が、1年以上、未解決のままになっており、去年は5人の子どもが「日本に連れ去られた」としている。

離婚・再婚 分野横断的な新学会を設立 11月に研究大会

出典:平成30年5月16日 毎日新聞

離婚・再婚 分野横断的な新学会を設立 11月に研究大会

離婚・再婚に伴う親権や養育費などの法律問題から、子どもへの精神的な影響や支援の在り方まで、分野横断的に研究する新しい学会「日本離婚・再婚家族と子ども研究学会」が先月設立された。11月には、茨城大水戸キャンパス(水戸市)で研究大会を開催する予定だ。学会の発起人で代表理事を務める茨城大の野口康彦教授(臨床心理学)に、日本における離婚・再婚家族の問題や学会が目指す方向性を聞いた。【聞き手・吉田卓矢】

--学会を作ることになった社会的背景を教えてほしい
 日本は、離婚後も両親が親権を持つ選択的共同親権制度を採用している米国などと違い、どちらか一方が親権を持つ単独親権制度だ。しかし、子どもの権利である面会交流の実施や養育費の支払いなどがきちんとされないケースも多い。離婚が貧困に直結したり、子どもの発達への影響なども考えられる。
--なぜ養育費の支払いや面会交流がきちんとされないケースが多いのか
 日本では離婚の約9割が司法や行政が介入しない協議離婚だ。民法766条では、協議離婚の際、面会交流や養育費などについて、子どもの利益を最優先に考慮しなければならないと定めているが、紙1枚で離婚でき、罰則規定なども無いため、事実上、口約束になっている。
--離婚・再婚にまつわるさまざまな問題を議論する場として学会を作ったのか
 さまざまな問題がある一方で、この分野の研究自体が少なく、心理学、社会学、法学、医学などの研究者と家裁調査官などの実務者、離婚家族の支援者などが一堂に会して議論する場も無かった。法律・制度の在り方と支援の在り方が共有されず、議論の材料さえ十分に無い状態だった。学会を作ることで議論の素地となる調査・研究を蓄積させたい。
--11月の大会はどんな内容になるのか
 11月3、4日に行う予定で、現在、発起人6人で議論しているが、研究発表と、当事者支援団体などのワークショップ、シンポジウムの3本立てになるだろう。メインのシンポジウムでは、おそらく面会交流の実情と課題がテーマになる。海外のシステムや制度と比較して日本では何が足りず、何が課題になっているのかを研究者らに発表してもらい議論するような形になると思う。
--学会の入会募集はいつから始めるのか
 募集は6月ごろから始める。入会金は2000円で、年度会費は5000円(学生2000円)。多くの研究者や学生、実務家らに参加してもらいたい。
     ◇
 学会の問い合わせ先は、野口教授(yasuhiko.noguchi.8215@vc.ibaraki.ac.jp)。

ハーグ条約違反! 日本が「国際的な子の奪取」を看過する理由

出典:平成30年5月13日 COURRiER

ハーグ条約違反! 日本が「国際的な子の奪取」を看過する理由

ハーグ条約と日本の民法のギャップ

クックなどの「子供を連れ去られた親たち」によると、問題の核心は、日本が、ほかのハーグ条約締結国とは異なり、条約の規定を履行する手段を持たないことにあるという。

「絆・チャイルド・ペアレント・リユニオン」という団体の代表としてクックの活動を支援している米国人ジョン・ゴメスは言う。

「強制力が重要な問題のひとつです。どの国も、命令を実行させるための条約実施法を作らなければなりません。しかし、日本の場合、命令に強制力がないのが実状です」

日本政府がハーグ条約締結のために作った条約実施法では、実力行使は禁止されており、子供の引き渡しは、「同居親」の家ですることになっている。「同居親」の同席も必要だ。

裁判所の執行官は、洗濯機の差し押さえには慣れているが、関係者が感情的になりがちな子供の引き渡しには不慣れな人が少なくない。

つまり、強制力といっても、子供と「同居親」がいる家の門前から、子供に出てくるよう執行官が呼びかける程度なのだ。

日本の親権法に詳しい同志社大学法科大学院教授のコリン・ジョーンズは言う。

「すべて予測できたことです。強制執行の手段をなんとかしないかぎり、クック家のような事案が出てくるのは時間の問題でした」

米国政府は、日本政府のハーグ条約の履行に関して懸念を表明している。「国際的な子の連れ去り」に関する2017年の米国務省の年次報告書にはこう記されている。

「返還命令を迅速かつ一貫して執行する日本の能力について、(米国の)国務省は憂慮している」

一方、日本政府によると、状況はいい方向に進んでいるという。日本の外務省でハーグ条約室長を務める上田肇は言う。

「日本がハーグ条約に加盟してからまだ3年です。時間がかかってしまうのは、どの事案にも固有の事情があるからです。その点から見れば、日本はいい仕事をしています」

上田の話によると、日本のハーグ条約加盟後、すでに5件の事案について8人の子供たちが米国に返還されたという。

日本国内ではハーグ条約加盟前に条約締結に反対する声がかなりあり、条約加盟は大きな政治的問題だった。そのため、日本では2014年に条約に加盟したことだけでも大業だった。

専門家によると、ほかのハーグ条約締結国でも、条約の規定を履行するための国内法の改正に時間がかかった事例がある。ドイツの場合は5年かかったという。

日米で異なる「親権」観

現在、在日米国大使館が取り扱っている子供の連れ去りの事案は約70件だ。そのうちの42件は、日本がハーグ条約に加盟してから申し立てがあったものだ。米国に子供を返還するように要求している事案は10件だ。

そのほかの事案は、単に子供との面会交流を求めるものだ。だが、日本では共同親権の概念が浸透しておらず、子供との面会交流も一筋縄ではいかない。

日本では結婚が破綻したあと、子供が両方の親と会い続けるのは、子供の心をかき乱し、精神的混乱をもたらす、という考え方が主流だ。そのため片親(母親である場合がほとんど)が、単独で親権者となる。親権を失ったもう一方の親は、毎月2時間ほど面会交流することが多い。

前出のコリン・ジョーンズは言う。

「日本の最大の問題は面会交流です。返還命令の多くは、実は面会交流を求めているものなのです。非親権者の親が、親子関係をなんとか維持したいと願っているわけです」

前出のジョン・ゴメスの調査によると、日本では、両親の離婚後に片親と交流がなくなった子供がこの20年で約300万人いるとのこと。1年当たり約15万人の計算である。

現行制度では、子供が16歳を過ぎると、返還申請は却下される。親権争いの当事者たちに話を聞くと、この期限も子供を連れ去った親の側に有利に働くという。

専門家によると、日本国内の制度が単独親権制から変わらないかぎり、国際離婚の際の親権問題の解消は期待できないとのことだ。

しかし、日本国内の単独親権制を変えるのは簡単ではない。日本には戸籍制度があり、それが各種証明書類の基礎となっているからだ。ひとりの人間は、ひとつの戸籍にしか入れない。日本では両親が離婚すると、子供は父親の戸籍から除かれ、母親の戸籍に移される場合が多い。

「非親権者は親としての権利をすべて失い、子供に対して実質上、他人同然になってしまいます」

こう語るのはブルース・ガーベッティだ。彼は前出の「絆・チャイルド・ペアレント・チャイルド・レユニオン」を通して、現状を変えるために活動を続けている「子供を連れ去られた親」のひとりだ。

ガーベッティによると、日本国内で共同親権が当たり前にならないかぎり、国際離婚の場で共同親権の適用は期待できないとのことだ。

そのため、冒頭のジェームズ・クックは、医療装置の会社で仕事を見つけたにもかかわらず、いまもミネソタの自宅で、子供といっさい面会できない暮らしを続けている。クックは言う。

「こんなゴタゴタになってしまって悲しいです。子供たちのことが心配でなりません。これが子供を連れ去られた親の悲痛な思いです」

調査せず県警がDV認定 地裁、愛知県と妻に賠償命令

出典:平成30年5月8日 日本経済新聞

調査せず県警がDV認定 地裁、愛知県と妻に賠償命令

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 妻が申し出たドメスティックバイオレンス(DV)被害を愛知県警が調査せずに認めたのは不当だとして、夫が妻と県に計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が8日までに、名古屋地裁であった。福田千恵子裁判長(鈴木尚久裁判長代読)は「警察が事実確認を怠ってDVと認め、夫の名誉が傷つけられた」として妻と県に計55万円の支払いを命じた。

 判決は4月25日付。妻と県は控訴した。

 福田裁判長は「DVの主張が事実無根とは言えないが、診断書がなく誇張した可能性がある」と述べ、妻が子供と夫との面会を阻むためにDV被害を訴えたと判断。県警が必要な調査を怠ってDVと判断したのは違法だと結論づけた。

 福田裁判長はさらに「別居する親と子供の面会を妨害するためのDV支援制度の悪用が問題になっている」と言及。「加害者とされる側にも配慮した制度が期待される」と見直しを求めた。

 判決によると、2012年に妻は子供を連れて別居した。夫の申し立てを受けて家裁が夫と子供の面会交流を命じたが、16年に妻がDV防止法に基づく支援を求め、県警は「支援の要件を満たす」との意見書を作成。これを受けて自治体が妻の住民基本台帳の閲覧を制限したため、夫は子供と会えなくなった。

 妻側は訴訟で「DVがあったことは事実だ」と主張し、県側も「被害者保護のためにDVと判断したことに問題はなかった」と反論していた。

DV面会禁止、愛知県に賠償命令 名古屋地裁

出典:平成30年5月8日 中日新聞

DV面会禁止、愛知県に賠償命令 名古屋地裁

別居中の妻が申告した家庭内暴力(DV)について、警察が十分確認しないまま認めたため娘に会えなくなったなどとして、愛知県岡崎市に住む40代の夫が40代の妻と同県に330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決があり、名古屋地裁は55万円の支払いを命じた。判決は4月25日。

 福田千恵子裁判長は判決理由で「夫の暴力が誇張されている可能性は否定できない。妻は娘の面会を阻止する目的で申し出た」とした。

 判決によると、妻が娘を連れて別居した2年後の2014年、夫の申し立てで名古屋家裁半田支部が、夫と娘に面会交流をさせるよう妻に命じていた。

 だが、妻は16年に転居し、DV防止法に基づき、住所を知られない措置を県警に申請して認められた。警察の意見を基に自治体は対応するため、夫は娘に会えなくなった。

 判決は、県警が「妻の申告をうのみにし、必要な調査を尽くさなかった」と指摘。一方で「(悪用を防ぐため)被害者の安全を確保しつつ加害者にも配慮し、警察署員に過大な負担をかけない制度設計があるはず」と言及した。

 妻と県は既に控訴した。県警は「係争中のためコメントは差し控える」とした。

夫側「子との面会の不当な阻止、誰でも起こりえる」

出典:平成30年5月8日 産経新聞

夫側「子との面会の不当な阻止、誰でも起こりえる」

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 誇張された申告でドメスティックバイオレンス(DV)加害者と認定され、子供と面会できなくなったなどとして愛知県と妻に慰謝料を求め訴えた県内の40代男性と代理人が8日、名古屋市内で記者会見し「制度の不備が原因で面会を不当に阻止されることは、誰にでも起こり得る」と述べ、制度の改善を訴えた。

 梅村真紀弁護士によると、DV防止法に基づく住所秘匿などの支援措置は被害者保護を目的とし、相手側への聞き取りは必要とされないため、一方的な訴えだけで面会が遮断される恐れがあるという。

 名古屋地裁判決は「DV被害は誇張された可能性があり、妻が面会を阻止する目的で警察に支援を申請したと認められる」と判断、計55万円の賠償を命じた。

 梅村弁護士は「離婚を巡る裁判では支援を申請しているケースが多い。本当の被害者は保護する必要があるが、他にも制度を悪用したケースがあるのではないか」と指摘した。

<名古屋地裁>「誇張のDV被害、妻が面会阻止目的で申告」

出典:平成30年5月8日 毎日新聞

<名古屋地裁>「誇張のDV被害、妻が面会阻止目的で申告」

◇妻と愛知県に55万円の支払い命令

 別居中の妻が虚偽のドメスティックバイオレンス(DV)被害を申告し、愛知県警の不十分な調査で加害者と認定され娘に会えなくなったとして、愛知県の40代の夫が妻と県に慰謝料など計330万円を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(福田千恵子裁判長)は計55万円の支払いを命じた。夫側弁護士が8日、明らかにした。妻は控訴している。

 4月25日付の判決によると、妻が長女を連れて別居後、夫の申し立てで名古屋家裁半田支部が2014年、長女と夫の面会などをさせるよう妻に命じた。妻は16年、夫に住所などを知られないようにする支援を申請し、県警の意見を基に自治体が住民基本台帳の閲覧を制限した。

 判決は「DV被害は事実無根と言えないが誇張された可能性はあり、妻が面会阻止目的で申告した」と認定した。県警については、被害者の安全確保が最優先で多角的な調査を常に行う義務はないとしつつ「支援制度の目的外利用も念頭に置くべきなのに、事実確認を全くしなかった」と賠償責任を認めた。

 さらに「支援制度悪用が社会問題化している。加害者とされる者にも配慮する制度設計があるはずで、検討が期待される」とした。夫側弁護士は「支援制度の不備に踏み込んだ画期的な判決」と話した。【野村阿悠子】

「妻が虚偽のDV申告」名古屋地裁で異例の判決 「制度見直し」への言及も

出典:平成30年5月8日 名古屋テレビ

「妻が虚偽のDV申告」名古屋地裁で異例の判決 「制度見直し」への言及も

妻の虚偽の申告により、不当にDV(家庭内暴力)の加害者とされ、子どもに会えなくなったなどとして愛知県内の40代の夫が妻と県に慰謝料などを求めた裁判で、名古屋地裁が55万円の賠償を命じていたことが分かりました。

この裁判は、夫には別居中の子どもと面会する権利などがあったにもかかわらず、妻が虚偽のDVの申告をして愛知県警が鵜呑みにしたことで、子どもとの交流が絶たれたなどとして妻と愛知県に対し、約330万円の損害賠償を求めていたものです。4月25日に言い渡された判決で、名古屋地裁は妻に対し「DVの申告は夫からの暴力を避けるためではなく、夫が子どもと面会することを阻止するためであった」と指摘。また、県に対しては「愛知県警は不審・疑問な点がないか確認する義務があった」などと県警の過失を認定し、妻と県に対し、55万円の損害賠償を命じました。さらに判決の中で名古屋地裁は、「現在のDV防止法に基づく措置では、加害者とされる人の手続き保障がなく、事実誤認があった際の簡易迅速な救済制度もない」として、制度の見直しが必要とする異例の言及をしました。今回の判決を受け、訴えを起こした夫は、「法律の欠点の改善や親子関係を最優先にした運用に変わっていってほしい」と話しています。

虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ

出典:平成30年5月8日 産経新聞

虚偽DV見逃しは違法 妻と愛知県に異例の賠償命令 名古屋地裁 支援悪用、父子関係絶つ

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 子供を連れて別居中の妻が捏造(ねつぞう)した家庭内暴力(DV)の話を警察官がうのみにした結果、不当にDV加害者と認定され、子供と会えなくなったとして、愛知県に住む40代の夫が、40代の妻と県に慰謝料など計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、名古屋地裁(福田千恵子裁判長、小林健留裁判官代読)が夫側の主張を認め、妻と県に計55万円の賠償を命じていたことが7日、分かった。判決は4月25日付。社会問題化している“虚偽DV”をめぐり、相手親と行政側の賠償責任を認定した判決は極めて異例とみられる。

 福田裁判長は「DV被害者の支援制度が、相手親と子供の関係を絶つための手段として悪用される事例が問題化している。弊害の多い現行制度は改善されるべきだ」と言及。この訴訟は個別事例ではないと指摘し、制度見直しを求めた。

 判決によると、夫妻は平成18年に結婚。翌年に子供が生まれたが、24年に妻が子供を連れて別居した。夫の申し立てを受けた名古屋家裁半田支部は26年、妻に夫と子供を定期的に交流(面会・手紙のやり取りなど)させるよう命じた。

 しかし28年、妻は愛知県警を訪れ、DV防止法に基づき夫に住所などを知られないようにする支援を申請。対応した警察官は「妻はDV被害者で、今後もDVを受ける危険がある。支援の要件を満たしている」との意見書を作成した。

 意見書に基づき自治体が支援を開始した結果、夫は妻の住所が記載された住民基本台帳の閲覧などができなくなり、子供との交流が絶たれた。

 夫は「妻のDV主張は虚偽なのに警察は調査せず事実だと認定した。名誉を毀損(きそん)された上、子供と会えなくなった」として妻と県を提訴。妻側は「過去のDVや今後もDVの危険があることは事実だ」、県側も「県警の認定に問題はなかった」と反論していた。

 福田裁判長は「妻側の主張するDVは診断書などがなく、誇張された可能性がある。妻は子供と夫の交流を絶つ意図で支援を申請したと認められ、制度の目的外使用だ」と認定した。

