民法819条(単独親権制度)改正を求め共同親権・共同監護制度の導入・ハーグ条約締結の推進と活動を行っています

フランス

フランスの離婚後の親権・養育制度

出典:「平成26年度法務省委託 各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書」一般財団法人比較法研究センター(2014年)P.41~53
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フランスの共同親権立法化の流れ

法律規定内容
1970年改正民法典「父権」という名称を「親権」に改め、父の優位性を廃止し、婚姻中は父母が共同で親権を行使するとした。離婚後は、父母の一方に監護と親権を委ね、非親権者の親に訪問権を付与。
1987年改正民法典離婚後の親権行使を子の利益に従って選択的に父母の共同行使と改正
1993年改正民法典児童の権利条約9 条「子が2 人の親をもつ権利」を国内法に実現するために、離婚後も子に対する責任を共同して負うことを示す「親であることの共同性」という言葉が創られた。離婚後は、親権の共同行使を原則として、単独行使は子の利益の観点から必要な場合のみに限定された
2002年改正民法典子の成長に応じた子の権利を認め、離別後の事態に対応するための広い自由裁量を両親に認めた。両親の子に対する共同責任を実現させるために、両親の離別後の子の居所に関して、交替居所の制度を導入。
2007年改正民法典交替居所が認められなかった場合の訪問権や面会場の規定を明文化した。子の意見の聴聞の基準を設けた。

2002年改正民法典と親権の定義、帰属と行使

  • 2002年民法典改正の法的原則は、1974年に批准した欧州人権条約、1990年に批准した児童の権利条約が著しく影響を与えた。
  • 親権の定義を改め、親権が子の利益のために行われる権利及び義務の総体であることを明確にし(民法典371-1条1項)、安全、健康、精神の面において子を保護するために、かつ、子の教育を確保し、子の発達を可能とするために、子の人格の尊重の上、親に帰属するとした(民法典371-1 条2 項)。
  • 子に関する決定には、子の年齢や成熟度に応じて、子を関与させることも定められた(民法典371-1条3項)。
  • 両親の婚姻の存否あるいは離別の前後にかかわらず、親権は、原則として両親に帰属し(民法典371-1条2項)、共同で行使される(民法典372条1項、373-2条1項)。例外的に、両親の離別後に、子の利益のために、裁判官により親権の単独行使が命じられることがある(民法典373-2-1 条1 項)。
  • 親権が単独行使される場合であっても、親権行使者とならなかった親は、親権の帰属までは失わない。親権の帰属まで失うのは、親権の取上げの場合である(民法典378条から381条)。

親権の日常的行為と重要な行為、交代居所制度

  • 日常的行為と重要な行為は区別され、日常的行為に該当しないものは重要な行為であるとされ、重要な行為に関する親権行使には、両親の合意が必要である。
  • 重要な行為とは、子の過去を断絶し、子の将来を拘束する行為であり、子の基本的な権利に関係するものであるとされる。実務における重要な行為の具体例は、行政上の行為では、教育機関への最初の登録、医療に関するものでは、長期間の入院、重大な治療、重大な危険を伴う手術などがある。
  • 2002年の法改正時に、両親の離別後の子の居所について交替居所の制度(子の居所を両親のそれぞれの住所に一定期間ずつ交互に定めること)が導入され、離別後の子の居所を交替居所にするか、一方のもとに定めるか、選択できるようになった(民法典373-2-9条1項)。
  • 家族事件裁判官は両親の一方の申立てに基づき、暫定的かつ試験的な交替居所を命じることができる(民法典373-2-9条2項、民事手続法典1180-2条)。
  • 裁判官は、子の居所について裁定する際に、他方の親の権利を尊重する親としての適性―親権行使の態様を裁定する際に基準とされる―を考慮する傾向がある。

訪問権・宿泊させる権利と面会場及び監督権

  • 訪問権は、両親の離別後に、親権が共同行使されるが交替居所は認められない場合、親権が単独行使される場合、親権が制限される場合にも認められる。
  • 訪問権は、親だけでなく、祖父母・継親などの第三者(民法典371-4条)、兄弟姉妹(民法典371-5条)にも認められる。
  • 訪問権の実行を容易にするために、2007年の法改正時に、民法典に面会場を規定した(民法典373-2-9条3項)。
  • 面会場は、面会場を専門とする民間団体や、メディアシオンを専門とする民間団体により設けられる。面会場における訪問権の行使は、両親間の高葛藤、後記の両親間のドメスティック・バイオレンスなど紛争が深刻である場合に裁判官により命じられる。
  • 離別後に親権の単独行使となった場合、親権行使者とならなかった親には、重大な事由がない限り、訪問権及び宿泊させる権利が認められる(民法典373-2-1条2項)。
  • 親権を行使しない親には、子の養育及び教育を監督する権利も認められ、この監督権の結果として、子の生活に関する重大な選択を通知される権利も認められる(民法典373-2-1条5項)。
  • DVの場合に訪問権が行使されるときには、訪問権の行使及び一方の親から他方の親への直接の子の引渡しは面会場で行われる(民法典372-2-1条3項、4項、373-2-9条3項、4項)。

