ハーグ条約
ハーグ条約発効
ハーグ条約は、平成26年4月1日に発効しました。
2013年の第183回通常国会において,国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)の締結が承認され、国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約の実施に関する法律(条約実施法)が成立しました。
これを受け、平成26年1月24日、日本政府は、条約の署名、締結、公布にかかる閣議決定を行うとともに、条約に署名を行った上で、オランダ外務省に受諾書を寄託しました。
条約の締結、発効に伴い、外務省は、インタ-ネットを通じ、条約の運用や子どもの連れ去りに対し注意を促しています。
◇外務省ホームページ(平成26年6月2日) ハーグ条約の概要と日本の各種法制度
ハーグ条約の仕組み
※抜粋:全文は、外務省ホームページを参照ください。
国境を越えた子の連れ去りは,子にとってそれまでの生活基盤が突然急変するほか,一方の親や親族・友人との交流が断絶され,また,異なる言語文化環境へも適応しなくてはならなくなる等,子に有害な影響を与える可能性があります。ハーグ条約は,そのような子への悪影響から子を守るために,原則として元の居住国に子を迅速に返還するための国際協力の仕組みや国境を越えた親子の面会交流の実現のための協力について定めています。
(1)子を元の居住国へ返還することが原則
ハーグ条約は,監護権の侵害を伴う国境を越えた子の連れ去り等は子の利益に反すること,どちらの親が子の世話をすべきかの判断は子の元の居住国で行われるべきであることなどの考慮から,まずは原則として子を元の居住国へ返還することを義務付けています。これは一旦生じた不法な状態(監護権の侵害)を原状回復させた上で,子がそれまで生活を送っていた国の司法の場で,子の生活環境の関連情報や両親双方の主張を十分に考慮した上で,子の監護についての判断を行うのが望ましいと考えられているからです。
(2)親子の面会交流の機会を確保
国境を越えて所在する親と子が面会できない状況を改善し,親子の面会交流の機会を確保することは,連れ去りや留置の防止や子の利益につながると考えられることから,ハーグ条約は,親子が面会交流できる機会を得られるよう締約国が支援をすることを定めています。
◇政府インターネットテレビ(動画:平成26年4月3日)]国際離婚のその時 子どもを守るために ハーグ条約を知っておこう!
近年、国際的に深刻な問題となっているのが、国際結婚が破綻した場合に片方の親がもう一方の親の同意を得ずに子どもを自分の母国に連れ去ってしまう「子の連れ去り」。今回は、この様な状況から子どもを守るために締結された「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」いわゆる「ハーグ条約」について、ご紹介します。
◇条約運用などに関するホームページ⇒【国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約(ハーグ条約)】 New!
1 ハーグ条約の概要と日本の各種法制度
2 国境を越えた子の連れ去りを回避するためには?
3 日本から連れ去られた子の返還を希望する方へ
4 外国にいる子との面会を希望する方へ
5 日本へ連れ去られた子の返還を希望する方へ
6 日本にいる子と面会を希望する方へ
7 日本国の中央当局に対する援助申請
8 協議のあっせんを希望する方へ
9 我が国で裁判手続を行うための支援
10 Q&A
11 その他参考情報
12 ハーグ条約の適用を受けない事案についての支援
13 在外公館における情報提供・支援
14 連絡先及び関連リンク
ハーグ条約とは?
Q ハーグ条約はどのような条約ですか?