 県警の対応についても「虚偽DVが社会問題化している以上、制度の目的外使用の可能性も念頭に、妻の説明の不審点や疑問点を確認する義務があった」と指摘。「現在もDVの危険があるかどうかは客観的な時系列や事実関係から判断できる。しかし今回、県警は事実確認を一切行わなかった」と過失を認定した。

 ■DV防止法による支援

 被害者から支援申請を受けた警察や婦人相談所などの相談機関は、支援要件(過去のDV歴・緊急性の高さ・今後のDVの恐れなど)を満たすかどうかを判断し、意見書を作成する。意見書を基に、自治体はシェルター(避難所)の提供や、加害者による住民基本台帳の閲覧申請の却下などを行う。ただ、意見書作成の実務では被害者の主張が重視される一方、加害者とされる側の権利保護が考慮されないことが多いとされ、「虚偽DV」「冤罪(えんざい)DV」の温床となっているとの指摘が出ている。

虚偽DV訴訟、親権のための法的テクニック 社会問題化「制度見直すべきだ」

 「より良い制度に向けた検討が期待される」。今回の判決で、福田千恵子裁判長はそう踏み込んだ。この提言は(1)DV(家庭内暴力)被害者の支援制度が、子供と相手親を引き離す手段として悪用されている(2)加害者とされる側の権利を守る手続きがなく、虚偽DVの温床となっている-などの問題意識を反映したものだ。この判決は今後、制度の在り方をめぐる議論につながる可能性もある。

 子供をめぐる夫婦間トラブルで多い類型は、一方の親が相手親に無断で子供を連れ去り、その理由として「DVを受けていた」と主張する-というものだ。

 従来は、たとえ連れ去りの結果であっても、現在の子供の成育環境の維持を考慮する考え方(継続性の原則)などが重視され、連れ去られた側が不利となる事例が多かった。さらに相手からDVを主張された場合、子供との交流の頻度や方法を決める際にも不利に扱われやすいとされる。

 DV主張は覆すのが困難で、実務上、証拠が乏しくてもDVが認定されることが多い。実際、裁判記録などによると、DV認定を抗議した夫に警察官は「女性がDVを訴えたら認定する」と発言。法廷でも「支援申請を却下したことは一度もない」と証言した。

 この問題に詳しい上野晃弁護士は「こうした運用は愛知県警だけでなく、全国的に同様だ。警察は申請を却下した後に事件などが起き、責任追及されるのを恐れるためだ」と分析する。

 一方で近年では、「親権や慰謝料を勝ち取る法的テクニックとして、DVの捏造(ねつぞう)が横行している」「連れ去りをした側が有利な現状はおかしい」との指摘も出ていた。

 国会でも平成27年4月、ニュースキャスター出身の真山勇一参院議員が、現行制度下で子供の連れ去りや虚偽DVが横行している問題を指摘した。

 福田裁判長は「いったんDV加害者と認定されれば容易に覆らない現行制度は見直すべきだ。まず被害者を迅速に保護して支援を開始した上で、加害者とされた側の意見もよく聞き、その結果に応じて支援の在り方を見直していく制度にすれば、社会問題化している制度悪用の弊害を防げる」と指摘。司法府が立法府に注文をつけるのは異例だ。

 原告側代理人の梅村真紀弁護士は「(判決が)子供第一の協議が行われるきっかけになってほしい」と話す。

 妻側は既に控訴しており、上級審の判断が注目される。(小野田雄一)

親の離婚・再婚で悩む子を支援する学会設立

出典:平成30年4月14日 NHK

日本人妻の子供連れ去り問題、イタリア人父親も訴訟|イタリアメディアが報じる

出典:平成30年4月14日 リンキエスタ(イタリア)

日本人妻の子供連れ去り問題、イタリア人父親も訴訟|イタリアメディアが報じる

日本人妻による「国際的な子の奪取」に直面し、訴訟を起こしている外国人の夫たちがいる。そのうちのあるイタリア人の父親の場合を、イタリアメディア「リンキエスタ」が取り上げた──。

日本人の妻と結婚し離婚したあと、子供と面会する権利があるのに、会うことを許されずにいる、日本在住イタリア人の父親たちがいる。

日本で離婚時の片親による子供連れ去りが非常に複雑で微妙な問題であることは、海外ではほとんど知られていない。

ジャンルカ・サライスは、43歳のイタリア人で日本在住。彼は日本人女性と結婚したが、その妻は、生まれたばかりの息子レオナルド・ルイを連れて家を出ていったきり、息子に会わせてくれない。

ジャンルカには息子との面会の権利があるはずなのに、2015年9月5日、付き添い人たちに監視された状況で55分間会ったのが最後だ。

そんなジャンルカに起こった出来事を数ヵ月にわたり追った──。

2年以上も息子に会えずにいるジャンルカ

ジャンルカと妻との裁判はいまから約3年前に始まった。

東京で暮らしていた2人のあいだに息子レオナルド・ルイが生まれると、初めの2ヵ月は北海道にいた妻の母が上京して手伝っていたが、実家で娘を手伝うほうがよいと、娘と孫を連れて北海道に戻っていった。

妻は北海道へ戻って間もなく、よりよい環境のなかで息子を育てたいと、東京には戻らないことを決めた。

ジャンルカも、家族のそばにいるため、東京での仕事や家を捨て、北海道移住を決めた。妻が欲しがっていた車を買い、妻と息子を迎えるための家まで準備した。

だが、彼女たちが引っ越してくる数日前、ひとりの女性が訪ねてきて、イタリア語でこう伝えに来た。

「私たちのことは忘れて、イタリアに帰って!」

そして、妻からの離婚申立と息子との面会禁止を言い渡したのだ。

この出来事でジャンルカは壊れてしまった。こうして離婚後の、子供との面会交流権、親権を巡る長い法廷での闘いが始まった。

日本での国際結婚の場合、一般的には日本人の配偶者の姓を選ぶことが多いが、彼らは結婚の際、ジャンルカの姓を選んだので、息子の姓もサライスとなった。だが離婚後、妻は旧姓に戻り、息子の姓も妻の旧姓に変えられた。

日本の離婚に関する法律では「共同親権」の定めがなく、父母のどちらか一方が親権を持ち、その親権者が子の姓の変更を申請できるのだ。

結果、ジャンルカは子供に関するすべての権利を失うこととなる。いまも、妻と息子の住所さえわからずにいる。息子は、AIRE(イタリア人海外居住者戸籍簿)に登録されているにもかかわらずだ。

法廷闘争は現在進行形なのに、親権をめぐる手続きは先に進んでしまっている。事実、妻から彼に対して出された告発はすべて退けられ、どの判決でも勝ったはずなのに、いまだに息子に会う権利を行使できないでいる。

ジャンルカは怒りをぶちまけ、こう語った。

「息子との面会に関していえば、仲裁でもそれに続く審判手続きでも、裁判官は、私が息子に月1回1時間会うという条件を命じました。

日本ではその条件が慣例ですが、妻がこの権利すら拒否したので告訴しました。

私たちはここ日本にいて、日本の法律を受け入れねばなりません。ですが、これほど人として不正なことを見過ごすわけにはいきません!

この法的慣例は、子が制限なく親に会うという神聖な権利に反しています。どんな場合であれ、親は親であり続けるべきです。

妻はこの月1回1時間の面会まで拒否しているのです、2つの判決が出ているにもかかわらず。

だから、彼女が判決に従うよう裁判所に命じてもらうため、控訴しました」

控訴した札幌の高等裁判所は、2017年12月22日、息子との面会交流権をジャンルカに認める、前回と同じ判決を下した。

この判決に不服だった妻は、さらに東京の最高裁判所へと上訴した。この判決が下るとき、最終的な結論が出ることになる。

ジャンルカは言う。

日本のハーグ条約履行に不備も=子供連れ去りで米国務省

出典:平成30年4月12日 時事通信

日本のハーグ条約履行に不備も=子供連れ去りで米国務省

 【ワシントン時事】米国務省は11日、国際結婚破綻時の子供連れ去りに関する「ハーグ条約」加盟後の日本の取り組みについて、一定の前進は見られるものの、依然として「条約履行上の深刻な不備がある」という認識を示した。

 下院外交委員会人権小委員会の公聴会で、同省のローレンス特別顧問が表明した。

 ローレンス氏は公聴会に寄せた書面で、日本のハーグ条約加盟から3年間に報告された子供連れ去り事案が、加盟前3年間と比べ46%減少したと説明。連れ去りに関する啓発活動が進んだほか、問題発生後の解決でも「著しい改善が見られた」と評価した。

 一方で、子供を日本へ連れ帰った親が返還命令を拒否した場合、「日本当局が命令を執行する手段は極めて限られている」とも指摘。「(そうした事態は)受け入れられないし、日本に条約上の義務不履行のパターンがあることを深く懸念する」と表明した。 

旭川家裁、離婚調停に「親ガイダンス」導入 道内初、子どもへの影響説明

出典:平成30年4月8日 北海道新聞

旭川家裁、離婚調停に「親ガイダンス」導入 道内初、子どもへの影響説明

 【旭川】旭川家裁は今月から離婚調停に入る夫婦を対象に「親ガイダンス」を導入した。裁判所の調査官が、両親の離婚に伴う子どもの心への影響などを説明し、養育環境への配慮を促す。道内初の取り組みで、旭川家裁は「子ども目線で離婚を考えるきっかけに」と期待する。

■養育環境への配慮促す
 親ガイダンスは、離婚調停の初回に家裁の面接室で夫婦別々に約30分間行う。スライドを上映し、離婚や別居が子どもに及ぼす影響、親権や養育費などを巡る争いで板挟みになる子どもの心情などを説明。離れて暮らす親と面会して交流することの子どもにとっての大切さや、養育費の支払い義務などについても解説する。ガイダンスは、強制ではなく任意で、未成年の子どもがいる夫婦に勧める。

 この取り組みは盛岡家裁が2012年に国内で初めて実施した。11年の民法改正で離婚の際は「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記されたことがきっかけ。その後、京都家裁や大阪家裁などにも広がっている。

 旭川家裁は2年前から導入に向けて検討を開始し、かつて大阪家裁堺支部で導入に関わった、坂井義宏首席調査官らが準備を進めてきた。

 昨年11月から試行を行ったところ、19組がガイダンスを受け、「子どもへの影響が心配になった」「自分にできることを考えたい」などの意見が聞かれたという。

 夫婦の間に入って話し合いを進める調停委員らでつくる、旭川調停協会連合会の柏川法潤会長は、親ガイダンスの効果について「夫婦が、親権を争う時も感情的になりすぎず、子どもの将来を立ち止まって考えるケースが増えた」と話している。(山村晋)

■協議離婚でも普及を

 北海道大大学院法学研究科の藤原正則教授(民法)の話 親ガイダンスは欧米では普及しており、子どもにとって一番いい養育環境を考える機会になる。欧米では離婚後、父親と母親の双方が子どもを養育する共同親権が一般的。日本ではそのいずれかによる単独親権しか認められておらず、子どもにどう配慮するかが課題になっている。裁判所は、協議離婚する夫婦にもガイダンスを受ける場を設け、普及に努めるべきだ。

 <ことば>離婚調停 夫婦の話し合いによる協議離婚がまとまらない場合、当事者は家庭裁判所に調停を申し立てることができる。裁判官や調査官、調停委員が間に入り問題解決を図る。離婚のほか、親権者の決定や財産に関する問題も扱う。厚生労働省によると、2016年の離婚は全国で21万6798件。大半は協議離婚で、調停は約1割となっている。

共同親権導入への見解ただす 民進党の真山勇一氏

出典:平成30年4月6日 神奈川新聞

共同親権導入への見解ただす 民進党の真山勇一氏

 民進党の真山勇一氏(参院神奈川選挙区)が5日の参院法務委員会で、「離婚が増えるに従い、親子の交流の問題も増えている」と指摘。離婚後に別居する親が子どもと継続的に交流する「面会交流」の推進や、共同親権導入に対する上川陽子法相の見解をただした。

 法相は「現状で面会交流を強制させることはできないが、離婚時に双方でしっかり話し合ってもらい、子の利益を優先することが大事だ」と答弁。共同親権導入については「一般論として、適切な形で養育に関わることは子の利益の観点から重要だ」と述べるにとどめた。

EU26カ国大使が上川法相宛に書簡提出

出典:平成30年4月2日 在日フランス大使館ホームページ

EU26カ国大使が上川法相宛に書簡提出

 ヨーロッパ連合(EU)加盟26カ国の駐日大使は、国際離婚後の子どもの親権に関する裁判所の決定が十分に実行されない事例に対する懸念を表明するため、上川陽子法務大臣宛に3月6日付で書簡を提出しました。

 EU加盟各国の駐日大使は、国際離婚後の子どもの親権に関する書簡を上川陽子法務大臣宛に提出しました。
 この共同の働きかけによって、EU加盟国は一部のヨーロッパ市民が遭遇している極めて困難な状況に対し、日本当局の注意を喚起することを望みました。これらの市民は日本人と離婚し、裁判所の決定で認められたにもかかわらず、面会と宿泊の権利を尊重させるにの苦労し、その結果として子どもとの関係を維持することが不可能な状態に置かれています。
 在日フランス大使館はこの働きかけを支持するとともに、日本当局の主権に配慮しつつ、日本で生活して家庭を築くことを選択したフランス人の権利を尊重するよう呼びかけます。

私の気持ち=子どもの気持ち?「会わせたくなかった」母親の葛藤

出典:平成30年3月30日 朝日新聞

私の気持ち=子どもの気持ち?「会わせたくなかった」母親の葛藤

 将来の見通しがないまま離婚してしまったことで、様々なトラブルが生まれるケースが増えています。専門家は日本の「家制度」がもたらす「離婚は世間にさらすべきではない」という考えが強く働いていると指摘します。子どもを巡って十分な話し合いがないまま離婚に踏み切った女性は「私の気持ち=子どもの気持ち」という考えにとらわれていたと告白します。離婚をとりまく「呪縛」について話を聞きました。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

同居親の顔色をうかがう子ども
 2017年に厚生労働省がまとめた調査によると、別居している親が子どもと会う「面会交流」が現在も行われている父親は約30%。過去に行ったことがあるという父親を含めると、未成年の子どもを持つ別居の父親の3人に2人が、現在我が子に会えていないことになります。
 共同養育コンサルタントとして、別居中や離婚後の父母の相談を受けているしばはし聡子さんは、面会交流に後ろ向きだった母親としての経験もあります。
 「まず相手と関わりたくないという気持ちが大きかったんです。離婚したら二度と関わらない他人になれると思っていたし、面会交流でやりとりが発生することに離婚の渦中は気づきもしませんでした。
 親同士の関係が続くことへの心の準備が全くできていなかったので、とにかく夫を避けることしか考えていませんでした」

 厚生労働省の調査によると、面会交流について夫婦間で取り決めをしていない理由としては「相手と関わり合いたくない」「相手が面会交流を希望していない」などが多いです。一方、「子どもが会いたがらない」という回答も一定数あります。
 しばはしさんは、別居している親に「会いたくない」という子どもの心理についても指摘します。
 「子どもは年齢に限らず、同居する親の顔色を非常によく見ています。子どもも生きていかなければならないので、同居親が悲しむことや機嫌が悪くなることはしてはいけないと思って言葉を選ぶ場合があります」(しばはしさん)
 離婚後の子どもの心理に詳しい大正大学の青木聡教授は「同居する親が無自覚的に出している、元配偶者に対する嫌悪感や恐怖感を子どもが汲む形で、面会を拒絶するケースが多い」と話します。
 「別居当初は、忠誠葛藤と呼ばれるお父さんもお母さんも好きで会いたいという感情に苦しむことになります。その苦しみが深ければ深いほど、苦しみを切り捨てて『親と会いたいと思っていない自分』に同一化していくんです」(青木教授)

「私の気持ち=子どもの気持ちと思っていた」
 しばはしさんは離婚に関する問題について勉強し、相談を受けるようになった頃、自身が面会交流の問題を乗り越えられていないことに気付きます。そこで、面会交流の支援団体にボランティアとして参加することにしました。
 「子どもの受け渡しの場所に現れたのは、能面のように怒った顔をした母親でした」
 子どもを預かり、父親のもとに連れて行くと、おとなしかった子どもははじけるような笑顔で父親に抱きついたといいます。子どもが父母の間で態度を使い分けているという現実を目の当たりにしました。
 「私は今までずっと父親と子どもの関係の邪魔をしていたんだ、と。私の気持ち=子どもの気持ちと思っている部分がありました。他の家庭を見ることで気付くことができました」
 その日のうちに、面会交流について元夫に連絡をしたというしばはしさん。
 「これまでの態度を非難されるかもしれない」--しかし、元夫から帰ってきた言葉は「ありがとう」でした。
 面会交流に前向きになってから元夫との関係もよくなったと言います。息子との会話でも父親の話題も出るようになりました。
 「それまで逃げると追われるで、離婚したのにずっとその呪縛から逃れられていない気がしていました。もっと早く乗り越えていればよかった。
私自身が面会交流に後ろ向きな気持ちも理解できるので、相談に来た方には頭ごなしに『絶対面会交流するべき』と言うのではなく、『離婚しても、親子の関係は変わらない、親同士の関係も続く。夫婦と親子を切り離して考えていこう』ということを伝えていっています」