父母の意見の不一致における裁判官の裁定

  • 2002年法は、親権行使の態様(親権行使の条件、子の居所、訪問権など)、子の養育及び教育の分担についての取決めの規定を設け、両親が主体的に約定し、この約定の認可のために裁判官に申立てをする(民法典373-2-7条)。
  • 家族事件裁判官は、約定の認可にあたって、子の利益が十分に考慮されていること、約定が両親の自由な意思でなされたことを確認する(民法典373-2-7条)。両親に意見の不一致がある場合には、親又は検察官は、裁判官に親権行使の態様や子の養育及び教育の分担を裁定するよう申し立てる(民法典373-2-8条)。
  • 裁判官は、親権行使の態様について裁定する際に、両親が以前に従っていた慣行又は以前に行った合意、子の感情、親としての適性、子の年齢、社会的調査・反対調査、精神的・肉体的な圧力・暴力を考慮する(民法典373-2-11条1号から6号)。
  • 民法典373-2-11条3号に定められる親としての適性には、両親それぞれにとって、互いに、他方の親と子の関係を尊重すること(民法典373-2条2項)が重要な要素となる。
  • 裁判官は、親権行使の態様を裁定する前に、両親に自発的合意にたどり着けるよう、メディアシオンの措置を提案し、両親の合意を得た後で、手続を進めるためのメディアトゥールを指名する(民法典373-2-10条2項)。裁判官は、両親にメディアシオンの目的と手続について知らせてくれるメディアトゥールに会うことを命ずる(民法典373-2-10条3項)。

子どもの連れ去りと罰則

  • 両親の一方が他方の親に転居を知らせることなく、子を連れ去れば、その後の親権行使の態様の裁判官による裁定において不利になる。他方の親と子の関係を尊重できない親は、親としての適性(民法典373-2-11条3号)に欠けると判断される。
  • 子を勝手に連れ去った親には、民事上の制裁だけでなく、刑事罰も用意されている。子の居所が指定されているのに子を引き渡さない場合には1年の拘禁刑及び15,000ユーロの罰金が科される(刑法典227-5条)。
  • 子の引渡しの履行の強制のためには、裁判官により、間接強制金が課されることがある。
  • 訪問権を有する他方の親に1ヶ月以内に子の転居を知らせない場合には、6ヶ月の拘禁刑及び7,500ユーロの罰金が科される(刑法典227-6条)。

親権の制限

  • 親権が単独行使される原因は、アルコール中毒、子への暴力、子の連れ去りの危険、性的虐待のおそれ、問題行動、子に対する無責任、子に心的外傷を与える教育方法、子に有害な宗教への帰属、長期間の子との交流の欠如などである。
  • 親権の制限を引き起こす原因が、親としての資質を著しく欠くなどして、子の利益を損なう場合には、両親の離別の際に、裁判官は、親権の単独行使を命ずる(民法典373-2-1条1項)。
  • 親権の制限を引き起こす原因のなかでも、子の連れ去りは、裁判官による親権行使の態様の裁定の際に、親としての適性(民法典373-2-11条3号)を欠くとして不利に働き得る。国境を越えた子の連れ去りの危険がある場合には、親権は単独行使とされ得る。

子どもの意思の尊重

  • 2007年の法改正で、子の意見の聴聞は、子の利益のために必要があれば行われるという聴聞の実施の基準が設けられた(民法典388-1条1項)。
  • 子が意見の聴聞を求めるときには、聴聞は子の権利となり、子が聴聞を拒むときには、裁判官は、それが正当な事由によるものであるか審理する(民法典388-1条2項、民事手続法典338-4条)。
  • 子は、聴聞を、単独で、又は、弁護士又は別の選任された者と共に行われる(民法典388-1条2項、民事手続法典338-6条2項)。
  • 裁判官は、聴聞の権利及び聴聞の際の弁護士による援助を受ける権利の通知を子に保障する(民法典388-1条3項)。

2015-11-08 (日) 21:36:50
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