A 1980年にハーグ国際私法会議(事務局:オランダのハーグ)で成立し、1983年に発効した条約で、正式名称は「国際的な子の奪取の民事面に関する条約」です。子どもが一方の親などに無断で、国外から国内に連れ去さったり、国内から国外へ連れ去られたりすることを防ぐことが条約の目的です。
条約の前文と第1条には次の点が目的として明記されています。
前文)国境を越えた不法な連れ去り、留置により生ずる有害な効果から子を国際的に保護すること。
第1条a)いずれかの締約国に不法に連れ去られ、又は留置されている子の迅速な返還を確保すること。
第1条b)一の締約国の法令に基づく監護の権利または接触の権利が他の締約国において効果的に尊重されることを確保すること。
このように、子どもが連れ去られる前に居た国への迅速な返還だけでなく、引き離されている親との面会交流をする権利を確保することも重要な目的となっています。
【外務省の解説】子の連れ去りをめぐる「ハーグ条約」と日本
近年,グローバリゼーションの進展に伴い,人の移動や日本人の国際結婚が増加しています。一方で,不和となった両親の子が一方の親によって海外に連れ去られてしまう「子の連れ去り」が,深刻な国際問題として注目されるようになってきています。今回は国境を越えた「子の連れ去り」への対応を定めた国際的なルールである「ハーグ条約」と本条約締結に向けた日本の取組について解説します。
※詳細は、外務省ホームページを参照ください。
【「ハーグ条約の真実」の解説】
ハーグ条約の理念は、親の紛争による子の身柄の奪い合いは子の福祉を害する、頻繁かつ継続的な両親との交流が、子の最善の利益と推定される、という確立された国際法理に貫かれています。
※詳細は、「ハーグ条約の真実」ホームページを参照ください。
Q 条約の前文で子どもの利益が最重要であることが規定されているとのことですが、子どもの権利条約との関係はどのようになっていますか?
A 日本も1994年に批准している「子どもの権利条約」とハーグ条約は密接に関わっています。「子どもの権利条約」は、子どもの基本的人権を国際的に保障するために1989年に国連総会で採択された条約で、子どもを権利行使の主体として認識し位置付け、締結国に対し、法的拘束力をもつ条約の形で、子どもを権利の主体者とする子どもの視点を大切にするアプローチを確立することを目指した条約です。
「子どもの権利条約」には次のことが主に規定されています。
- 第3条 子の最善の利益
- 第9条3項・10条2項 子が父母のいずれとも交流を維持する権利
- 第11条 子の不法な国外への連れ去りの防止
- 第12条 子の意見を聞かれる権利・手続きへの参加
- 第19条 暴力・虐待等からの保護
Q 30年以上も前に成立したハーグ条約が、なぜ今、日本でとりあげられているのですか?
A 日本人が、一方の親に無断で日本国内に連れ去り、外国に居住する一方の親との面会もさせない事件が頻発してきました。日本は条約を批准していないため、連れ去られた親は子どもたちとの面会すらできていません。アメリカ、EU等の外国政府は数十年にわたり、日本政府に対し条約批准を要求してきましたが、日本政府は「勉強している」と言い続け、事実上全く対応してきませんでした。このような日本政府の対応に対し、平成22年9月にアメリカ議会・下院が日本の子の連れ去りに関する非難決議を採択するとともに、日本政府にハーグ条約早期締結等を何度も要求し、フランス議会・上院でも同様の決議案が平成22年12月に可決されました。
日本政府は、子の最善の利益を守ることを最優先に条約批准の真剣な検討を平成22年に開始し、平成23年5月に閣議で批准することを決定しました。
Q 日本は子どもの権利条約を批准しているにも関わらず、子どもの連れ去り防止のための対応を行っていないということですか?
A はい、子どもの権利条約を批准しているにもかかわらず、残念ながら履行措置を行っておらず、条約の尊重を規定した憲法違反を続けています。国内でも別居時に無断で子どもを実家などに連れ去る問題が国会でも取り上げられています。
日本は、子どもの権利条約に沿ったハーグ条約の運用が世界の国々から求められています。
Q 世界で条約締結国の数がどれくらいあるのですか?
A 米国、オーストラリア、カナダ、フランス、イタリア、ニュージーランド、スペイン、イギリスなど87ヵ国(2012年1月現在)です。G8のうち日本のみ未批准です。
※ロシアも批准し、平成23年10月1日から効力が発生しています。
Q 日本人が国外から国内に連れ去ってきた子どもたちは、どれくらいいるのですか?
A 外務省の発表によると、外国政府から日本政府に対して提起されている子の連れ去り件数は、アメリカ100件、イギリス39件、カナダ38件、フランス32件(平成23年5月時点)です。外務省が把握できていないオーストラリアやその他の国からの連れ去り件数もかなりの数だと言われています。
Q 日本から国外に連れ去られた子どもたちは、どれくらいいるのですか?
A 日本経済新聞の記事によると、チェコスロバキア、中国などへ30件以上となっています。
Q 条約はどんな仕組みなのですか?