協議離婚「子どもにとって無責任な制度」
 離婚は「夫婦間」の問題と思われがちですが、それは日本の制度にも関係しています。
 日本の離婚のおよそ9割を占める「協議離婚」。夫婦間の話し合いで離婚の合意が得られた場合、離婚届を役所が受理すれば成立します。
 家族法に詳しい早稲田大学の棚村政行教授は「もともと日本は家制度によって、離婚はプライベートな問題として、世間にさらすべきではないと考えられてきた」と指摘します。
 「家族の問題を家の中に押し込んだ結果、協議離婚は十分な話し合いや将来の見通しができないまま離婚できる、子どもに対しては無責任な制度になってしまったんです」
 2012年4月施行の改正民法により、離婚の際には「子どもの利益を最優先に考えて、養育費及び面会交流について協議する」旨の規定が組み込まれました。
 離婚届にも養育費と面会交流について夫婦間で取り決めが行われたかを問うチェック欄が設けられていますが、取り決めの有無が離婚の成立に影響することはありません。
 実際、2017年に発表した厚生労働省の調査では、元配偶者と面会交流の取り決めをしていると回答した割合は、父子世帯・母子世帯ともに3割を切っています。

親子関係、子どもが成人すれば終わるものではない
 子どもへの配慮は、年齢や発達状態、それまでの親子関係によっても変わってきます。もちろん、DVの有無が問われる場合は、特に個別に判断される必要があります。
 ただDVへの対応についても、青木教授は「日本は後進国中の後進国」と指摘します。
 「日本の場合、DVの被害者は逃げるしかありません。刑事的に扱うというのが当然だと思うのですが、加害者を野放しにしてしまっています」
 一方、「DVの一言で片付けてしまっている側面もある」といいます。
 「アメリカなどではDVを5~6種類に分類して、その内容によって面会交流の可否や制限を定めています。それも監護評価者がチェック項目やフローチャートを使えば判断できるほど、議論が進んでいるのです」

 青木教授は離婚を考える夫婦に「子どもを守ることを一番に考えて」といいます。
 とはいえ、離婚した夫婦の間のこと、お互いに子育てに協力し合うのは簡単なことではありません。関わりたくない元配偶者に子どもを会わせること、たまにしか会わせてもらえない子どもに養育費を払い続けること、いずれも無理をしていては長続きしないものとなってしまいます。
 「でも、そんなことを言っていたら、子どもが置き去りになってしまいます」
 親子関係は子どもが成人すれば終わるものではありません。自分や元配偶者が再婚することになったら、子どもに孫が産まれたら……一緒に住んでいなくてもそのときそのときで、子どもと向き合い続ける必要があります。
 「子どもに影響を与えるのは離婚そのものではなく、両親の争いや、突然の別れです。子どもの人生をもっと長いスパンで、親としてどう支え、守っていくのかという公平な観点が当事者にも支援者にも必要です」

「娘見守りたい」別居する親の苦悩 離婚減も、増える「会いたい父親」

出典:平成30年3月30日 朝日新聞

「娘見守りたい」別居する親の苦悩 離婚減も、増える「会いたい父親」

 2000年代に入り、離婚の件数は減っている中、子どもとの面会を求めて調停を申し立てる親は年々増えています。「突然の子連れ別居」を恐れ、子を残してひとり家を出た父親は、離婚が成立した今も娘に会えていません。「離婚しても、子どもに会いたい」。離婚への抵抗感が薄れつつあるなかで、父親の目線から「平成の離婚」について考えてみました。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

「子ども連れ去られてしまったら…」自ら家を出た

 「娘に辛い思いをさせて、時間だけが奪われてしまった」
 関東在住、40代の会社員・武志さん(仮名)は数年前、ひとり、家を出ました。別居後に申し立てた調停中に面会して以来、小学生の娘とは1年半近く会えていません。
 武志さんが元妻と出会ったのは学生時代。「精神的に不安定なところがあった」という元妻の生い立ちや、気持ちの波があることを理解していたという武志さんは、通院や気持ちのサポートを続けてきたそうです。
 「いろいろ手策は施してきたつもり」と武志さんは振り返ります。娘が生まれ、家を購入し、少しずつ紡いでいると思われた家族の形。しかし、それはいつの間にか武志さんの心をすり減らし、元妻にとっても満足し続けられるものではありませんでした。
 家を出る直前の時期に撮っていたという動画には、「お前と離婚さえできれば」「子ども連れていなくなるわ」--大きな声で武志さんを罵倒し、壁を叩いたり、ものを投げたりする元妻の姿が映っていました。中から鍵をかけられ、家に入れてもらえなかったこともあったといいます。とても冷静な話し合いができる状態ではありませんでした。
 元妻の言葉に武志さんが危惧していたのは、「突然の子連れ別居」です。家を出た妻子の所在がわからなくなり、それ以降子どもと断絶される事例があることを知っていました。
いつ娘が奪われてしまうかわからない不安と、夫婦関係の悪化から、不眠の症状がひどくなったといいます。精神的にも限界に近かった武志さんは、自ら家を出ることしかできませんでした。
 「僕が子どもを連れて家を出て行くという選択もありました。ただ子どもには直接危害がなかったことと、転校などで環境を変えて負担をかけることはしたくありませんでした」
 家族法に詳しい早稲田大学の棚村政行教授は、「父親の育児参加が広がったり、ひとりっ子世帯が一般化したりする中で、離婚をめぐる社会的な背景が折り重なって作用している」と話します。
 これまで性別役割分業の考え方で、父親は外でお金を稼ぐのが仕事とされていました。共働きの増加から、子どもが幼い頃から育児参加する父親が増え、父親の意識が家の中へ払われるようになってきました。
 「少子化でひとりっ子を持つ核家族も増えており、父母ともに子どもひとりに対する執着度が強くなっている」と棚村教授は分析します。

離婚は微減、でも増え続ける「会いたい親」
 武志さんは、別居の数カ月後には家庭裁判所に離婚調停を申し立てることになります。
 親権の要求はしたものの、「勝てないことはわかっていた」と話します。武志さんが離婚とともに話し合いたかったのは、子どもとの「面会交流」でした。
 「面会交流」とは、別居や離婚で、子どもと離れて暮らす親が子どもと会うことです。
 「例え一緒に暮らせなくても、養育に関わりたい。養育費を払うだけではなく、勉強を教えたり、将来のことを考えたり、娘を見守っていきたいんです」(武志さん)
 離婚件数が微減している中で、面会交流を求める調停件数は年々増加しています。2016年度は約1万2千件で、10年間で2.3倍になりました。
 これに対し、養育費の調停件数も増えていますが、10年間で1.3倍で、ここ数年はほぼ横ばいです。2016年度に終了した面会交流の審判と調停の件数で見ると、7割超が父親からの申し立てでした。
 「子どもに会いたい父親」の背景には、何があるのでしょうか。
一方、幼い子どもを持つ夫婦などは、親権は母親が持つケースが多いです。「せめて会いたい」と願う父親でも、「感情のもつれなど、夫婦関係が非常に悪い状態だと、すんなりと子どもを会わせるという合意がしにくい場合もあります」
 「夫婦の別れが、親子の別れになってしまうのです」(棚村教授)
 面会交流を求めた武志さんですが、元妻は「子どもが会いたがっていない」と主張し、1度目の離婚調停は不調に。その後も面会交流を焦点に、調停は難航します。

「もうあの時間は取り戻せない」
 調停を重ね、武志さんの離婚は成立しました。調停条項には、武志さんが学校行事に参加することや、メールなどで娘と連絡することを妨げないこと、元妻は娘の定期テストの結果や成績を伝えること、など十数条が定められました。
 面会交流の頻度は決めることができませんでしたが、段階を経て実施するよう合意。このとき、家を出て別居を始めてから3年が経とうとしていました。
 「なんで早期解決できないんだろう、調停も1~2カ月に1回でしか行われなくて……。長期の裁判に巻き込まれた子どものダメージははかりしれないし、もう取り戻せない」
 声を震わせて語る武志さんのスマートフォンの待ち受けには、「元妻にやっと送ってもらった」という娘の写真が設定されていました。別居当時は小食でやせ型なのが心配だったという娘の顔は、少しふっくらして、顔つきも大人に近付いていました。
 「もしも会えるようになったら、ちゃんと謝りたい。家を出たことも『娘のせいじゃないよ』って伝えたい。いつかわかってもらえればいいなと思います」

離婚しても「一緒に育てようよ」別居する父の思い 週2で送迎、でも目標は見えない

出典:平成30年3月29日 朝日新聞

離婚しても「一緒に育てようよ」別居する父の思い 週2で送迎、でも目標は見えない

 離婚をめぐるトラブルの背景には、女性の社会進出や男性の育児参加など、社会の変化に制度や支援体制が追いついていない現状があります。調停離婚で面会交流を求めた男性は、今、子どもに何をしてあげることが「一緒に育てる」ことになるのか悩んでいると言います。(朝日新聞デジタル編集部・野口みな子)

ある日帰ると、妻も息子もいなくなっていた
 「家に帰って誰もいないと思うと、電車の中で不意に涙が出てきました」

 関東近郊に住む、会社員・啓介さん(仮名・40代)は、ある日帰宅すると、家はもぬけの殻になっていました。1年ほど前から、経済的価値観の違いから「離婚したい」と言っていた妻は、当時4歳だった息子を連れて家を出て行きました。それ以降、啓介さんは一軒家にひとりで暮らしています。

 啓介さんは離婚に応じる意向がありましたが、気になるのは息子のこと。何度か話し合いの機会が設けられたため、「一緒に育てる方法を考えよう」と提案しました。一方、妻は「その必要はない」と応じてくれず、数カ月後に話し合いの場は調停へと移りました。

 焦点は別居する親が子どもに会う「面会交流」でした。妻が提示したのは月1回4時間。一方、啓介さんは宿泊つきの面会交流を求めました。

 「月1回4時間なんて、1カ月の息子の生活の1%にも満たないんですよ。それでは時々遊んでくれるおじさんと変わらない……私は親です。一緒にお風呂に入ったり、一緒に寝たり、子どもにとって『生活する時間』を過ごしたい」

「どんどん成長する子どもを見守れるのは、嬉しい」
 突然の別居から約1年、月2回の面会交流のうち、1回は宿泊ができる取り決めで離婚が成立しました。養育費の金額もお互い合意し、息子の銀行口座に毎月振り込んでいます。

 現在、啓介さんは、息子さんの習い事に付き合うこともでき、ほぼ週2回という頻度で会えています。

 「月1回だったときは、毎回会えた時間を計算していました。でも今は、面会交流が『スペシャルイベント』じゃなくなったんです。子どもとのふれあいに余裕が出てきて、元妻と融通し合えるようになってきました。どんどん成長する子どもを見守れるのは、嬉しい」

「共同養育」何をしていれば……
 「パパこれ食べて!」

 啓介さんの息子が差し出したのは、アイスクリームのコーン。啓介さんは「たくさん食べたね、大人みたいだね」と受け取ります。息子の習い事帰り、ショッピングモールのフードコートにいる2人は何の違和感もない「親子」です。

 啓介さんのケースは、他の事例に比べると、スムーズに進んだと言えます。お互い調停が長引くことは望んでおらず、妻とは書面のやりとり以外でも対話ができていました。

 そんな啓介さんですが、現在も子どもにいつ会えなくなるかもわからない不安は消えないといいます。

 「離婚しても2人で子どもを育てる、『共同養育』がしたいと話し合ってきましたが、目標が見えない。離婚したら単独親権になる日本の場合、何をしていれば共同養育をしていると言えるんでしょうか。養育費を払っていたら? 面会交流をしていたら、なのでしょうか? 」

「共同養育」とは…遅れている日本
 離婚後の家族問題に詳しい大正大学の青木聡教授は「日本の共同養育に関する議論は非常に遅れている」と話します。

 「欧米などではある程度『共同養育の定義』というものが固まってきています。1年の約30%、年間100日くらいの時間を共に過ごし、日常的なしつけが行える、ということです」

 具体的な数字を伴う議論が進んでいるのには、女性の社会進出などもからめて、膨大な数の離婚に関する研究が行われている背景があります。またアメリカでは、両親が教育プログラムを受講しないと、離婚の手続きが進められないなど、共同養育の意識も深まっています。

 「日本では、制度や親への教育的な支援の枠組みが十分でないために、養育費を多くしたい、面会交流を多くしたい、という議論に終始してしまっています」と指摘します。

 また共同養育コンサルタントとして、離婚を考える父母の相談を受けるしばはし聡子さんは「『ひとり親』という言葉が固定概念を生んでいる」と話します。

 「子どもと同居する親にとっても『何としてでもひとりで育てなきゃ』という気持ちにつながります。子どもにとって、別居・離婚しても親は変わらず2人います。この意識が世の中に広がれば、早い段階で夫婦の葛藤や、子どもの負担を減らすことにつながるのではないでしょうか」

(声)日本も共同親権を認めるべきだ

出典:平成30年3月27日 朝日新聞

(声)日本も共同親権を認めるべきだ

 弁護士 伊藤紘一(東京都 75)
 2010年の相対的貧困率の国際比較を見ると、日本の一人親家庭の貧困率50・8%は、OECD加盟国の平均31・0%を上回り、最も高い。
 原因は、諸外国は離婚後も父母による共同親権なのに対し、日本は片方が親権者だという制度にある。共同親権の場合、「面会交流の具体的な約束」が決まらないと離婚できない。日本は離婚届に養育費と面会交流の約束の記載欄はあるものの、おざなりだ。
 面会交流の効果として、(1)離婚に伴う子どもの悲しみが癒やされる(2)双方の親から愛されているという安心感(3)父母をモデルとした自我形成が可能(4)自尊感情の形成に役立つ、などがある。面会交流をしていれば、養育費の支払いも行われやすい。
 日本の一人親家庭が貧困であれば、生活保護による援助も必要になる。財政負担は、共同親権で面会場所を提供したり、カウンセラーの費用を負担したりするより大きい。一刻も早く共同親権にして、離婚時には(1)養育プログラム(2)養育費の支払い(3)具体的な面会交流の約束を第三者機関がチェックし、面会前の引き渡し場所の提供やカウンセリングも制度化すべきだ。

ハーグ条約 子を守るルール周知せよ

出典:平成30年3月17日 産経新聞

ハーグ条約 子を守るルール周知せよ

 離婚などで一方の親が子供を国境を越えて連れ去るトラブルが増えている。これに対処する「ハーグ条約」をめぐり最高裁は子の返還命令に応じないのは原則、違法とする初の判断を示した。
 条約に加盟している以上、妥当といえる。子供を保護する条約の趣旨を改めて国民に周知、徹底することが求められよう。
 条約は、16歳未満の子供を一方の親が無断で連れ去った場合、加盟国は子供を捜し、元の居住国に戻す義務を負うと定める。
 今回の事案は日本人同士で、米国在住の父が、次男(13)を日本に連れ帰った母に引き渡しを求め、返還命令が確定した。母親がこれに応じず、父が改めて人身保護法による返還を申し立てた。
 最高裁は、返還命令に従わないのは、特段の事情がない限り違法とした。子供をめぐる問題は、国際結婚のみならず、日本人同士の夫婦間でも起きている。
 条約が日本で発効したのは4年前だ。今年2月末までに、子の返還命令が確定したものが23件あり、このうち6件は、連れ去った親が激しく抵抗するなどして返還に至らなかったという。
 最高裁は今回、子供が意思決定に必要な情報を得ているか、連れ去った親が不当な心理的影響を及ぼしていないかなどを検討した。その上で、父と十分に意思疎通する機会がなく、「拘束」されていると厳しくみた。

 夫婦の問題は、他人が立ち入れない難しさを抱える。だが、加盟した以上、ルールを破れば国際的に強く非難されることを親は知っておくべきだ。
 欧米では両親の離婚後も自由に面会ができることが、子供のためになるという考えが強い。
 親権制度などの違いもあり、条約が日本になじむかどうか、加盟には慎重論もあった。一方、日本から連れ去られた子の返還手続きを取れるようになるなど、加盟による利点があるのは明らかだ。
 未加盟のままでは、子供を連れて日本に帰ろうとした場合に「誘拐」などと指弾され、渡航制限を受けるケースもある。
 夫の暴力などから逃れ、子供を連れて帰国する女性もいる。条約では、子に危害が及ぶ場合は返還を拒否できる。政府は家庭内暴力の相談など支援態勢をより強化すべきだ。子供の幸せを最優先とする運用が大事である。

