韓国
韓国の離婚後の親権・養育制度
出典:「平成26年度法務省委託 各国の離婚後の親権制度に関する調査研究業務報告書」一般財団法人比較法研究センター(2014年)P.226~257
報告書PDF
韓国の共同親権立法化の流れ
年 | 法律 | 規定内容 |
---|---|---|
1958年 | 親族法 | 離婚後の親権は父優先の原則。婚姻中も「父の親権に服従」 |
1977年 | 親族法改正法 | 婚姻中の親権は、父母の共同親権に改正 |
1990年 | 親族法改正法 | 離婚後の親権は父母の協議で定めると改正し、共同親権を選択可能とした。面会交流を、子を直接養育しない父母の権利と規定 |
2005年 | 親族法改正法 | 親権者指定の協議が不能又は不調の場合は家庭法院に親権者指定審判の申立てをすることを義務化。子の福祉が親権行使の基準であると宣言する規定を新設 |
2007年 | 親族法改正法 | 離婚熟慮期間制度の導入、離婚後における子の養育事項及び親権者決定に関する協議書の提出の義務化 |
2011年 | 親族法改正法 | 子の福祉は、親権行使の基準にとどまらず、家庭法院が親権者を定める際の基準でもあることを宣言 |
協議離婚の意思確認等、裁判所の積極的な介入
- 家庭法院において協議離婚意思の確認を受けなければ協議離婚ができない。
- 協議離婚意思確認手続のなかで、離婚後における親権者及び子の養育に関する事項について合意しなければ協議離婚ができない。
- 協議離婚意思確認制度は、家庭法院が協議離婚手続に積極的に介入するための制度として機能している。
- 協議離婚の意思確認を受けるには、家庭法院において離婚に関する案内を受け(836条の2の1項)、熟慮期間(同条2項) が経過している必要がある。
- 子がいる夫婦に対する離婚案内は、協議離婚の手続や効果に関するものに加え離婚後における子の養育に関する教育がされる。熟慮期間は、離婚に関する案内を受けた日を起算点とし、養育すべき子がいる場合には3ヶ月、いない場合には1ヶ月である。
- 夫婦は、837条の規定による子の養育事項( 養育者、養育費の額及びその負担方法、面会交流の有無及びその実施方法)及び909条4項の規定による親権者指定に関する協議書又は審判書正本を、協議離婚の意思確認を受けるまでに提出しなければならない(836条の2の4項)。
-協議書又は審判書正本の提出がない場合には協議離婚の意思確認を受けることができず、協議離婚の実質的な要件となっている。 - 協議が調い、その内容が子の福祉に反しない場合には、家庭法院より確認書が交付され、養育費については養育費負担調書が作成される。
- ソウル家庭法院では、2014年10月1日より、協議離婚意思確認を申請した当事者に対し、原則として相談委員との面談を受けさせるとともに、必要に応じて、熟慮期間の間に最大で10 回の無料相談を受けることができるような運用をしている。
離婚後の親権の帰属と家庭法院の関与
- 単独親権と共同親権のいずれかを選択することができ(909条4項本文)、親権者とは別に養育者を定めることもできる(837条2項)。
- 離婚後の共同親権は、1990年改正時に設けられた909条4項により、理論上可能となった。
- 家庭法院は、父母が離婚後も円満な関係を維持することができる場合に共同親権が望ましいということを離婚する夫婦に周知している。
- 親権者の協議と併せて、離婚後の子の養育事項に関する協議も義務づけ(836条の2、837条)、家庭法院がその内容をチェックしている。
- 裁判離婚の場合には、家庭法院は、父母に対し、未成年の子の親権者、養育事項及び面会交流についてあらかじめ協議をするよう勧告しなければならない(韓国家事訴訟法25条)。
養育費の履行確保の制度
- 民法上と家事訴訟法上の制度がある。
- 民法上の制度は養育費負担調書制度である。家庭法院が子の養育事項に関する協議を確認したときは養育費負担調書を作成しなければならず、同調書には執行力が付与され、調停調書、審判書又は判決正本がなくても、協議書だけで強制執行をすることが可能である(836条の2の5項による家事訴訟法41条の準用)。
- 家事訴訟法の制度として、養育費支払の履行命令に違反した債務者に対する罰則の強化(韓国家事訴訟法67条1項、68条1項1号)、養育費支払義務者の使用者(所得税の源泉徴収義務者)に対する直接支払命令制度(同法63条の2、67条1項)、養育費支払義務者に対する担保提供命令制度及び一時金支払命令制度(同法63条の3、68条1項3号)、未成年の子の養育費請求事件における財産開示命令制度(同法48条の2、同法67条の3)、財産照会制度(同法48条の3、同法67条の3)がある。
- 国が養育費債権の取立てを援助する「養育費履行確保及び支援に関する法律」が制定され、2015年3月25日から施行される予定である。
面会交流・父母及び子どもが権利主体
- 1990年改正により、面会交流は子を直接養育しない父又は母の権利と定めた837条の2が新設された。
- 1990年改正法の立法趣旨は、「保護と養育をしない親といえども、自己の未成年の子と接触をもち、順調な成長を見守りたい心情は、親としての自然な情であり、したがって、そのような接触の機会を親から剥奪するのは、極めて酷なことである。しかしながら、今日の親子法の理念が、いわゆる『子の福祉的な性格』強調している以上、親の主観的な主張のみを考慮することはできない。したがって、面会交流権の問題を考える際には、子の福祉という観点を優先的に考慮しなければならない」。
- 2007年改正により、韓国民法837条の2の1項は、「子を直接養育しない父母の一方と子は、互いに面会交流をする権利を有する」と改められ、父母及び子を面会交流の権利主体として認めている。
面会交流の手続きと家庭法院の積極的関与
- 協議の当事者は父母であるが、子が15歳以上であるか、あるいは、それに達していないとしても自己の意思を明確に表示できる状態であれば、当該子も協議の当事者に含めるべきであるとする見解がある。協議書には、面会交流の頻度・引渡場所・面会交流の場所・その他の事項を具体的に記載しなければならない。
- 協議の内容が子の福祉に反するような場合には、家庭法院は、補正を命じることができ、又は職権で定めることもできる。協議ができない場合又は調わない場合には、家庭法院に面会交流の審判の請求をし、審判を受けた後、審判書の正本を提出しなければならない。
- 面会交流に関する審判は、韓国家事訴訟法上のマ類家事非訟事件として調停前置主義の適用があり、また、事件本人である子が15歳以上の場合には、審判に先立って子の意見を聴取しなければならない( 韓国家事訴訟規則99条、100条)。
- 面会交流を含む離婚後の子の養育に関する取決めへの支援としては、養育すべき子のいる協議離婚意思確認申請夫婦に義務づけられている「父母案内」(836条の2の1項)のほか、ソウル家庭法院は、面会交流の円滑の実施のために「子ども愛キャンプ」を実施している。
2015-11-08 (日) 21:33:18
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