A 東京新聞に平成23年5月27日に掲載された特集記事を紹介します。下記、回答、図の出典は東京新聞です。
国際結婚してA国に住んでいた夫婦の関係が破綻したとする(離婚も含む)。夫も妻も、子の生活の世話や教育、居住地の決定などに関する「監護権」を持っているが、妻が子を連れて、夫に無断で出国(図<1>)。子を取り戻したい夫は、政府が指定した「中央当局」に、返還援助の申し立てをした(同<2>)。申し立ては直接B国の中央当局にもできる。
A国の中央当局が、B国の中央当局に連絡(同<3>)すると、B国の中央当局が子を速やかに捜し出し(同<4>)、妻に子をA国に返還するよう命じ(同<5>)、子が返還される(同<6>)。ハーグ条約は「迅速な返還」が目的で、ここまでが加盟国に義務付けられた内容だが、この後はA国で、子どもの監護権をめぐって裁判が行われることが多い(同<7>)。
Q 一方の親による子どもの連れ去りは誘拐ではないでしょうか?外国ではどのように扱われているのですか?
A 一方の親が他方の親の同意を得ずに共同親権下にある子どもを連れ去る行為は先進国では「拉致」として扱われ「実子誘拐罪」の重罪で処罰されます。
外務省は各国在日本国総領事館のWebサイト「子の親権問題について」で共同親権下にある子どもの連れ去りに対して警告しています。
連れ去り行為は連れ去った親や残された親のみならず、子供にも大きな影響を与えることとなります。
在アメリカ合衆国日本国大使館ホームページには、米国の国内法(刑法)では、父母のいずれもが親権(監護権)を有する場合又は離婚後も子どもの親権を共同で有する場合、一方の親が他方の親の同意を得ずに子どもを連れ去る行為は、重大な犯罪(実子誘拐罪)とされています(注1)、と掲載されています。
(注1)16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)
主要国の罰則を比較すると下記のようになります。
- カナダ:14歳未満の子の連れ去りの場合、10年以下の禁錮刑等を規定(刑法第282、第283条)。
- アメリカ:16歳未満の子の連れ去りの場合、罰金若しくは3年以下の禁錮刑又はその併科を規定(連邦法Title 18, Chapter 55, Section 1204)。州法により別途規定がある場合もあります。
- イギリス:略式手続による場合は6ヶ月以下の拘禁刑若しくは罰金又はその両方、正式手続による場合は7年以下の拘禁刑
- フランス:1年以下の拘禁刑又は15,000ユーロ以下の罰金
- スペイン:2~4年の禁固刑及び4~10年の親権剥奪
- スイス:3年以下の禁固刑又は罰金刑
Q 日本国内では、別居時などに一方の親が他方の親の同意を得ずに共同親権下にある子どもを連れ去る行為に対する法律はあるのですか?
A 先進国のように、連れ去り行為を禁止する法律はありません。裁判所も、監護の継続性の原則を理由に、通常、連れ去り親に離婚後の「親権」を与える運用を行っています。このように「実子誘拐罪」などの法律のもなく、裁判所の恣意的な運用で子の親権決定が行われているため、連れ去った者(親)が勝ち(=親権を得る)となっています。
Q 連れ去った者が勝ちなどとの運用が許されるのですか?日本は法治国家ではないのですか?
A 平成23年の通常国会で、別居及び離婚後の親子の面会交流等に関する民法改正の議論が行われ、5月26日に民法の一部を改正する法律が国会議員の全会一致により成立(公布は平成23年6月3日)しました。
国会の法務委員会で、立法権者の江田法務大臣は民法改正を行う立法趣旨として、主に次のように述べ、最高裁判所長官代理は、国会で立法趣旨等を国内の全裁判所に周知すると述べました。詳細は当ホームページの民法改正理念(国会審議)を参照ください。
運用が変わるかは最高裁次第という、曖昧さが依然残っています。
- 子どもとの面会交流や養育費に関して子どもの利益を最も考慮して決めることを民法766条に明記した。(法務大臣)
- いわゆる継続性の原則、合意ができる前にあえて無理して子を移動させてそして自分の管理下に置けば、後は継続性の原則で守られるという、そういうことはやっぱりあってはいけない。継続性の原則があるから、だから連れ去った方が得だと、そういうことがあってはいけない。(法務大臣)
- 各家庭裁判所は民法改正の趣旨を踏まえて、今後ともより適正な紛争解決に向けて努力してまいる所存。事務当局としても必要な策等を行っていきたい。(最高裁判所長官代理:周知徹底について)
Q 日本は法治国家ですが、日本弁護士連合会など弁護士団体は、子どもの連れ去りを禁止する人権擁護活動はしていないのですか?