ハーグ条約 「子の返還拒否は著しく違法」最高裁初判断

出典:平成30年3月15日 毎日新聞

ハーグ条約 「子の返還拒否は著しく違法」最高裁初判断

 国境を越えた子の連れ去り防止を定めた「ハーグ条約」に基づく裁判所の返還命令に従わないのは違法だとして、米国在住の父親が息子(13)を連れて帰国した母親に子の引き渡しを求めた人身保護請求の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、「父親の請求を認めるべきだ」として、父親側敗訴とした1審判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。

父敗訴の1審破棄
 最高裁は「裁判所の返還命令に従わず子を保護下に置くことは、特段の事情がない限り著しく違法な身体拘束に当たる」との初判断を示した。国内では、子を連れ帰った親がハーグ条約に基づく裁判所の返還命令に従わないケースが相次いでおり、最高裁は条約手続きの順守を強く促した形だ。
 判決によると、争っているのは米国で暮らしていた日本人夫婦。母親が2016年に息子を連れて帰国したため、父親がハーグ条約の国内実施法に基づいて東京家裁に息子の返還を申し立てた。家裁は返還を命じたが、母親は応じず、強制執行のために執行官が自宅を訪れた際にも引き渡しを拒んだ。
 父親は息子の引き渡しを求めて人身保護請求の裁判(2審制)を起こしたが、1審の名古屋高裁金沢支部は昨年11月、「息子は自らの意思で日本に残ることを選んだ」として請求を退けた。
 これに対し最高裁は、息子の意思について「11歳で帰国して母親に依存せざるを得ず、母親の不当な心理的影響を受けていると言わざるを得ない」と指摘し、本人の自由な意思とは言えないと判断した。その上で、息子の引き渡し手続きを行わせるために高裁に差し戻した。裁判官5人全員一致の意見。
 ハーグ条約は、親の一方が断りなく16歳未満の子を国外に連れ出した場合、残された親の求めに応じ、原則として子を元の国に戻さなければならないとしている。日本は14年に加わり、昨年10月までに98カ国が加盟する。【伊藤直孝】

子巡る争い、長期化回避
 ハーグ実施法の引き渡し命令を拒むことが原則として違法になると示した15日の最高裁判決は、子を巡る親同士の争いが長期化することを避けようとする狙いがあるといえる。
 外務省によると、同法に基づく裁判所の返還命令は今年2月までに23件出された。このうち6件で引き渡しの強制執行に至ったが、いずれも親の抵抗で実現しなかった。
 人身保護請求の判決に従わない場合は、2年以下の懲役や罰金の刑事罰が科される可能性がある。条約の手続きに詳しい山本和彦一橋大教授(民事法)は「今回の判決により、両親の争いが早期に和解や調停で解決されることが期待できる。返還命令が十分履行されないと言われる現状について、制度の再考を示唆したとも言えるのではないか」と見る。
 今回のようにハーグ実施法、人身保護請求と異なる裁判を繰り返す当事者の負担は大きい。弁護士の間では、ハーグ実施法の執行手続きが「厳密すぎる」との批判もある。子の利益を最大限に重視した上で、親同士の泥沼化する争いをどう決着させればいいか、更なる議論が求められる。【伊藤直孝】

子の返還拒否「違法」ハーグ条約で最高裁初判断

出典:平成30年3月15日 日本経済新聞

子の返還拒否「違法」ハーグ条約で最高裁初判断

国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めた「ハーグ条約」を巡り、米国在住の夫が、息子(13)の返還命令を拒む妻に子の引き渡しを求めた裁判の上告審判決が15日、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)であった。同小法廷はハーグ条約に基づき確定した子供の返還命令に従わない場合、「違法な拘束にあたる」との初判断を示し、息子を夫に引き渡すことを認めた。

ハーグ条約による子供の返還が実現しないケースについて、最高裁が判決を言い渡すのは初めて。子供の引き渡しを巡る両親の争いが相次ぐ中、ハーグ条約を重視した司法判断といえ、今後、同様のケースに影響を与えそうだ。
上告審判決によると、米国で暮らしていた日本人夫婦は夫婦関係が悪化し、2016年1月に妻が、夫の同意を得ずに息子を連れて帰国した。
第1小法廷は「確定した裁判所の返還命令に従わない場合、特段の事情がないかぎり顕著な違法性があるというべきだ」として、条約に実効性を持たせる判断を示した。
妻側は「息子には日本での生活を続けたいという意思があり、違法な拘束ではない」と主張。これに対し、第1小法廷は「息子は、米国に返還された後の生活などの客観的な情報を得るのが難しい状況に置かれており、自由な意思で日本にとどまっているとはいえない」と退けた。
17年11月の一審・名古屋高裁金沢支部判決は、「夫への引き渡しは息子の意思に反する」として返還を認めず、夫が敗訴した。第1小法廷は一審判決を破棄し、審理を名古屋高裁に差し戻した。差し戻し後は、引き渡しを実現させるために息子を裁判所に出頭させて審理を進めるとみられる。
夫はハーグ条約に基づいて返還を求め、16年11月に日本の家庭裁判所で返還命令が確定した。裁判所の執行官が2階の窓から妻の自宅に入って息子の引き渡しを求めたものの、妻が激しく抵抗して実現しなかった。このため、夫はさらに、人身保護法にもとづく「人身保護請求」という別の手続きを申し立てた。

“子ども返還命令” 拒否は違法 最高裁が初判断

出典:平成30年3月15日 NHK

“子ども返還命令” 拒否は違法 最高裁が初判断

子どもを国外に連れ出した親がハーグ条約に基づく返還命令を拒否したことについて、最高裁判所は、日本の人身保護法の手続きで引き渡しを求めれば、返還の拒否は原則として違法になるという初めての判断を示しました。返還命令に実効性を持たせる判断として同様のケースに影響するものと見られます。
この裁判は、子どもを日本に連れ帰った母親が、ハーグ条約に基づく返還命令を拒否したことから、アメリカに住む父親が、日本の人身保護法に基づいて子どもを引き渡すよう求めたものです。

裁判では、引き渡しの拒否が違法な拘束といえるかどうかが争われ、名古屋高等裁判所金沢支部が「本人が日本での暮らしを望んでいる」などとして訴えを退けたため、父親が上告していました。

15日の判決で最高裁判所第1小法廷の山口厚裁判長は「子どもが国境を越えて連れ去られた場合は、本人が必要な情報を得ているかどうかなどを慎重に検討する必要がある」という判断を示し、今回のケースは母親による拘束にあたると指摘しました。

そして、条約に基づく返還命令の拒否は、人身保護法の手続き上、原則として違法になるという初めての判断を示し、子どもを父親に引き渡すべきだとして、母親と子どもを出頭させるため、名古屋高裁金沢支部に審理を差し戻しました。

ハーグ条約に基づく返還命令を拒否するケースが相次ぐ中、罰則規定のある人身保護法による引き渡しを認めた今回の判決は、返還命令に実効性を持たせる判断として同様のケースに影響するものと見られます。

ハーグ条約の運用
ハーグ条約は、国際結婚が破綻し、一方の親が相手に無断で子どもを国外に連れ出した場合、原則として元の国に戻すための手続きなどを定めたものです。

外務省によりますと、ハーグ条約に基づいて外国にいる親が日本の裁判所に子どもを返すよう申し立て、返還命令が出たケースは、日本で条約が発効した平成26年から先月末までに23件ありました。返還命令を受けた親が引き渡しに抵抗した場合は、応じるまで制裁金を科すことができるほか、裁判所の執行官が出向いて子どもを返すよう求める「代替執行」を行うこともできます。

しかし、子どもの心身に負担をかけないように配慮する必要があるため、代替執行ができるのは親と一緒にいるときに限られているうえ、力づくで引き離すこともできません。外務省によりますと、これまでに日本の裁判所が代替執行を決定したケースは6件ありますが、いずれも引き渡しが実現していないということです。

こうした中、日本の法律に基づいて子どもを連れ戻そうと、今回のように「人身保護法」に基づいて引き渡しを求めるケースもあります。

人身保護法による手続きで裁判所が審理の必要があると認めれば、当事者は裁判所に出頭しなければならず、出頭しない場合は、強制的に出頭させたり、悪質な場合は刑罰を科したりすることもできます。そして、裁判所が保護の必要があると認めれば、その場で当事者どうしを引き離すこともできます。

外務省によりますと、ハーグ条約に基づいて代替執行が決まった6件のうち、人身保護法に基づく申し立てがあったケースは、今回も含め2件あるということです。

ハーグ返還命令後の拘束 最高裁、審理差し戻し 「特段の事情ない限り違法」

出典:平成30年3月15日 産経新聞

ハーグ返還命令後の拘束 最高裁、審理差し戻し 「特段の事情ない限り違法」

 両親の離婚などにより国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定めた「ハーグ条約」実施法に基づく返還命令が確定したのに、従わないのは不当として、米国在住の父が日本在住の母に次男(13)の引き渡しを求めた人身保護請求の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、請求を認めなかった名古屋高裁金沢支部判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。

 同小法廷は「実施法に基づく返還命令が確定したにもかかわらず、子を拘束している場合は、特段の事情がない限り、違法性がある」との判断を示した。

 ハーグ条約による返還が実現しないケースについて最高裁が判決を出すのは初めて。

子の引き渡し拒否「違法」=ハーグ条約で初判断-米在住の夫が訴え・最高裁

出典:平成30年3月15日 時事通信

子の引き渡し拒否「違法」=ハーグ条約で初判断-米在住の夫が訴え・最高裁

 結婚生活の破綻などで国外に連れ去られた子供の扱いを定めたハーグ条約に基づく返還命令に応じないのは不当だとして、米国在住の夫が日本に住む妻に息子の引き渡しを求めた人身保護請求の上告審判決で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は15日、命令に従わないのは「特段の事情がない限り違法」との初判断を示した。その上で、夫の請求を退けた一審名古屋高裁金沢支部判決を破棄し、審理を高裁に差し戻した。
 争っていたのは、米国で暮らしていた日本人夫婦。関係が悪化し、妻は2016年、米国生まれの次男(13)を連れて日本に帰国した。
 夫はハーグ条約に基づき次男を米国に帰すよう求め、東京家裁が返還を命令したが妻は拒否。執行官が引き離す強制執行にも抵抗したため、夫が人身保護請求の裁判(二審制)を起こした。

 第1小法廷は、国境を越えた連れ去りでは「子が意思決定に必要な情報を偏りなく得るのは困難」と指摘。妻側は「次男は日本での生活を望んでいる」と訴えたが、帰国時に11歳だったことなどから自由意思とは言えないと退け、不当な「拘束」に当たると判断した。
 その上で、返還命令に従わないのは原則として違法と判断。次男を引き渡すには法廷に出頭させる必要があるため、審理を高裁に差し戻した。

離婚などで離れて暮らす親子 面会できる法整備求め提訴へ

出典:平成30年3月6日 NHK

離婚などで離れて暮らす親子 面会できる法整備求め提訴へ

離婚などで離れて暮らす子どもと会うことができない親たちと、支援している弁護士グループが、親子が迅速に面会交流できるようにする法律の整備を求めて国を訴える裁判を起こすことになりました。
裁判の準備を進めているのは、夫婦間の離婚や別居で子どもと離れて暮らしている親たちと、支援している弁護士グループです。
こうした「別居親」たちは、「面会交流」で子どもと定期的に会うことを望んでいますが、同居している親の反対で実現まで何年もかかったり、事前の取り決め通りに会えなかったりした経験があるということです。

弁護士グループは、家庭内暴力などの問題がないのに片方の親が一方的に子どもを連れ出したような場合でも別居親が迅速に子どもと会えないのは、面会交流に関する法律が整備されていないからだと主張して、別居親など14人を原告に、国に賠償を求める裁判を近く東京地方裁判所に起こすことを決めました。

提訴する上野晃弁護士は「定期的に親子が交流できる法制度が存在していないことで、会えずにつらい思いをしている親と子どもがいる。国会で立法措置を整えてくださいと求める思いで訴えを起こしたい」と話しています。

子の引き離し全て失敗、ハーグ条約実効性に疑問

出典:平成30年3月6日 読売新聞

子の引き離し全て失敗、ハーグ条約実効性に疑問

 結婚生活の破綻などに伴って夫妻の一方が国外に連れ去った子の扱いを定めたハーグ条約を巡る日本国内での裁判で、子を元々住んでいた国に帰す命令などが確定したのに、応じない親を子と引き離すために行われた法定手続き6件がすべて失敗していることが外務省への取材でわかった。

 条約の実効性が問われる事態で、専門家は「制度を改善すべきだ」としている。

 ハーグ条約は、片方の親が無断で子を母国に連れ帰った場合、その子を元の居住国に帰すことを原則とする国際ルール。他国在住の親から子を帰すよう申し立てを受けた家裁などが、審判などで可否を決定する。決定に反して子の引き渡しに応じない親には、制裁金が科される間接強制を経て、代替執行が行われる。

蒲田孝代弁護士「面会回数と親権者指定」事件を読んで―フレンドリーペアレンツ

出典:平成30年2月17日 名古屋ブレイブハート法律事務所ブログ

法学セミナー 2018年3月号 「最高裁判決2017——弁護士が語る」に掲載された蒲田孝代弁護士による論文『「面会回数と親権者の指定」事件 ——いわゆる100日面会提案事件』についての下記解説が名古屋ブレイブハート法律事務所のブログに掲載されましたので紹介させて頂きます。

蒲田孝代弁護士「面会回数と親権者指定」事件を読んで―フレンドリーペアレンツ

弁護士の仕事には互換性があるので、なんともいえないのだが、蒲田孝代は女性の弁護しかしないようである。そのためやや極端かつ一方的な議論が目立ち、法学セミナーに掲載されたものは残念な内容で理論的示唆を示すものではなく、裁判官に対する主観的不満を縷々述べるものに終わってしまった感が否めない。
紛争の経過は、当ブログのフレンドリーペアレンツ判決として好意的に取り上げているので、そちらを呼んで欲しい。
夫側の立証計画は、大胆なもので司法改革を迫るものといえた。
蒲田によれば、夫側が提出した証拠は、
・面会交流に関する論文
・国会での議論状況の資料
ハーグ条約関連の資料
片親疎外というテーマの資料
などを提出した。
しかし、蒲田は弁護士として、このように述べる。「日本の法制度の欠陥を指摘するために、自身の離婚事件を利用しているように妻側には映った。言うまでもなく、具体的な訴訟手続きで現行法制度を変更することはできない」というが果たしてそうだろうか。東京高裁判事の岡口基一が「裁判官、当職そこが知りたかったのです。」の中では、第一審裁判官は問題提起をすることは許されているという趣旨の発言もある。司法修習生に対する給費制の実質復活も具体的な訴訟手続きの成果そのものではないか、家事事件の場合、裁判の積み重ねが重要であるから、裁判官に個別具体的な訴訟手続きの中で問題提起を迫るのは、憲法判断すら許されている裁判官にとって、むしろ通常予定されているおり、論旨は明らかに誤謬がある。
蒲田孝代弁護士は、当事者である原告(被控訴人)を次のように「人格攻撃」するが、理屈で責められないということは、論理破綻していることの証左である。やはり、我が国でも前向きな共同養育法案を推進していく必要性があると、かえって、かような極端かつ一方的な弁護士がいると思ってしまう。神戸家裁部総括判事の永井尚子が指摘するように、親権にしても、面会交流にしても、裁判所に持ち込まれるのは中間ラインのもので熾烈なものではない。なぜなら、絶縁していれば親権争いなど置きようがないし、元来互いに愛情が深ければ面会について協議離婚の際、宿泊も含めて合意するのが普通だからである。永井部総括判事は、裁判所に持ち込まれているものが中間ラインのものであるものであることを喝破しているのだ。したがって、熾烈な争いは本来論理的に起こり得ないのであって、むしろそれを盛り立てているのは、蒲田孝代弁護士のような弁護士ではないのか。以下、彼に対する人格攻撃をみていこう。
・子を連れ去ったもの勝ちなどと侮辱している
・子のプライバシーを犠牲にしてまで自己の正当化を図っている
・マスメディアの一方的な報道で傷ついた
・面会交流を求めているのではなく、法改正の「活動家」だ
子の最善の利益の主張をしていない(何度も読むがこれは蒲田の主観的なものにすぎないだろう。)
・以上の次第で蒲田弁護士は面会交流を拒否することを決めたのだ、という。
しかしながら、DVもない案件で、なぜエフピックを利用しなければならないのか、私にもよくわからない。たしかに永井尚子も導入期が難しいと指摘し、正鵠を射るものである。双方ともリベラルさを欠いており、裁判官が両成敗をしたのは当然のことのように思えてくる。
あまりに異例な判決というが、アメリカでは、共同親権でない主たる監護者+面会交流の場合、100日くらいがベースラインだ。ゆえに、異例でもなんでもにない。しかも、これまで、全く面会交流にも応じてこなかったのであるから、相応に問題があるとマスコミが見立てるのは当然のことといえよう。蒲田はそれを「被害者」ぶっているが反駁には全く成功していないように思われる。
そして、蒲田は驚いたことに、上記で馬鹿にしていた夫側の立証に対する反駁を試み始めるのである。
・フレンドリーペアレントルールは、諸外国で大きな弊害がある(と主張するのだが、たしかにオーストラリアスウェーデンの立法政策を研究している私からすれば、リセッションはあるがそれは共同親権についてであって、フレンドリーペアレントルールに問題や弊害があるなど聴いたことがない。もしそういうものがあるとすればやはり極端かつ一方的な論者の議論なのではないか。)
しかし、判決についての論考であるのに、判決について肯定的な理論的検討がされていないことは甚だ遺憾であり、これで判例雑誌といえるのか、と思ってしまった。蒲田弁護士の一方的な罵詈雑言の類が書いてあるに過ぎない。
しかしながら、それ以上に驚いたのは、文章を拝見する限り、現在も面会交流は実現をみていないようにうかがわれることである。父母間の高葛藤は面会交流拒否事由として認められていないにもかかわらず、これが認められている誤導を前提に論を進める論者にも問題はあるが、この弁護士には面会交流について調整する能力に疑問符をつけざるを得まい。

子の引き渡し可否、最高裁判断へ ハーグ条約巡り

出典:平成30年2月13日 日本経済新聞

子の引き渡し可否、最高裁判断へ ハーグ条約巡り

両親の離婚などで国境を越えて連れ去られた子供の取り扱いを定める「ハーグ条約」に基づき、米国在住の父親の元に子を返すよう命じた家裁決定が確定した後も、返還を拒否した母親に父親が引き渡し(人身保護)を求めた裁判で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は12日までに双方の言い分を聴く審問を3月5日に開くと決めた。人身保護請求の一審名古屋高裁金沢支部は、条約に基づく司法判断と異なり子の引き渡しを認めなかった。
両親は米国で暮らしていた日本人。母親が2016年初めに次男(13)を連れて日本に帰り、父親と争いになった。父親が東京家裁に返還命令を申し立て、16年に確定。自宅を訪れた執行官に対し母親は次男の引き渡しを拒んだ。父親が人身保護請求を申し立て、17年の金沢支部判決は「次男は日本での生活を続けたいと話しており、引き渡しは意思に反する。ハーグ条約は人身保護請求の判断に影響しない」として請求を棄却した。

「子どもを元夫に会わせるのは、自分のため」慰謝料も養育費もなく離婚した妻の思い

出典:平成30年2月4日 cyzo woman

「子どもを元夫に会わせるのは、自分のため」慰謝料も養育費もなく離婚した妻の思い

 『わが子に会えない』(PHP研究所)で、離婚や別居により子どもと離れ、会えなくなってしまった男性の声を集めた西牟田靖が、その女性側の声――夫と別居して子どもと暮らす女性の声を聞くシリーズ。彼女たちは、なぜ別れを選んだのか? どんな暮らしを送り、どうやって子どもを育てているのか? 別れた夫に、子どもを会わせているのか? それとも会わせていないのか――?

第13回 尾崎豊美さん(仮名・47歳)の話(後編)
 20代後半で一目惚れした、バツイチの男性と結婚。長男を妊娠中、夫には700万円もの借金があることが発覚。夫の服を売ったほか、食品のまとめ買いや、子ども服をすべて友人からのお下がりで済ますなどして節約し、サラ金4社の借金を数年かけて返済した。しかし、子育てに一切関わらない夫は、次第に暴力を振るい始め、三男が生まれて長男が学校で荒れだすと、「お前の育て方が悪い」といって殴るので、離婚を考えだす。

私を殴る夫に、長男はおびえるようになった
――豊美さんが叩かれたとき、子どもたちはどういう反応でしたか?
 私が叩かれている姿を見て、「パパがママをいじめてる」と認識したようです。それ以来、長男は父親のことをすごく毛嫌いするようになった。それでも、会話までは拒否してませんでしたけどね。
――とすると、旦那さんと息子さんの関係は、そのまま大丈夫だったんですか?
 いえ。その後、長男は、夫におびえるようになりました。夫が珍しく「外行くか」って誘ったことがあったんです。そのとき長男は勉強中で「終わるまで待ってて」って答えたんです。すると、途端に夫が腹を立てて、「行くのか。行かねえのか」って怒鳴りながら、テレビのリモコンで長男を殴りつけたんです。殴られてからというもの、長男は夫が帰ってくるたびにビクビクするようになっちゃった。そんな長男の姿を見て私、「急いで決着をつけないと」って思いました。
――その後、家から旦那さんを追い出して、離婚したのですか?
 いえ。その前に1回、私が子どもたちを連れて、多摩にある私の実家に帰ってます。その間、彼は1年間にわたり、この一軒家にひとりで生活していました。
――お父さんが買ってくれた家なのに、豊美さんは自ら出て行ったんですね?
 夫が長男をリモコンで殴った頃から、私は心身共にガタガタでした。顔面麻痺に加えて失語症にもなって、もはや限界。そんなとき、父が「家はそこだけじゃないぞ。戻ってこい」と救いの手を差し伸べてくれました。そうして親に甘える形で、私と子ども3人は、実家に住み始めたんです。その頃、私は在宅ワークで収入を得ていて、そこから家賃や食費を親に渡していました。
――決着をつけるべく、旦那さんと話し合いをされたのですか?
 やりとりは、主にメールで行いました。私のほうから「もう限界、別れて」って離婚を切り出すと、夫は渋りました。「別居のままでいいから、離婚はしないでくれ」って。「無理です」と短く返信したんです。

父親と母親、子どもには、どちらも大事

――別居中、旦那さんと子どもたちの関係は、どうだったのでしょうか?
 月に1〜2回のペースで会わせていました。でも、夫の発言を境に、会わせなかった時期もあります。というのも、別れ話の最中、夫は私にこんなことを言ったんです。「『離婚したい』っていうのは俺の意思じゃない。本当に離婚するっていうなら、おまえが慰謝料を払うべきだし、子どもには会わせろ。だけど養育費は払わないからな」って。
 離婚を切り出さざるを得ないぐらいに私たちを追い詰めておいて、『俺の意思じゃない』って、よく言えたものですよ。これには、震えるほどの強い怒りを覚えました。頭にきた私は、それから3カ月ほど連絡を絶ったのですが、すると子どもたち3人それぞれに、「なんで最近パパと会えないの?」「このままずっとパパに会えなくなるの? やだよ、そんなの」などと言われたんです。
 それを聞いて私、思いました。「なんだったんだろう? この10年以上。借金を返してきて、一生懸命あんたたちのためにと思って頑張ってきたのに、なんで『パパ、パパ』なの?」ってやるせない気分になって、下戸なのに私、ワンワン泣きながら浴びるようにお酒を飲み続けて、泣いて泣いて泣きまくったら、明け方になってしまっていました。
 夜が明けていく中、私、達観したんです。親は子どもから愛されている。父親と母親、子どもにはどちらも大事だと。床に就く前に、夫にメールしました。「養育費も慰謝料もいらないから、家から出て行って。その代わり、子どもたちとは好きに会っていい」って。するとすぐに、承諾する旨の返事がきました。そうして、あっさり協議離婚が成立したんです。
――別れた後の心理的な変化はありましたか?
 「今後は、自分が頑張ればいいんだ」っていうことに気がついて、すごく気持ちが楽になったんです。だからなのか、子どもには「離婚して、ママもパパも優しくなった」と感謝されました。だけど、もし夫が調停や裁判を起こしてきたりして長引いたら、私もアウトだったかもしれない。
――面会は、どのような調子で行っていますか?
 リモコンで殴られたことがある長男は当初、夫に会うことを怖がっていました。それでも次第に警戒心が解けていくと、長男が面会の段取りをリードするようになりました。連絡は、夫と主に長男が話をつけてるようです。面会させて帰ってきたときに子どもの様子がおかしいといったことはないですが、「なんでパパとママは一緒に住めないの?」と何回か言われたりはします。そのときは、「地球がひっくり返っても、ママは無理。その分、いっぱい会っていいから」と言ってます。
――面会をさせて、つらくなることはありませんか?
 当初はつらかった。「なんでこんなに喜んで帰ってくるんだろう?」とか「また夫だけいいとこ取りか」とか、面会させるたびに、そんなふうに気持ちがザワザワしていました。なので面会ごとに、エステに行ったり、友達とおいしいものを食べに行ったりして、あえて気を紛らわせていました。

子どもを元夫に会わせるのは、別れた後、幸せになるため

――その後も、ずっと会わせているんですか?
 2年ほど前、夫が急に「子どもに会わなくていい」って言いだしたことがありました。たぶん彼女ができたんでしょうね。しかも、「一軒家を売りたい」って言って、それだけの理由で調停を起こされました。離婚したときは「家は私に譲る」という約束だったのに。
――そこで初めて調停なんですね。
 私、悔しくて、裁判所の調停室でワンワン泣いてしまいました。すると見かねた調停委員が、夫を注意してくれたみたいです。「今、調停をするのは、『子どもに会わせてくれ』っていう人がほとんどですよ。なのに、あなたは好きに会わせてもらって、しかも養育費も払わずに済んでるのに『家を売りたい』って主張する。いったいどういうことですか!」って。
 調停は「家は売らない」という結論で終了しました。それまで口約束だった取り決めを公正証書化し、そこには「家は私に譲渡する」という項目が含まれています。面会交流の項目も入れました。ただ、それは「最低でも夫は月に1回は子どもに会わなければ、罰金を科す」というものでした。結果的には、旦那が『家を売りたい』と言ってきたことで初めて、離婚後の約束を証書にまとめることができました。
――調停後の面会は、どのような感じですか?
 日曜日が多いかな。ご飯を食べに行きますね。長男と次男はもう大きくなっているので、昼間はパパと出歩くのは気恥ずかしいみたい。三男はもちろん、喜んで昼間から会いに行きますよ。それで夕飯には、長男と次男が合流するんです。夏なんかは一緒に、夫と泊まりでG県に行ってきたりしますよ。元義母からは、今でも電話は来ます。
――旦那さんとのやりとりはあるんですか?
 ほとんどないですが、連絡するとき、別にためらいはないです。子どもたちの父親ではあるけど、私にとっては過去の人だから。ここまで気持ちを整理するのに4年かかりました。定期的に淡々と会わせていくことで、私の中のわだかまりを消化していったんだと思う。
――今の生活はどうですか?
 育ち盛りの子どもが3人いると、何かしら出費が増えてしまって大変。だけど、結婚してたときみたいに耐えてないので楽です。家計が大変な分、子どもたちにはかわいそうな思いをさせてて、申し訳ないです。それでも学費だけは出してあげようって決めています。
――今後は何をしたいですか?
 子どもを元夫に会わせるのは、別れた後、幸せになるため。つまりは自分のためだということを、関わっている面会交流支援を通じて伝えたいです。「会わせたくない」という気持ちはすごくわかる。だけど、そのまま1人で抱え込むのは負担が大きすぎますよ。だから、私が支援している人たちには、「会わせ続けることが自分の新しい一歩になるし、自分の人生を生きることにつながるよ」って伝えています。

西牟田 靖(にしむた やすし)
1970年大阪生まれ。神戸学院大学卒。旅行や近代史、蔵書に事件と守備範囲の広いフリーライター。近年は家族問題をテーマに活動中。著書に『僕の見た「大日本帝国」』『誰も国境を知らない』『〈日本國〉から来た日本人』『本で床は抜けるのか』など。最新巻は18人の父親に話を聞いた『わが子に会えない 離婚後に漂流する父親たち』(PHP研究所)。数年前に離婚を経験、わが子と離れて暮らす当事者でもある。

DV認定され、9歳の娘に二度と会えない…離婚で地獄を見た男の嘆き

出典:平成30年1月30日 現代ビジネス

DV認定され、9歳の娘に二度と会えない…離婚で地獄を見た男の嘆き

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西牟田 靖
わが子に会えない夫たち
1/30(火) 11:00配信

年間21万組が離婚をする昨今において、子供の親権を巡って夫・妻双方の意見が食い違い、お互いの納得・合意が得られぬまま、裁判所の判断によって親権が決められてしまうケースが多発している。
『わが子に会えない』などの著書があり、離婚にまつわる諸問題について取材執筆を重ねているノンフィクションライターの西牟田靖氏が今回報告するのは、DVなどの理由で親権を認めてもらえなかった男性のケースだ。無論、本当にDVがあったのなら仕方がないが、この男性の場合はどうやら違うようである。
いわれのない理由で、ある日突然、最愛の娘・息子に会えなくなる――。この親権を巡る問題を西牟田氏が追う。

愛する娘に7年会えない

「離婚裁判中、妻側の弁護士らは、私が妻に配偶者暴力(DV)を振るったと断固主張し、私を社会的に抹殺しようとしました」
こう語るのは、妻に子供を"連れ去られ"、わが子と会えない状態が7年以上に渡って続いているAさん(40代)だ。
Aさんは、2016年3月に、9歳の女児を父母どちらが育てるかをめぐって争われた一審千葉家裁松戸支部で、当時一緒に生活していた母親ではなく、離れて暮らしている父親に親権が与えられた当事者である。
しかし翌17年1月、Aさんは東京高裁で逆転敗訴の判決を受け、親権者が母親となり、いまだ娘に会えないままだ。
Aさんの主張を要約すると、こうなる。
・離婚する前まで、娘を育てていたのは自分
・離婚裁判の時に、娘の親権を訴えたが全く認められなかった
・根拠とされたのはDVだが、そのような事実はない
なぜAさんの親権は認められなかったのか。Aさんは「弁護士と裁判官が結託して、結論ありきで話を進めたとしか思えない」と言う。
一見、「思い込みではないのか」とも思えるが、実はこうしたケースは多発している。今回のルポでは、Aさんの主張、同じ経験を持つBさんの話、そしてこのことを問題視している弁護士の話をもとに、離婚裁判における親権争いの問題点を指摘していきたい。
そもそもAさんの離婚問題の発端は何だったのか。結婚から別れまでの経緯をAさんに語ってもらった。
「私と妻は大学時代に知り合い、二人とも大学院を出て、私は国家公務員に、妻は国連職員になりました。2006年に結婚し、翌年に娘が産まれました。ある時、妻が義母と協力して、私の留守中を狙い家に保管していた現金を無断で持ち出したんです。
本人は後に裁判で『生活費を渡してもらえず、検診費用にすら窮したため』と主張したのですが、却下されました。その一件があって以降、私は離婚を考えていたのです。
しかし、当時、妻のお腹には娘がいました。悩みながらも、娘が成長するまでは両親が必要と考え、また義父の説得もあり、婚姻関係を継続することとしました。
妻は長女の出産後、東京の大学院に通い始めました。一方、私は出向となり、2009年から、娘とともに大阪で暮らす生活が始まりました。妻は平日を東京の実家で過ごしながら大学院へ通い、週末に大阪に来る割合が増えていきました。
1年も経つと、私が家事や育児のほとんどを担うようになっていました。その頃、保育園の送り迎えは私がやっていました。朝夕の食事や寝かし付け、入浴なども基本的に私がやっていました。
ところがその年の5月1日、連休で大阪を訪れていた妻が、『海外で働きたいので娘を連れて外国へ行く』と言い始め、朝から激しい口論となりました。
私はもう、限界でした。その日の夜、ついに離婚に向けての話し合いをしました。ただ、夫婦の切れ目を親子の切れ目にしてはならないと考えました。妻は私にとって酷い女性でも、娘にとっては大切な母親です。
そこで、私は妻に別れた後の共同養育計画を提案しました。『私が娘を育てるから、君は海外で好きなだけ仕事をすればいい。もちろん、君が日本に戻ってきた時には自由に娘と交流してほしい。養育費も含めて、全部こちらが払う』と言って書面を渡したところ、妻は『2週間考えさせて』と言いました。
その後の数日間、私たちはつかの間の平穏な時間を過ごしました。3人で喫茶店に行って和やかに過ごしたりしたんです。その頃の妻はケンカした時とは別人のように穏やかでした。私は妻が離婚について前向きに考えてくれているんだとばかり思っていました。
ところが、連休明けの5月6日、事態が動きます。私が娘を保育園に迎えに行くと、娘がいなくなっていました。保育園の先生によると、妻が迎えに来た、とのこと。しかも帰ってくると、住んでいたマンションから妻や娘の持ち物がなくなっていて、部屋がもぬけの殻になっていたんです」