A 日弁連は、ハーグ条約締結に関して平成23年2月23日までに、国内法の整備を求める意見書を法務省などに提出しました。意見書では、条約を締結する際、児童虐待や配偶者間暴力(DV)があった場合には子の返還を拒否できるようにすること、国内の事案には適用がないことを明記すべきだと言っています。
- 意見書の最大の問題は、「子どもと親との継続的接触が子どもの健全な成長にとって重要」(=子どもの最善の利益)であり、子どもの権利条約9条でも保障されているという観点がまったく欠けている点です。ハーグ条約は、このような観点にたって、不法な連れ去りが子どもと残された親とを引き離してしまうことを防ぐことを目的にしたものですが、意見書は、この点を考え方の出発点におかれておらず、原則と例外が逆転してしまっています。また、国内の連れ去りによって多くの子どもたちが一方の親と引き離されることの問題点は、まったく抜け落ちています。
- 一方、大阪弁護士会も意見書を出しており、日弁連とは正反対のハーグ条約の理念を理解し子どもの最善の利益を尊重した意見書となっています。
詳細は日弁連の意見書を参照ください。
Q 条約批准に向けて、外務省の現在の取り組みはどのようになっていますか?
A 外務省のホームページで紹介、周知を行っています。
また、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」を開催し、中央当局の在り方が検討されています。この懇談会は、ハーグ条約に関する関係閣僚会議における了解事項等を踏まえた同条約締結のための国内担保法案の作成に向け、外部の有識者等から広く意見を聴く場として立ち上げられました。
懇談会は、現在のところ5回開催されています。
第1回会合(平成23年7月27日開催)の詳細及び会議資料:
外務省ホームページ、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第1回会合
外務省ホームページ、ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第1回会議 議事概要
第2回会合(平成23年9月13日開催)の詳細及び会議資料:
外務省ホームページ、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第2回会合
外務省ホームページ、ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第2回会議 議事概要
第3回会合(平成23年10月24日開催)の詳細及び会議資料:
外務省ホームページ、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第3回会合
外務省ホームページ、ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第3回会議 議事概要
第4回会合(平成23年11月22日開催)の詳細及び会議資料:
外務省ホームページ、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第4回会合
外務省ホームページ、ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第4回会議 議事概要
第5回会合(平成23年12月7日開催)の詳細及び会議資料:
外務省ホームページ、「ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会」第5回会合
外務省ホームページ、ハーグ条約の中央当局の在り方に関する懇談会第5回会議 議事概要(作成中)
Q 条約批准に向けて、法務省の現在の取り組みはどのようになっていますか?
A 平成23年5月に条約批准の閣議決定を受け、ハーグ条約(子の返還手続関係)部会を法制審議会に設置し、奪取した子どもの返還手続等の整備に関する検討に着手しました。
部会の会議は、現在のところ12回開催されています。
第1回会議(平成23年7月13日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第1回会議
第2回会議(平成23年7月25日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第2回会議
第3回会議(平成23年9月9日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第3回会議
第4回会議(平成23年9月22日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第4回会議
第5回会議(平成23年10月17日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第5回会議
第6回会議(平成23年10月28日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第6回会議
第7回会議(平成23年11月11日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第7回会議
第8回会議(平成23年11月28日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第8回会議
第9回会議(平成23年12月5日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第9回会議
第10回会議(平成23年12月19日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第10回会議
第11回会議(平成24年1月16日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第11回会議
第12回会議(平成24年1月23日開催)の詳細及び会議資料:
法務省ホームページ、法制審議会ハーグ条約(子の返還手続関係)部会第12回会議
更新 2015-01-30 (金) 23:13:31
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