家裁では親権を得たものの…

突然娘を連れ去られたAさんは、妻との離婚裁判を始める。2016年3月、千葉家裁松戸支部は、Aさんが提案した「共同養育計画」に着目した。Aさんは年間100日の面会交流を提案したのに対し、妻は月1回程度の面会としていたのだ。
この裁判で採用されたのが、「フレンドリーペアレントルール」だ。これは、別居親と友好関係を保てる親を、親権者決定の際に優先するというもので、裁判所はAさんの養育計画を評価したものと思われる。こうしてAさんは一時、愛娘の親権を得ることに成功した。ところが妻側はすぐさま控訴。裁判は東京高裁に持ち込まれた。
残念ながら続く2017年1月の東京高裁でAさんは逆転敗訴する。この裁判は一審で「フレンドリーペアレントルール」が採用されていたことなどもあり、社会的に注目されていた。勝訴した妻側は記者会見を開き、状況を説明。その時配られた資料には、次のようなことが記されている。
控訴理由骨子(妻側の主張)
(1)別居に至る状況:夫のDV(経済的、社会的、精神的、身体的)が原因
・結婚当初から、妻は夫の仕事の手助けをするなど夫をサポートしてきたが次第に両者の関係は難しくなっていった。その理由は、夫のDV・抑圧・支配である。
①経済的DV(生活費を渡さない、妊婦健診の費用も払わない)、
②社会的隔離(復職妨害、親族との交流を阻害)、
③精神的虐待、身体的DV(大声でどなる、罵倒する、人格否定や子供の前での怒号、どつく、食器を投げつける、ハサミを突きつけるなど)から4年後に別居

(3)別居時に妻が長女を連れて行ったことはむしろ当然のこと
・長女の誕生以来ほぼ全面的に育児をしてきた子を同道させたことはごく自然な成り行きであると共に、必然である

(5)夫の親権者としての不適格性
・子の健康状態や成長ぶりに無関心であり、かつ自身の意向に従わない者を激しく攻撃する特性がある。そのような性質が子供に向けられた場合は危険。
Aさんが私に話してくれたことと、記者会見で妻側の弁護士が語ったことや配られた資料と内容がどうも食い違う。どういうことだろうか。Aさんにいくつか質問をぶつけてみた。

弁護士の影

――裁判ではDVがあったことが焦点となったようですが、実のところDVはあったんですか。
「私は誓って妻や娘に暴力を振るったことはありません。確かに、妻が娘を海外に連れていくと主張し、仕事中はメイドに預けておくと平然と言った際に妻を激しく叱責したことは認めます。『娘は君のペットじゃない』と。妻側は、このような発言などもDVに該当するのであり、私にDV加害者の自覚がないと攻撃してきました」
――そもそもなぜ奥さんは娘さんを連れていったんでしょうか。
「力ずくでも子供を手元においた親のほうが、親権を勝ち取るのに有利なんです。『子供の福祉と共同親権』という日弁連の財団が作っている冊子には次のように書いてあります。『実務家である弁護士にとって、親権をめぐる争いのある離婚事件で、常識といってよい認識がある。それは、親権者の指定を受けようとすれば、まず子供を依頼者のもとに確保するということである』と。
つまり『親権を勝ち取るためには子供を連れ去ることも正当化される』というお墨付きを日弁連が与えているのです。
こうした実子誘拐行為は諸外国では重罪です。アメリカでは罰金または3年以下の禁固刑、スペインでは2~4年の禁固及び4~10年の親権剥奪などとなっているんですが、日本では子供の連れ去りは犯罪ではない。こんな状況ですから、弁護士は当然のように『子供を連れ去れ』と指導します」
Aさんは、妻が一人でこのような「連れ去り」を思いつくはずもなく、おそらく、妻側の弁護士から様々な「助言」を受けたのではないかと推測しているという。
――相手側の弁護士が奥さんに進言していた、と考えているのですね。
「そうだと思います。例えば、妻が娘を連れて出ていった時に、部屋に妻と見知らぬ男性との仲睦まじい写真がこれ見よがしに置いてあったのですが、こういうのも弁護士の指導がなければやらなかったはずです。
なぜこんな挑発的な行動を取るのか。それは、夫婦二人が協議できないほどの『高葛藤』状態であることが、裁判をするにあたって必須だからです。最愛の娘を突然奪われた上に、こんなことをされれば私も激昂します。激しいメールだって妻に書きます。そうすると、妻側の弁護士は、そのメールを『夫の性格が攻撃的』である証拠として裁判所に提出できるのです。
ストレス性腸炎の診断書を、大ゲンカする前日の4月30日にわざわざ病院まで出かけてもらいに行っていたことも気になります。ストレス性腸炎は申告すればすぐ診断書がもらえるため、DV被害を偽装する場合に使いやすいそうです。だけど一般の人はそんなこと知りませんよね。
こうしたことを総合すると、遅くとも4月半ばまでに妻が弁護士と打ち合わせて、いつ娘を連れ去るのか。その日にちについて話し合ったのではないか。連休明けの平日、5月6日なら、私は仕事なので娘と離れます。そうして5月6日をXデーとし、その日までは、私を油断させておきつつ、DV被害を主張するために診断書を準備するなどして過ごしたはずです」
――その後はどうなるのか。
「子供を連れ去った後、調停などをして1年ほど経つと、『はい、じゃあもう新しい環境になじみましたね。そこから元の環境に戻すと子供の利益になりません』という『継続性の原則』というのがあります。そうして親子の引き離しが固定化されるんです」
――離婚を考えて弁護士に相談する前から、奥様はこういった展開を考えていた、と思っていますか。
「おそらく妻は無理やりの連れ去りやDVのでっち上げまでのことは考えていなかったんだと思います。単に娘を外国に連れて行きたかっただけ。それを弁護士が自分たちのやり方で事を動かしてしまったのではないか、と思っています。それが不幸の始まりです。妻も被害者の一人なんです。こんな状況下に置かれた娘がかわいそうで仕方ありません」

わが子連れ去りの「パターン」

Aさんのほか、私はこれまで拙著『わが子に会えない』や雑誌、ウェブ媒体の取材で、この手の話をたくさん聞いている。そのパターンは次のようなものだ。
子供を連れ去られる。
→離婚等を求める訴状が届く。
→調停を手始めに法的な紛争が開始される。
→子供を取り返しに行くと逮捕されかねないため、別居親は会いに行くのを我慢して、調停や裁判を続ける。
→調停・裁判後、月1回2時間などといった短時間で何度か子供と会う。
→双方、非難の応酬となる。その結果、相手の感情が悪化。
→「子供が会いたがっていない」などと理由をつけられて、だんだんと引き離される。
→何年も経過し、「継続性の原則」が適用されて、ますます不利になる。
→結果的に何年も子供と会えなくなる。
いわゆる"連れ去り"を行なう割合は女性の方が圧倒的に多い。そのため、子供のいる場合の離婚では9割の親権を女性が取り、父親が子供と離ればなれになることが多い。
Aさんは、「ここまで妻側にとって都合よく話が進むのは、裁判所と弁護士の間で、離婚問題についてのある種の『癒着のような関係』があるからではないか、と疑っています」と語る。
「子供の連れ去りを教唆・幇助する弁護士たちは、パターンに沿って次々と一方的にアクションを起こします。そして、最後は依頼人を親権者とする完璧な判決文のドラフトが自動的に出来上がるようになっています。裁判官がやることは、それをほぼそのままコピペするだけです。子供を連れ去られた親側の主張などは、全く判決文に反映されません。本当の話が混じると矛盾した文章になってしまうので。
彼らの金儲けのために何の罪もない子供たちが犠牲になっている状況を見て見ぬふりをすることは私にはできませんでした。そこで、自分の娘も含めて、未来の子供たちを救うためにも真実を世の中に伝えようと誓いました」
こうした現状を問題視し、変えていこうとするAさんの"挑戦"は敗訴の後も続いている。2017年6月、Aさんは31人もいる妻側弁護士のうち、中心的な4人やその他の関係者を警視庁に刑事告訴した。
Aさんの主張は、果たしてどこまで認められるのか。それは、この後裁判が行われることになれば見えてくるのかもしれない。
実は、筆者はAさんと同様のケースで、親権を「奪われた」男性に取材している。後編では、Bさんの話をもとに、この問題に迫ってみたいと思う。

<後編は明日31日公開です>

Aさんの記事に関するコメント親子断絶防止法 全国連絡会のこちらのページをご覧ください。

妻がDVをでっち上げ、子ども“連れ去り”… 残された夫がまずすべきこと

出典:平成30年1月25日 AERA dot.

※本文は平成30年1月29日号 AERAと同内容です。

妻がDVをでっち上げ、子ども“連れ去り”… 残された夫がまずすべきこと

子と引き離される「元夫」の苦悩

出典:平成30年1月29日号 AERA

 昼間にベビーカーを押したり、休日に公園で子どもを遊ばせたりする父親の姿は当たり前になった。だが、夫婦関係が破綻してこじれれば、子どもに会える頻度は「月1回程度」になるのが“相場”。その落差はあまりにも大きい。
 我が子への愛には、母親も父親も変わりがない。最近は子育てに積極的な男性も多い。だが、妻との関係が破綻したら──。いくら「イクメン」を自認しても、DVやモラハラに縁遠いと思っていても、司法の前に「元夫」の立場は弱い。

*  *  *

 いまや、仕事よりも育児を最優先し、子どもが「生きがい」と語る男性は珍しくない。社会や女性もそれを推奨する。だが、どんなに子どもを愛していても、ひとたび離婚となれば、親権を取れる男性は1割しかいない。離婚後の「共同親権」が法制化されていない日本では、親権は圧倒的に母親が優位だ。父親は妻子に出て行かれた瞬間に、我が子と引き裂かれる。別居に至った理由は関係なく、妻に「子どもを連れて出て行かれた」という事実をもって父と子は断絶させられ、裁判で救済されることもほとんどない。

 離婚する夫婦が、子どもと会う回数を決めるために裁判所に調停を申し立てる「面会交流調停」の件数は、年々増加している。司法統計によると、2016年に全国の家庭裁判所で申し立てられた件数は1万2341件。04年に比べて約2.7倍となった。特に目立つのは、父親からの申し立てだ。16年の1年間に調停、審判の手続きが終わった1万1470件のうち、約7割が父親からの申し立てで、04年と比較すると3.2倍となった。母親の1.7倍よりも伸び率が高い。また、厚生労働省の「全国ひとり親世帯等調査報告」(16年度)によると、母子家庭で「現在も面会交流を行っている」と答えたのは、29.8%にとどまる。父親の3人に1人しか、子どもに会えていない。

 昨夏、父親の親権と面会交流をめぐる重要な裁判、いわゆる「松戸裁判」が結審した。千葉家裁松戸支部が出した一審は、親権を争う母親に「年100日会わせる」と協力的な提案をした父親に親権を認める異例の判断をし、上級審にも注目が集まっていた。

 父親は、埼玉県に住む40代のキャリア官僚の男性。国際機関での勤務経験がある40代の女性と06年に結婚し、翌年に長女が生まれた。だが、キャリア形成や育児方針について意見が対立し、夫婦関係は悪化。長女が2歳のとき、女性は男性の不在中に、長女を連れて自宅を出た。男性は「不当な連れ去りであり、長女を返すべきだ」と主張。女性は「男性からはDVを受けており、子どもを連れて逃げたのはやむを得ない」と反論し、親権訴訟となった。

●民法が定める「子の利益」 一、二審で判断は全く逆に

 焦点となったのは「寛容な親の原則(フレンドリーペアレントルール)」。欧米には、親権を決める際、面会などで元配偶者へ友好的な姿勢があるほうが親としての適格性が高いと判断する基準がある。男性の「年100日面会」という提案は、これに基づいたものだ。かたや、女性側は現在の養育環境に問題はないとして「月に1回は父親と子どもを会わせる」としていた。

 12年に民法が改正され、766条では子どもの監護や面会交流について「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と明記された。裁判所は「子の利益」をどう判断したのか。

 一審では男性側の主張を「長女は両親の愛情を多く受けられ、健全に成長できる」と評価して男性を親権者とした。男性によるDVも「なかった」と認定した。一方、東京高裁は「父母の面会交流の意向だけで親権者を決めるべきでなく、他の事情よりも重要だとも言えない」と述べ、「年100日」という男性の提案は「長女の体への負担のほか、学校や友達との交流にも支障が生じる」と指摘。「月に1回程度」という女性の提案は不十分ではないとし、「母親を親権者とすべきだ」と結論づけた。DVは一審同様、「なかった」と判断された。男性は最高裁に上告したが不受理となり、昨年7月に男性側の敗訴が確定した。

 男性は裁判を振り返る。

「一審は766条の精神を忠実に守った法解釈だったが、高裁ではそれを180度転換して、条文のどこにも明記されていない『継続性の原則』を優先させた。高裁では新事実は何も出てきておらず、なぜ法解釈が変わったかの説明もしていない。改正した民法の精神よりも、裁判官たちの『現状維持』『保身』が優先された判決だ」

※以下、AERA本誌参照
20180129AERA
20180129AERA
20180129AERA

記事中の「松戸裁判」の当事者である父親の記事に関するコメント''親子断絶防止法 全国連絡会のこちらのページをご覧ください。

「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え

出典:平成30年1月7日 読売新聞

「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え

 貧しい家に生まれた主人公が苦学して成功する物語は多いが、現実は厳しい。小学校4年(10歳ごろ)時に、家庭の貧富の差による「学力格差」が急拡大する傾向があることが、日本財団などの調査でわかった。貧困家庭の子どもが大人になっても貧しさから脱することができない「負の連鎖」の一因とも指摘される。分析調査を行った日本財団職員の栗田 萌希(もえき)さんが解説する。

家庭の経済状況は子どもの学力に大きく影響する(写真はイメージです)

◆授業についていけない
 生活に困窮する家庭の子どもたちに食事を提供したり、勉強の手助けをしたりするボランティア活動が各地で行われている。日本財団も、そうした子どもたちに食事や学習など包括的な支援を行う児童施設を運営しているが、そこには様々な事情を抱えた子どもたちが集まってくる。

 ある小学4年の男子児童は、両親の離婚をきっかけに生活保護を受給する母親と2人暮らしになった。最近、学校の授業に「まったくついていけない」と話し、宿題や課題をすべて投げ出してしまっている。

 漢字の読み書きや四則計算などの基礎を身に付けていないため、考えること自体が面倒になっているようだ。

 同じように母親と2人暮らしの小学1年の男児もいる。父親とは死別し、今年の夏ごろから施設に通うようになった。

 こちらは生活面での課題が目立つ。深夜遅くまでゲームに熱中して睡眠時間が極端に短く、朝食はほとんど食べない。話すときは、友人たちにも大人にも命令口調だ。一般的な家庭なら「しつけ」を受けて身に付くはずの生活習慣や社会性が、欠けてしまっているのだ。

◆子どもの成績を左右する「貧富の差」
 厚生労働省が今年6月に発表した2015年の「子どもの貧困率」は13.9%。7人に1人の子どもが生活に困窮している状況だ。前回調査(12年)の16.3%からは改善したが、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を上回り、シングルマザーなどの「ひとり親世帯」に限れば50.8%に達していた。

 ここで言う「貧困」とは、生きるために最低限必要な衣食住が不足している状態(絶対的貧困)ではなく、普通の生活を送るためのお金が十分にない状態(相対的貧困)を指す。具体的には、国民一人ひとりを所得の順に並べ、その真ん中に来る額(中央値)の半分に満たない額での生活を強いられている状況だ。15年の基準では、年122万円以下の生活水準がそれに該当した。

 家庭の経済状況は、子どもの学力に大きく影響する。お茶の水女子大が14年に行った全国学力テスト(小学6年・中学3年生)の分析では、世帯所得が最も低いグループの子どもと、最も高いグループの子どものテストの正答率の間には、約20ポイントもの開きがあった。

 なぜ、これほどの差が生まれるのか。貧困家庭の子どもの学習を妨げるものは何か。私たち日本財団のチームは、疑問に答えるべく、ある分析調査に取り組んだ。

◆「貧困と低学力」その構造に迫る
 大阪府箕面(みのお)市は、府北部に位置する人口約13万人のベッドタウンだ。市は「子ども成長見守りシステム」という仕組みを持っていて、子どもたちの学力や生活状況、家庭の経済状況などのデータやアンケート結果を、関連付け可能な形で保有している。その規模は過去3年、計2万5000人分にもなる。

 この貴重なデータを利用させてもらい、私たちのチームで詳しく分析したところ、貧困世帯の子どもが低学力に陥ってしまう「構造」が浮かび上がってきた。

◆成績急落「10歳の壁」
 貧困世帯と、そうでない世帯の子どもの学力(国語・算数の成績)は、10歳(小学4年生ごろ)の時に大きく差が開いていた。

 「10歳の壁」という言葉が、教育関係者の間で以前からささやかれている。小学4年の10歳ごろは、学習内容に応用力を問う課題が増え、子どもたちがつまずきやすくなることを意味する。箕面市のデータでは、「壁」はとりわけ貧困世帯の子どもたちの前に立ちはだかっていた。

 実は、それよりも早い段階で差が付いているとする海外の先行研究もあり、私たちのチームでも検証を進めているのだが、今回の分析で顕在化したのは「10歳の壁」だった。

◆カギは「生活習慣」
 貧困世帯の子どもたちの学習を阻む「壁」とは何か、考えてみた。ヒントは、子どもたちの生活習慣にあった。

箕面市の調査では、「スポーツや趣味などで頑張っていることがあるか」「毎日朝食を食べているか(生活習慣として身についているか)」といった問いに対し、「はい」と答えた子どもの比率は、生活保護受給世帯と、そうでない世帯の間に、小学1~2年の時点で約20ポイントもの開きがあった。

 また、「つらいこと、こまったことを先生に相談できるか」「1日の勉強時間の目安を決めているか」といった質問に「はい」と答えた子どもの比率は、小学3~4年生を境に開き始め、学年が上がるにつれて大きくなっていた。

 これらのデータから、次のような貧困世帯の子どもたちの姿が浮かんできた。小学校低学年のうちに家庭で養われるはずの生活習慣が身につかず、夢中になれるものも見つからない。やがて、高学年になると勉強の内容が理解できなくなり、悩みを先生に打ち明けることもできぬまま取り残されてしまう――そんな姿だ。

◆学力以上に重要な「非認知能力」
 正しい生活習慣や自制心などは「非認知能力」と呼ばれ、この力を幼少期に養うか否かで、その後の発達に決定的と言えるほど重要な効果をもたらすことが、海外の研究などで指摘されている。

 今回の分析は、貧困世帯の子どもの非認知能力が低い水準になりやすく、その後の学力に悪影響をもたらすおそれがあることを示唆している。

 この非認知能力は、親から子への「社会的相続」によって養われる。

 社会的相続とは、学力(認知能力)以外で子どもの将来の自立に資する能力を引き継いでいく過程のことだ。

 貧困世帯においては、親が仕事に追われて子どもと十分に接する時間を取れない、親自身も生活習慣が乱れ、子どもへの関心が低い、などの理由でこの社会的相続が十分に行われないケースが目立つ。これが、子どもが成長した後も貧困から抜け出せない「負の連鎖」を生んでいる可能性が高い。
◆貧困世帯でも高学力、背景に「社会的相続」
 福祉国家論で世界的に知られるデンマーク人の社会政策学者、イエスタ・エスピン・アンデルセン教授は「(社会的相続は)所得と同等か、それ以上に重要である」と言い切っている。

 今回の分析においても、貧困世帯であっても学力が高い子どもは、生活習慣などをしっかりと身に付けていたり、思いを伝える力などが高水準であったりすることが分かった。

 とはいえ、貧困に苦しむ親や家庭に社会的相続の全てを委ねるのには無理がある。いかにして社会が関わり、子どもたちの非認知能力を養うか。新たな対策が求められている。
◆“ツケ”は国民全体に
 「うちは貧困とは無縁だから」という人も、この問題を人ごとと捉えるべきではない。無関心のままでいると、いずれ大きな“ツケ”が本人や子ども、孫に返ってくることになる。

 日本財団と三菱UFJリサーチ&コンサルティングの共同調査による試算では、子どもの貧困による進学率等の格差を放置してしまうと、改善した場合に比べ、貧困世帯の15歳以下の子どもたちが得る生涯所得は40兆円以上減少することになる。

 これは国内市場の縮小を意味し、経済停滞を加速させる可能性がある。加えて、そうした子どもたちが生涯にわたって納めるはずだった税金や社会保険料等も大幅に減ることから、国の財政収入は約16兆円も減少すると見られる。日本の将来にとって悪いこと尽くめなのだ。

◆「子どもの貧困」解決に向けて
 私が所属する日本財団は、子どもの貧困問題に継続的に取り組んでおり、2017年11月までに、貧困世帯の低年齢期児童(小学校1~3年生)を対象に、家庭での取り組みを補完する形で「社会的相続」を提供する拠点施設を埼玉県戸田市、広島県尾道市、大阪府箕面市の3か所に開設した。

 そこでは、「読み聞かせ」の実施や、海外研究に基づく非認知能力のトレーニングプログラムの開発と試行、様々な大人と関わる機会の提供などを行うことで、「貧困の連鎖」を断ち切ることを目指している。今後、5年をめどに、全国に約100か所の拠点を設置したいと考えている。

 こうした教育投資について、海外には多数の研究事例があるが、日本にはその有効性を検証した例はまだ見当たらない。今回の取り組みでは、日本で初めて研究者を交えて長期にわたる追跡調査を行い、効果を科学的に検証したいと考えている。「貧困の連鎖」を確実に解消する方法を特定し、それが社会にどれほど有益かもわかりやすく示したいという思いからだ。

◆改めて問う日本の姿
 子どもの貧困への対策は、「かわいそうだから」といった感情論だけでなく、我が国の「将来への投資」として社会が認識すべきものだと思う。

 ノーベル経済学賞を受賞した米国の経済学者、ジェームズ・ヘックマン教授は、貧困状態にある子どもへの投資について、機会の平等といった社会正義と、経済合理性を同時に改善する、非常に稀(まれ)な政策オプションであると指摘している。

 先に述べた「社会的相続」提供施設の開設によって、科学的な裏付けとなるデータを長期にわたって取得し、それらを示すことで冷静な政策論議を喚起し、我が国の子ども関連政策や世代間の予算配分の在り方などを見直すきっかけになればと思う。

 貧困問題を冷静に議論することは難しい。短絡的な「(親の)自己責任論」や「(子どもの)自助努力論」などが声高に論じられ、建設的な意見を交わすことが難しくなってしまうからだ。

 しかし、「子どもの貧困」は国の将来を左右しかねない問題であり、私たち自身の重大な問題でもあることを忘れてはなるまい。様々な意見をお持ちの方がいると思うが、ここは一歩引いて、国の未来、私たちの社会の未来を、冷静に考えていただきたいと願っている。

参考資料:日本財団「家庭の経済格差と子どもの認知・非認知能力格差の関係分析」

https://www.nippon-foundation.or.jp/what/projects/ending_child_poverty/index.html

参考資料:大阪府箕面市 子どもの貧困実態調査のまとめ

https://www.city.minoh.lg.jp/mimamori/documents/jittaichousa.pdf
日本財団「子どもの貧困対策プロジェクト」 栗田萌希

ハーグ条約基づく子の返還覆す 最高裁「養育環境悪化」

出典:平成29年12月28日 朝日新聞

ハーグ条約基づく子の返還覆す 最高裁「養育環境悪化」

 子どもの引き渡しに関するハーグ条約に基づき、母が米国から連れ出した子を米国在住の父に返還するよう命じた裁判所の決定について、最高裁第一小法廷(山口厚裁判長)は「父親側の養育環境が悪化し、事情が変わった」とし、返還を認めないとする決定をした。決定は21日付。
 同条約は原則、連れ去られた子は元の居住国へ返還すると定めている。ただ、返還で子が耐え難い状況に陥る危険などがあれば例外としている。今回はこの例外が適用された形だ。外務省によると、同条約に基づき裁判所の決定の変更を求めた初のケースだったという。
 決定によると、両親は子4人と米国で同居していたが2014年7月、母が当時6~11歳の4人を連れて日本に入国。父は日本の家裁に子の返還を申し立て、16年1月に米国への返還を命じる決定が確定した。
 その後、父は競売で自宅を明け渡すことになったため、母は「決定の確定後に事情が変わった」として、決定の変更を求めていた。
 第一小法廷は「確定後、安定した住まいを確保できなくなっており、返還は子の利益にならない」と判断した。(岡本玄)

7人の父親の戦い:「私たちの子供の権利は日本でキャンセルされました」

出典:平成29年12月24日 ラ・スタンパ(イタリア紙)記事 
翻訳出典:Kizuna Child-Parent Reunion

7人の父親の戦い:「私たちの子供の権利は日本でキャンセルされました」

※日本国内で妻に子どもを連れ去られたイタリア人が、日本の子ども連れ去りの運用状況と支援などについてイタリア大統領に出した手紙に関する取材記事です。
イタリア大統領への手紙の内容は[[こちらの特集:ハーグ条約の形骸化>]]を参照ください。

親愛なるマリア、私たちは長年にわたって日本で生活• 仕事をしている、7人のイタリア人の父親の集まりです。日本には我々の家族と、合計9人の子供がいます。配偶者と離別後、私たちは親の様々な権利、それは 子供と会うことまでも、組織的•体系的に否定され続けています。私たちのうち、3人はまだ結婚しているのにです。日本では共同親権がなく、夫婦が離婚する と、父の存在は消されます。男は仕事に完全に呑み込まれるこの国では我々を必要ではないというのです。法廷は、初めに子を誘拐した者に親権を任せます。 (これはほとんどの場合、母親)イタリアでは、未成年者は父親と会えるという権利がありますが、日本ではないのです。子供が父と会わずに育てられると、そ の権利は守られないということになります。このシステムの被害者は我々だけではありません。その数はなんと、ここ20年で300万人の日本の子供達が片親 と会えずに育てられています。この悲惨な状況は、実は法律を変えてもなおらないのです。それは裁判官がこれを無視するからです。現時点では私たちの子供達 がどこにいるか分かりません。イタリア政府はこの問題を認めているのにも関わらず何も行動を起こしません。夫婦間の問題だと言って無視するのです。私たち は先日、セルジオ・マッタレッラ イタリア共和国大統領に書簡を提出しました。我々の子供達もイタリア国民であり、政府によって守られるべきです。私たちは決して諦めません。そしてこの度 の、私たちの願いは、この訴えを広めていただきたいのです。
 
遠い日本で、7人のイタリア人父がその9人の子供達の ために闘う、虚しいクリスマスストーリー。そこでは未成年者の親権は「連れ去った者勝ち」という、どう考えても理不尽な悪習によって支配されます。いずれ の親も、子を誘拐するかされるかのゲームなのです。これが、子供の両親に対する感情を、最初に形成する若い頃に行われ、下手すれば子供の人生がかかってい るという時にこんなゲームをしているのは、全く不愉快ではないだろうか。あなた方は正しいでしょう。イタリア政府は確かにすぐに仲介に入るべきでありま す。外交的に調停を始め、現状は認められないと主張し、「家庭内の問題」とは片付けられないと訴えるのです。日本が子供拉致問題のブラックホールと呼ばれ ていることは、忘れてはなりません。(日本国民と家族を作ろうと考えているなら、これは知っておくべきです)
 
日本が2014年についにハーグ条約に署名した時、新 しい時代が始まるという期待はありましたが、変化は最小限にとどまりました。条約が適用するのは、子供が海外から拉致され時、又は、常習の居所に戻されな い時です。この7人の父たちを例にとると、子供の誘拐は日本国内で行われたため、条約は適用されないのです。
 
日本の社会はかなり先進的であるものの、それと同時に 古典的な思想から逃れることに苦しんでいます。この国では、国連子どもの権利条約すら無視されます。それも批准しているにも関わらずです。書簡に署名した 7人の言うように、日本で法が変わっても事態に変化が見られないのは、裁判官がそれを無視し、基本的人権よりも、古びた「継続性の原則」(子供が誘拐を犯 した片親と継続して暮らすこと)に頼るからです。しかし政府は片親による未成年者誘拐の問題について、さらに新しい法を作り、介入を果たすことを迫られつ つあります。(政府は夏までにはと言います。)外国の市民のみならず、日本の父(や母)への影響も目立ってきたからです。一家心中が増加していることも忘 れてはなりません。
 
あなた方は、我が子がいないと最も辛いこのクリスマス の時期に大統領へ手紙を書くことにしました。彼がしっかり返答してくれることと、我が政府が私たちを守ってくれることを真摯に願います。日本ではこれは 「プライベートな問題」とあしらわれ、イタリアでは「夫婦間の問題」とみなされます。これらはどういう意味なんでしょうか、私には理解できません。この7 人の父親のうちのひとりが、日本で他人にこの状況を説明すると、あまりに普通のことであるため、「あぁはいはい、逃亡の妻ね」と返されると言っていまし た。私がイタリアの政治の方々に申し上げたいのは、海外で暮らすイタリア国民を守るのは選択肢ではありません。また、選挙直前、もしくはメディアによって 強いられた時のみに行動を起こすのも間違っています。決して行動を遅らせるようなことはしないでください。でないと「あぁはいはい、怒りの国民ね」となってしまいますよ。

日本は裏社会と外国工作員が喜ぶ失踪天国

出典:平成29年12月16日 アゴラ

日本は裏社会と外国工作員が喜ぶ失踪天国

「1年に数千人が消える…「失踪」の国・日本 なにが起きているのか?」という記事が出ていた。
[[数千人が「失踪」していく国・日本 何が起きているのか?(BuzzFeed Japan)>「1年に数千人が消える…「失踪」の国・日本 なにが起きているのか?」という記事が出ていた。
数千人が「失踪」していく国・日本 何が起きているのか?(BuzzFeed Japan)
ある日、家族や友人の前から消えて、生きているのか死んでいるのか分からない人がこの国にはやたら多い。その背景には、この国では、諸外国並みに身分証明書の携帯が義務づけないなど、どこの誰だか示さないまま生きていくことが余りにも容易である。
ヨーロッパ各国では、しょっちゅう、「公式身分証明書(フランス語で言えば]]
ある日、家族や友人の前から消えて、生きているのか死んでいるのか分からない人がこの国にはやたら多い。その背景には、この国では、諸外国並みに身分証明書の携帯が義務づけないなど、どこの誰だか示さないまま生きていくことが余りにも容易である。
ヨーロッパ各国では、しょっちゅう、「公式身分証明書(フランス語で言えばカルト・ディダンティテ。パスポートの内国版みたいなもので、学生証とか社員証などは身分証明書としては使えない)」の提示を求められるし、持っていなければ罰則が適用されたり、拘留されたりする。
クレジットカードでも暗証番号と身分証明遺書のダブルチェックが多くなってきている。さらに、現金決済は出来ないことも多い、高額紙幣も廃止の方向だ。中国ではスマホによる支払いが増えて、日本に観光に来て、久しぶりに現金を使ったなどという中国人もいる。
ともかく、日本で飛行機の予約に身分をあかさずに偽名で乗れるなど論外だと思う。新幹線でもスペインでは、アトーチャのテロ事件から予約して身分証明書と照合しないと乗れないし、中国でもそうだ。観光名所の入場も同様になってきて、紫禁城でもインターネットで事前購入しないと入れないし、そうした動きは世界に広がっている。
日本では、個人情報の保護とか、差別排除とかいって、どんどん、どこのだれか証明しなくても生きていけるようにしてしまった。それどころか、いろんなことが証明出来なくなっている。
先日も、私自身が10年ほど前にどこに住んでいたか証明が必要になったのだが、住民票データは5年経つと廃棄されているわ、戸籍は電子化のときに古い住所は廃棄されているわで、最後は、宣誓書を書いて証明なしで通った。
こういう現状は、犯罪と外国の工作員の餌食に善良な日本人をしていて危険きわまりない。なりすましも容易である。
また、家族離散を助長しているし、不動産などで所有者が不明のものも増えている。近所に長く誰も住まないままになっている家があるのでどうしたのかと思ったら、親が死んだあと兄弟の一人が失踪しているので売れないというようなこともよくある。どこの誰か分からないままの仏様も多い。
日本には同和問題という江戸時代に極限まで差別が強化された恥部があり、その解消というのが、ひとつの口実になって身元不明を容認というか推奨してきた経緯があって、それは理解できるが、それに裏社会や、外国勢力が便乗してきたということもある。
難民やテロが深刻化する前に、手を打っておかないと急に管理をできるものではないのであって、思い切った舵取りが必要だ。
もちろん、それまでの人間関係をリセットして生きたいということのメリットもあるが、諸外国に比べて安易にそれを認めすぎではないか。

離婚の際に、多くの場合、片方の親との接触が切れてしまうなどというのが、国際的に非常識であることはいうまでもない。それについては、親だけでなく、祖父母と孫の関係も切れることを意味してむごいことだ。孫を可愛がっても離婚されたら会えなったときのショックが大きいから距離を取ってるなどという人も多い。私は少子化のひとつの原因として、そのあたりもあると思っている。

日本に拉致される子供達

出典:平成29年12月15日 Sky TG24(イタリア)

日本国内で妻に子どもを連れ去られたイタリア人が、日本の子ども連れ去りの運用状況と支援などについてイタリア大統領に手紙を出しました。
その内容と日本における子どもの連れ去り問題について、イタリアのSky TG24がトップニュースで放送しました。

※日本語字幕を表示する手順:全画面表示の右下に表示されるボタン(オーディオと字幕)で「日本語」を選択してください。

イタリア大統領への手紙の内容はこちらの特集:ハーグ条約の形骸化を参照ください。

ある国立大学教授の大森貴弘氏批判への疑問 必要なことは、親子断絶の危険性についての理解あるいは、子を思う親の気持ちへの理解ではないかと思う理由

出典:平成29年10月22日 土井法律事務所(宮城県)ブログ

ある国立大学教授の大森貴弘氏批判への疑問 必要なことは、親子断絶の危険性についての理解あるいは、子を思う親の気持ちへの理解ではないかと思う理由

ある国立大の法学部教授が、朝日デジタル「私の視点」に大森貴弘氏を名指しして批判した記事が掲載されました。彼女は以下のように大森氏を批判しています。

http://digital.asahi.com/articles/DA3S13186771.html

「兵庫県伊丹市で面会交流時に起きた痛ましい子殺し事件について「原因は親子断絶による父親の精神状態の悪化にある。面会交流が継続されていれば事件は起きなかったはずで、親子断絶の問題を告発 した事件と言える」とする見解が、何でもありのネット空間ではなく、新聞に掲載されたことに、深い悲しみを覚える。

これは、大森氏の文章に対して、ネット空間のような何でもありの主張であり、新聞に掲載されることは言語道断だという、極めて辛辣な批判です。彼女のこの主張は、仲間同士の閉ざされた人間関係の中での発言ではなく、これまた新聞という不特定多数人に向けた主張のはずです。そうだとすると、なぜ、何でもありのむちゃくちゃな主張であるのか、その理由を説明しなければ、失礼であり、品位を欠くものだと、私は思います。

 その後の彼女の論は、日本の法律は家庭に入りにくい設計になっているが、設計された明治時代は家という大人数で子どもを育てていた。両親に問題があっても、他のまともな大人が子どもを守っていたという趣旨のお話をされ、現在は、その安全弁が失われ、児童虐待に対する予算も体制も日本は貧弱だと展開されています。面会交流も大事だが、加害者の加害を見抜く制度設計が必要だとして、これがない親子断絶防止法を批判します。
そして「私は伊丹市の悲劇の詳細を知らないが、仮に父親が3カ月間、子に会えなくて精神的に病んだとしても、悲劇の責任は、面会交流を試行錯誤した母親にあるのでは決してない。子を守れなかった責任は、親を放置して育児を支援しなかった、私たち日本社会の無責任な無策にある。」と結んでいるのです。

 第1に、大森氏の論考が、伊丹の事件で、子どもが死んだのが母親の責任だなどとは言っていないのですが、彼女の話の流れは、さも大森氏がそのような主張をしているように読み手に誤解を与えることになります。 私の弁護士としての体験からですが、子どもを連れて別居した母親は子どもに取って父親の愛情を受けることに、あくまでも反対だという人は少ないという実感があります。母親に対して適切な働きかけをして、周到に準備をして母親の不安を軽減した上での面会交流は例外的なケースを除いて実行されます。むしろ、母親に対して子どもを父親に合わせるなという無責任な「支援者」がいるために、面会を拒否するケースが大半です。この「支援者」として、行政や警察、弁護士や医者、学校等様々な職種の人たちが子どもが自分の親に会うことを妨害しているということが実情です。大体は、すでに論拠がないと否定されつくされているレノア・ウォーカーのお説をさらに劣化させて繰り返し母親に吹き込んでいるのです。新しいケースでデジャブ―のように聞かされるたびにうんざりしてしまいます。母親がそれを信じる原因として、夫の家族に対する日常の行動に問題がある場合もありますが、それよりも、母親の体調の問題からの精神的な不安定が要因となることが多いようです。体調の問題とは、漠然とした不安感、疎外感、孤立感です。実際の離婚事件で母親が診断された疾患として、甲状腺機能異常、産後うつ、月経前緊張症、全般性不安障害、うつ病、パニック障害などがあります。このような不安状態の中で、行政や弁護士、警察や医師、学校関係者から、会わせてはいけないとアドバイスされると、合わせること自体が不安になるということもあるでしょう。

 母親たちは、逃げることで、不安のほかに恐怖まで植え付けれられているのが実情です。現在の逃げるという政策は、即ち子どもを連れて逃げるということですから、当然に父親から子どもを引き離す政策だということを意味しています。この政策を転換するべきだということが、本来提言されるべきことだと思います。それが親子断絶防止法かといわれれば、極めて不十分であることは私も異論がありません。親子断絶防止法は、当初の案から大幅に後退してしまっており、メリットが少なくデメリットが増えてしまったと感じています。一番の問題は結論を提示しているだけで、その結論にどのように誘導するかという肝心の政策がない点です。

 第2に、彼女の論の疑問点として、親子断絶によって精神状態の悪化が起きたことを論難しているように読めることです。
 現実に、父親や母親がわが子と会えなくなることで、様々な精神症状が現れます。これまで精神科医がうつ病などの抑うつ状態、転換性障害、不眠症などと診断した人たちを実際に見ています。突如電話をしたくなり、相手の事情もかまわずに自分の不安を語りだす人、ほとんど日常的に涙目になっている人、誰彼構わずに攻撃的になる人、多かれ少なかれ、異常行動が見られます。

 日本人は、少なくとも江戸時代までは、子煩悩で有名でした。山上憶良の歌から始まり、モースの「日本その日その日」等、子どもがいかに大切にされていたかを物語る資料は尽きません。自分の一部だと思っている子どもと引き離されることで、精神的な不具合が生じることは当然なことでしょう。
 現在の母子を逃がし、父から断絶するという政策が人の精神を病ませる実例は枚挙にいとまがありません。

 家庭内暴力があり、命の危険がある場合はやむを得ないでしょう。しかし、現実に家族が分断されるケースは、私が知る限りそのような危険のないケースがほとんどです。むしろ、心身を蝕むケースの本当のDV事案では、なかなか法制度によって救済されない問題点があると感じています。支援制度を悪用して不貞相手の男性と同居していたケースも少なくありません。DVがないにもかかわらず、DVがあるように思いこんでしまっているケースも多くあります。この点の原因としては、国立大学の教授の見解が支持されるべきであり、夫婦、家族が孤立していることに問題があると私も思います。但し、孤立しているため、加害者が被害者に加害をするという単純な話ではなく、お互いが、自分を客観的に見ることができず、疑心暗鬼をだれも止めてくれないということ、ちょっとの工夫をアドバイスされれば、みんなが幸せになるのにということなのです。この違いは決定的だと思います。

 逃がす政策が人を狂わせ、凶暴化させ、あるいは破れかぶれにさせ、あるいは思考力を奪い、さらなる悲劇を生んでいるということは真実だと思います。そのような側面が確かにあり、少なくないケースで見られるにもかかわらず、なかったことにされることはどうしても納得できません。まさに数の暴力です。私は、人権侵害が行われていると思います。女性の権利を守る名目で、子どもと会えない親の人格が国家によって否定され、子どもが両親から愛情を注がれる権利が理由なく奪われ、子どもの親を絶対的な悪だと子どもに対して繰り返し吹き込む、そのような野蛮なことが横行していると声を大にして言いたいのです。

 第3に、彼女の主張で、もし、親子の引き離しによって父親の精神破綻が生じて暴力に出たということ自体を否定していたとしたら、それは元々父親は子どもを殺すような粗暴な人間だったということを主張しているのでしょうか。そのように読むと論述自体が一貫しているように読めるのです。彼女は、大森氏のどこがどのように何でもありなのか説明をしていないので、不明ではあります。しかし、もしそうだとしたら、人間観に問題があるように感じてなりません。

私は、長年刑事弁護を担当しているわけですが、生まれながらに犯罪を実行する人などいないと感じています。みんな理由があって逸脱行動にでるということです。弁護人の仕事は、罪を犯した人とその理由を考え、理由を除去し再犯を予防することだと整理できると思います。伊丹の事件の理由の一つとして、子どもと過ごすことのできない絶望感や、そのことによって発症した精神疾患ということは、可能性があることを否定する事情はないでしょう。なんでもありというような荒唐無稽の話でないことだけは確かです。

 気になるのは、彼女の論拠の背景として、妻が子どもを連れて別居するというそれだけのことから、別居の理由が夫にDVがあったからだという決めつけがないかということです。実際にそのような別居事案において暴力と呼べる自体がないことが多くあります。精神的虐待といっても、日常よくあるいさかいをもって虐待と呼んでいるケースがほとんどだと実感しています。いずれにしても、そのようないわゆるDV冤罪の事案は少なくありません。このようなDV冤罪を作り出し、父親の精神を破綻させ、子どもから父親と会う権利を奪い、子どもから父親を肯定する権利を奪う最大の原因が、このような類型的な決めつけ、ものの見方です。一言で言って差別です。

松戸家裁の事例では、父親のDVは裁判所でついに認定されませんでした。当事者がDVを裁判家庭において主張することはともかく、ひとり親支援NPOの代表や、武蔵大学社会学教授は、何も事情を知らないくせに父親をDV夫だと決めつけて、SNS等で流布したことで、刑事告訴をし受理されたとのことです。伊丹の事案は、父親も自死してしまいましたので、告訴をする人がいないのかもしれません。しかし、法律家は、事情知らない事案では、当事者を非難するコメントをしないということが最低限の矜持だと理解しています。何らかの決めつけがあったならば、法律家としてのコメントとは言えません。このルールは実務家だけで研究者は例外なのでしょうか。

 現在の親子断絶防止法を批判することは自由でしょう。しかし、そのことのために、多くの人たちが傷つくことを謙虚に考えるべきだと思いますし、実際に起きている現実をぜひ知って、みんなが幸せになる方法を考えていただきたいと考えてやみません。みんながということが無理ならば、せめて子どもが自分の親を否定することを押し付けられた場合の、子どもの将来に起きることを考えていただきたいと思います。

以下引用。

「離婚後の子育て 共同親権で親子の関係守れ」と題した大森貴弘氏の「私の視点」(9月21日付)を読んでショックを受けた。兵庫県伊丹市で面会交流時に起きた痛ましい子殺し事件について「原因は親子断絶による父親の精神状態の悪化にある。面会交流が継続されていれば事件は起きなかったはずで、親子断絶の問題を告発 した事件と言える」とする見解が、何でもありのネット空間ではなく、新聞に掲載されたことに、深い悲しみを覚える。
 先進国の家族法と日本家族法との違いは、離婚後の共同親権の有無だけではない。両親間のトラブルに対する制度設計がまったく異なっている。明治政府は30年をかけて西欧法に倣った近代法を立法した。しかし明治民法の家族法部分については、「家」の自治にすべてを委ねる、独自の極端な法を立法した。離婚を必ず裁判離婚とするような西欧法は、手間のかかる不要な国家介入だと判断したのである。当時は、まだ自営業を担う「家」が中心の社会で、人々は地域共同体や大家族に包摂されて生活しており、親に問題があっても子どもたちはまともな大人と触れあうことで健康に成長できた。この社会的安全弁は、失われた。
 戦後の民法改正は「家」の自治を当事者の自治に変えただけだ。西欧の裁判所であれば、家庭内暴力(DV)被害者が助けを求めれば、加害者に別居命令を出し、養育費を取り立て、従わなければ刑事罰を加える。しかし、日本のDV被害者に残されているのは、逃げる自由だけである。DVは深刻な児童虐待であり、脳の成長を損傷する度合いは、肉体的虐待や育児放棄よりもむしろ大きいといわれる。そして児童虐待対応にかけられている公費も、日本は西欧諸国よりはるかに少ない。
 もちろん離婚後も親子の交流があるほうが望ましく、子の奪い合いにはときに強制力のある介入も必要である。しかし、それは物理的・精神的暴力から子を守りながら行わなければならない。パーソナリティーの偏りや精神的暴力の有無などを見抜く力のある精神科医や臨床心理士などのプロが調査・介入して、加害者に働きかけてリスクを軽減して初めて可能になる。親子断絶防止法案は、これらの支援の保障なく、当事者への義務づけを定めるもので、弊害が大きい。
 私は伊丹市の悲劇の詳細を知らないが、仮に父親が3カ月間、子に会えなくて精神的に病んだとしても、悲劇の責任は、面会交流を試行錯誤した母親にあるのでは決してない。子を守れなかった責任は、親を放置して育児を支援しなかった、私たち日本社会の無責任な無策にある。

虚偽DVに対する刑事告訴

平成28年3月に千葉家裁松戸支部で「フレンドリーペアレントルール(寛容性の原則)」による親権者決定の判決を受け、一方、平成28年11月の控訴審判決で「継続性の原則」により親権を失った当事者が、虚偽の配偶者暴力(DV)をねつ造し流布したことによる元妻側弁護士等の名誉棄損に対し、平成29年9月28日に当該関係者を刑事告訴しました。
また、関連記事(下記記事)が10月17日に産経新聞WEB版に掲載されました。

詳細は、全国連絡会のホームページ(こちら)をご覧ください。

親権1、2審逆転訴訟が刑事事件に 敗訴の父親が元妻支援の弁護士ら告訴 異例の展開

出典:平成29年10月17日 産経新聞WEB版

親権1、2審逆転訴訟が刑事事件に 敗訴の父親が元妻支援の弁護士ら告訴 異例の展開

長女(9)の親権をめぐる元夫婦間の訴訟で、「家庭内暴力(DV)をしていた」などと虚偽の事実を流布されたとして、長女の父親が、母親側を支援した弁護士や女性団体役員らを名誉毀損(きそん)罪で刑事告訴し9月末、警視庁に受理された。親権訴訟が刑事事件に発展するのは異例だ。同じ状況にいる多くの当事者らが、捜査の行方を注目している。

■「DV受けた」
 刑事告訴したのは、キャリア官僚の40代の男性。
 裁判記録などによると、男性は平成18年、国際機関での勤務経験もある元妻と結婚し、翌19年に長女が生まれた。しかし不仲になり、元妻は22年5月、男性が仕事で不在のときに長女を連れて自宅を出て別居状態となった。男性は同年9月以降、長女と会っていないという。
 その後、「不当な連れ去りであり、長女を返すべきだ」と主張する男性側と、「男性から(自分は)DVを受けており、子供を連れて逃げたのはやむを得なかった」とする元妻側の間で親権訴訟に発展した。
 1審千葉家裁松戸支部で元妻側は「男性と長女の面会交流は月1回程度」と主張。一方、男性側は「親権を得たら長女を年間100日程度、元妻と面会交流させる」と提案した。
 28年3月の1審判決は、男性側の提案を「長女は両親の愛情を多く受けられ、健全に成長できる」と評価し、男性を勝訴とした。また男性によるDVは「なかった」と認定した。

■“画期的判決”と注目
 親権訴訟では、(1)成育環境が一変するのは子供に不利益との考えから、同居中の親を優先する「継続性の原則」(2)父親より母親が養育するのが望ましいとする「母親優先の原則」-などが重視される。
 この1審判決は、従来の基準ではなく、より相手に有利な条件を提示した親を優先する欧米的な「寛容な親の原則(フレンドリーペアレントルール)」を日本で初適用した事例として注目を集めた。
 しかし、控訴審の東京高裁は29年1月、「面会交流の回数を過剰に評価すべきではない」として、「継続性の原則」「母親優先の原則」を重視し、男性を逆転敗訴とした。ただ、DVについては1審同様「なかった」と判断した。男性は上告したが同年7月、最高裁は上告を棄却した。

■「名誉毀損だ」
 そして男性は刑事告訴。警視庁が受理した告訴状の概要は次の通りだ。
 (1)元妻を支援した団体の役員らが1審判決後、「元妻は男性から暴言、暴力、精神的・経済的な虐待を受けていた」などと記した署名を呼びかける書面を、不特定多数の人に配布した。
 (2)高裁判決後に元妻側が開いた記者会見で、代理人弁護士が「夫妻仲が悪くなった理由は、男性によるDVがあったため」などと記した資料を配布した。
 (3)控訴審判決について、厚生労働省が主管する男親による子育て支援活動「イクメンプロジェクト」の男性委員が、会員制交流サイト(SNS)上で「6年近く父親と別居している女の子をモラハラ夫(父)に引き渡すわけがないだろう」などと発言した。
男性は告訴状で「虚偽の内容を記した資料配布や発言により、社会的地位が傷付けられた。名誉毀損に当たる」と主張している。

■告訴の背景は…
 親権争いをめぐっては、父親側団体などが「子供の連れ去りは一種の“誘拐”なのに、『継続性の原則』により親権訴訟で有利になるのはおかしい。裁判官もDVを簡単に認定する傾向がある。これでは不当な連れ去りはなくならない」などと問題提起してきた。

一方で、母親側の団体などは「父親側は自身のDVについて無自覚だ。DVを行う父親のところに子供を残すわけにはいかず、子供を連れて行くのはやむを得ない」などと主張。両者の主張は平行線をたどる状況が続いている。
 男性は刑事告訴した意図について「親権争いをビジネスにしている勢力が一部におり、その意味では元妻も被害者だ。DV冤罪(えんざい)の問題を社会に問いたい」説明。
 その上で、「DV自体は決して許されるものではない。しかし世の中には、そのような意識を逆手に取ろうとする勢力がいることも事実だ。これまで、DVというぬれぎぬを着せられて苦しんでいた方々にも、告訴受理が一つの救いになればよいと考えている」としている。
            ◇
ドメスティックバイオレンス(DV) 暴力など「身体的虐待」▽脅迫など「精神的虐待」▽金銭を渡さない「経済的虐待」-などが該当するとされる。被害者はPTSD(心的外傷後ストレス障害)などを発症する場合がある。一方、親権争いでは、一方の親が裁判で有利になるためにDVを主張し、証拠が乏しくても認定される場合があるとされ、一部の専門家らが是正を訴えている。

 

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更新 2018-07-12 (木) 22:52:32
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